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老いない体

  • 著者:
    寺門 琢己
  • 出版:
    幻冬舎
  • 定価:
    1,000円+税
  • ISBN-10:
    4344030567
  • ISBN-13:
    978-4344030565
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解説

老いや加齢は誰にとっても嫌なもの。20年後、30年後は今より容姿も体の機能も衰えているというのは、どんな年齢の人も同じ。考えると憂鬱になりますよね。

では、その衰えを少しでも遅くするためにできることはないのでしょうか。整体師・寺門琢己さんによる本書は、そのための考え方や取り組みについて書かれています。

■「自分の10年後の老け方」がわかるテスト

まず、今のまま過ごしたら自分がどこから、どのように老けるかがわかるチェックテストを紹介します。

寺門さんが「顔面下垂判定テスト」と呼ぶこの方法は、鏡に背を向けて立ち、前屈して股の間から鏡を見るというシンプルなもの。さかさまになった顔を自撮りして、180度回転させます。

さかさまですから、顔の肉は頭頂部の方向にひっぱられます。ただ、子どもの場合、顔全体が重力にひっぱられますが、大人の顔は表情筋肉の動きが悪くなっていたり、皮下の結合組織が固くなっていたりするもの。たるみもあります。

さかさまになると、そういった「衰えた部位」が露骨に現れます。このテストをやってみて、自分の顔のある部位が極端にたるんでいたり、逆にまったく動いていなかったりしたら、その部位の老化が速く進むと考えていいかもしれません。

■「ブルドッグ顔」にならないために今からやるべき習慣とは

では、こうした顔の衰えに立ち向かうために、どんなことが可能なのでしょうか。

寺門さんによると、顔の筋肉は頭皮下の筋肉やひたいの筋肉にぶらさがっているそう。頬の筋肉も、口の周りの筋肉も、すべて頭頂部にぶら下がっています。

この構造を踏まえると、頭皮やひたい、耳などを動かしている筋肉群を鍛えることが、若々しい、キレのある顔を取り戻すためには大切なのだそうです。

頭頂部からひたいを動かして、眉毛を上げ下げする運動は、これらの筋肉を鍛えるのに効果的。頬の垂れ下がった「ブルドッグ顔」にならないために、朝晩の歯磨きをしながらやってみましょう。

ここでは「顔の衰え」を取り上げましたが、老化も衰えも顔だけでなく体のあちこちで生じます。これらとどう付き合い、対処していくべきか。寺門さんは本書の中で「過熱・乾燥」「雑菌の侵入」「炎症」という3つのキーワードを使って解説していますので、若い方も、そろそろ肌の衰えが気になり始めた方も、参考にしてみてはいかがでしょうか。

インタビュー

肩こりや腰痛などで整体に行ったことがある人は多いはずです。そのせいか、整体には「病院に行くほどではないけど、体に痛みがある時に行く場所」というイメージがあります。

でも、『老いない体』の著者であり、Z‐MON治療院を主宰する整体師・寺門琢己さんによると、整体とは本来もっと奥深いもの。

今回はその寺門さんに、整体が本来志すものとそのアプローチについてお話をうかがいました。

■ 整体の真髄は「免疫力強化」アンチエイジングとの関係は?

著者・寺門琢己さん写真

―― 寺門さんは高校を卒業してすぐに鍼灸学校に入り、そこから整体一筋でやってこられたと聞いています。まずはこの道に入ったいきさつから伺いたいです。

寺門:僕は高校時代に水球をやっていたのですが、当時の運動部の顧問の先生に整体の方面の知識がある方が何人かいて、トレーナーのようなことをやってもらっていたんです。そこで日常的に整体に触れていたというのが一つあると思います。

それともう一つは母の影響ですね。僕の母というのが、整体や鍼灸といった自然療法で子育てをするという考え方の人で、小さい頃からそういうものに馴染みがあったんです。だからといいますか、僕の腕には予防接種の痕がありません。

―― 学校で予防接種を受けなかったんですか?

