解説
トップに立つ人はやっぱり「変人」だった!
世界のリーダーたちの意外すぎる行動7選
「世界のトップリーダー」と聞くと、とにかく頭がキレて、近寄りがたい雰囲気を持っているというイメージが浮かぶかもしれない。
しかし、『Forbes JAPAN』副編集長兼Web編集長で経済ジャーナリストの谷本有香さんは、これまで3000人のトップリーダーたちと面会してきた中で、彼らは「自然体」を武器にしていると述べている。
自然体とは、自分の良い部分だけではなく、ダメな部分もさらけ出すということ。それでも、人々は彼らについていくのである。
数々の驚きエピソードを通して、成功を引き寄せるリーダーの習慣を解き明かす谷本有香さんの『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』(SBクリエイティブ刊)から、トップリーダーたちの「変人」とも受け取れる行動を7つ選んでご紹介しよう。
1、他社の商品をほめる――スターバックスCEO ハワード・シュルツ氏
スターバックスのCEOとして知られるシュルツ氏。谷本氏が「スターバックスのコーヒーは確かに美味しいけれど高い。マクドナルドは100円だが味もいいのでは?」と意地悪な質問をしてみると、「そうなんだよ、マクドナルドのコーヒーは美味しいよね」と認めてしまったという。
実はこのシュルツ氏の自然体の姿勢が、多くのメディア関係者の心をひきつけているのだという。どんな発言をするか分からないという意味では、スターバックスの広報担当者からすれば気が気でないのかもしれないが、リーダーがコーポレートイメージを作り上げている好例だろう。
2、自分より優秀な人を雇う――スターバックスCEO ハワード・シュルツ氏
こちらもシュルツ氏のエピソードだ。リーダーはどうしてもお山の大将になりたがり、自分より優秀な人間を脅威に思うものだ。しかし、シュルツ氏はシアトルのコーヒー店にすぎなかったスターバックスを全米で展開するために、自分より経験のある優秀な経営専門家を採用することにした。
厳しいことも言われ、価値観の違いから衝突もあったが、その結果、コーヒーも顧客も等しく大切にする価値観を育んでいく風土が完成した。スターバックスが大きく成長できたのは、彼らあってのものとシュルツ氏は述べている。
3、大ボラを吹く――日本電産創業者 永守重信氏
嘘をつくのはいけないことだが、企業を大きく成長させられるリーダーは大ボラを吹く。ホラとは「大げさ」「でたらめ」という意味だが、永守氏は「大げさなデタラメのように聞こえることを、現実にするのが起業家だ」と言い放つ。
日本には「ホラ吹き三兄弟」というトップ経営者3人がいるという。ソフトバンク社長の孫正義氏、ファーストリテイリング会長の柳井正氏、そして永守氏。彼らは人々に希望を与える「大ボラ」を吹き、本気で取り組み、命懸けで実現させる。ホラ吹きは信頼されないのではなく、ホラを吹いたあとの行動によって評価は変わるのだ。
4、出しゃばらずに譲る――萩本欽一氏
コメディアンの萩本欽一さんは「出しゃばらずに譲る」という考え方で長寿番組を作ってきたという。例えば人気絶頂時に「スター誕生!」司会者のオファーがあったときには、「自分は司会ができないから、司会ができる子をつけてほしい」と言い、それが「アシスタント」の走りになった。
萩本さんは「自分が、自分が」と出過ぎると運が逃げてしまうこと知っていたのだろう。自分のものだけにせず、周囲に譲ることも成功の近道である。
5、ペラペラのエコバッグを持って会食――元ソニー社長 出井伸之氏、東大名誉教授 黒川清氏
ペラペラのエコバッグは一例であり、トップリーダーたちは自身の服装や鞄に対してあまりこだわりを持たないことが多いという。
トップリーダーたちはどこかに「ヌケ」を作っていることが多い。「ヌケ」とは、おおよそトップリーダーらしさとは正反対の、一般人に「自分たちと同じだ」と思わせてくれる部分である。そうした「ヌケ」の部分が魅力になり、人々から語られたり、メディアからの反応も良くなるのだという。
6、社員から「社長」と呼ばせない――元エルピーダメモリ社長 坂本幸雄氏
坂本氏は「半導体業界の救世主」とも言われる、知る人ぞ知る名リーダーだが、会社では自分のことを「社長」と呼ばせなかったそうだ。「坂本さんでいい!」と。
