『価格はアナタが決めなさい。 輸入ビジネスに学ぶ儲かる仕組み』
「商社」というのは日本独自の仕組み
鬼頭: 「輸入ビジネスに学ぶ儲かる仕組み」ということで、まずはこの「輸入ビジネス」について伺っていきたいのですが、このビジネスは個人でも参入していけるものなんですか?
これ、なかなか馴染みのない言葉だと思うんですけれど、実は個人でも入っていけるんですよ。今はまだ黎明期かもしれませんが、これからどんどん広まっていくのではないかと思っています。
鬼頭: 素人からすると、個人で新しく商品を仕入れて販売しようにも、国内の商社等がすでに世界中を見尽くしているのでは、と考えてしまうのですが、そうでもないんですか?
実を言うと、そもそも「商社」というのは日本独自の仕組みなんです。というのも、日本は島国ということもあり、言語や文化、慣習などが他国と比べて特殊である点が多いんですよね。貿易にも専門性が求められたので、海外とビジネスをする専門家達が集まり、そこから商社というグループが生まれたんです。海外では、小さいお店でも商社を介さず、メーカーから直接商品を買ったり、他国から仕入れるということを当たり前にやっています。
鬼頭: そうなんですか!メーカーと小売店の間に商社が立つ仕組みがグローバルスタンダードだと思っていました……。
実はそうではないんですよ。「商社」という概念自体、日本にしかありませんから、海外へ行くと、英語でもそのまま「ショウシャ」と言われていたりします。
商品の価格を決定すべきは「メーカー」ではない?
鬼頭: ということは、海外の方が日本の商品を仕入れにやって来るときは、商社ではなくて、個人商店として買いに来ているという事ですか?
そうですね。末端の小売店さんが直接買いに来るというのが一般的になります。
鬼頭: 大須賀さんご自身は、どのような経緯で輸入ビジネスの世界に入られたんでしょうか?
私は学生時代に、ヨーロッパに40日間、アメリカに40日間行っていた時期があるんですけれど、各国を旅行しているうちに、ある事に気が付いたんです。「海外には定価がなく、販売者が自由に価格をつけている」ということに。日本には定価というものがあると思うんですけれど、あの数字を決めているのは、誰だと思いますか?
鬼頭: メーカーさん、ですよね?
その通りです。でもメーカーが販売店の価格を勝手に決めるって、よく考えたらおかしな事じゃないですか?もし販売員に素晴らしい才能とスキルがあれば、百円のものに付加価値をつけて、1万円で売ることだって出来るかもしれないんですよ。極端な例えではありますけど、ビジネスって本来はこういう事だと思うんです。
鬼頭: たしかに言われてみればそうですね。考えたことありませんでした……。
価格というのは、本来であれば販売する人間が決めるものであって、他の人は関与しないべきだと私は思うんです。なので今回の本では、自分としてはただ実は当たり前のことを言っているだけなんですよね。日本だから「え?」という反応を頂けますけど、海外にこの本を持っていったら「当たり前だよね」と言われてしまいます(笑)。
自分で見つけてきた商品を自分の判断で価格を決められるという魅力
鬼頭: 大須賀さんは大学時代に海外に行かれて、卒業後はすぐに商社へ入られたんですか?
いえ、私はメーカーに就職してルートセールスマンをやっていたんです。メーカーなので、決まった定価で小売店さんに販売するわけなんですけれど、その時の販売価格がやたら高くて。小売店の方に「こんな高い価格で商品をおろして、我々が商売になると思っているのか?」と聞かれた時に、なるわけがないと思いながらも、立場上、「いや、このくらいだと思いますよ」と答えてしまったんです。それから自分の仕事に誇りを持てなくなってしまって、3年程で会社を辞めてしまいましたね。
鬼頭: でも、それが大須賀さんのお人柄でもあって、信念を持たれて辞めたという事で、その後の人生の良いきっかけになっていそうですね。
それはあると思います。やはり学生時代に海外の物価の決め方を見たという経験もあり、サラリーマンとして、「メーカーが価格を決める」という日本の仕組みを目の当たりにしたときに、つくづくおかしなことのように思えてしまったんですよね。会社を辞めてからは、ヨーロッパへの憧れや、海外と絡むビジネスがしたいという思い、また、自分で見つけてきた商品を自分なりに価格をつけて販売できるというロマンチックさに魅力を感じて、この輸入ビジネスの世界に飛び込んできました。