11月には行政書士、日商簿記といった大型資格試験の試験日が控えており、合格を目指して勉強をしている人も少なくないはずだ。
しかし、試験には「受かる人」がいれば「落ちる人」もいる。
「弊社では資格試験のためのオンライン講座を提供していますが、やはり合格できない人にはそれなりの理由があるものです」
そう語るのは、『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』(大和書房刊)の著者であり、資格試験のオンライン講座「資格スクエア」の代表である鬼頭政人さんだ。
前著『開成→東大文I→弁護士が教える超独学術 結局、ひとりで勉強する人が合格する』(幻冬舎刊)から1ヶ月という短い期間で出版された新刊は、試験に受かるための方法を50のTIPSとしてまとめた一冊。「明日から使えるテクニック」を重点的に書かれたという。
では、試験に「受かる人」と「落ちる人」、決定的に違う部分は一体どこにあるのだろうか? 鬼頭さんのインタビューをお伝えする。
――「合格できないにはそれなりの理由がある」というのは、どういうことが挙げられますか?
鬼頭:例えば、予備校あるあるになってしまいますが、『この試験を受けよう!』とテンション上がって入金するものの、それで満足してしまう人はいます。また、講義を聞いただけで終わりという人もいますが、まあ受かりにくいですよね。勉強を続けられないから。
聞いただけで、読んだだけでやった気になっているのは、どんな予備校に通おうが、テキストを読もうが難しいです。一方、自分なりに工夫ができる人は試験に合格する可能性が高くなります。
――この本でも読み取れますが、受かる人は戦略的に勉強していますよね。ただ、大半の人はそれができていない。
鬼頭:そもそも勉強が習慣化できていないと続けることはできません。
でも、勉強を習慣化するためには、ある程度の期間、体に染み込ませる「辛抱の時間」が必要です。その辛抱に耐えられない人が多いように見受けられます。
では、どうすればいいかというと、仕組みや決めごとを自分で作る。少しばかりプレッシャーをかける。そうやって辛抱の時間を過ごすわけです。
――なるほど。少しずつ習慣化していく、と。
鬼頭:そうですね。筋肉と一緒で、ベンチプレスで30キロしか上がらない人が、いきなり100キロ上げようと思っても上げられないじゃないですか。
32キロ、35キロと少しずつ上げられるようになっていくのが本当のやり方で、習慣化し、戦略的にやっていくことで100キロに辿り着くことができるようになるんです。
――「自分にプレッシャーをかける」というところは、このTIPSの中に出てくる「背水の陣を敷く」というものに結び付きますね。これまでに見てきた「背水の陣」にはどんなものがありますか?
鬼頭:そうですね…。受からなかったら故郷に帰るとか、あとは受かるまでは結婚しないという人もいましたね。5回目までに合格しなかったら諦めるとか、5回目制限をかけるとか。いかに腹をくくるか、というのがポイントです。
――「受かる人は短所を補う、落ちる人は長所を伸ばす」という項目も面白かったです。これは反対だと思っている人もいると思いますが。
鬼頭:長所を伸ばすというのは、スポーツや普段の仕事においては大変重要なことです。強みを磨いていかないと勝負できない。
ただ、ここで言っているのは資格試験であり、仕事をするための前段階、その集団に入るための足切りをする場所です。つまり、仕事をする上で最低限必要な能力が求められているので、短所があるとそこが大きな足かせになってしまうんです。
――だから、短所を補う発想が大事なんですね。
そうです。例えば東京大学に入るためには、数学が苦手でもある程度点数を取る必要があります。それは得意不得意関係なく、基本的な水準が求められるんですね。
だから、得意なことばかり勉強してしまう人は合格できない。確かに得意なことをやっていれば楽しいし、すいすい進むからそればかり勉強したくなるのでしょう。でも、それでは落ち続けるだけです。
勉強をしていて「急激に伸びる人」は一体何が起きているのか?