寺門:今よりも大らかな時代だったからできたのだと思いますが、母が断ってしまったんです。予防接種ではなく、普段から体の免疫力を強化することで病気を防ごうという考え方でした。

そういう育てられ方だったので、子どもの頃は風邪をひいたりすると「足をお湯に浸けて、汗が出るまで我慢して、それから寝なさい」というような原始的なことを言われるわけで、子ども心に病院に行って風邪薬のシロップを飲んでということには憧れていました。

だから、ある時病院にかかってみたんです。風邪をひいた時に一人でこっそり診察を受けてシロップを飲んだ。これでバッチリだと思っていたんですけど、ところがそうはならなかったんです。

微熱が下がらない状態が2週間も続きました。これは「足湯」では起こらなかったことで、「足湯」をしていた時は熱を出しているか元気かで、良くも悪くもはっきりしていたんです。

この治ったのか治っていないのかわからない微熱の期間が辛くて、もしかしたら母の言っていることは正しいのかもしれないと思い始めました。結局はそれが、高校を卒業して鍼灸学校に行くことにもつながったのですが、周りから反対はされましたね。

―― 周囲の反応としては、大学に行きなさい、というものが多かったんですか?

寺門:そうですね。通っていた高校がなかなかの進学校でして、特別な事情がなければほぼ間違いなく全員大学に行く環境だったので、高校を卒業してすぐに鍼灸学校にいくというだけで不思議そうな感じに見られるんです。僕自身はそこまで気にしていませんでしたが。

―― 寺門さんの著書『老いない体』は、広い意味での「アンチエイジング」を扱った本です。あまり寺門さんの専門分野である整体とは結びつかないのですが、この本をお書きになった動機を教えていただけますか。

寺門:整体というと骨を鳴らしたり、腰痛を治したりといったイメージをお持ちの方が多いと思いますが、本来整体はそういうものではありません。そのことを知っていただきたいという思いがまずあります。

整体は日本で生まれた希有な身体文化の一つで、その根本には自分で自分の免疫力を高めて体を強くしていこうという思想があります。

現代は病気というととにかく病院に行って薬を飲んで、という対応になりがちです。それがまちがっているとは言いませんが、たとえば自分の子どもが熱を出したけど、夜中だったり休日だったりで、すぐに病院にかかれないというケースはたくさんあります。

そんな時に、自宅ですぐできる対処というのは案外たくさんあって、それこそ額から汗が出るまで足湯に浸かって、汗を拭いて着替えて寝かせるというだけでも、個人差はありますが後の結果が違ってくる。

そういった、免疫力を強化したり、引き出したりするということが整体の根幹であって、骨格の歪みを直したり、ずれた関節を戻すといったことはあくまでその延長なんです。

―― 病気にしてもケガにしても、治すというよりは罹りにくくしたり、ケガをしにくくするというのが基本にある、というわけですね。

寺門:というよりは、症状の根本にあたるということです。体を痛めやすい人の多くは、痛める場所が決まっていて、いつも同じ場所を痛める。そういう場所は他の場所よりも血行が悪くなっているので、そこを改善せずに症状だけ抑えようとしても解決になりません。

風邪にしてもそうで、半年の間に5回も6回も風邪をひくようなら、それはちょっとウイルスに入られすぎでしょう。薬を飲むだけでなくて、それ以前に異物に対する体の防御機能を高めておきましょう、というのが整体の考え方ですね。

この考え方は、体をいつまでも若々しく保つことにもつながるわけで、整体と「アンチエイジング」は決して無関係ではないんです。

―― 「老い」を感じる瞬間は人それぞれですが、きっかけとして多いのはどんな点でしょうか。

寺門:やはり顔ではないでしょうか。特に女性ですよね。急に白髪が増えたり、肌が弛んだりといったことで老化を実感することが多いようです。

僕の整体院にも女性の患者さんがよく来られるのですが、たとえば腰が悪くて通っている方だと全身の調整になるんですね。そうすると施術が終わった後は顔の皮膚も上がるのですが、腰痛の改善よりもそちらを喜ぶ方が多いくらいです(笑)。

