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M&Aという選択

「後継者がいない」「過去15年間で100万社が廃業」「60歳以上の経営者が運営する企業は約7割 」将来への危機管理として「M&A」という選択肢を考えてみませんか?
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BOOK REVIEW

本書の解説

波乱の人生を歩んだ経営者が辿り着いた「会社と社員を幸せにするM&A」

今、日本経済を支える中小企業は危機に瀕している。

帝国データバンクが全国の約29万社を対象に行った「2016年 後継者問題に関する企業の実態調査」では、66.1%の国内企業が「後継者不在」であるという現状が浮き彫りになった。
また、東京商工リサーチによれば、2016年の「休廃業・解体数」は過去最多を記録している。そして、休廃業した企業の代表者の年齢は、60歳以上が82.3%を占めているという。

後継者不在でやむなく「廃業」の道を選ぶ経営者も少なくないが、「廃業」は経営者のみならず、従業員や家族、取引先も大きな負担と苦労を背負うことになる。
そんな「廃業」という道から中小企業経営者を救う一冊が『M&Aという選択』(畑野幸治著、プレジデント社刊)だ。

著者の畑野氏は、株式会社FUNDBOOK 代表取締役CEOを務めており、従来の属人的なM&A業界を見直し、新たに「M&Aプラットフォーム事業」を手がけている。同社は「会社と社員を幸せにするM&A」を理念に掲げており、その根底には、著者自身の実体験がある。

畑野氏の父親は、30年前、山一證券で役員目前までキャリアを積み上げていた。

しかし、1997年に発覚した山一證券の不正会計により、山一證券は自主廃業にまで追い込まれた。その出来事から畑野氏は、会社の廃業によって経営者やその子供たち、従業員が背負う苦労を、身をもって経験したのだ。山一證券の廃業後、父親は起業の道を選ぶも、不況の波に飲まれて業績難に陥り、持ち家が銀行の抵当に入って生活費を工面するのも困難になったという。
畑野氏は、家族を助けるために大学在学中に起業することを決意し、インターネット広告事業、ソリューション事業を手がけ、のちに、ネット型リユース事業で大きな成功を収めた。そして、父親が立ち上げた会社をM&Aによって救ったのだ。この経験がFUNDBOOKの立ち上げへと繋がる。

畑野氏は、当時を振り返り、M&Aを行わなければ、父親の会社は高い確率で自己破産に追い込まれ、自宅を含む資産を失い、従業員や取引先の人たちにも大きな影響を及ぼしただろう、と語る。
「廃業」によって引き起こされる悲劇を知っているからこそ、畑野氏は「M&A」という選択があることを中小企業の経営者に知ってほしいという思いを持っているのだ。

「M&A」は廃業を迫られる中小企業にとっての救いの手である

冒頭であげたように、現在、日本の中小企業の66.1%が「後継者不在」に悩んでいる。さらに、人口減少と時代の変化による価値観の多様化で「後継者不在による廃業」はますます増えていくことが予想される。

実際、中小企業庁委託調査「中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業作業報告書」(2012年)によると、近年の親族内承継は約5割に留まっているという。
このままでは、日本経済を支える中小企業が2030年には消滅する可能性すらあると畑野氏は危惧する。

こうした深刻な「後継者不足」の問題を打破する一手が「M&A」という選択だ。
「廃業」の選択は、債権の回収と債務の支払い、店舗や機械設備の売却や撤去、その間のランニングコストなど、経済的負担が大きい。さらに従業員にも経済的な部分はもちろん、再就職先を探すという負担もかけることになる。

「M&A」なら、育て上げた事業を安心して引き継げ、従業員の雇用も守られ、経営者やその家族の生活に大きな負担を強いることもなく事業承継できる。
これまでの報道の関係で、人によっては「M&A」と聞くとネガティブなイメージが先行してしまうこともあるだろう。しかし、畑野氏が考えるM&Aは、会社やそこで働く人たちの未来を切り拓くポジティブなものだ。

「中小企業の『M&A』は最良の選択肢の一つである」

「M&A」は、企業のオーナーが利益を得るための手段だと考える人も多いだろう。事実、ニュース番組でも話題になるM&Aの中には、利益の追及などの目的での事業売却も行われており、それがネガティブなイメージを生んでいるのかもしれない。 その上、設備や不動産などの財産はともかく、大切に育ててきた事業や一緒に汗を流した従業員を“売り物”にすることへの抵抗を感じるのは、むしろ自然なことだ。 しかし、中小企業の「M&A」においては、友好的なものも多く、創業者の思いと、醸成してきた独自の技術やサービスを引き継ぎ、従業員の雇用を守れる最良の選択肢の一つだと畑野氏は考えている。