合格する人と落ちる人の違いはどこにあるのか――。
『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』(大和書房刊)の著者であり、オンライン講座の資格スクエアの代表である鬼頭政人さんは、東京大学や司法試験などの難関試験を突破してきた自身の経験や、身近で接してきた人々を振り返りながら、本書で受かる人と落ちる人の差について説明している。
もちろん運もあるのかもしれないが、いかに準備ができているか、ちゃんと勉強を習慣化し、戦略的にやってきたかというところが、その結果を左右する大きなポイントになる。
資格試験に向けて今勉強をしている人、これから勉強を始めようとしている人含めて、参考にしたいインタビュー後編をお伝えしよう。
――前編では勉強を習慣化するための考え方や方法についてお聞きしました。そうやって続けていく中で、急激にレベルアップする瞬間があると思うのですが、そのきっかけはどのようにやってくるのでしょうか。
鬼頭:確かにそういう瞬間はありますよね。今まで勉強していたことが一気に線になるような。
これはいわゆる「アハ体験」に近い部分があって、特に司法試験などの法律系の試験はその部分が強くありますね。原理原則の本質的な部分が理解できたときに、個別で浮いていた知識や情報がつながって、一気に実力が底上げされます。
法律の論点は、条文の文言が曖昧だったり、条文同士が矛盾していたり、条文に書いていないことがあるときに初めて問題になるのですが、これはなかなか理解するのが難しいんです。
でも、勉強を続けていると、その意味が理解できる瞬間がくるわけです。問題の本質はこれか、と。そこまで頑張れる人は合格できますし、でもそう簡単には分からないから、試験に苦戦する。
確かに丸暗記でも受かることはあるのですが、ヤマ張りの力が試されますね。
――本書では試験から逆算して、計画を立てて勉強することが合格する人の方法だと書かれていますが、気を付けることはありますか?
鬼頭:まずは大雑把に計画を立てて、その上で細かく立てていくべきです。1年後に試験を控えているとするのなら、まず4ヶ月、8ヶ月、12ヶ月のタームで「ここまでやる」ということを設定します。
その上で、1ヶ月ごとに細分化して「ここまでにテキストを終わらせる」「この期間は過去問をやる」とスケジュールを切ってしまうわけですね。
これは仕事も一緒ですよね。「なるべくはやくやります」というのはだいたいできない。「今日中に」くらいならできるでしょうけど。
――また、鬼頭さんはメンターの存在を重要視されています。このメンターとなる人を探すにはどうすればいいのでしょうか。
鬼頭:予備校は役に立つと思いますが、それを使わないとなると難しいかもしれませんね。SNSなどでそういったコミュニティにアクセスできるならそれでもいいのですが、多少敷居は高くなります。
ただ、すでに合格している人じゃないといけません。ベテラン受験生はメンターにしてはいけません。受からなくなります。
何年かかっても合格できない人は、その後も難しいと言わざるを得ません。勉強の仕方を根本から変えるしかないけれど、自分を曲げるってすごく難しいから中途半端になってしまうことが多いんです。
――鬼頭さんご自身についてお話をうかがいたいのですが、経営者として普段読んでいる本があれば教えて下さい。
鬼頭:私はビジネス書よりも、もう少し本質的なことを教えてくれる本を読むことが多いですね。例えば『論語』や『武士道』といった古典に近いものや、ドラッカーのような経営学の本、スティーブ・ジョブズの本などです。
特に古典は当たり前のことばかり書いてあるのですが、初めて読んだ時はあまり腹落ちしないんです。具体的なシチュエーションが思い浮かべないから。でも、経験を積んでいくとリアルにその言葉を感じることができるようになります。
稲盛和夫さんの『生き方』も好きなんですが、あの本もそうですよね。この境地に行くとこうなるんだなと思うことが最近多くなりました。
――では最後に、『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』の読みどころを教えて下さい。
鬼頭:「計画・マネジメント編」というところで、勉強計画の立て方を突っ込んで説明しています。資格試験に向き合う上での基礎を書いているので、ぜひこの本を参考に第一歩を踏み出してください。
(了)