本書の解説
「物事を直感で決める」というと、なんとなくいい加減で風任せなイメージがあります。
でも、自分の内側から沸き起こるインスピレーションこそが直感だと考えると、あまり無下にはできないもの。『成功する人が磨き上げている超直感力』(八木龍平著、KADOKAWA刊)によると、経営者の意思決定や、作家の創造など、各分野で活躍する一流の人ほど、「直感」を大事にしているだけでなく、日々それを磨く努力をしているとしています。
「直感力」とは、私たちが自分らしく自由に生きるためにもっとも大切なもの。この力を磨いていくためにはどんな取り組みが有効なのでしょうか。
直感は「スキマ」に宿る
まず一つ目に挙げられるのが「スキマ」を作ること。
頭の中は仕事のことでいっぱい、スケジュールで埋め尽くされた手帳、家の中はものであふれている…。こんな風に「スキマ」がない状態では、自分の内なる声である「直感」はやってきません。
意識して何もしない時間を作ってみる、不要なものを処分して部屋の中に何もないスペースを作ってみる、予定を詰め込まないようにする、起きた物事に対していちいち悩むのをやめてみる。こんな取り組みによって、心に「余白」が生まれます。この余白にこそ、内なる自分の声が下りてくるのです。
潜在意識にアクセスすれば、直感は下りてくる!
また、直感力と密接にかかわるのが「潜在意識」です。知っての通り「潜在意識」とは、普段は意識できない意識」のこと。ここにアクセスしやすくすることが、直感力を磨くことにつながります。
潜在意識とつながるための取り組みとしては座禅や瞑想が知られていますが、他にもできることがあります。たとえば、普段の生活のなかで、あらゆる判断を「保留」にすること。
私たちは自分に起きた出来事について、その意味を解釈しようとしたり、正しい選択をしようとしたり、善悪を判断したりと、ついつい思考を巡らせてしまいます。それを一度すべてやめて、見たもの、聞いたこと、起きたできごとについて何も判断せず、決断せず、すべてをただ「知る」にとどめてみる。
一日のすべてをこのように過ごすのは難しいかもしれませんが、何も判断せず、考えない時間を作ることを心がけると、潜在意識に潜り、直感力を得るのに役立つといいます。
「理想の自分」にアドバイスをもらおう
どんな人でも「こうだったらいいのに」という、理想の自分像があるはず。
何かに迷ったら、その「理想の自分」と心の中で対話してみることも、直感力を磨くトレーニングになります。
迷いや悩みに対して「理想の自分」が下した決断は、現実の自分にとって「こんなことができればいいんだけど、実際にやるのは怖い」とか「こんなことを言ってみたいけど、勇気がなくていえない」といったものかもしれません。でも、「理想の自分が言うなら」ということで実行してみると、これまでの自分の行動原理からはありえなかった結果が出てくるかも。
「理想の自分」を通して導き出された決断にしたがってみる。これも一つの直感なのです。
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自分らしく、生き生きと、嫌なことを我慢せず生きるために必要なのが直感であり、自分の心の声に素直になること。
本書では、直感とはどのようなものか、どんな時に役立ってくれるのか、どうやって磨いていけばいいのかが詳しく解説されています。
物事が思った通りにいかずモヤモヤしている人。
素の自分を出せない人。
やりたいことがあるのに勇気がなくて実行できない人。
こんな人にとって、直感はかけがえのない人生の武器になるはずです。
(新刊JP編集部)
インタビュー
誰にでもある直感力 眠らせてしまう人と発揮できる人の違いとは
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『成功する人が磨き上げている超直感力』についてお話をうかがえればと思います。優れた直感力は、生きるうえで大きな武器になりえます。この力が強い人と弱い人にはどんな違いがあるのでしょうか。
八木:強いか弱いか、というよりは直感を発揮しているかしていないかと言った方が正確かもしれません。直感力というのは、それを素直に発揮している人と自分で押さえつけてしまっている人に分かれるんです。
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直感力自体は誰もが持っている。
八木:そうです。誰にでも直感は備わっているのですが、どうしても年をとるにつれて論理や理屈が発達してきます。これ自体はごく当たり前のことです。
30歳を過ぎる頃には社会人経験を積んで知識も持っていますから、その気になればこれまでの前例や経験の範囲内から答えを出したり決断したりできるようになります。「こういう時はこうすればいい」という論理の中で対処できるようになるわけです。必然的に直感を使って「正しいかはわからないけど、この道を選ぼう」というような決め方はできなくなってくる。
このあたりの年代が直感力を使う人と押さえつけてしまう人に分かれる分岐点ではないかと思うのですが、30歳を過ぎても直感力を眠らせない人もいて、どういう人かというと新しいことにチャレンジする人なんですよ。新しいことにチャレンジするということは、知らないこと、情報を持っていないことの中に飛び込むということですから、これまでに培った論理だけでは通じません。直感の力を使って決断したり、選択したりせざるを得ないんです。
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八木さんご自身は、直感力を使って大事な決断をした経験はありますか?
