目指せスポーツトレーナー!
SUZURAN式
SPORTS MASSAGE
著者:田渕 直人
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税
著者:田渕 直人
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税
アスリートに常につきまとうのがケガや故障である。特定の筋肉を酷使すれば、当然その箇所には負担がかかり、張りや痛みが出やすい。深刻なケガになったり、痛みが慢性化する前に、いかに体をケアするかは、スポーツをする全ての人にとっての課題。それをいかに防ぎ、痛みを軽減するかがスポーツトレーナーと呼ばれる仕事の腕の見せ所である。
『目指せスポーツトレーナー! SUZURAN式SPORTS MASSAGE』(田渕直人著、幻冬舎刊)は、全国25カ所に展開する「すずらん鍼灸接骨院」で、延べ4万人以上のアスリートに施術を行なってきた田渕直人さんが、スポーツマッサージの手技を解説していく。
通常の整体で行われるマッサージと、アスリート向けのスポーツマッサージは、手法も目的も明確に異なる。
リラクゼーションを目的として行われることが多い通常のマッサージとは違い、スポーツマッサージは競技によって痛みやすい部分や、疲労しやすい箇所に対してマッサージを行い、アスリートのパフォーマンスの向上を目的としている。
田渕さんによると、スポーツで激しい動作を繰り返していると、筋肉が過度に緊張し、筋肉同士が癒着しているような状態になるため、スポーツマッサージでは体の構造を熟知したうえで、「筋肉をはがす」「筋肉をずらす」「筋肉を持ち上げる」などの動作を意識する必要があるという。
手法についても、通常のマッサージが筋肉の表層部にアプローチし、「気持ちよさ」を重視するのに対して、スポーツマッサージはより筋肉の深層部にアプローチして、硬くなり、血流が悪くなった「こり」を取り除く方法がとられる。
ただ、これは素人がいきなりできるものではない。本書では、アスリートや日常的にスポーツをしている人だけでなく、スポーツトレーナーを目指す人に向けて、施術をするために必要な知識や技術、トレーニング方法を明かしているが、スポーツマッサージの施術には、複数の手技を対象の状態に合わせて使い分ける必要があるという。
・さする(軽擦法)
軽い力でさすることで筋肉の表面をリラックスさせる手法。手のひら全体を施術部位に密着させ、上半身の力を利用して軽く面圧をかける。
・揉む(揉捏法)
親指や指の付け根、手根を使って揉む手法。手指で筋肉を押し込んでつまんだり、搾るようにして刺激を与えたりするのが特徴。
・押す(圧迫法)
手指を治療する部位に押し当てることで、身体の深部まで圧力を加えていく手法。各部位に圧を加えることで筋組織にアプローチし、痛みや筋疲労、凝りなどを緩和させる。拇指や四指、手根など、状況に応じて使い分ける。
・叩く(叩打法)
左右の手指を使って身体の表面を交互に、リズミカルに叩く。適度な強さで叩くことによって、神経や筋を刺激し、筋肉の興奮による血行促進を実現する。
◇
スポーツトレーナーを目指す人向けに書かれた本書。その道を極めようという人は、アスリートのパフォーマンスの向上とケガの防止のために参考にしてみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
■アスリートのパフォーマンスを支える「スポーツマッサージ」は普通のマッサージと何が違うのか
田渕: 一つはこれからスポーツトレーナーを目指す方、具体的には鍼灸や柔道整復、マッサージの専門学校に通っていらっしゃる学生の方々に向けて、トレーナーになるための入り口として読んでいただくためです。
スポーツトレーナーがどういう仕事で、どんな手技をつかってアスリートの方々の体の痛みを取り除いたり、パフォーマンスを高める助けをしているのかということがわかるような内容にしたいと考えていました。
もう一つはアスリートの方々が、自分の体のメンテナンスに使えるようにという目的もあります。体の部分によっては、自分で手技を使っていただくこともできるので、パフォーマンスを上げたり、ケガから回復するために使っていただきたいですね。
田渕: そうですね。自分で行うだけでなく、アスリート同士でやっていただくこともできるので。アスリートといっても、専属トレーナーやチーム付のトレーナーがいない方の方が多いので、お互いにケアしあうというのが大事だと思います。
田渕: あくまでこの本は「入り口」と捉えていただきたいです。本を読んで全てがわかるわけではないので。人間の体は写真や言葉だけでは伝わらない部分も多いので、本を読んで、実践してみて、それでもわからないことは教えを請いにいくということをやってみていただきたいです。