肩書きではなく名前で呼ぶことは、親近感を覚えさせる。著者によれば、海外の企業では、大企業においても社員が社長のことを「ジョン!」などとファーストネームで呼ぶ文化があり、闊達に意見を述べられる空気ができているという。日本ではあまりファーストネームで呼ぶ文化はないが、もしもっと社内を活発にしたいと考えているならば、試しにやってみるのもいいのかもしれない。
7、ジョークが上手――経済学者 ポール・クルーグマン氏、哲学者 マイケル・サンデル氏
この2人に限ったわけではないが、トップリーダーたちに質問を投げかけると、ユーモアをもって返答してくれることが多い。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン氏は、ジョークを交えて場を和ませながら話をする。また、サンデル氏も相手を笑わせながら話をしてくれるそうだ。
ギャップを演出して笑わせたり、その場にいる人たちとの共通点を言ってホッとさせたりする話し方は、自分自身を身近に感じてもらうためのイメージ作りとしては最適だ。
◇
『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』に書かれているトップリーダーたちの自然体エピソードを並べていくと、彼らはある意味で、戦略的に「自然体」の姿勢を取っていることがうかがえる。しかし、それは自分のための戦略ではなく、もっと大きなもののための戦略だ。
金太郎飴のようにどこを切っても同じリーダーでは、面白さも生まれず、差別化も図れないだろう。
完璧なリーダーよりも、多少ダメな部分があっても人を楽しませてくれる、夢中にさせてくれるリーダーに、人はついていくのである。自身がリーダー的存在であっても、そうでなくても、リーダーという存在について考える上で、大いに参考になる一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)
インタビュー
「狙わずしてスクープを取る」
女性キャスターの「本音を話させる」テクニック
メディアに関わっている記者やジャーナリストたちは常に「スクープ」を取ろうとしている。
スクープというと芸能系のゴシップが注目されがちだが、企業や政治家の不祥事や、未発表の新事業を他社より早く明らかにするといった経済や政治のスクープとなると国が動く可能性も高い。
日経CNBCアンカーで、『Forbes JAPAN』副編集長兼Web編集長を務める谷本有香さんは、著書『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』(SBクリエイティブ刊)の中で、成功するリーダーの習慣を明かしている。
トニー・ブレア元英首相、アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏、スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏といった1000人以上のVIPへのインタビューを行ってきたという谷本さん。インタビューをする際には常にスクープを取りに行っていると言うが、トップリーダーたちがそう簡単にスクープになるようなネタを話したり、本音を吐露してくれるようなことがあるのだろうか?
谷本さんは言う。「狙わないことでスクープが取れるんです」――その方法とは? お話をうかがった。
スクープは「狙わないから取れる」の意味とは?
―― 谷本さんはこれまでハワード・シュルツ氏やジョージ・W・ブッシュ元米大統領など、3000人にトップにお会いし、1000人以上もの人たちにインタビューをしてこられたそうですが、今では月に何件くらい取材が入っているのですか?
谷本:取材件数だけだと、その月によって違いますね。カンファレンスや経営者が集まる国際会議なんかに参加すると、1日に何十人ともお話をします。また、もちろん1対1での長い取材もありますし。でも平均すると少なくとも一週間に一回は取材をしていますね。
―― 取材時間も短かったり長かったり。
谷本:そうですね。2時間じっくりお話できるときもあれば、15分くらいのときもあります。
―― では、短い時間しかもらえないときと、長い時間もらえるときの取材の準備の仕方は変わりますか?