―― 『老いない体』というタイトルですが、これは本当に可能なのかという疑問があります。

寺門:「死なない体」と言っているのに近いですよね。このタイトルについては、出版社と話している時も、「そんなことは絶対にありえないからやめよう」と言われました。

ただ、人間はものすごく老け込む人と、いつまでも若々しい人の両極端に、歳をとるごとにはっきり分かれます。だからこそ、日頃の多少の注意によって誰でも若々しい側に行ける希望があるんだよということを、このタイトルで示したかったんです。

―― アンチエイジングをテーマにしつつ、日常的な体の不調についても解説されています。「眼窩脱臼」などあまり見慣れない言葉を使っているのが特徴的です。

寺門:実は、「眼窩脱臼」は僕の造語で、眼球が前に飛び出してしまって、正常な位置に戻らなくなってしまったことで、目だけでなく脳や他の体の部位にも不調を抱えている状態を指します。

スマホやパソコンが普及して、デスクワーク主体の人が体の部位のなかで目だけを極端に酷使するようになったことで、この状態になる人が増えている。警鐘を鳴らす意味も込めて「眼窩脱臼」という言葉を使っています。

―― 他にも「目と、股関節のインナーマッスルは、連動している」などユニークな項目が多くありました。

寺門:一般的に年をとるにつれて目は悪くなってくるわけですが、それと同時に足腰の動きも悪くなっていきます。これらは別々のことだと思われがちなのですが、実は関連性があるんです。

だから、僕の治療院では、軽度の近視であれば股関節の内側の緊張をほぐして治すんです。これは「秘伝のタレ」みたいなもので、詳しいやり方まではお話しできないのですが。

■体で静かに起きている「老化の3ステップ」とは

書籍の写真

―― 本書では、老化した体に起きることとして「過熱・乾燥」「雑菌の侵入」「炎症」の3つが挙げられていました。

寺門:本の中では「過熱・乾燥」「雑菌の侵入」「炎症」を「老化の3ステップ」と書いています。

わかりやすく皮膚を例に出しますが、年をとるごとに皮膚は乾燥しやすくなりますから、アトピーのように体のいたるところがかゆくなるケースが増えて、人によってはそれに耐えられずに皮膚を搔き壊してしまう。その傷口から雑菌が入って炎症を起こします。

これは皮膚に限ったことではなくて、唾液にしても涙や粘膜にしても、加齢によって水分が少なくなるのは同じです。水分が少なくなるということは、それだけ異物の侵入を防ぐ体のバリア機能が弱っているということで、やはり雑菌に入られやすくなってしまう。

その結果、発熱や歯肉炎、角膜炎といった炎症が出てしまいます。これを踏まえると、いかに水分の多い潤った体を保つかが、いつまでも健康で若々しい体を保つためのポイントなんです。この本ではそのための知恵について書いています。

―― 若々しくいるために、フィジカルな部分では肩甲骨と股関節を重視されていますね。

寺門:肩甲骨と股関節の可動域が狭くなることが、体の様々な不調につながってきます。通常、腕を後ろに引くと、肩甲骨が畳まれて背骨の方に寄ってくるものですが、この可動域が狭くなってしまってこの動きができなくなる人が多いんですね。

すると、首が回りにくくなったり、腕が痺れたり、肩こりであったり、不定愁訴であったり、という症状が出てくる。

股関節もまったく同じです。現代人が普通に生活する限り、股関節というのはほとんど動かさずに済みますからね。昔はトイレが和式だったので、しゃがむ動作で股関節を使っていたのですが、今はそれもないので、どうしても股関節の可動域は小さくなってしまいます。