これからスポーツトレーナーを目指す方に、どういうことを身につけにいくのかという目的意識を持っていただくきっかけになればいいと思っています。
田渕: アスリートの方は、その日によって体調の変化を敏感に感じとるものです。体の痛みはもちろん「この箇所がオーバーユースになっている」といったことです。試合があったとか、ハードなトレーニングをしたといったことでも変わってきます。
施術者はそれを把握して、状況に合った手技を行うのが、通常のマッサージとスポーツマッサージの違うところです。手技については、具体的には、筋肉の表面だけでなくて深層の部分にある筋肉にアプローチしていくのが、通常のマッサージとは違います。
田渕: わかります。体の張りだとか、関節の可動域を見るとわかります。アスリート本人が自覚していない張りも見つけることがありますね。
アスリート本人は、一番痛い場所や、一番張っている場所については自分でもわかるのですが、二番目、三番目についてはなかなかわかりません。そういうところが次のケガの原因になったりするものですから、早期に発見することが大事なんです。
田渕: それはあるでしょうね。相手との相性もあるので一概にはいえないのですが、今の相手にとってベストの手技を選択するには、やはり相手の状態や気持ちをわかっていないといけないので。
■マッサージで良くなる痛み、良くならない痛み
田渕: 筋肉の柔軟性を取り戻したり、関節の可動域を広げたりといったことがマッサージでは可能です。たとえばゴルフのドライバーの飛距離などは、これらによってだいぶ差が出るんです。
田渕: 程度にもよりますが、可能です。椎間板ヘルニアというと、手術のイメージが強いと思いますが、必ずしも手術をしないといけないということもないんです。手術しなければどうにもならないものもあれば、そうでないものもあるというのが実情です。
椎間板ヘルニアは腰椎と腰椎が圧迫されて、中から核が飛び出てしまって痛みが出るものなので、手技としては、腰椎の間を広げてあげることで、手術しないでいい方向に持っていくということが可能なんです。
田渕: もちろんあります。骨折などによる痛みのような急性症状や腫瘍によるものはマッサージでは良くなりません。
田渕: ストレッチで改善することは可能です。人それぞれ症状は違いますから「どうすればいい」ということは一概には言えないのですが、私が経営している「すずらん鍼灸接骨院」をはじめ、来院していただいた方の症状にあったセルフケアの方法を指導している施設がありますので、こうした専門家のアドバイスを仰ぎながらご自身でケアしていただくのが一つの方法だと思います。
田渕: オフィス街にある店舗では、頭痛、肩こり、腰痛ですね。パソコンやスマホの操作で同じ姿勢を長時間続けることが増えているので、姿勢からくる痛みで来院される方が多いですね。
私はこの業界で30年ほど、体に痛みや不調を感じる方を見ているのですが、やはり以前とはいらっしゃる方の痛みの種類が変わってきたと感じます。
ただオフィスワークによる痛みを抱えている方も、通っていただくとほとんどの方は症状が改善しています。だいたい12回から24回の通院が1セットなのですが、多い方でも2セットやっていただければよくなるということが多いです。
田渕: スポーツトレーナーを目指す方々は、ぜひ本書を読んでいただいて、手技についての理解を深めていただき、そして実践へと結びつけていただきたいです。
また、アスリートの方々は、くれぐれも体のケアを怠らないように、今の自分の状態が100%なのかどうなのか、もっとやれることがあるんじゃないかというのを考えていただきたいと思います。
プロスポーツ選手はともかく、アマチュアの方々を見ていると、やはりセルフケアが十分でない方が多いんですね。体の状態でパフォーマンスは変わってくるものなので、本書を通じて体のケアについての知識を持っていただければうれしいと思っています。
(新刊JP編集部)
田渕 直人(たぶち・なおと)
1965 年3 月20 日、名古屋市出身。
1995 年治療院を開業。2000 年より接骨院の多店舗展開を開始。現在では、すずらん鍼灸接骨院グループの代表取締役を務め、接骨院・接骨師会・人材派遣・人材紹介・学習塾などを運営している。有料老人ホーム・ヘルパーステーション・訪問看護ステーション・障害者グループホームを運営する株式会社Welfare すずらんの代表取締役も務めている。
著者:田渕 直人
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税