フィリピン不動産投資術
~月6万円から始められる年利8%のホテル投資のコツ~
著者:町田 健登
出版:ビジネス教育出版社
価格:1,650円(税込)
著者:町田 健登
出版:ビジネス教育出版社
価格:1,650円(税込)
「貯蓄から投資へ」というトレンドによって、お金を貯める時代からリスクを取りながら自分で増やす時代への移り変わりが加速している。「投資」についての知識は、今や私たちが生きていく上で必要不可欠なものになりつつあると言えるだろう。
投資には株式投資、投資信託、不動産投資など、さまざまなものがある。そして投資対象は国内だけでなく、海外という選択肢もある。
ただ、海外投資と聞くと、「利回りは高いけれど、騙されるリスクも高いのでは」といったネガティブな印象を受ける人も少なくないだろう。
「アジアには四方八方から追い風が吹いている」と語るのは、投資スクールを運営する町田健登氏だ。
社畜生活を抜け出すために、転職をして海外赴任でフィリピンに渡航。しかし、勤め先の環境はさらにブラックだった。そして、その環境から一刻も早く逃れたいという思いで収入の柱を増やすべく町田氏が始めたのがフィリピンでの不動産投資である。
それから約10年。町田氏はフィリピン不動産投資によって安定収入を達成できたものの、そこには落とし穴や注意点が数多く存在するという。それをまとめたのが『フィリピン不動産投資術』(ビジネス教育出版社刊)だ。
町田氏はフィリピン以外の国にも投資の手を広げているが、やはり注目すべきはフィリピンだとしている。
2000年代に入ってから目覚ましい経済成長を遂げているフィリピンは、国民の消費欲の高さや大規模インフラ政策などに支えられ、国内の利便性の高まりやさらなる消費の拡大が予想されている。
その中で不動産にも注目が集まるのは当然のことであり、町田氏が投資を始めた2010年代と比較しても、不動産価格は上昇しているという。また、フィリピンでは外国人が土地を買うことができず、唯一購入できるのがコンドミニアムといわれる分譲マンションだけ。外国人に対する制限が強い環境において、フィリピン人の力でその価値が上昇しているという点は特筆すべきだろう。
他にも総人口1億人を超えながらも、今後も生産年齢となる15~64歳の割合が過半数を超え続ける「人口ボーナス」状態が見込める点も大きい。ただ、もちろんどんな不動産も価格が上昇するわけではなく、日本と比較すると値上がりする不動産が見つかる確率は高いものの、好立地で安価という条件の揃った物件を探すことが求められる。
前述のようにフィリピンでは外国人は土地を買うことができないため、必然的にコンドミニアムタイプ(複数の住戸が一つの建物内に存在する住宅形態)の不動産を購入することになる。日本語でいえば分譲マンションをイメージすればいいだろう。
コンドミニアムタイプの不動産には、居住用不動産、ホテル、オフィスなどの形態がある。そのいずれにもメリット、デメリットがある中で町田氏が選んだのが「ホテル投資」だ。
「ホテル投資」とは、1つの部屋を購入し、旅行者やビジネス出張者などにホテルとして貸し出す形態だ。1日あたりの収入が高く、利回りが上がる傾向にあることがメリットの一つ。集客はホテル予約サイトに任せることができ、自分で客つけする必要がない。
もちろんデメリットも存在する。まず、物件をホテルとしてリース契約するため、契約が切れるまではその物件に住むことができないこと。2つ目は、購入したホテルによっては想定よりも利回りが出ない可能性があることを町田氏は挙げている。ホテルの運営会社次第で稼働率が変わるため、過去に実績があり信頼できる管理会社を選ぶことが大切になる。
また、本書ではフィリピンのみならず、海外不動産投資全体に通じるリスクについても説明している。例えば「政治的リスク」や「自然災害リスク」、さらにはディベロッパー会社の見極めやお金を持ち逃げしてしまう日本人ブローカーの存在についても言及。初心者はもちろん、ある程度不動産投資に慣れているという人でもハマってしまう落とし穴があることは肝に銘じておくべきだろう。
