BOOK REVIEWこの本の書評

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社会人であれば、誰もがPDCA、あるいはPDCAサイクルという言葉を知っているはず。特にマネジメントに関わる人であれば、「Plan(計画、設計)」「Do(実行、実践)」「Check(評価、検証)」「Action(改善、調整)」というこのプロセスを日々の仕事に採り入れている人も多いだろう。

しかし、あなたのPDCAは、きちんと結果に結びついているだろうか?

おそらく、「回しているが、うまくいっていない」という人も、それなりにいるはずだ。では、そんな人は何がいけないのだろうか?

結論から言えば、PDCAという方法自体に罪はない。結果が出ない原因は、組織の体質に問題があるか、あなたのやり方に問題があるか、その両方か、どれかだ。

◆ こんな会社ではPDCAが回らない!

経営コンサルタントの藤原毅芳氏は、本書の中で、組織によっては、たとえPDCAを回したとしても機能しないとしている。

これは主に組織側の問題で、マネジメント側と非マネジメント側に心理的な対立がある会社は、PDCAを回しても効果となって表れにくい。

心当たりがある人は多いだろうが、組織として一つの目標地点を掲げていても、その中にいるマネジメント層とそうでない人の利害関係は必ずしも一致しない。

極端な話だが、視点の高いマネジャーが組織として向かうべき方向を理解し、そこに向けてスタッフの目線をそろえようとしても、現場スタッフの頭の中は「そんなことより早く帰りたい」かもしれない。この違いをマネジメント側がわかっていないと、社内での立場の違いが心理的な対立と不信感に結びつきやすい。

そして、双方の間に生まれた溝は、互いへの不理解と情報共有の齟齬となって表れる。こうなるとPDCAを回すこと自体が難しいだろう。社内に対立構造がある限り、PDCAを回そうとしても、うまく回らないのだ。

◆ 組織と個人の成長を阻害するまちがったPDCA

ただ、組織の側に問題がなくても、PDCAが効果を発揮しないなら、それはほかでもないマネジャーの問題だ。

というのも、PDCAとは「スキル」であり、だからこそ上手下手がある。PDCA全体を高速回転させるにも、押さえておくべきポイントが存在する。

例えば、計画の立て方が間違っていれば、目指すべき方向に進まず、進んだとしてもスピード感が足りないかもしれない。また、評価、検証のスキルが抜け落ちていれば、その後の改善がおぼつかなくなるだろう。

「Plan(計画、設計)」「Do(実行、実践)」「Check(評価、検証)」「Action(改善、調整)」のどの段階においても、欠かせない要素と必要な行動があり、すべてが身について初めて成果と結びつくのだ。

思い返してみてほしい、自身の「Plan(計画、設計)」の中に、「努力目標」と「必達目標」の両方を盛り込んでいないだろうか。1カ月の売上目標を、年間売上目標を12分割して設定していないだろうか?

心当たりがあるなら、PDCAのスキルと方法論を学び直してみるべきかもしれない。本書はそのための格好の教材として、あなたも組織も大きく成長させてくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

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図解でわかる! 回せるPDCA

定価 :

1,200円+税

著者 :

藤原 毅芳

出版社:

秀和システム

ISBN :

4798051756

ISBN :

978-4798051758
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BOOK DATA書籍情報

プロフィール

藤原 毅芳

経営コンサルタント fjコンサルタンツ主宰
住宅営業から経営コンサルティング会社へ転身、その後経営コンサルタントとして独立。「この世に残すべき企業を支援する」を理念にfjコンサルタンツを主宰する。業種を問わない経営コンサルタントとして60以上の業種をコンサルティングし、現在は、全国の活発な企業を飛び回る毎日を送っている。経営革新を軸にした業績アップでは高い評価を得ており、また社外取締役として数社の経営の現場にも直接携わる。支援したクライアントの記録は100万文字を超え、情報収集のためにはじめた、365日ブログ(「現場を変える優先順位とは」)は3,000投稿以上(150万文字超)となっている。講演回数は300回を超え、作成したスライド資料も1万枚を超えた。出張による累計搭乗回数は500回超、累計移動距離50万km超(国内移動のみで)となり、面談した経営者、トップセールスマン、クライアントの数は2万人を超えている。著書に『ビジネス・スキルズベーシック 発想術』(秀和システム)、『営業は説明するな!』(ソフトバンククリエイティブ。海外でも翻訳出版)がある。

