だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1316回 「残念な人の仕事の習慣」

努力しているのに成果が出ない…。そんな人は、努力の仕方が間違っている可能性が大です。本書は、世の中で成功しているサービスの成功事例や、日常でよく目にするメールや話し方といった事例を取り上げて、成果を出すためのノウハウや習慣を解説した本です。明日からでもスグに仕事に活用できる、とても実践的な一冊です。

新刊ラジオを購読する方はこちら

読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました

仮説検証型の仕事をする

● 著者について 山崎将志さんは、ビジネスコンサルタント。 東京大学経済学部卒業。1994年にアクセンチュア入社後、2003年に独立。 事業再生コンサルティングや、生活総合支援サービス、プロフェッショナル研修等の事業に、株主、経営者、実務担当者の3つの立場から運営に携わってきた方です。

● この本のテーマ 努力を成果に直結させる“仮説検証型の仕事”を、具体例を用いて解説する

「努力はしているのに成果が出ない」 「無駄な努力と分かっているのに、変わり方が分からなくてズルズル続けている」 「とにかく毎日辛い。仕事がいやで仕方ない。」

そんな人は、この本で山崎さんが解説する“仮説検証型のノウハウ”を習得すれば、変わることができるかもしれません。

本のタイトルにもなっている“残念な人”とは、決してダメな人のことではありません。 やる気もあるし、能力もある、毎日遅くまで働いているのに、どういうわけか結果が今ひとつになってしまう、そんな“もったいない人”のことを、この本では“残念な人”と呼んでいます。 そんな人に共通して足りないのが、「仮説検証型」の努力ができていない、ということなんだそうです。

● 仮説検証型とは 「仮説検証型」というのは、野球のバッティングに例えるとこのように説明できます。 まず、“残念な人”が陥りがちなのは、「とにかくバッティングの練習をたくさんして、どんな球が来ても打てるように努力する」という方法を取ってしまうことです。これではたくさんの時間も掛かりますし、大変です。何より、すべてのコースを網羅するのが現実的かどうかも不明です。 一方、仮説検証型では、「向かってくる球のコースに、仮説を立てて挑み、うまくいったところは継続する。ダメだったところは検証して修正していく」という方法を取ります。この方が、実務に直結する努力ができますし、成果を出すまでのショートカットができますよね。

成功実例 ゴルフ場の無料朝食サービス。

この本では、仮説検証型の発想で仕事を変えて成果を出したさまざまな実例が掲載されています。ノウハウそのものを書いているわけではなくて、色々なサービスの成功事例を挙げながら解説していく構成の本です。 話のネタを仕入れる目的や、読み物として楽しむこともできると思います。

今回はその中から、こちらを紹介します。

ゴルフ場経営に見る、「忙しいから人を増やす」は何も解決しないという例

みなさんは、ゴルフ場に行ったことはありますか? 最近、こういうサービス施設はどんどんサービスの質を上げてお客さんを取り込もうとしていますが、この本で取り上げられているゴルフ場は、朝食を無料にすることで利益を増やすことに成功しました。

ゴルフといえば早朝からプレイしますから、朝食はコンビニ食か、家から持ってきたおにぎりをかじるくらいですよね。だから、ゴルフ場で温かい朝食ビュッフェが食べられるのは、お客さんにとっては嬉しいことでしょう。

でも、このサービスのインパクトはそれだけではないのです。 一般的にゴルフ場には、コースの割り振りや、プレイの進行状況を管理するキャディマスターという仕事があります。キャディマスターの朝の重要な仕事に、スタートの時間を調節するオペレーションがあります。 なぜなら、ほとんどのお客さんは予約をしてくるのですが、当日のキャンセルや、遅刻が多くて、毎朝その調整にてんてこまいになるのだそうです(毎朝電車の遅延が発生しているようなものですね)。

しかし、ここで紹介されているゴルフ場は、全くドタバタすることなく、スムーズで気持ちいい空間を提供することに成功しています。

なぜでしょう? その理由が、朝食無料というサービスの裏に隠された効果なのです。

ゴルフ場の社長は、このサービスの効果についてこう話しています。 「朝食を無料にすることで、遅刻するお客様が激減したんです」

なるほど…!遅刻者が減れば、それだけ調整する作業は減るわけです。そうすると、キャディマスターは、1円の利益も生まない時間の組み換え作業に追われることがなくなり、本来やるべき来場客への“前向きな”サービスの仕事に集中できるのです。

残念な人の選択、うまくやる人の選択

「忙しいから人を増やす」という発想では、ゴルフ場の従業員にとってはWINかもしれませんが、ゴルフ場の経営者と、お客さんにとってはWINとはいえません(ゴルフ場はコストが上がるので、結果、お客さんのプレイ代に影響します)。

一方、朝食を無料にすれば、お客さんにとっても、スタッフにとってもWINになります。 では、経営者にとって、コストの増加はどうなのでしょうか。そこは、ビュッフェスタイルであるというのがミソになっているのです。 ビュッフェスタイルだと、食材の仕入れを平準化することができます。つまり、経営計画を立てやすいのです。また、ビュッフェだと、だいたい同じメニューが並ぶので、人の作業効率もかなり高い位置でキープすることができます。実は心配するほど、大きな負担にはならないのです。 また、人件費の純増ではなく、朝食無料というサービスを提供できているので、これにより来場客が増え、ゴルフ場の限界キャパシティに近いところまでの予約が取れれば、実に効率的な集客コストと考えることもできるのです。

●残念な人の選択   「朝は忙しい時間帯だから人を増やそう」 ●うまくやる人の選択   「朝が忙しい原因となっている遅刻者を減らすサービスを提供しよう」

お客さんにとっても、ゴルフ場にとってもうれしい「朝食無料サービス」をご紹介しました。

続きの章では次のようなことに触れています。

第1章 「できる人がやっている『損してトク取れ』方式」 ビジネス編。 ゴルフ場のほかに、ビジネスホテル、餃子の王将、星野リゾートといった事業の成功事例を挙げて、「ある一部では損をしても全体で得になるという」成功習慣「損してトク取れ」の方式について解説しています。

第2章 「残念なメールは金曜夜にやってくる」 コミュニケーション編。 メールの出し方や、話し方、職場での振舞い方といった、コミュニケーションについて書かれています。

第3章 「残念な人が乗り込む残念なタクシー」 時間の使い方編。 第4章 「二流は「単純作業」と嘆き、一流は「実験の場」と喜ぶ」 働き方編。 第5章 「もしも書店から会計レジがなくなったら…」 イノベーション編。

山崎さんはビジネスコンサルタントとして、いろんな会社やサービスを見てきています。その中で起こった興味深いサービスの変化や、イノベーションがこの本にはまとめられています。

その中からぜひ、努力を成果にむすびつけるノウハウを見つけ出して、自分の仕事にも取り入れてください。

ラジオを聴く

残念な人の仕事の習慣

王将やゴルフ場のネタは、飲み会の話の種にもなりそう。