谷本:短いときは「こういうコメントがもらえたら!」という狙いを持っていきますが、長時間の取材では話の流れに任せてしまうことが多いです。
これは何も考えずにインタビューをするのではなく、経験上、流れに身を任せてしまうことのほうが、まだどこにも出ていないスクープが取れるんです。深堀りをしていくという感じですね。
―― 流れに身を任すということは、常に質問し続けるということですよね。
谷本:質問というか話をする感覚ですね。相手の話が止まらないように、話題を繰り出しいきます。そして、相手の一番話したいことを話してもらい、掘り下げる。事前に質問がほしいと言われれば出しますが、それは一旦忘れて向き合うことが多いです。
―― 経営者の方へのインタビューだと、おそらくお近くに広報の人がいると思いますが…。
谷本:広報の方はあまり気にせずインタビューさせていただいております(笑)。そちらを見ると、視聴者や読者のために良いスクープを取れなくなるので。
―― 広報の人はそわそわするでしょうね…。でも、スクープの内容はだいたい目星がついているんですか?
谷本:目星がつくくらいのネタは基本的にどの媒体も狙っていますから、他と同じ話しか聞けないんです。本当のスクープは意外と「狙わないようにする」と取れたりするんですよ。
こちらから話題を投げて、相手の目が輝いた瞬間を逃さない。私は「あのエピソード、今までに聞いたことなかったです」と広報の人が言うくらいことを探しているので、あたりをつけないほうが良かったりするんですよね。
―― 狙わずしてスクープを取ると…。
谷本:最初から狙っているネタは確かに間違いないし、そういう記事としてコレクトなものが求められているときもある。けれども、私の場合は裁量をかなり与えられているので、自由に宝探しをしているような感覚でインタビューをすることが多いですね。
―― 自由があるということは、その一方で結果を出さないといけません。相手から話を引き出さないと!と気張ってしまうことはないんですか?
谷本:私は、インタビューというのは会話や議論だと思っています。「聞けばいい」「質問をすればいい」というわけではなく、自分の意見をぶつけて相手がどう思うのかを引き出しながら話をすることが大事だと思っています。
私の言った意見が相手の考えにないものならば「そんな見方はしたことなかった」と思うでしょうし、一般論とは違う視点で議論を進めることができますよね。
―― 意図的に取材対象者を怒らせる取材方法があると聞いたことがありますが、そういうことはあるんですか?
谷本:さすがに私は怒らせませんよ(笑)。でも、話をしていく中でそういう展開になってしまうことはあります。そのときは、怒らせないようにフォローをしますね。
「あなたの言っていることは間違っていると思います。でも、それは私の勉強不足によるものだと思っているので、説明してくれませんか?」という感じで。不躾には言わないようにしますね。
―― まさに話術ですね。
谷本:そうですね。自然と話し方のテクニックを駆使しているのかもしれません。
「器の小ささを利用させてもらいました」意地悪な政治家への対応
―― 私自身もインタビュアーとしてさまざまな方にお話をうかがうのですが、やはりインタビュイーの方々はその肩書きなり、その人物像なりを演じる、つまりペルソナを作ってお話をしていると感じることが多いです。
谷本:完全にそうですよね。
―― そのペルソナをはぎ取らないと「自然体」は見えてこないと思うのですが、それがまた難しい…。
谷本:私は取材する部屋に入った瞬間からはぎ取りにいっています(笑)。一つ方法があって、フォーブスや日経CNBCの記者としてではなく、谷本有香という個人としてお話を聞きたいということをアピールすることです。
相手の肩書きを下ろしたいのであれば、まずは自分の肩書きを取り払う。それで初めて対等に自由にお話がうかがえるわけですね。
だから、スクープになるネタを話してもらうために、こちらからスクープを教えてしまうこともあります。「こういう情報が実はあります」「他社ではこういう話があるそうですが、どうお考えですか?」って。
全部手の内を晒してしまうことで、「そこまで教えてくれたなら話そう」ということはままある話です。
――
本の中でも、「素の谷本有香」として話すようにしたことで、いい答えが引き出せるようになりスクープを取れるようになったと書かれていましたよね。
まさに、対等な関係に基づく交渉です。
谷本:もちろん、インタビュアーはインタビュイーをリスペクトすべきだけど、ただリスペクト一辺倒の姿勢だけだと経営者は喜ばないことも多いんです。反対の立場になると分かるのですが、リスペクトだけ向けられ、「すごいですね、すごいですね」と言われても「この人、本当にそう思っているのかな?」と思ってしまう。
トップリーダーたちはイエスばかり言う人を好きではありません。インタビューは畏まった雰囲気になりますけれど、そういう場を超えた談義をすることで、求めている真実がつかめるということですね。
―― そんな谷本さんにもインタビューがやりづらい人はいるんじゃないですか?