ここで一つ、例を挙げて考えてみよう。オーナー企業であるA社には後継者がいない。そこでA社のオーナーは、第三者であるB社のグループ会社となり、A社を継いでもらおうと考えた。株式譲渡でA社を売却すると、B社に承継されるのは株式の所有者と経営権だけだ。事業自体や従業員も含め、A社の資産と負債の権利と義務はA社に残る。

この売却の目的は、株式を売却した金銭だけだろうか?
もちろん、A社のオーナーは、引退後の十分な生活資金を得ることはできるが、それ以上に「事業の存続」や「従業員の雇用」が守られることに大きな意義がある。「廃業」を選ぶよりも格段にメリットが多いことは一目瞭然だ。
また、B社にとっても企業規模の拡大や、技術やノウハウ、人材の獲得など多くのメリットがある。
このように、関わる人すべてが幸せになれるというのが「M&A」の本質なのだ。

それでも、「M&Aは実行するのが難しいのではないか?」と考えてしまう人もいるだろう。
その不安の一つには、売り手の「うちの会社には株式価値がつかない」という先入観がある。つまり「本当にうちの会社が売れるのか?」という不安だ。

しかし、中小企業でM&Aが成立するケースを見ると、そんな不安は吹き飛ぶだろう。

実際に「純資産3000万円」「営業利益が1500万円」「従業員数3、4名程度」の規模の会社が、1億円ほどで売買が成立するケースもある。
豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーを頼れば、自社の事業や企業理念、従業員を大切にしてくれる譲り受け企業の経営者に譲渡することができる。さらに「経費を整理した状態で少しでも利益が出る可能性がある」「経営者の引退までまだ猶予がある」という状態であれば、M&Aが成立する可能性は高いという。

「M&A」という選択は、安易に「廃業」を選ぶよりも、はるかに多くのメリットがある。本書では、そんな「M&A」のメリットや実践する際のポイントが紹介されている。豊富な事例の中には後継者問題だけでなく、若手経営者の事業戦略のヒントになるような事例も含まれているため、中小企業やベンチャー企業の経営者なら一読する価値がある一冊だ。

(新刊JP編集部)

INTERVIEW

インタビュー

著者・畑野幸治氏写真

後継者不足の中小企業を救う「M&A」 現実的な承継の選択とは?

少子高齢化に伴い、今、中小企業の後継者不足は深刻な問題になっている。後継者がいないから「身内へ事業承継」ができない、となれば「廃業」しかない。そんなふうに考える経営者は年々増えているという。

東京商工リサーチによれば、2016年の中小企業の休廃業数は、調査開始以来過去最多を記録。休廃業した企業の経営者の年齢は60歳以上が82.3%という数字だ。
多くの中小企業経営者にとって「会社を誰に継いでもらうか」という悩みは出口のない課題になっており、やむなく「廃業」という結論に達するケースが多い。そんな悩める中小企業経営者の救う一手として注目されているのが「M&A」による事業の承継だ。

M&Aという選択』(プレジデント社刊)の著者であり、M&Aアドバイザリー事業を行う「株式会社FUNDBOOK」の代表取締役CEO・畑野幸治氏に、廃業という選択のリスクと、M&Aという選択の魅力についてお話を伺った。

(新刊JP編集部)

引退する経営者が「4つの選択肢」から選ぶべき最適解とは?

―― まず、一般的な事業の承継には、どのようなパターンがあるのでしょうか?