◇
本書はフィリピンに在住経験がある町田氏ならではの視点から、フィリピン不動産投資の実際が明かされている。光があるところには影がある。魅力を感じる部分もあるだろうが、その一方でリスクの面にもしっかり目を向けて、現地にも足を運んでおきたいところだ。
海外投資にあまり馴染みがない、どんな感じなのかのぞいてみたいという人にとっても参考になる一冊。知識や情報を得ることは、投資で成功するための第一歩になるはずだ。
(新刊JP編集部)
■海外不動産投資に向いている人、向いていない人の違いとは
町田: 海外不動産投資には良い部分と悪い部分の両面があります。良い部分としては市況に振り回されにくいことですかね。特に今は戦争や中国での経済危機により株式市況が不安定ですが、そういう時でも不動産は、安定的に継続して家賃収入を得ることができます。
また、外貨を安定的に得る手段があることも大切です。前著『社畜会社員から資産1億つくった僕がフィリピンの株を推すこれだけの理由』を出版したのは約1年前ですが、そこから円安がかなり進みました。
円の価値は目減りしましたが、外貨を持っていれば、むしろ資産が増えている方もいます。円安により物価上昇が止まりませんが、外貨を持つことで資産保全をすることができます。安定的に外貨を得ようとするならば、海外の不動産は選択肢の一つになりえます。
町田: 私はフィリピンが専門なのでその領域でお話をしますと、フィリピンの不動産価格もここ数年でだいぶ上がってきています。その点はお伝えしないといけないと思っています。さらにその上で、仲介業者がお金をあまり持っていない方に不動産を売り、せっかく不動産を買ったのに客付け管理などの具体的な提案もなく運用できていないという相談を以前からいただいていました。
今回、「フィリピン不動産投資」というテーマにしたのは、そういった背景もあって、不動産投資にチャレンジしようとしている方々に向けて、今のフィリピン不動産の実態について伝えたいという思いがあったんです。
町田: 不動産投資で一番気を付けないといけないのが「立地」です。良い立地の不動産を安く買うかが勝負で、それができなければ正直負債を購入するのと同じ意味になってしまいます。そのために必要なのが情報収集なんですよね。
また、平米単価、日本で言うと坪単価ですが、これを調べずに買うのはNGです。まずは自分が良いと思っている物件が平米でいくらかを知り、その周辺の物件の単価もインターネットなどで必ず調べます。
次に大事なのが、本当に利回りか高いかどうかです。安く仕入れられたとしても、最低でも良いケースと悪いケースの2軸で判断しないといけないと思います。業者は(物件を)売りたいのでオーバートークをしてくることがあります。それを信じるかどうかの判断をするための情報、例えば周辺のホテルはいくらだとか、周辺で20平米くらいの部屋はいくらで借りられているとか、そういうことは自分で調べないとカモにされてしまいかねません。
町田: それはそうだと思います。理想としては、現地を訪れたほうが良いでしょうね。フィリピンでも、大通りから1本通りを外れただけでスラムにように治安が悪くなったり、渋滞が思っている以上に激しくて、交通の便が意外と悪いみたいなことがよくあります。
また、近い将来地下鉄の駅ができるといった情報が得られることもありますし、治安の良し悪しを肌で感じることもできます。ただ、なかなか現地に行くのが難しいということであれば、本当に信頼できる仲間や業者に頼るだけでなく、現地に住んでいる人とつながれるといいですね。
町田: これは難しい質問ですね。すべて重要というのが回答です。ただ、見落としがちという点でいうと「為替」でしょうか。海外の不動産投資をしていたら、人口ですとか、一人当たりのGDP、期待利回りは私が言うまでもなく調べていると思うんです。ただ、為替の変動を考慮するという点は忘れられやすいのかなと。