谷本:基本的にはどんな方でも嫌いにはなりません。全然答えてくれないとかやりづらい人もいますけど、自分の手腕次第だと思っていますし、スクープを引き出せる自信はありますよ。
ただ、中には本当にいじわるな人もいます。ある政治家の方はインタビュアーをいじめるので有名な方で、テレビ番組のCM中に「お前みたいなバカなキャスターは見たことない」「お前を(番組から)辞めさせるから、収録が終わった後、(テレビ局の)社長のところにいくぞ」とまで言うんですよ。
言われたキャスターはもちろん号泣ですし、スタッフも演者もシーンとしてしまう。いじめたいのか、食らいついてきてほしいのか、その政治家の意図は分からないんですけど、ただ、私はそれを言われても泣かなかったんですね。
―― よく耐えられましたね…。
谷本:「自分の手腕を試せる良い機会だ」と思っていたので(笑)。逆に器の小ささを露呈してくれてありがとう、と思うくらいでした。実際に本番の討論でも、その器の小ささを利用させてもらったり。さじ加減の問題ですね。
イノベーションを起こすクレイジーな成功者たちは何の本を読んできたのか?
仕事柄、経営者に取材することは少なくない。その中で影響を受けた本を聞くことも多いのだが、確かに「日本の経営者は歴史小説が好き」という定説は頷ける部分がある。もし、もう一つジャンルを挙げるならば、松下幸之助といった日本の名経営者たちの本である。
しかし、この傾向は必ずしも海外には当てはまらない。
『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』(SBクリエイティブ刊)の著者であり、『Forbes JAPAN』副編集長兼Web編集長を務める谷本有香さんは、イノベーションを起こすようなクレイジーな経営者たちはもっと未来を見ていると言う。
3000人以上のVIPに会い、インタビューを行ってきた谷本さんだからこそ知っている、「トップオブザトップ」の素顔と考え方。それは成功者を目指す人にとって決して真似できないものではない。ただし、根底からマインドを変える必要はあるかもしれない。
では、「トップオブザトップ」のマインドとは…? お話をうかがった。
日本の経営者と海外の経営者、何が違うのか?
―― 谷本さんは国内外問わずさまざまな人にお話をうかがっていますが、やはり日本人の気質は独特だと思いますか?
谷本:リーダーにしぼって話すと、日本のリーダーは独特ですね。今でこそ起業家やスタートアップの経営者と話をする機会は多くなりましたが、それまでは東証一部上場企業の経営者にお話をうかがうことがメインだったんです。
彼らはいわゆる「サラリーマン社長」というような方が少なくない。それは、自分の言葉を持っておらず、事前に送っている質問事項にないことを投げると、会話が止まってしまう。もしくは、答えにならずに自分が話したいことだけを話す方向に持っていくということにもあらわれていると思うんです。
国際的なカンファレンスで日本人が議論に加わっても、筋書きにない質問をされると途端に話せなくなってしまうことは何回も目の当たりにしてきました。一方で海外の経営者はどんな質問が飛んでこようが、個人の考えや未来のビジョンをどんどん話していきますね。
―― 確かに自分の言葉で語れる人は面白いし、何度もお話をうかがいたくなりますね。
谷本:海外のトップリーダーたちと比べると、日本人経営者には、まだまだ新しい価値を生みだす能力がずば抜けて高い人が少ないように思いますね。
これは大きな差だなと思うことがあって、経営者の方々に心に残っている本を聞くじゃないですか。日本の経営者は歴史小説を挙げる人が多いんです。『三国志』とか司馬遼太郎さんの作品ですね。一方で海外の経営者はSF小説が多かったりするんですよ。
つまり日本では過去にあったことからヒントを見つけて、ソリューションに変えていくというやり方が好まれるんです。でも、海外の経営者はまだ見ぬ、解がない世界に課題を解くヒントを見つけるわけですね。
―― それはすごく面白い差ですよね。でも、今の日本の若手起業家にもかなり変わった考え方を持っている人はできているのではないですか?