畑野幸治氏(以下、畑野):選択肢は限られています。
1つ目は、会社を「株式上場」して、パブリックカンパニーとして永続していく。2つ目は、家族や親族、自社の役員など「身内への事業承継」をする。3つ目は、事業や従業員を守ってくれる会社を探して「M&A」をする。最後に、承継を諦めて「廃業」する。この4つの選択肢しかないと思います。

この中で「M&A」が最も現実的で有益な選択だというのが私の考えです。

まず、「上場」はかなりハードルが高いです。全法人のうち上場している企業は0.001%と言うデータがあり、高度な経営能力も求められます。*約385万社に対して、上場会社は約4000社です。

次に、家族や親族、従業員など「身内への事業承継」です。後継者の方がいる場合はこの選択肢を検討する経営者も多いと思います。しかし、身内への事業承継には負債や連帯保証の引継ぎが必要であり、この負担は後継者の方にとって大きいものです。
また、マーケットが縮小している現状では、後継者の方には先代の経営者よりも優秀な経営能力が求められるため、かなり危険度が高いことがわかります。
身内への事業承継は経営者の家族の方だけではなく、従業員やその家族の方々の将来に大きく影響を与える選択なので、身内への事業承継が最適なのかという議論はあっていいところだと、私は思っています。

そして「廃業」は、何より不得な選択です。
廃業は会社の簿価上の資産を売却して現金化していくわけですが、その結果、債務超過に陥ることがあります。手元に資産が残ったとしても、そこからさらに税金がかかり、わずかな資産しか残らないというケースが多いです。せっかく長年会社を守り続けてきたのに、報われない結果になることがほとんどで、こうした「廃業」のリスクを知らない方が、圧倒的に多いです。

「M&A」であれば、そうしたリスクがありません。
譲受先を吟味すれば、優秀な経営能力のある会社に、大切にしてきた事業を引き継いでもらえ、さらに、従業員の雇用も経営者の方の資産も守られる。一番、現実的な選択だと思います。

―― 実際、中小企業の経営者の方は、「M&A」か「廃業」という二択で考えているケースが多いのでしょうか?

畑野:廃業を選択される方が非常に多いと思います。「後継者がいないから承継ができない。ならば畳もう」と考えてしまうんです。
その原因は、「自分の会社がM&Aをするだけの価値がない」と思っている方が圧倒的に多いからです。

財務知識に長けている方でなければ、株価のバリエーション評価や企業評価といったものの、考え方自体をご存じない方が多いのです。そのため「自分の会社は二束三文にしかならない」と思われている方が非常に多いと思います。

しかし、実際には「純資産3000万円」「営業利益が1500万円」「従業員数3、4名程度」の規模の会社でも、1億円くらいで売買成立するケースが多くあります。このことは多くの中小企業経営者の方に知っていただきたいですね。

M&Aは創業者が報われる「卒業式」

―― 「M&A」の相談に来られる方々が、不安に感じていることはどのような部分ですか?

畑野:まず1つは、創業者の方は「自分でなければ、引き継いでもこの企業は運営できない」と思われている方が多いと思います。
もう1つは、M&Aが成立した後に「雇用が維持されないのではないか」「買収先の方針によって、自分が大切にしてきた会社がまったく違う企業カラーになってしまうのではないか」という不安ですね。

―― やはり会社そのものや、続けてきたこと、従業員のことを懸念される方が多いのですね。

オーナー社長であればあるほど、自分自身の利益よりも従業員の未来を考えられている方が多いですね。
これは私自身もまったく同じでした。私は2017年にM&Aで自社を手放したのですが、それまで一緒に働いてきたメンバーたちの幸せを何よりも気にしていました。有難いことに、新たな会社でもメンバーたちは生き生きと働いているようです。

―― ご著書『M&Aという選択』の中でも、「関わる人すべてが幸せになるM&A」という言葉がとても印象的でした。

畑野:私は、二十歳で起業をして、創業者としてそれなりの苦労をしてきて今があると思っています。
そして、創業者の引退というのは、言ってみればその方の「卒業式」だと思うんです。

私よりも、もっと長く会社を続けてこられ、日本の経済に貢献し続けてきた中小企業の経営者の方々が、会社に込めた思いはもちろん、金銭的な面でも報われないM&Aというは、そもそも存在意義がないんじゃないかと思うんです。

―― 創業者が報われない「M&A」というのはあるものなのですか?

畑野:実際的にはあると思います。
ただ、私が自社を手放すことになったときに、もしもそれまで一緒にやってきたメンバーたちが続々と解雇されていったり、新体制になっても不満ばかりで全然ハッピーに過ごせていなかったりしたら、結局、私自身も幸せではないんですよね。

自分だけ勝って、他の人はみんな地獄に落ちる。創業当時から苦楽を共にしてきたメンバーのことを思う社長であれば、そんな結果は誰も望まないはずです。
そういう意味でも、自分自身、自分の家族、従業員、従業員の家族が報われる形に向かって最善を尽くすのが、私たちアドバイザリーの役割だと思っています。

「この会社に自社を売却したい!」という出会いを創出する「新たなM&A」のカタチとは?