肩甲骨と股関節については、本の中で同時に動かせるエクササイズを紹介しているので、ぜひ参考にしてみていただきたいです。

―― 股関節と関係があるのかはわかりませんが、一日デスクワークをすると使っていないはずの足に思いのほか疲労が溜まっていて、太腿やふくらはぎが張ることがあります。

寺門:足は本来動かすように作られていますからね。デスクワークというのは実は一番足に悪いんです。

それと、デスクワークをする時は、革靴か人によってはスリッパを履いているでしょう。どっちにしても滑りやすくて、椅子に座った時にグリップが効きません。するとどういう体勢になるかというと、椅子の上に乗せた坐骨だけで座ることになる。

かといって足を完全に脱力するとお尻がすべってしまうので、多少は力を入れていないといけません。つまり足を上げても下げてもいない中途半端な状態で長時間過ごすわけで、これが一番疲れが溜まるんです。

だから、デスクワークをする時は滑らない機能のついた履物に換えるというのは一つ解決策になります。それであれば足は脱力できるので。

―― 最後になりますが、年齢からくる心身の衰えや体の不調に悩んでいる方々に向けてメッセージやアドバイスをお願いできればと思います。

寺門:自分の生活を振り返っていただいて、毎日欠かさずやっている体のメンテナンスというのは、ほとんどの人は歯磨きくらいではないでしょうか。

猫は一日中毛づくろいをしていますし、鳥は身づくろいして体についた虫を食べたりします。彼らはそうやって雑菌や異物から身を守っているわけですが、人間はそういった動物と比べると自分の体のメンテナンスにかける時間がすごく少ないんです。

それでいて万全というわけではなく、あちこちに痛みや不調を抱えている。それならば人間も歯磨きだけでなくもっと自分の体の気になるところに対して何かやるべきことがあるのではないかと思います。

日頃感じるちょっとした違和感や不快感を我慢したり無視することで何が起こるかというと、自分の状態を感じ取る感覚が鈍ってきます。これではいずれ体に重大な異変が起こっても気づかなくなってしまう。

―― 確かに、思い当たるところがあります。

寺門:ぎっくり腰などはまさにその例ですよね。これは自分の状態を把握する感覚が鈍ったことで、自分の身体感覚と現実の能力の間のズレが大きくなっているから起きることだといえます。

スポーツ選手は、そういった身体感覚に優れた人たちですが、彼らですら今の時代はトレーニングを一人でやるのではなくてトレーナーをつけるでしょう。そうやって、自分の状態を正確に把握できるようにしているんです。

一般人がそこまでやるのは無理だとしても、もう少し自分の状態を知ったり、その状態と自分のとった行動との因果関係について考える取り組みはした方がいい。生活は体がないと成り立たない割には、多くの人が自分の体を雑に扱いすぎているような気がします。

「生きているか死んでいるか」に比べたら「老いているか老いていないか」というのは曖昧です。だからこそ死ぬ寸前まで、人はあまり自分が老いたとは思わず、ケアを怠ってしまいがちです。

神経質になる必要はありませんが、身体感覚と現実の自分があまりに乖離してしまうと様々なトラブルの元になるので、最低限の身体感覚は維持した方がいいですよ、というのはメッセージとして伝えたいですね。

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. 1章 見た目
  3. 2章 体の中
  4. 3章 男と女の若さ保持エクササイズ
  5. 4章 老化しない体になる
  6. あとがき

著者プロフィール

寺門 琢己

1964年生まれ。Z-MON治療院主宰。 東洋鍼灸専門学校在学中より整体の活動を始め、卒業後、国家資格を取得。東京・代々木の治療院にて30年あまりにわたり多くの人の体に接している。その独自の整体操法は幼児から高齢者、ビジネスパーソン、妊婦、アスリートにも広い支持を受け、豊富な知識や経験をもとにした著書は50冊を超え特許取得商品も多数。
骨盤教室』(幻冬舎刊)は50万部のベストセラー。自身が設計し特許取得に成功したガードル「骨盤のきもち」とブラジャー「肩甲骨のきもち」(ともにトリンプ)は合わせて105万枚を超えるロングセラー。