谷本:これは一人のインタビュアーとして思うことですが、優秀ではあるけれど、まだ枠から外れていない感じは受けますね。
トップリーダーの中のさらにトップ、私は「トップオブザトップ」と呼んでいるのですが、彼らは必ずしも最も頭が良くて、一番仕事ができるというわけでもありません。でも、確実に言えるのはかなりクレイジーなんです。
そのクレイジーさをいかに失わないかが、トップリーダーの中のさらにトップにいける一つの要因だと思うんですね。
彼らに「小さな頃はどういうお子さんだったのですか?」と聞いて深堀りしていくと、だいたい子どもの頃から突飛だったというエピソードが出てくる(笑)。
―― 日本だと今は炎上リスクから、クレイジーさを取り締まるような方向に走っている気がします。企業としても炎上は避けたいでしょうし。
谷本:炎上する発言には、何かしらの悪意が含まれていることが多いように思います。
日本電産創業者の永守重信さんは「大げさなことを言ってそれを現実にするのが経営者の仕事だ」と言っていました。夢のあるホラは受け入れられるけれど、悪意のあるホラは矛盾が生まれてツッコミを受ける。
―― 確かに永守さん、ユニクロの柳井正さん、ソフトバンクの孫正義さんの「大ボラ3兄弟」は全員言ったことを現実にしてくれるんじゃないかという期待が持てますよね。
谷本:まさに彼らもそれが仕事であるとおっしゃっています。ただ、日本はまだホラ吹きが少ないかなあと。欧米の経営者を見ると、そういう意味においてはホラ吹きばかりですよ。
―― ホラ吹きとは違いますけど、スターバックスのハワード・シュルツさんが「マクドナルドのコーヒーは美味しいよね」と言ったという本書のエピソードは面白かったです。これはまさしく本音ですね。
谷本:「あれは美味しいよね」って普通に言っていて、私も笑ってしまいました(笑)
―― スターバックス内では問題になるのかもしれませんが、そういうことが言えるくらい度量が深いからスタバを使いたくなる部分もあると思います。
谷本:普通の会話の中でおっしゃっていたので、それが活字になるとは思っていなかったのかもしれません。でも、度量の深さは感じましたし、そこにメディアの人間は感化されて、何度も取材をしたくなってしまうんですよね。
トランプ大統領は本当に嫌われ者なのか?
―― 今のトップリーダーの中で、最も世界を賑わせている存在といえばドナルド・トランプ米大統領です。もし彼にインタビューができるならば、どんなことを聞きたいですか?
谷本:私は経済に興味があるので、まずは経済政策ですね。あとはどうしても確かめたいことがあって、トランプ大統領の本当の姿です。
私が見ているトランプ大統領の人物像って、メインストリームメディアを通じてのトランプなので、おそらく相当なバイアスがかかって伝わってきているはずなんです。メインストリームのメディアはトランプと敵対しているから。
そのバイアスをはぎ取ったときに、トランプ大統領とはどんな人に見えるのか。そうしたメディアのバイアスがかかっていない私が報じてみるとどうなるのか見てみたいですね。
―― 実際に会談をするとすごく謙虚だという話もありますよね。
谷本:そうなんですよね。いっさいバイアスなしでお会いして、真意を聞いてみたいですね。いつかは取材したい人の一人です。
―― さまざまなトップリーダーにお会いしてきた谷本さんから見て、トランプ大統領はどんな評価なんですか?
