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即決営業

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解説

営業マンが訪問先で一番言われたくない言葉を知っているだろうか。
それは「間に合っています」でも「結構です」でもない。単に断られるだけならば、次を当たればいいだけだからだ。

しかし、「考えます」「上(決裁者)に確認します」と結論を後日に先延ばしされると、さっさと見切りをつけるわけにもいかなくなる。再度商談の場を設けたものの契約にいたらなかった徒労感は大きい。

だからこそ、成績のいい営業マンほど、商談のその場で契約するかどうかの決断を相手に迫るのだ。それも単刀直入に。

この本では、相手に交渉を先延ばしさせないアグレッシブな営業スタイルによって、ストレスを溜めることなく売りまくるノウハウが解説される。
あなたはこのやり方を「強引すぎる」と感じるだろうか。それとも「これくらいやらないと売れるわけがない」と感じるだろうか。

「上に確認します」営業先での時間稼ぎへの対処法

「夫がいないと決められない」
「社長に聞かないとわからない」
これらはいずれも、営業マンがよく直面するセリフである。
「自分には決裁権がないから、この場では契約できない」というのは、もちろん額面通りの意味とは限らない。「これ以上、押してくれるな」という相手からのバリアだというケースもあるだろう。

しかし、ここで「今日はここまでか」と契約を諦めてしまうようでは、営業マン失格だ。
『即決営業』によると、優秀な営業マンは、たとえ目の前の相手が本当に決裁者でなくても「せめて、担当者であるあなたのご意見はお聞かせ願いたい」と、目の前の相手に「担当者としての意見」を聞くという。

こうすることで、相手の担当者が責任回避するのを止めることができる。そこでもし「自分はいいと思う」という回答を得られたのなら、本当の決裁担当者を説得する作戦を一緒に練ればいい。

その場で「即決」とはいかずとも、次回の交渉で契約できる可能性はかなり高まるはずだ。

商談の場に決裁者を引っ張り出す秘策とは

ただ、これはあくまでも商談の場に決裁者が同席していなかったケースの話。
営業マンとしては、まず商談の場に決裁者を同席させる努力をすべきだ。

商談の場で契約を即決してもらうために、アポを取る段階で決裁者の同席をお願いするのは当然として、それでも商談の場に決裁権がない新人が現れることもあるだろう。

そんな場合は「ご挨拶をしたい」ということで決裁者を呼び出してもらおう。
「挨拶」であれば断られる心配は少ない。そしてやってきた決裁者と名刺交換し、挨拶を交わしたら、「本日はお時間をありがとうございます」「商品のご説明に十分間、お時間をいただきます」と、当たり前のように商談を始めてしまえばいい。

著者の堀口龍介氏はここで取り上げた超アグレッシブな営業スタイルを確立。長く営業のカリスマとして活躍している。本書ではそんな氏の営業スキルがアプローチからプレゼン、そしてクロージングまで事細かにつづられている。

そもそも営業マンは「売る」のが仕事。営業先の担当者に好かれようが、顔なじみになろうが、売れなければ意味がない。

堀口氏の営業スタイルからは「好かれて売れないなら、嫌われて売る」「“契約してもらう”ではなく“契約させる”」という、営業畑で成果を出し続けてきた人間の意地が感じられる。

会社の先輩から教えられた営業法や、本で読んだ営業スキルがうまくいかないという人は、自分を変えるためにも一読してみてはいかがだろうか。

インタビュー

顧客と営業マンはWin-Winになりえるか?

――即決営業』について、「顧客に先延ばしを許さずその場で契約させる」という積極性には驚きました。堀口さんがこのスタイルになったきっかけがありましたら教えていただきたいです。

堀口:僕は22歳から営業を仕事にしているのですが、最初の頃は「お客様とは分かり合える」と思って営業していました。つまり、自分の気持ちやスタンスをお客様は理解してくださると思っていたんです。

でも、元々お客様は営業マンのことなんてどうでもいいんです。むしろ自分の思いや希望を聞いてほしい。
お客様と営業マンの間に「譲り合いの精神」は当てはまらないというわけです。

いくらこちらが、お客様に譲歩したとしても、お客様は一切、譲歩してくれません。
「お客様が我々の気持ちを分かってくれるかも知れない」という甘い考えは捨てるべきなのです。

―― うまい解決策を提案できれば商品は売れる、ということでしょうか。

堀口:ところが、そう簡単にはいきません。改善策を提案しても、お客様はいつまでも迷って態度をはっきりさせないことも多い。ほとんどのお客様は常に「買いたい気持ち」と「買いたくない気持ち」の間で揺れていて「あいまい」なんです。

―― なるほど。

堀口:この「あいまいさ」に付き合っていたらキリがないということに、あるところで気がついたんです。お客様のペースに合わせていると、いつまでも買うか買わないかという「答え」を出してくれない。それなら、営業マンはお客様に「即決」を迫ることで、背中を押すべきなんじゃないか、ということですね。

