■ 女性管理職が使えば効果てきめん! 男性部下への励ましフレーズ
男性部下からは甘く見られ、女性部下からは「ガツガツしすぎ」と陰口を叩かれる。
女性にとって、日本企業で管理職として働くことには、まだ多くの困難がつきまとう。
また、2016年に「女性活躍推進法」が施行される等、働く女性を取り巻く環境に変化の兆しはあるものの、すぐに事態が好転することは期待しづらい。
こうした状況のなかで、働く女性、特にマネジメントの立場にある女性ができるだけストレスを感じずに働きつつチームを機能させるにはどうすればいいのか。
今回は、『「だから女は」と言わせない最強の仕事術』(こう書房刊)の著者であり、多くの女性人材を育成してきた朝倉千恵子さんに、上記の問いへのヒントをお聞きした。
■ 男女の「脳の仕組みの違い」が原因で起こる、職場でのすれ違い
――まずは朝倉さんが普段どのような活動をなさっているのかについて、簡単にご紹介いただけますか。
朝倉:
「働く女性たちに、もっとイキイキと輝いてもらいたい」との思いから、2003年に「トップセールスレディ育成塾」を開講して以来、様々な企業の人材教育・育成のお手伝いをさせていただいています。
――
14年間にわたり、そうした活動をされてきたなかで、日本の働く女性を取り巻く環境に何かポジティブな変化は感じられるでしょうか。
少し前まで、女性が管理職に登りつめるためには、男顔負けというくらい、必死に働く必要がありました。でも最近は、女性らしさを活かして働きつつ、しっかりと成果を出すことも不可能ではなくなってきたように思います。
夫だけの稼ぎに頼ることが難しくなったために出産後に職場復帰したがる女性が増え、それに伴って企業側も制度を整備するようになったことが大きいんでしょうね。
――とはいえ、本書の冒頭でも書かれているように、日本社会における女性活躍はまだまだ道半ばである、と。
朝倉:
2016年時点で女性管理職の比率は6.6%という状況です。また、管理職とまでいかずとも、女性が仕事を通して成長する場がまだまだ少ない。その意味では、女性活躍はまだまだ道半ばと言わざるを得ません。
たとえば、一般職の女性部下に対し、「今日1時間でできた仕事は、明日50分で仕上げることを目指しなさい」と声をかけるような男性上司が少ない。ひと言でいえば、女性に対して期待をかけようとする男性が少ないんです。
――なぜ、そうした状況が続いているのでしょうか。
朝倉:
女性というだけで能力が低いといった「決めつけ」が、日本男性のなかから抜けきらないことが原因だと思います。また、そうした決めつけの背景には、男性の女性への無理解があるとも思っています。
そもそも男性と女性とでは身体的特徴に違いがあるように、価値観も、そして脳の構造も大きく異なります。男性側でその理解が進まないことには、本当の意味で女性活躍の実現は難しいでしょう。
――「男女の脳には違いがある」とおっしゃいましたが、たとえばどのようなものがありますか。
朝倉:
男性上司から「新しいプロジェクトを任せたい」と抜擢されたとして、部下が男性か女性かで、反応は180°異なります。男性の場合、多少自信がなくとも「できます!」と喜んで手を挙げますが、女性はつい首を横に振ってしまいがちなんです。
脳の構造上、女性は「未経験なこと=不得意なこと」と感じてしまいやすい。そこから「失敗したらどうしよう……」と、どんどん不安が膨らんでいってしまうため、このような反応につながりやすいというわけです。
男性上司には、女性のこうした過小評価傾向を理解したうえで接してほしいですし、女性は、自信がないからと挑戦を避けてばかりいないで、まずは自信があるフリをしてほしい。そうした互いの努力が、女性の活躍の場を広げることにつながると考えています。
――では逆に、女性が管理職となった場合、どのように振る舞うのがいいのでしょうか。
朝倉:
男性の場合、上から下を引っ張るタイプのマネジメントをする方が多いですし、これでも問題ありませんが、女性にこのやり方はおすすめしません。女性は「励まし型」のリーダーを目指すのがいいと思っています。
励まし型リーダーとは、「あなたならできるわよ!」と部下を信じて応援し、サポートするタイプのリーダーのことです。
男性にありがちな「俺についてこい!」タイプの逆で、部下を下から持ち上げ、「信じて待ってるから、行ってらっしゃい!」と送り出すイメージですね。
――特に、励まし型リーダーに向いているタイプの女性とは、どのような人でしょうか。
朝倉:
男性の庇護のもとで生きていきたいような依存型の女性ではなく、「自分のことは自分でやる」、自立型の女性が向いていると思います。
自立型の女性は、相手を尊重しながらも過剰に依存することはなく、いざとなったら自分が相手を支える覚悟を持っています。
また、自立できている女性ほど、八方美人的に相手に好かれようと媚を売ることはしません。自立した存在として、自分の意志をしっかり主張することができるため、言葉遣いを選びながらも「YES/NO」をはっきり伝えることができるという特徴があります。
そして、相手に対して金銭面だけでなくトータルでの自立を求める傾向にあり、過剰に甘えられたり束縛されることを嫌います。こうした、ある種の厳しさを持つ女性から、「もっとがんばりなさい!」とお尻を叩かれて初めて、男性は奮起するんです。
そういえば、上場会社の社長の奥様というのは、しおらしそうに見えて実は気が強い、まさに励まし型リーダーに当てはまる方が多いんですよ。
■ 夫はこうして伸ばす! 男をさりげなく立て、奮起させるための方法
夫に出世してもらいたい。
あなたが今そう願っていたとして、普段、夫に対しどんな働きかけをしているだろうか。
健康的な食事を作る、家にいるときはリラックスしてもらえるようこまめに部屋を掃除しておく、仕事の愚痴を聞いてあげる……。働きかけ方のパターンは色々だが、具体的な行動を起こす前に理解しておきたいことがある。
それは、男性がパートナーに対して本能的に欲する「支え」とはどのようなものなのかということ。そのヒントを探るべく、朝倉千恵子さんにお話をうかがった。
■ 女性的な部分を多く持つ男性ほど出世の可能性が高い?