著者・畑野幸治氏写真

後継者不足に悩む多くの中小企業経営者が、今注目している「M&A」。大切に育ててきた会社を存続させ、従業員の雇用と将来、経営者自身の生活を守る選択肢の一つとして、現実的に検討する経営者が増えている。

事業を清算しても債務超過の危険性があり、従業員の人生に大きな影響を与えてしまう「廃業」。後継者に大きな負担を強いる「身内への事業承継」。経営と資本を分離させることで、経営者は引退できるものの、高いハードルがある「株式上場」。こうしたデメリットとリスクが大きい選択と一線を画すのが「M&A」という方法だ。

「純資産3000万円」「営業利益が1500万円」「従業員数3、4名程度」の規模の会社でも、1億円ほどで売買成立するケースも多く、M&Aは中小企業にとって実現できる可能性の高い、会社存続の手段だという。

そんな中小企業経営者のための「M&A」の方法を紹介した『M&Aという選択』(プレジデント社刊)の著者で、M&Aアドバイザリー事業及びM&Aプラットフォーム事業を行う「株式会社FUNDBOOK」代表取締役CEO・畑野幸治氏へのインタビュー。

前編では、M&Aのメリットや、畑野氏が目指す「関わる人すべてが幸せになるM&A」についての思いをお聞きした。後編では、M&Aの社会的意義、畑野氏が目指すM&Aの在り方についてお話を伺っていく。

「M&A」で会社が存続していく意義とは?

―― 現在の日本の中小企業は後継者不足に悩まされている現状があります。そんな中で「M&A」によって企業を存続させることの社会的意義にはどのようなことが挙げられますか?

畑野:1つ目は、企業数が維持されていくということです。
日本経済を支える中小企業の数は385万社で、日本の企業の99.7%を占めています(2012年・総務省統計局 経済センサス‐活動調査)。中小企業の後継者不足による廃業が防げれば、日本のGDPの維持に直結することにもなると思います。
2つ目は、今後10年間で100万社以上が廃業していくという統計がある中、雇用の維持という点でも大きな役割を果たすと思います。
3つ目は、技術やサービスの継承です。日本の中小企業の中には、世界的に見ても水準の高い技術やサービスを持っているところが多いので、それらが継承されることにも大きな意義があると思います。

廃業ではなく、「M&A」によって企業を存続させるということは、今後の日本を支えていく上でも、非常に重要な役割を果たしていると思います。

―― 昨今では、国や自治体も事業承継の問題を解消しようとする動きがあります。平成25年4月には中小企業庁が「事業承継支援センター」を設置しました。こうした支援の効果は見え始めているのでしょうか?

畑野:実際には、相当厳しいと言わざるを得ないです。
2016年には、支援センターに1万7千件の問い合わせがあったそうですが、そのうち成約に至ったのは700件ほどです。これは全体から見れば相当少ない。もちろん一社でも救われる会社があるのは良い事ですが、規模に対しての効果としては、正直、期待できません。
また、現在、M&Aのマッチングサイトも十数件ほどありますが、あまり機能していないのが実情です。
国の支援センターも、民間のアドバイザリー企業と組まないと成立させられないと思います。

さらに言えば、買い手と売り手をつなぐだけで「あとは当事者同士でご自由にどうぞ」というM&Aは成立が難しいことも問題です。

これから一緒にやっていくパートナーなのに、そんなやりとりばかりをしていたら、お互いに疑い合う毎日の積み重ねで疑心暗鬼になり、企業間の結婚は成立しません。これは、譲渡対価が大きくなればなるほど起こる現象で、間に入るアドバイザーがいない状態で「あとはご自由にどうぞ」だと、よほどの信頼関係がない限り、交渉が頓挫してしまいます。

M&A成立後の評価が可視化できるプラットフォームを目指す

―― 自社をM&Aで承継するという選択をしても、適切なアドバイザーが必要だということですね。そんな中、畑野さんは「株式会社FUNDBOOK」でM&Aのアドバイザリー事業を行っていますが、現在、注力していることや、今後、推し進めていきたいことはなんでしょうか?

