だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1256回 「不可能を可能にするあしたの発想術」

町工場の親父が贈る、目からウロコの処世術。世界が注目する発想はどのようにうまれてきたのだろうか?「不景気でも仕事はいくらでもあるものだ」「失敗を恐れて挑戦をしようとしないといい仕事はできない」「学力がなくても、何か一つでも超一流になれば人生は開ける」などなど…。あしたのためのありがたい小言満載です。

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“できるわけない”を実現させてきた町工場

☆音声ですぐに聴くなら・・「新刊ラジオショート3分版」 3分でわかる『不可能を可能にするあしたの発想術』(再生)

● 著者について 岡野 雅行(おかの・まさゆき)さんは1933年東京都墨田区生まれ。10代のはじめから家業の金型工場を手伝い、1950年、本格的に父親の仕事に取り組みました。2年後に家業を引き継ぎ、岡野工業株式会社を設立。あらゆる分野の製品のプレス加工や、部品の金型設計・製作を手がけ、急成長を遂げます。 2003年には、東京都功労者表彰。テルモから依頼されたインスリン用注射針「ナノパス33」はグッドデザイン賞を受賞。

岡野さんは、下町の小さな町工場の社長です。しかし、ただの社長ではありません。「そんなことは技術的に無理だ」といわれていた金属加工を次々と実現させてきました。

“痛くない注射針”もそのなかのひとつです。細いだけの注射針をつくるのは簡単でも、その細くした針の中を流せる注射液の量をいままでと同じにするということが今までの技術ではできなかったそうです。そこで岡野さんは、考えに考えました。そして、皮膚に刺さる部分は細くして、それ以外の部分は注射液が流れやすいように太くするという発想が生まれます。

しかし、考えたがいいが、つくるのはたやすくない。一年半、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返し、失敗をかさねては寝る間も惜しんで考えたそうです。そしてやっと辿りついたのが昔からの金型プレス加工の技術を応用することでした。新しい発想と昔からの技術の応用で、やっと完成しました。 依頼した担当者でさえも試作品をみたとき、「これはすごい!」「よくこんなのができましたね」 と、目を丸くして驚いたそうです。

従業員六人の会社で作った製品が、いまやなくてはならない製品として世界中に。痛くない注射針のほかにも例えば、リチウムイオン電池のケースをつくったのも、岡野さんです。携帯電話が普及する前、小型・軽量化するために旭化成がリチウムイオン電池を開発しようとしたんだそうです。

そこで問題になったのが、それを収納するケース。リチウムは爆発しやすい危険な物質なので完全に密閉しなくてはならないなど、いろいろな条件があって、どこの会社もできなかったその製品。岡野さんが試行錯誤の末に成功したのです。

これまでに三百種類、約一億の製品をつくってきた岡野さん。世界が注目する日本の町工場のおやじです。

次のページでは、岡野さんの会社の“強み”を紹介します。

小規模だらこそ可能である確たる“強み”

岡野さんの会社には、小規模だらこそ可能である確たる“強み”があります。その部分を抜粋しましょう。

「世の中は不景気なん言うけど、うちは朝から晩までフル回転。あんまり忙しいから、どんなに大きな取引先でも、業績が極端に落ち込んでいるところの仕事はお断りしているんだ。「金のないところの仕事は受けねえ」ってね。 何万人もの社員がいる大企業が軒並み赤字を出しているのに、うちみたいな従業員六人の会社が忙しくてたまらないのは、何度も言うようだけどほかにはない技術やノウハウがあるからだよ。でも大企業だって技術がないわけじゃない。だけど、あまりにも細分化されているので、エンジニアなんていっても、ちょっと専門外の話になると、途端にちんぷんかんぷんになってしまう。体制の問題なんじゃないかな。 その点、うちは一から十まで自分でやっている。前にあんなことをやって失敗したけど、あの技術は今回の製品に使えるなとか、経験が蓄積となっていくらでも利用できるんだ。 みんな、不景気だ、不景気だなんて嘆く暇があったら、少しは頭を使って知恵を絞ったらどうなんだい?金はなくても、頭の中の発想は無限でしょ」

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不可能を可能にするあしたの発想術

不可能を可能にするあしたの発想術

不可能を可能にするあしたの発想術

町工場の親父が贈る、目からウロコの処世術。世界が注目する発想はどのようにうまれてきたのだろうか?「不景気でも仕事はいくらでもあるものだ」「失敗を恐れて挑戦をしようとしないといい仕事はできない」「学力がなくても、何か一つでも超一流になれば人生は開ける」などなど…。あしたのためのありがたい小言満載です。