目次

  1. 第1章 そもそもPDCAは必要か?
    • ところでPDCAって?
    • PDCAがない会社はどうなってしまうのか
    • PDCAのない会社の事例
    • ビジネスは世界共通のルールで動いている
    • マネジメントはPDCAから始まる
    • 期間内で結果を残すにはPDCAを超高速で回す
  2. 第2章 なぜPDCAが機能しないのか?
    • 組織は機能しないことが普通である
    • 会社の目的は1つしかないのに計画が2つある会社
    • 機能不全を起こしている原因とは?
    • 組織の心理的対立構造がPDCAを機能不全にする
    • 目標と目的の混同が引き起こすPDCA機能不全
    • 上下の理解不足から発生するPDCA機能不全
    • こんな組織はすでにPDCA機能不全になっている
  3. 第3章 PDCAの基本形(あるべき姿・原則)
    • PDCAは形から入るのか?
    • PDCAの前に目標を1つに絞る
    • 目標を他人事から自分事にする
    • 本当に目標を達成したいのか?
    • 経営はすべてが同時並行
    • 去年と同じPDCAなんてありえない
    • 現状維持バイアスを破壊するためのPDCA
    • 飽きさせないためのPDCA
    • 人を築くPDCA
    • 課題解決の文化を築くPDCA
  4. 第4章 Planのスキルを身につける
    • PDCAは計画(Plan)が9割
    • プランの中に目標を複数盛り込まない
    • プランを立てる前にSee・Think(見える・考える)
    • プラン決定する前にObserve・Orient(観察と判断)
    • プロセス①現状の仕事を棚卸し(見える化)
    • プロセス②繁忙期と閑散期を見極める
    • プロセス③ゴールを明確に設定する
    • プロセス④ゴールと現状の差を見つめる
    • 事実を見誤る陥りやすいワナとは?
    • 分析の陥りやすいワナとは?(分析麻痺)
    • プロセス⑤真の課題を探し当てる(ボトルネック)
    • プロセス⑥課題解決の具体案を見つける
    • プロセス⑦具体案の優先順位をつける
    • プロセス⑧プロセス目標を設定する(目で見る管理)
    • 立案の陥りやすいワナとは?
    • 均等割で計画を立てない
    • 確信が持てるまで考え抜く
    • プロセス⑨プランを共有する
    • キックオフミーティングの重要性
  1. 第5章 Doのスキルを身につける
    • アイドリングをなくす(即行動)
    • 計画通りに動いてみる(行動計測)
    • 行動結果を数値化する
    • 異常値を見つける
    • 行動計画のスピード修正とは?
    • 行動優先順位の陥りやすいワナとは?
    • 緊急度と重要度+αの3軸を頭からはずさない
    • 毎日手をつける~行動結果は複利計算~
    • 回数と成功確率の相関を知っておく
    • スケジュール表はいつも見開き月間で使う
    • 行動スケジュールは年間→月間→週間→日の順番で落とし込む
    • 最悪を予想すれば想定外は消滅する
    • 「忙しい」を言い訳にしないコツ
    • チームの行動は足し算ではなくかけ算にする
    • 定時・定位置・同じ環境でスタートする
    • 能力最大発揮はマインドフルネスから
    • スローガンをつくる
    • 行動に集中しすぎると計画・目標を忘れていく
    • 人員配置は適性からスタートする
  2. 第6章 Checkのスキルを身につける
    • チェック(Check)よりスタディ(Study)で考える
    • 途中評価は数字をもとに数字だけで徹底的に考える
    • 現場数字は月次決算ではなく日次決算でとらえる
    • 途中評価(Check)には現状打破のタネが眠っている
    • 評価タイミングの短期間化
    • 途中評価(Check)と目標の差を数値でつかみとる
    • プロセス目標の修正(目標指標KPI項目)
  3. 第7章 Actionのスキルを身につける
    • 改善(Action)は思考を転換しながら取り組む
    • できる・できないは物理法則をもとに判断してみる
    • 属人的な条件は排除して考える
    • 実現するために何が不足しているかを見つける
    • 会議のときに最も発言しにくいことが突破口になる
    • 時間が経つと異常が普通になる(集団心理)
    • 次の新しい扉を開ける(次のステージが待っている)
    • 改善に終わりはない
  4. 第8章 PDCA実践
    • 毎日PDCAを回して改善することが組織成長への近道
    • 原則①会議でPDCAを回す
    • 原則②人は理解量が超過したときに動き出す
    • 原則③1ヶ月で達成できることと1年で達成できること
    • 原則④成果はリーダーで99%決まる
    • 原則⑤PDCAを回転させる毎にやり抜く力を増幅させていく
    • 原則⑥市場変化に対応するためにPDCAを回す
    • 原則⑦ツールは全員でつくり最後に揃えばいい
    • 原則⑧正確なデータを最初から求めない
  5. 第9章 PDCA応用編
    • PDCAを回せればどこの組織でもマネジメントできる
    • PDCA力がなければマネジメント力の飛躍はない
    • 売上増加は年間のPDCA回転数に比例する
    • ビジネスの勘はPDCAで養われる
    • PDCA精度が高い企業はどこか?
    • 同じPDCAを何回回しても成長はない
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