書評

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どんな会社にも、圧倒的に成果を出す「スーパー社員」がいるものだが、彼らをよく観察してみると、「一般的によしとされている仕事のやり方」を無視していることが結構多いことに気付く。

いいとされていることをそのまま信じずに、一番自分に適した方法を考えたり、探ったりできる点は、誰も考えていないアイデアを考え出すという創造性にもつながってくる。
となると、社会人生活のなかで刷り込まれた「仕事はかくあるべし」という固定観念を取り外すことは、仕事力アップにも必要なのではないか。

■日本人ビジネスパーソンが囚われがちな固定概念

『輪ゴム思考で最強社員になる48のヒント あなたもできる自由な発想で問題解決』(平野 雅之著、合同フォレスト刊)はそんな視点から、圧倒的に成果を出すビジネスパーソンに必要な仕事術を教えてくれる。
ともかく、固定観念は外すこと。知らず知らずのうちに、こんな固定観念にとらわれていないだろうか。

●仕事の安請け合いはすべきでない

仕事を安請け合いして、もしできなかったら、相手に迷惑をかけてしまうのではないか。
そんな面から、「安請け合いはよくない」とされる。

しかし、仕事ができる人ほど、どんどん安請け合いするし、仕事ができるようになりたかったら、安請け合いをすべき。

とにかく仕事を断らずに受け、ときには失敗しながらも、「攻めの姿勢」を持ちつづけること。これによって、成長スピードが変わってくるからだ。

●人に頼るのはよくない

「自分の仕事は自分ひとりでやるべき」「人に頼ったら負け」など、「他人の力を借りること」にどこか負い目を感じるという人は少なくない。

だが、ひとりの力には限界があることを受け入れ、積極的に周囲の助けを借りたほうが、仕事はスムーズに進む。

ポイントは、頼む相手に「頼まれ事」ではなく「頼られ事」と感じさせること。前者は「誰にでもできることだけど面倒だから頼む」、後者は「その人にしかできないことを頼む」といったニュアンス。後者のような頼み方をすることで、人間のやる気は増すのだという。

これは仕事にかぎらず、夫婦間や友人関係など、あらゆる場面で使える考え方といえよう。たとえば、朝、夫にゴミ出しを頼むのなら、「出かけるついでに捨てておいて」ではなく「今日のゴミは重いから、あなたお願い!」と言ってみるのだ。
たったこれだけのことで、相手は気持ちよく動いてくれるだろう。

●ビッグマウスはよくない

何かと「謙虚であること」が美徳とされる日本社会。
少しでも目立つような言動をすると、目の敵にされてしまう。
しかし、著者の平野さんは「ビッグマウスであれ!」と説く。

たとえば、社会人経験をもたない学生が「俺は一流の企業をつくる!」と宣言したとしよう。予想できる反応は「そんなの無理に決まってる」「おもしろそう。自分もやってみたい」という2パターン。

ほとんどは前者だが、数は少なくとも後者のように賛同してくれる人が出てくることに価値があるという。なぜなら、これにより「あり得ないコラボレーション」などが生まれる可能性が高まるからだ。

見通しが立ちづらく、「正解」が何なのか分かりづらい時代。だからこそ、常識や固定観念にとらわれない頭のやわらかさを身につけることで、ビジネスパーソンとして頭ひとつ抜きんでることができるのではないだろうか。

(新刊JP編集部)

著者プロフィール

平野 雅之

株式会社日商平野代表取締役1976年、東京都八王子市生まれ。大学3年生のとき、休学して1年間世界一周の旅をしたことで、既成の価値観に縛られない発想を学ぶ。卒業後、事務機器販売の会社に就職するも、半年間は1台も売れなかった。しかし、プライドを捨てたことと、商品の強みをセールスできるようになったことで、突然売れるようになり、入社2年目には係長に昇進。給料も一気に4倍にアップした。27歳で、100年以上続いている株式会社日商平野の5代目として家業を継ぐことを決意し、会社を退職。2004年、前会社の代理店として事務機器販売の事業をスタート。全国の代理店営業マンを対象としたコンテストで、「売上」「部門別販売数」など7部門中6部門で優勝。セミナー事業も手がけ、現在、講師として主に大学生を対象に、「誰にも縛られずに自由に生きる方法」を教えている。