畑野:現在注力していることは、「いつか承継をしたい」と希望されている方々にアクセスして、M&Aをご検討いただく。新しい選択肢を啓蒙していくことですね。

今後、注力していくこととしては、M&Aプラットフォームを実現することです。
先ほどもお伝えした通り、M&Aのマッチングサイトは数多く出始めています。
ですが、そうしたところに「自社を売却したい」と思って案件として載せている方ほど、じつは業績難だったり利益主義だったりするケースが圧倒的に多いと思うんです。

と言うのも、承継を考えるような60代の経営者の方はITが苦手な方が多く、自発的に自社を売るという発想がない方が大多数です。そのため、ITだけを進行させても業界とのミスマッチを招くだけだと思っています。 私たちは、直接的にコンタクトを取っていき、60代の経営者の方々にも、自発的に自社を売りたいと思って検討して頂く。その延長線上に、売却を希望される方々の案件がプラットフォームに載るべきだと思っています。

私は、今までのM&A業界には課題があると思っています。

今までは「売却したい」という売り手の方からの相談を受けても、アドバイザーが、まず、買収経験のある大手企業から当たっていくんです。
たとえば、スーパーマーケットを売りたいという方がいたとしたら、イオンやドン・キホーテのように、取引実績のあるところに話を振っていく。その結果、大手だけが良い案件を選んで買っていく。

しかし、売り手側にとって、大手企業が最善の選択肢とは限りません。
もう少し規模の小さい企業でも、売り手の方の意向に沿った買い手がいるかもしれないのです。また、買い手側も大手企業に阻まれて、自分たちにとって良いシナジーを生み出す会社にアクセスできないということも出てきます。
プラットフォーム上に売り手案件を載せて、買い手側には事前に登録して頂く。そうすることで、皆さんに平等な機会が与えられるんです。

そこで重要なのは、「従業員に対してはどんなベネフィットがあるのか」「利益のシナジーはどのように生んでいく計画なのか」ということを明確に出していくことです。プラットフォーム化することで、そういった意味での選択肢の多様化が機能すると思うのです。

―― お互いにとって、望んだ形のM&Aができる可能性が高くなるということですね。

畑野:はい。そのためには、プラットフォームに「PMIの通信簿」が必要です。
「PMI」というのは、「Post Merger Integration」の略で、M&A成立後の経営統合における過程や各種の作業を指します。

たとえば、大手企業が100店舗のスーパーを買収してきました。その結果、雇用の維持率、従業員の満足度、シナジーはどうなった。そういった「M&A成立後の変化」を、プラットフォーム上で可視化していきたいんです。

わかりやすく言うと、ヤフーオークションの評価みたいな感じです。評価が可視化されていけば、今度はその評価を軸に、売り手側も「ウチを買ってもらえませんか?」というオファーが出せるようになる。そういうことがより活性化されていくべきだと思っています。

―― 最後に、後継者問題で悩む経営者や、事業推進のために「M&A」を考えている経営者の方々へ、メッセージをお願いします。

畑野:「廃業」という選択肢以外にも方法はあるので、とにかく諦めず、最善を尽くしてほしいです。
従業員やその家族の方々のため。廃業という選択によって、自分以外の方々が被る損害というものを加味して判断して頂きたいです。その結果、M&Aという土俵に載れない案件もあるかもしれませんが、諦めず、まずは企業評価だけでもしてほしいと思っています。

INFORMATION

書籍情報

目次情報

  1. PART1: 日本の中小企業を次世代につなぐために
  2. PART2: 30分でわかるM&A
  3. PART3: 納得!M&Aのケーススタディと成功のポイント

プロフィール

畑野 幸治 (KOJI HATANO)

株式会社FUNDBOOK代表取締役CEO
大学在学中に株式会社Micro Solutionsを創業し、インターネット広告事業を展開。
2011年9月、株式会社BuySell Technologiesに参画し、戦略コンサルティングと金融に特化した人材紹介業に従事。2015年4月には自身で創業したネット型リユース事業を同社に事業譲渡し、2016年11月に同社の代表取締役CEOに就任。2017年9月には株式会社BuySell Technologiesで創業したM&Aアドバイザリー事業をスピンアウトし、株式会社FUNDBOOKを創業。
その後、株式会社BuySell Technologiesの保有株式を全株譲渡し、代表取締役CEOを辞任。現在は自身のM&Aの実績を軸に、株式会社FUNDBOOKの代表取締役CEOに就任。会社と社員を幸せにするM&Aプラットフォーム事業に専念する。