八木:逆に直感で決めていないことなんてあったかな、と思うくらい、直感で決めています。だから悩むことはないですね。
大きな決断ということでいうと、以前に『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』という本を出したのですが、その本を書くにあたって当時勤めていた富士通を辞めたことです。本を出すから会社を辞めるっていうのは論理的にはあまりつながらないですよね。
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そうですね。本が売れてお金持ちになったから会社を辞める、ならわかりますけど。
八木:直感で決めたことって周りから見ると不可解なことが多いわけですが、本人はまるで迷っていないんです。この本の時もそうでした。2015年の9月に本の企画が通って出版が決まったその瞬間に「あ、会社辞めなきゃ」と思ったので。
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まさに直感ですね。
八木:すぐに上司に辞めることを言って、半年後に退職という流れになりました。たぶん「辞めたらこの先の人生どうなるんだろう」というような迷いが少しでもあったら、こういう選択はしなかったはずです。その時の私に迷いはまったくありませんでした。たぶん、迷わない直感こそ本当の直感なんですよ
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執筆やプロモーションに必要な時間を確保したいから退職しよう、というような論理側のプロセスはなかったのでしょうか?
八木:それは辞めるというアイデアの後で考えましたね。「辞めることにしたし、執筆やプロモーションに時間を使えるな」という感じで。
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本の中で「2025年には直感力が最重要の能力になる」としています。これはなぜでしょうか。
八木:「雇用の未来」という、オックスフォード大学で2013年に発表された論文では、10年~20年後のアメリカにおいて、どの仕事がなくなりどの仕事が残るという予想がなされました。
ひと言でいうと、2023年~2033年にはAIで対応できる仕事はなくなる、ということなのですが、AIで対応できる仕事というのは論理的思考で答えを導き出せる仕事だと言えます。一方で残る仕事というのは、人と人との接触が多い仕事だったんですね。対人の仕事は正解があるようでないことが多くて、ある人の正解は別の人には不正解ということもある。
2025年に直感の時代が来るというのは、AIが発達することによって、論理思考力はもう人間の強みにはならないんじゃないかという思いから書きました。じゃあAIにできないことって何なのかという話ですが、インスピレーションとか直感なんですよ。この力こそが人間の特徴になりえるわけです。
直感力を磨きたければ神社に行くべし
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直感力を磨くためのキーワードとなっているのが「自分の声に従うこと」です。これは簡単そうで難しい…。
八木:そんなに難しいことではないですよ。たった一つ、あることをするだけです。
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あることというのは?
八木:単純なことです。日常生活で「いいな」と思った瞬間にスマートフォンで写真を撮るだけでいい。いい景色だとか、盛り付けが美しい食事だとか、何でもいいので「これはいいな」という時に写真を撮ってみると、自分の声がわかるようになってきます。「これはいいな」がまさに自分の声ななんです。
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心が動いた瞬間と対象を記録しておくわけですね。
八木:そうです。心が動いた瞬間に「私は心が動いたんだ」と確認してあげることで、だんだん自分の声が明確になってくると思います。
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先ほどのお話にもありましたが、新しいことにチャレンジできる人は30歳を過ぎても直感力が衰えない、とありました。この「新しいこと」に条件はありますか?
八木:いや、基本的にはどんなことでもいいです。もし条件をつけるなら「自分で意欲を持てる」ということですね。いくら新しいことにチャレンジすることが大事だといっても、義務感でやるべきではないので、本当に自分がやってみたいことにチャレンジしてみていただきたいです。
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本書でいう「超直感力」はどんな人にでも身に着けることができるものなのでしょうか。
八木:どんな人にも直感の力は備わっているものなので、あとはそれを発揮するだけです。本の中でそのためのいくつかのトレーニングを紹介していますが、どれも「本当の自分に気づく」といいますか、世間体や他人のことを気にせず、自分の本当の気持ちに気づくようになるためのものです。
これができるようになれば、直感はおのずと発揮されるものなので、ぜひ試してみていただきたいですね。
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直感力と神社の間にある密接な関係について教えていただきたいです。
八木:神社という場所は直感力を磨くのに最適な場所です。というのも神道や神社自体が直感を磨くための宗教であり場所だというところがあるんです。
神道には他の宗教とは違って教祖がいませんし、教典もありません。教義もない。つまりルールも教えも、指導者も存在しないわけです。だから、悩みがあったとして、その答えは誰が知っているのかといったら「あなたが知っているんですよ」ということになる。
ある意味すごく自由で、誰にでも開かれている。そして、人それぞれの自由な感性を発揮できるようにする場所というのが神社なんです。伊勢神宮など神社はあちこちにありますが、そういう場所にいって、ここは気持ちがいいなとか、神聖な感覚ってこういうことなのかな、というのを感覚として味わうというのが大事で、そういう感覚的なことを磨くのに神社はすごくいい場所です。それがすなわち直感力を磨くことでもあるので。
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本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
八木:この本をどういう形で手に取っていただけるかわかりませんが、誰にでも生きていれば大なり小なり悩みがあります。直感に従う生き方をすることで、そうした悩みから解放されて、より創造的な生き方をできるようになると考えています。
人生の行き詰まりのようなものを感じている人や、自分に新しい可能性を見出したい人はぜひ手に取っていただければと思います。きっと新鮮なインスピレーションの種になるんじゃないかと思います。
(新刊JP編集部)