インタビュー
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『中堅建設会社が実践する 「家計簿経営」』(プレジデント社刊)について。まずは「家計簿経営」とはどのようなものか、簡単にご説明いただければと思います。
西田:営業部や経理部など、社内の各部門ごとに、部門長が部門を経営していくというものです。
概念的には日本航空名誉会長の稲盛和夫さんが提唱している「アメーバ経営」と同じで、社内に小さなグループと作り、各グループが自分のグループを経営する意識で仕事をしてもらう。この目的は「市場に直結した部門別採算制度の確立」「経営者意識を持つ人材の育成」「全員参加経営の実現」の三つです。
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進和建設工業を長く経営されてきて、これまでに起こった経営上の課題と、それをどう克服してきたかについてお話をうかがいたいです。
西田:経営課題は常に「お客様の満足を追求すること」です。お客様をいかに自社のファンにするかを考え続けてきましたし、それはこれからも変わりません。
顧客が望むことを解決するのが私たちの仕事ですから、常に学んで顧客よりも先を走り続けなければいけません。
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経営者として、自分が率いる組織の慢心や気のゆるみを感じるのはどんな時ですか?また、その気のゆるみを感じた時、どのように組織を引き締めていますか?
西田:気がゆるんでいると感じることはあまりないですね……。ただあえて挙げるなら「チャレンジしていない時」でしょうか。
自分が成長する時は何かにチャレンジした時です。チャレンジをしなければ成長は止まり、その人は停滞してしまいます。
もし社員がチャレンジしていないなと思ったら、もう一度会社の理念に立ち返るように言いますね。会社のビジョンを共有することが第一だと思います。
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今の経営上の悩みはどのようなものですか?
西田:後継者の育成です。幹部の教育にしても、「家計簿経営」を支えるアメーバリーダーの育成にしても、これからの課題。自分の想いや考え、すべてを伝えていきたいです。
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従業員ひとりひとりが経営者感覚を持つことは、組織としても個人の働き方としても大切なことだと感じました。「家計簿経営」の取り組みを始める前と後で、社員にどんな変化がありましたか?
西田:まず、社員に「時間」、あるいは「時間当たりの採算性」の感覚が養われました。単に会社に来て仕事をするというのではなく、時間内にどれだけの成果を出すかという考えが全員に芽生えたように思います。
というのも、これまでは営業なら受注、工事なら完成出来高が「ゴール」だったわけですが、家計簿経営では自部門がどれだけ利益を出したかに目が生きますから、売上を自部門に分配したらいくらか、それに対して経費がいくらかかっているかという考える習慣がつくんです。そうなると、利益を最大化する方法も工夫して考えるようになる。社員一人ひとりの考えが経営者に近づいていきます。
もう一つはチームワークですね。今は会社という大きな組織の中の一員という感覚だったと思いますが、今はアメーバという小集団の一員という意識が強く、その中での連帯感を感じている人が多いのではないかと思います。
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また、「家計簿経営」とはどんな企業にも応用可能なのでしょうか。
西田:可能です。家計簿経営のいいところは、事業のかじ取りの感覚を持った社員を育てることです。そういう人材を育てたいというのは、どんな業種の経営者も同じですよね。
ただ、職場や会社によって風土の違いはあるでしょうから、全部門が幸せになるような独自のルールは設けるべきだと思います。導入したことで部門同士がケンカになるようなら意味がないですから。
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本書では「理念」を持った経営者が少ないと書かれていました。「理念」や「哲学」は企業活動にどのような影響を与えるのでしょうか。
西田:理念というのは、何のために事業をやっているのかという目的ですから、これがないということは、迷った時に戻る場所がないのと同じです。
それと、理念や哲学といったものは、従業員と一体感を持つためにも必要なものです。経営者も従業員も全員が共有する価値観が、理念や哲学なんです。
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「人づくり」の章が印象深かったです。社員に対して人間性を育てるための勉強会を開いているとのことですが、どんなお話をされるのでしょうか。また、その勉強会について社員からはどんな感想が出ていますか?
西田:月に一度、人間塾やフィロフソフィー勉強会を開いています。また、社長コンパで社長の生き様を伝えたり、理念を語り合うというのが主な内容です。こちらから社員に何か教えようというものではなくて、「感じ取れ」、「掴み取れ」という意味が強いですね。
社員からは、自身のことを客観的に見てどんな問題点があったか、という気づきがよく挙げられます。あるいは社長と自分の考え方の違いや価値観の違いですね。
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西田さんは稲盛和夫さんの「盛和塾」で学ばれました。西田さんと稲盛さんの出会いはどのようなものだったのでしょうか。また稲盛さんの経営哲学に初めて触れた時の感想を教えていただきたいです。
西田:私にも心が動いて定まらない時期がありまして、その時期に稲盛さんの『心を高める、経営を伸ばす―素晴らしい人生をおくるために』という本に出会いました。読んで腹にスカッと落ちるものがあった。それがきっかけです。
稲盛さん自身の経験や体験をふまえて、わかりやすく伝えてくださるから、頭に入りやすいんだと思います。稲盛さんの考えに触れて、迷った時の判断基準ができました。
特に印象に残っているのは「動機善なりか私心なかりしか」という言葉です。「私心」という言葉が響きます。あとは、「理念を進化し続ける」という言葉もいいですね。
稲盛さんの教えと出会った頃、私はとにかく自分の価値観、人生観を確立したかった。仕事観も経営観も、人生観や価値観から出てくるものですから、まずはそれらが定まらないと経営ができないと思っていました。その意味では、私は稲盛さんの教えから自分の根になるものを感じ取ったんだと思います。
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起業して自分の会社を立ち上げようとしている人と、今既に会社経営をしているものの思ったように業績が上がらない人、それぞれにメッセージをお願いします。
西田:これから起業して自分の会社を立ち上げようとしている人には、志を高くもって、自分を成長させる取り組みを続け、世の中に影響を与えられる企業を作っていただきたいです。そのためには、自分の経営者としての質を高めることが第一です。
今現在会社を経営されている人、業績が中々上がらない人は、原点に立ち返ること。つまり、なぜ自分はこの会社を立ち上げたかをもう一度考えてみていただきたいです。そのうえで根本的な問題点を抽出して、「問題は課題」という考え方をもって改善にあたるべきでしょうね。
会社というのは設立した時点で公のものです。周りから生かされているという気持ちを忘れずにいてほしいと思います。
(新刊JP編集部)