―― 今のお話にもありましたが、「営業先といい関係を築くことができても、売れない」というのは多くの営業マンが悩むところだと思います。「売ること」が営業の目的であると考えると、そもそも「いい関係を築く」こと自体がまちがっているのでしょうか。

堀口:まちがっています。売り手と買い手というのは、「売れてよかった・買ってよかった」という意味ではWin-Winの関係になる可能性がある一方で、「できるだけ高く売りたい・できるだけ安く買いたい」という意味ではWin-Winはありえません。割引したらその分だけ売り手は損をするわけで、つまり、お客様と営業マンは本来的には相反する関係であり、時には敵対する関係なんです。

このことを踏まえて、営業の種類のお話をしましょう。
営業には「友好営業」と「敵対営業」の二種類あります。
「友好営業」というのは、極端にいえば「ペコペコしていれば買ってもらえる営業」です。飲食店ですとか、コンビニ、100円ショップなど、安価な商品を扱うビジネスであれば、このスタイルでも問題ないのですが、30万円を超えるような商品だとそうはいかないんです。

どんなにお客様と営業マンが親しくなって、いい関係を築いても、大金を払うとなったらお客さんは迷うんですよ。決断を先延ばしして、こちらの「契約してほしい」という要求に抵抗するわけです。これが「敵対営業」です。

こういうタイプの営業では、営業マンの側がお客様の抵抗を抑え込むということが時として必要になります。「即決営業」はそのための営業スタイルなんです。

―― お客様側の「抵抗」の代表的なものが、契約するかどうかを保留する「考えさせてください」というわけですね。

堀口:そうですね。体よく断ったり、先延ばししたりする時に「考えさせてください」がよく使われます。営業マンはこの言葉を何とかしないと契約を取れません。

スポーツで例えるならば、営業は「社交ダンス」ではなく「格闘技」なんです。「格闘技」では、相手の「抵抗」を前提とした心構えが必要です。こちらの攻撃に対して、相手は抵抗してきますし、逆に攻撃してきます。こちらの攻撃を受け入れてくれる相手などいないのです。

営業も同じく、こちらの「即決してください」を受け入れてくれるお客様は10人中1人いるかいないかです。高額商品を売る場合、お客様は、こちらの「即決してください」に対して「考えます」と言って「抵抗」してくるものなのです。

ですので、「話せばわかってくれる」とか「相手に好かれよう」というスタンスではなく、
「相手の主張を抑えこむ」というスタンスが重要なんです。つまり、お客様の「考えます」を抑えこむスタンスであるべきなんです。

―― 堀口さんが提唱している「即決営業」に向いている商品の例をいくつか教えていただけますか?

堀口:訪問販売系は向いていますね。具体的には生命保険ですとか、不動産、学習教材などの営業にも有効です。

「即決営業」のスタイルを学んでいくことで、お客様に対して変に下手に出ずに、きちんと交渉できるようになるんですよ。つまり、お客様の要求を聞きつつ、自分の要求も主張できるようになる。

―― 「必ずその場で契約を取る」と決めてしまうと、商談の中での駆け引きの幅を狭めてしまうような気もしますが、そのあたりはいかがですか?

堀口:「必ずその場で契約を取る」といっても、「勝負のタイミング」は職種や相手によって変わってきます。

たとえば、僕は十年前から学習教材を売る営業をやっているのですが、どうやってアプローチするかというと、まず電話をかけます。ただ、そこでは売り込みはせずに、「案内状を送らせてほしい」とだけ伝えるんです。そして、了承してくれた人に案内状を送る。

送ってから三日後くらいしたら、「案内状は見ていただけましたか」ともう一度電話します。そこで、「一度、無料説明を受けてみてください」と伝えます。それで会うことになった人にプレゼンテーションをするのですが、そこではじめて勝負です。

飛び込み訪問の場合は最初の接触で勝負しないといけないでしょうし、職種によって勝負のタイミングはさまざまです。「即決営業」というのは、その勝負のタイミングでお客様に決断させる、ということですね。

ペコペコしない、下手に出ない「強い営業マン」になる方法

―― 本書では、勝負のタイミングで顧客に決断を先延ばしさせないためのスキルが多く取り上げられていますが、実践すれば売れるだろうと思う一方で、実践するには相当にタフなメンタリティが必要だろうと感じました。顧客に対して下手に出ずに、しっかりと要求を主張できるメンタルはどのようにすれば手に入るのでしょうか。

堀口:営業マン自身が「話の前提」を理解することです。
まず、営業マンの基本的な仕事は、「無料説明」です。「無料説明」とは、お客様に自社の商品を説明しに行くことです。ただ、お客様側から見れば、この「無料説明」は「無料」なのですが、我々営業側から見れば「無料」ではありません。人件費や交通費、販促資料にもお金がかかっているわけです。お金と時間をかけて、相手の悩み事の解決策を話しに行く。これが我々営業側から見た場合の「無料説明」です。