町田: そうなんですよね。私はフィリピン以外の国にも不動産を持っていて、例えばエジプトなんかはフィリピンの国の状態とすごく似ていて、(価格が)上がるだろうと思って不動産を3つ購入したんです。
そして実際、ここ2、3年で物件価格は上昇しているし、一見得をしたように見えるのですが、通貨であるエジプトポンドが約35%下落してしまって、不動産価格は上がったものの結果はトントンくらいになってしまったんです。
だから、日本円に対してどれだけボラティリティがあるのかを見ないといけません。どれだけ家賃が入ろうが、価格が上がろうが、日本円に対して負け続けていたら、値引いて考える必要があります。
町田: そうですね。最低でも1000万円、あわよくば2000万円、3000万円くらいは。そのくらいは最低限ないと手を出したらいけないというのが明確な回答です。
また、向いていない人についてお話をすると、私自身で不動産の管理をやってみて思ったことがあって、ドキュメンテーションがかなり遅くて雑なんです。不動産の契約書類が遅れたり、平気で名前を間違えたり、誤字脱字も激しい。そういう部分も大らかに対応できないとかなりストレスがたまると思います。
町田: 文化の違いですね。逆にその部分さえクリアすることができれば、フィリピンペソはとても安定している通貨ですし、毎月安定的に収入があり、日本からも比較的に近いという利点がフィリピン不動産投資にはあります。まだまだ成長していきますし、良い投資なのではないかと思いますね。
■現地の法に触れることも…「絶対乗ってはいけない話」とは?
町田: 私は2014年から駐在員としてフィリピンにいたのですが、とんでもないブラックな仕事環境でして…。そこで安定した収入を得たいという思いから始めたのが不動産投資でした。
日本ではなくフィリピンを選んだというより、海外居住で不動産のローンが引けず、日本の不動産を買えなかったためにフィリピンの不動産を選ばざるをえなかったという事情があります。
もちろん現地にいるというメリットは大きかったですし、不動産価格も上がるだろうという見立てもありました。ただ、怖かったのは客付け管理ができるかどうかだったんです。目指すのはブラック企業を辞めるための安定した収入だったので、いかに客付けできないというリスクを減らすか。そこをずっと見ていました。
それと当時、不動産投資について教えてくださる方や投資家の方から、業者にお金を持ち逃げされたとか、物件が建つ前に業者がいなくなったみたいなトラブルを聞いていたこともあり、それならば、業者に頼らない不動産投資はないかと思って出会ったのがホテル投資だったんです。
町田: そうですね。現在、外国人でも土地が購入できるようにするという法改正の議論は出ていますが、まだ決まっていません。
この本にも書いていますが、フィリピンで土地の購入を勧められても、絶対にその話に乗ってはいけません。みんなで出資をして法人を作って土地を買うといっても、業種にもよりますが基本的には外国人は資本金の40%までしか株を持つことが出来ません。もしフィリピン人に根回しをして株を分配したとしても、名義貸しの違法行為としてアンチ・ダミー法に引っかかります。
また、健全な形で出資されて法人を作っても、40%までしか株を持つことができないので会社を乗っ取られる可能性もあります。そういう点からも、コンドミニアムを合法的に購入した方がいいのではないかと思いますね。
町田: ホテルの場合、居住用不動産と比較すると、1日当たりの収入が高く、利回りが上がる傾向にあります。また世界の名だたる旅行サイトが集客をしてくれる利点もあるので、自分で客付けをする必要はありません。
比較対象としてはAirbnbのような民泊ですが、フィリピンでは意外と民泊は難しいと言われていて、区分マンションを一室で貸し出そうとしても、ずっと満室にし続けるのは難しいし、光熱費もかかります。時にはエアコンが付けっぱなしになっていたりして、収益に悪影響を及ぼすこともあるので、ホテルに(部屋の管理を)任せた方が楽なんですよね。