谷本:彼についてはまったく評価できません。それはやはりバイアスがかかりすぎているから。答えられないんです。
ただ、今までメディアを通した評価が著しく悪い人でも、実際にお会いしてみると、すごく良いリーダーだと感じるというケースがあって、その人たちと似ている気がするんですよね。
例えば、一部政策で批判されていたことのあった亀井静香さんであるとか、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のイメージに近いです。そういう例がいくつかあるので、お会いして確かめたい。ただ、本当に無能で嫌われている人は大統領のようなリーダーには選ばれないと思いますね。
―― 本書は「自然体」が大きなテーマの一つですが、彼は自然体なのでしょうか。
谷本:それもお会いしてみないと分からないです。話をすることで分かることですから。
―― 最後にご著書のお話をうかがいたいのですが、『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』では成功者の習慣をテーマにされています。このテーマ設定のポイントについて教えて下さい。
谷本:仕事柄、トップリーダーの方々にお話をうかがう機会が多いのですが、周囲から「あの人って、実際はどんな人なの?」と聞かれることがあるんですね。
私自身、メディアを通して映し出されるリーダーの方々は本当の姿ではないことが多いと思っていて、その本質は控室トークや雑談であらわれるように感じています。
トップオブザトップの方々は、根底に幼少時代の経験やコンプレックス、私憤のようなものを抱いていて、それを原動力にしてトップまで登り詰めていったということが多いんです。でも、普通のインタビューではあまり出してくれない部分でもあります。
そういうところにトップリーダーたちの成功のマインドがあるのだから、これからトップを目指す人たちにも伝えたいと思ったのが、テーマ設定のポイントです。
―― この本を読むと、理想的なリーダー像――外見内面ともに仕事がデキて、部下たちを牽引するようなリーダー像とは離れている気がします。
谷本:そうなんですよ。トップリーダーの下にいる人たちのほうが、リーダー然していることもよくあります。
トップオブザトップの方々は一人でふらっと電車で取材場所に来ちゃったり、話している間にも興味を持ったら「それってどういう意味?」と聞いて、「教えてくれてありがとう」と感謝してくれるとか、すごく人間らしいんですよ。いかにもなリーダーらしい振る舞いって実はあまりしていないんです。
自然体を見せること、自然体で生きることが成功の秘訣であるならば、それを教えてあげることによって、トップオブザトップを目指す人たちの助けになるかもしれない。そういう想いで書いたんです。
取材場所に家族を連れてくる方もいますしね。
―― 私もある海外のトップアスリートの方にインタビューを行ったときに、私たちが話をしている後ろで奥さんが取材の様子を見ていたり、スマートフォンを見ていたり…ということがありました。
谷本:それ、結構ありますよね(笑)。意外とそのトップをマネジメントしているのは奥さんだったりして。トップであればあるほど、分け隔てなく人付き合いしますよ。
―― では、このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。
谷本:世界のトップリーダーたちのクレイジーさなり、考えていることなりを見聞きすると、「あそこに到達するのは難しい」と思うかもしれません。だけど、実際は手の届くところにいます。
私がお会いしてきたトップリーダーたちは、一般のビジネス書で書かれているような「リーダー然」としたリーダーはいなくて、自然体だからこそ、それぞれ尖った魅力を発している方々ばかりです。
「こうならなきゃいけない」というのではなく、自分の可能性を追い求めることの延長線上に自分なりに輝けるリーダー像があるはずですから、まずは自分らしさや、自分のあり方に向かい合うきっかけとしてこの本を読んでもらえれば嬉しいですね。
書籍情報
目次
序章 「自然体」こそが、成功へのカギになる