インタビュー

デキる営業マンのクレーム対応に見る、折れない心の育て方

ストレス社会を生き抜くためのキーワードとして、近年、注目を集めつつある「レジリエンス」という言葉。「失敗や挫折をしても、その経験を糧に回復して成長する回復力」のことを指すという。

ビジネスシーンにおいて、これまではどんなストレスを受けても耐えられる我慢強さが求められることが多かった。が、プレッシャーやストレスが増大する一方の昨今において、心を折らずにやっていくためには、もはや「強さ」だけではなく、「しなやかさ」も必要になってきたということなのだろう。

では、この「しなやかさ」を持つためには、どうすればいいのか。『輪ゴム思考で最強社員になる48のヒント: あなたもできる自由な発想で問題解決』(合同フォレスト刊)の著者、平野雅之さんが提唱する「輪ゴム思考」という考え方をヒントに、その答えを探ってみたい。

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■若者に知ってほしい しなやかだけど強い「輪ゴム思考」とは

― まずは本書のキーワードである「輪ゴム思考」とは、どのようなものなのかを教えていただけますか。

平野:
何か問題に直面したとき、自分やまわりの人を「輪ゴム」として捉えることで、解決策を見つけていこうとする発想法を指します。

輪ゴムは伸び縮みしますし、柔らかいために形も変幻自在に変えられますよね。
なので、自分が抱えている仕事が納期に間に合わなさそうだなと思ったら、「輪ゴムも束ねれば強くなる」というイメージを思い出してみる。そのなかで自然と「人の力を借りればいいじゃないか」と解決策が見えてくるというわけです。

― では仕事やプライベートにおいて、AとBどちらの選択肢どちらをとるべきか悩んだとき、輪ゴム思考を使うことで、どのような効果が得られるのでしょう?

平野:
輪ゴムには芯があります。だからこそ、どんなにグシャグシャに丸められようと、元の形に戻るわけです。

これになぞらえて考えるなら、そもそも悩んだりブレたりしないような自分をつくることが大事だと気づく。つまり、岐路に立たされたときにいちいち悩まずにすむよう、自分のなかに芯をつくらなければと考えられるようになります。

― 今のお話をまとめると、輪ゴム思考を実践するためには「芯」と「柔軟性」が重要になるということでしょうか。

平野:
おっしゃるとおりです。なぜ本書を執筆したのかといえば、まさにそういった部分が今の若者には足りないのではと感じたからです。彼らがメンタルを健康に保つ上で、何かの参考になればと思いまして。

― ということは、今の若者はメンタルが弱いと思われているのですか。

平野:
メンタルが弱いといいますか、真面目すぎるという印象を持っています。責任感が強すぎると言ってもいいかもしれません。

決して大げさな表現ではなく、入社1、2年目の子が「自分の受け持った仕事を失敗したら、会社が傾いてしまうかも」ぐらいのことを大真面目に考えてしまうというケースをよく見かけます。でも、そんなことはあり得ないじゃないですか。会社としては、ある程度の失敗は見込んだ上で、仕事をお願いしているわけですから。

― 仕事をしていて、精神面の強さが試されるのは逆境に立った時です。平野さんもそういう状況を経験したことがあるかと思いますが、どのようにメンタルを健康に保っていましたか?

平野:
私がやっている営業の仕事のなかで培ったことをひとつお話させていただこうと思います。
営業マンの人柄が試される場面の一つに「クレームが入った直後にどういう行動をとるか」というものがあります。

こんな時、ダメな営業マンほど、自分も誰かにクレームを言うことでストレスを発散しようとするんですね。出入り業者などにつっかかって、弱い者いじめをするわけです。でも、これは実際にやってみると分かりますが、メンタル的にますます悪循環になってしまう。

では、私はどうしているかといいますと、いつも懇意にしてくださっているお客さんに電話をするんです。特に用事がなくてもです。
なぜなら、やさしい言葉をかけてもらえそうだからですよ。実際、かけてみると、そのとおりになる。あっという間にメンタルが回復します(笑)。おすすめですよ。

「替えのきく人」にならないために ある経営者が大切にする父の教え

あなたが会社員だとして、「自分は今、会社にどれぐらい必要な人材なのか」を手早くチェックする方法がある。

それは、自分の仕事の依頼のされ方を振り返ってみることだ。そうすることで、あなたが周りから「替えのきく人」だと思われているかどうかは一発で分かる。

『輪ゴム思考で最強社員になる48のヒント: あなたもできる自由な発想で問題解決』(合同フォレスト刊)の著者、平野雅之さんはまさにこの点について、「頼まれ事」と「頼られ事」という言葉を使って解説している。その真意とはどのようなものなのだろうか。