また、「プロフィットシェア」のタイプであることも重要です。
町田: とても珍しい仕組みなのですが、ホテル全体の売り上げを均等分配するというものです。極端に例えば、4室のホテルの1室を自分が購入したとして、自室のみが空室で他の部屋が満室だった場合でも、全体の売上を4部屋で均等に分配するということです。いわゆる安定的な家賃配当システムですね。
だから、ホテル投資がいいというよりは、プロフィットシェア型のホテル投資がいいということなのだと思います。
町田: いえ、一部のホテルだけです。なかなか出てこないので、探すのは難易度が高いでしょう。
町田: 一つはその会社の経営方針をちゃんと見ることですね。投資をする私たち側からすると、変な物件を売られたり、サポートを全然受けられなかったり、契約自体がどうなっているのか分からないといったところに危険があります。最初のセールスの段階でこの見極めは難しいと思いますが、その時に基準になるのは、相手の経営方針が自分たちの利潤の追求なのか、顧客の利益の拡大なのか、どちらに視点を置いているかです。
この差がどこに出るのかというと、セールスの時に売ることばかりに必死になっていたり、周囲からの評判ですね。現地でも悪い話しか出てこない。購入後ならばケアが手厚いですとか、そういう点もポイントです。他に、当たり前ですが英語ができるかどうか。フィリピン在住経験があったり、よく行ったりしていて現地のことを知っているか。
町田: それは致命的です。でも本当に多いんですよ。
町田: 素直すぎる方が多いように思います。それに、自分で調べたり、情報を得たりしないでフィリピン投資を始めようとする方。セールストークの上手さで相手を信じてしまって、素直に入金しちゃったり、話半分だけ聞いて進めちゃったり。重要なのは知識武装です。
それに、不動産は大きな買い物なので、購入する前に一歩立ち止まって考えてみることが大事です。その点についてはこの本で失敗事例もたくさん書いていますし、参考にしていただけると嬉しいですね。
町田: 安定した副収入がほしいけれども、国内の先行きに不透明さを感じていて何もできていない方に読んでほしいですね。また、海外不動産投資に興味があるけれど、情報がなく、誰を信じていいのか分からないという人にも。
この本ではフィリピン不動産投資の良いことだけでなく、悪いことも書いています。その部分をぜひ読んでほしいです。
町田: その意味では珍しい本だと思います。それに、今まさにフィリピンの不動産を購入しようとしている方にも、一歩立ち止まってほしいです。おそらくそういう方々は居住用不動産を買おうとしていると思うのですが、買う前に一度、本書に目を向けてほしいですね。
(了)
町田 健登(まちだ・けんと)
栃木県出身、筑波大学卒業。大手人材企業の駐在員として2014年にフィリピンへ移住。 独学でフィリピン不動産・株の勉強を開始し、現地金融・不動産ホールディングスへ転職。31歳時に純資産1億円達成、2020年ライフシフト合同会社を立ち上げ独立を果たす。 2023年現在、フィリピン在住7年目のファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、在日フィリピン商工会議所の理事、大妻女子大学大妻マネジメントアカデミーの講師として職域を広げている。 勉強会(有料)の会員数は現在1000名越え。セミナー累計5000人参加。フィリピンのホテルを10室保有、利回り8%で運用する不動産オーナーでもある。 2018年位アイアンマンレース完走、2020年にアフリカ最高峰キリマンジャロ山登頂等、冒険家としても活躍している。FP2級、TOEICT915点。著書に、『社畜会社員から資産1億つくった僕がフィリピンの株を推すこれだけの理由』(ぱる出版/2022)(重版)・『副業時代に手堅く儲けるフィリピン投資入門』(幻冬舎)がある。
著者:町田 健登
出版:ビジネス教育出版社
価格:1,650円(税込)