――インタビューの前半部では、女性が管理職になった場合、どう振る舞うべきか等、働く女性が直面しがちな悩みとその解決法を中心にお話しいただきました。ところで、本書の想定読者は、女性「のみ」なんでしょうか。
朝倉:
そんなことはありません。むしろ男性の方にも読んでいただきたいです。なぜなら、私の目から見て、日本の男性は女性をあまりに神秘化しているように映るからです。
――なぜ、そのように感じるのでしょうか。
朝倉:
目の前で女性に泣かれると、何か一大事があったのだと思ってしまう男性は少なくありません。でも、これはまさに女性の神秘化にほかならないんです。
ここで理解していただきたいのは、男性と女性とでは、どんなとき涙が出るかに、大きな違いがあることです。
女性は脳の様々な箇所が感情と連携するようにできており、様々な出来事がすぐに感情に結びついて、涙が出やすい。一方、男性の場合は、感情を司る部分が脳の一部に集中しているため、言葉や行動が感情に結びつきにくいのです。
男性は女性部下に泣かれても、あまり大ごとだと思わず、受け流すぐらいでちょうどいいんですよ。
――たしかに、いまお話してくださったことというのは、女性部下を抱える男性上司にとって重要だと思います。
朝倉:
また、女性にモテず、女性の本質を分かっていない男性ほど、「俺についてこい!」といった、マッチョスタイルのマネジメントをしたがります。でも、これでは女性はついてこない。
これからの時代、女心を分かっている男性管理職が多ければ多いほど、その組織は伸びていくといっても過言ではありません。その意味では、「女性脳」的な傾向を強く持つ男性ほど出世しやすいとも言えます。
――「女性的な部分を多く持つ男性ほど出世の可能性が高い」というお話は興味深いです。
朝倉:
「出世する男」といえば、ひとつ思い出す話があります。
私の名刺には、弊社代表取締役という肩書のほかに「嘉祥流 観相士」とも印字されていますが、これは観相学、つまり人相や手相などの形状を見て、その人の持つ性質や運命を判断したり占ったりする学問のなかのある流派なんですね。
以前、この流派の導主である藤木相元さんと直接お話しさせていただいた際、「『癒し系女性』が日本の男をダメにした」とおっしゃっていたことがありました。この言葉には、思わず「なるほど」とうなりましたね。
毎日毎日、やさしい奥さんから「あなたは、そのままでいいのよ」と言われ続けた男性は、十中八九、労働意欲をなくしてしまう。でも逆に、口うるさいくらいに発破をかけてくれる奥さんを持った男性はやっぱりよく働く。
実際、出世した男性の陰には必ず、うまく発破をかける女性の存在があります。
――いまのお話をうかがいながら、インタビューの前半部でお話しいただいた「励まし型リーダー」のお話を思い出しました。女性が男性を「励ます」という形でイニシアチブをとるという考え方は、夫婦間にも応用できるものなのですね。
朝倉:
そうですね。夫が仕事で何か大きなミスをしてしまったとして、「なんでこんなこともできないのよ!」と責めるのではなく「あなたらしくないわよ」と諭す。
また逆に、良い結果を出したときは、「えっ!? あなたそんなこともできたの?」と驚くのではなく、「あなたならきっとできると思っていたわ」と一緒に喜んであげる。
どんなときも、全身全霊で「あなたのことを信じている」というメッセージを送ることで、男性はものすごい力を発揮します。
要するに、夫のことを立てつつも、ちゃんとお尻を叩いてあげることが大切です。だからこそ、私はよく働く女性に「賢くあれ」とアドバイスするんですよ。我を通そうとするのではなく、まずは男性を立てる。男性を立てれば、めぐりめぐって女性もぜったいに立ててもらえる瞬間が来ますから。
「今日の私があるのは、支えてくださったまわりの方のおかげです」と、サラリと言える女性がもっと増えていってほしいと強く思っています。
――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。
朝倉:
愛されるにはわけがある。疎んぜられるにもわけがある。どうすればまわりから好かれるのか、その在り方を学べば怖いものはないということを、この本を通じて働く女性たちにお伝えしたいです。
「支えられて生きているということ、支えられて今があることを忘れてはならない。社員さんを大事にしいや、社員さんの家族も大事にしいや……」。これは私の父の教えです。
謙虚さを忘れず、私自身もさらに凛として生きられるように、日々、慢心することなく、精進していこうと改め心に誓っております。
(新刊JP編集部)