そして、この「無料説明」の「前提」が、「話を聞いて、もし気に入ったら契約してね」というものです。大げさに言えば「あなたの悩みを解決するための話を無料でしてあげます。ただし、気に入った場合は契約してね」というのが、「無料説明」の「前提」なんです。

ですので、この「前提」からすれば、「お客様は話を聞いたからには、答えを出さなきゃダメ」ということになります。
もちろん、話を聞いてみて、商品やサービス内容が気に入らない場合は断ってもらっても構いません。欲しくないものを買う必要はありませんから。ただ、「考えます」は答えじゃないという認識を、営業マンの皆さんに持っていただきたいのです。

―― 確かに、顧客側は営業マンの目的が「売ること」だというのを忘れがちです。

堀口:今お話したことを理解して、「大義名分」として持っていられるようになると、営業マンは強くなりますし、契約を取れる営業マンのオーラが出てきます。

そうなると、お客様に「考えます」と言われた時に「何言ってるの?」という雰囲気を出せるようになるんですよ。「納得できない」という雰囲気です。これが大事なんです。「無料説明の前提」が理解できていない営業マンは、「考えます」と言われると、困った顔をする。こうなるともうお客様より下になってしまいます。

―― 「考えさせて」といって契約を先延ばしにするというのは、商談の場ではよく起こりうることだと思います。この先延ばしはいかなる場合でも拒否するべきなのでしょうか。「即決」というスタイルをどこまで貫くべきか、という点をお聞きしたいです。

堀口:いかなる場合でも拒否すべきだとお伝えしたいですね。
短期的な視点で見れば「売り上げを立てるためにも、あの時は保留にしておくべきだった」ということもあるかもしれません。ただ、一番大事なのは営業マン自身が強く正しくいることができるか、ということです。

一度「保留」を許すと、だんだんそれが癖になっていきます。「即決営業」を自分のスタイルとして取り入れたのであれば、そのスタイルを貫いて「保留を許さない営業」というスタイルをまっとうすべきです。実際、長い目で見ると、その方が成約率がいいんですよ。

―― 最後になりますが、売り上げ不振に悩むセールスマンの方々にアドバイスやメッセージがありましたらお願いいたします。

堀口:お客様の「考えます」という一言をいかに攻略するか。そこに尽きると思いますね。
人は悩むからこそ成長できるものです。日本人の特徴として、成長しようとするとセミナーに行ったり、学校に通ったりと、とにかく「教育」を受けたがる人が多いのですが、人を成長させるのは教育ではなく、競争と逆境です。

営業という仕事はまさに競争と逆境の世界で、自分を成長させることができる仕事です。ぜひトップセールスを目指して「即決営業」のスタイルを身につけていただきたいですね。

書籍情報

目次

  1. 第1章 営業マンには即決以外の道はない
  2. 第2章 「心の玄関」を突破する「即決」アプローチ
  3. 第3章 商品の価値を納得させる「即決」プレゼンテーション
  4. 第4章 買う決断をさせる「即決」クロージング
  5. 第5章 「即決営業メソッド」を使いこなす心の鍛え方

プロフィール

堀口龍介

即決営業コンサルタント/株式会社即決営業代表取締役
1976年、大阪生まれ。17歳から関西を中心にモデル活動をしていたがまったく仕事がもらえず、貧乏生活から抜け出すために、22歳のとき、大学入試教材の訪問販売最大手に入社。「即決」にこだわることをモットーとして、翌年にはセールスマン1000人以上のなかで年間個人売り上げ1位の成績を収める。

その後、訪問販売会社を渡り歩き、在籍した3つの会社すべてで年間個人売り上げ1位となる。
29歳で訪問販売会社を起業し、自身が実践してきた「即決」にこだわる営業法を社員にそのまま実践させ、初年度から年商2億7000万円を売り上げる。その後、訪問販売ガイドラインの改定により、信販が使用不可能になり、会社売り上げが大幅に下がる。さらに、社内スタッフ全員から集団的な反発を長期的に受け、最終的に会議中にスタッフ50名の前で土下座するなどどん底を味わう。管理職の入れ替え、業務の大幅改善などを経て、京都や東京に拠点を広げ、グループ売り上げ年商5億円を突破。

その後39歳で、社会貢献として自身の営業法を広めることを決意。すべての営業過程を「即決のため」とすることから「即決営業メソッド」と名づけ、セミナー活動を開始。それまでは依頼があっても断っていた他社からの研修依頼を引き受けるほか、自社でも頻繁にセミナーを開催し、「即決営業メソッド」を惜しみなく伝えるだけでなく、その場で「即決営業メソッド」を体得するための「即決営業トレーニング」を実施している。実践に主眼を置いたセミナーには、参加者から「今日からでも使える」「すぐに成果が上がった」などの喜びの声が届いている。