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■商売人として叩き込まれた二つの教え

― インタビュー前編の冒頭で、輪ゴム思考を実践するためには、その人に「芯」がなければならないというお話がありました。平野さんの場合の芯とは、どのようなものですか。

平野:
私は商売人の息子として育てられました。そのなかで父から口酸っぱく言われたことが二つあります。「後ろめたいことはするな」と「損して得とれ」です。それが間違いなく、私の芯を形づくっていると思いますね。

私の会社ではOA機器を販売していますが、父の教えを守り、お客様のオーダーのなかに「必要のなさそうなもの」が入っていたら、「それは必要ないですよ」と正直に伝えるようにしてきたんです。

扱う機器はコピー機や電話機などで、一つひとつの金額は大したものではありません。しかし、「5年間リース」といった長期の契約が多いですから、一つでも無駄なものが入っていれば、お客様にとってはかなりの損失になります。

「自分さえ儲けられればよい」というスタイルでいると、長い目で見れば必ずしっぺ返しをくらいます。逆に誠実な姿勢を貫いていれば、お客様も信用してくれるようになる。
弊社がもう10年以上、テレアポ営業は一切行なわず、紹介のみで販路を広げてこられたのも、このあたりに理由があるような気がしています。

■「頼られ事」にしかない喜び

― 今のお話と関連するかもしれないので、是非うかがいたいのですが、本書のなかで出てくる「頼られ事」とは、どのようなものですか。

平野:
仕事の頼み方には2種類あると私は考えています。「頼まれ事」と「頼られ事」です。

前者は、頼む側が「誰にでもできることだから」と思いながら仕事をお願いするケース。「ゴミを捨てておいて」といった具合ですね。それに対し、後者は「Aさんにしかできない仕事だから」と名指しで頼み事をするケースです。私は、この「頼られ事」が来ると、本当にモチベーションが上がります。

せっかく自分のことを頼ってくれたのだから、なんとかして報いようとがんばりますし、自ずと良い結果が出ることも多い。「頼られ事」の喜びだけで生きていると言っても過言ではありません。そして、このように頼られるためにも、お客様に対する裏切りにつながるようなことはしない。これだけは肝に銘じてきました。

― 最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

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平野:
先日、ある方からうかがったのですが、現代の日本人が1日に触れる情報量は、江戸時代の日本人のそれの一生分に匹敵するそうです。

江戸時代というのは、かりに関東大震災級の地震が起きたとしても、その情報が九州に届くまでには3~4日はかかったし、世界で何か事件が起きたとして、それが江戸に伝わるまでには2年ぐらいかかった、と。

情報が伝達されるスピードも遅く、またそもそも情報量自体も少ない時代があったわけです。そう考えると、現代の情報の多さ、伝達の早さがいかにすごいかが分かります。本当に変化のめまぐるしい時代ですよね。

最近の若い子たちを見ていると、「喜怒哀楽がないなあ」と感じることがあります。でも、それは仕方のないことだとも思うんです。
SNSのタイムラインひとつとっても、悲しいニュースが流れてきたと思ったら、その数秒後に、メチャクチャ笑える画像が流れてきたりするわけですから。

そういった情報にいちいち感情豊かに反応していたら、おかしくなってしまう。ある種の防衛本能が働いた結果としての「不感症」なのだと思います。

でも、そんな時代だからこそ、情報に振り回されないよう、自分のなかに芯を持ったほうがいい。なので、一つでも二つでもいいから、何か自分の趣味といいますか、「これを見たら(したら)思わずニヤニヤしてしまう」ようなものを持つことから始めてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)

目次

  1. 第1章
    輪ゴムのように受け止めよう―仕事は安請け合いする
  2. 第2章
    輪ゴムのように動力にしよう―物事は「はい」か「YES」で決める
  3. 第3章
    輪ゴムのように編んでつないで縄にしよう―他人の力を当てにする
  4. 第4章
    輪ゴムのように伸びしろを大きくしよう―しつこいくらい自己アピールする
  1. 第5章
    輪ゴムのようにしっかり芯をもとう―上司の話は9割聞かない
  2. 第6章
    輪ゴムのように手軽に使おう―お金は貯めない
  3. 第7章
    輪ゴムのように人を楽しませよう―いつもニコニコする
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