- ・スクープをとりたくてムリをしていた日々。
- ・下手に出るとそれ以上は踏み込めない、ムリに大きく見せようとすれば「ビジネス」で終わり、それ以上の話は聞けない
- ・「自然体」を選択することで、VIPが心を開いてくれた。
- ・能力のある人こそ、素の部分×頑張り度を見ている
- ・出資の現場で、VIPが見ていたものとは
- ・VIPも「自然体」を武器にする
- ・威圧感を感じさせないG.ブッシュ、本能のまま(?)行動するジム・ロジャース
- ・スキルだけでは頭打ち。それ以上に伸びるためには「自然体」を武器にする
第1章 「選ばれる自然体」とは
- ・相手を「楽しませる」ことを心がける
- ・敬語、相手への尊敬は最低限必要
- ・ムリにかっこよくしよう、できるようになろうと見せつけない
- ・VIPは意識的に「ヌケ」をつくる
- ・「やりたい」ことに忠実に生きる
- ・「常識」にとらわれない ~守るべき常識とそうでない常識
- ・常に上を目指す
- ・地味で「目立たなくてもいい」と思っている
- ・人生のボトムラインを知っている
- ・何より人がいい
- ・学歴や経験にこだわらない。劣等感の塊である人も多い
- ・警戒感を持たせない気遣いができている
- ・経験を使いこなす
第2章 「自然体」で成功するための仕事力
- ・日本で重宝されるのは、「仕事ができて天然な人」
- ・誰かになろうとしない ロールモデルと自分を切り分けられる
- ・天才になることをやめる、頑張ることをやめる
- ・自分の弱い部分を誰かに任せる
- ・動き続けることで「風」をつくる
- ・周囲の空気をよどませない
- ・誰も見ていなくても、人の嫌がる仕事ができる
- ・目の前にあることを一生懸命やる
- ・人の「成功法則」を鵜呑みにしない(既にあるレールの上をいかない)
- ・弱虫ではない。慎重である
第3章 「自分らしく話す」ことで相手は心を開く 自然体+αの愛嬌力
- ・私がはじめて「自然体」でスクープをとったとき
- ・愛される「素の出し方」がある ~周りを敵にしない「空気」のつくり方
- ・人のまねをしない、こびない、下から入らない
- ・敬語は崩さず、雰囲気を崩す
- ・語尾はうつる。「です、ます」をどれだけ下げるか
- ・態度も相手のスタンスに自然に合わせる …… 相手との「言葉」の合わせ方
- ・「世間」ではなく「私はこう聞きたい」「私はこう思う」と伝える
- ・「頼る」人は嫌われない 「成功の秘訣は、自分より優秀な人を雇うことを怖がらないこと」ハワード・シュルツ氏
- ・「弱いところ」ほど先に言う
- ・「すみません、わかりません、教えてください」をまず言う
- ・相手にいかに「リスペクト」を表わすか
- ・VIPこそ、アイスブレーキングがうまい ジョークのうまいポール・クルーグマン
- ・息子になるか、弟になるか…トップ営業マンの演じ分け方
- ・1回目に会ったときから、5回目に会ったときのように話をす
- ・「裏切らない人」と思ってもらうために
第4章 本当の「自然体」に気づく
- ・なぜ、自然体でいられないのか
- ・自然体でいると「自分が身につけるべきこと」がわかってくる
- ・自分のスタンダードレベルを高く持つ
- ・VIPが「自然体」に戻る瞑想の習慣
- ・「好き」と「嫌い」を明確にする
- ・自分が本当に大切なことを1つだけ決める
- ・「原点回帰」して自分の「熱」を探る
- ・「習慣」を疑う
- ・「成功」したいのか、「幸せに成功」したいのか(レースに勝って終りでいいのか)
プロフィール
谷本 有香
Forbes JAPAN副編集長 兼 WEB編集長。
大学卒業後、山一證券に入社、社内の経済キャスターに抜擢される。しかし2年後、会社が自主廃業となり、フリーランスキャスターの道を選ぶ。十数年にわたって経済キャスターの第一線で活動し、日経CNBCでは初めての女性コメンテーターに抜擢される。
世界VIPへのインタビュー含め、これまで3000名を超える取材を行う。
Bloomberg TV、日経CNBCなどを経て、現在は、Forbes JAPAN副編集長並びにForebes JAPAN WEB編集長。