『不安な未来を生き抜く最強の子育て 2020年からの大学入試改革に打ち勝つ「学び」の極意』
2020年、センター試験はなぜ改革されるのか
鬼頭: 井戸さんには、当番組第一回目のゲストとしてお越しいただいた時に「無戸籍の日本人」という本をご紹介して頂きましたが、今回の本は、それとは全く別の視点になりますね。
そうですね。ただ、無戸籍の日本人で、学校へ行くことが出来なかった方たちと接する中でも、教育というものの重要性を非常に強く感じたので、そういう意味では、今回の本にも繋がっているようにも思います。
鬼頭: 井戸さん自身にも5人のお子さんがいらっしゃるとの事ですが、それだけたくさんの取材をされてきて、しかも教育のついての本を書かれるようなお母さんでしたら、子育てもさほど困らないように思えてしまうのですが……
そうですよね。多くの親御さんは1979年に導入されたマークシート方式を経験されているかと思うんですけど、これまでは偏差値という数字で個々の能力を公平に測ってきました。しかし、この方法ではもはや現代社会が必要としている人材がなかなか育っていかないんです。そこで、今日のグローバリゼーションの広がりに合わせて、問題形式が改革されることになったんです。
教育改革に対する「不安」とどう戦うか
鬼頭: 最近は良い大学に入って、エリートになって、良い職場へ、という流れが段々無くなってきている一方で、この流れがまだ成り立っているところもあるように思います。今後の求められる能力の変化に伴って、これまでの流れも変わっていくんでしょうか。
変わっていくでしょうね。これからの教育については、親世代も経験したことがないからこそ、本のタイトルにもあるように、どうしても「不安」が先行してしまうと思います。また、2020年の改革にもなんだか怖いイメージを持っている親御さんもきっと多いですよね。
鬼頭: そうなんですよ。先が見えていれば、上手く流れに乗せてあげられるのにと、つい考えてしまうのですが、本を読ませていただくと、教育改革をした後の子供の方が、自分の夢への近道を辿っているように思えてきました。
私も最初は同じように考えていて、今回の佐藤先生との対談も、全ては私のぼやきから始まったものでした(笑)でも対談を終えた時には、悩みが解消された、とまでは言いませんけど、とりあえず出来る事をやってみればいいかな、という気持ちにはなりましたね。大学というのは、自分から学びに行く場所であるという事を子供たちが自覚するため、その前段階としてこれからの入試は、自分で考え、実行するプロセスを学ぶ良い機会になると思います。
「自分で考え、行動し、答えを見つける」経験が学びに繋がる
鬼頭: アクティブラーニングについて考えた時に、今後、小学校で足し算や掛け算を繰り返し練習させる事の必要性に疑問が沸いたのですが……。
これからは文系であっても、数学的な考え方が要求されることが多く出てくるので、そうした基本的なロジックを身につけることは、むしろ大事になってきます。型を破っていく事は、社会を動かす上で確かに重要ではあるのですが、そのためには、まず基本をしっかり押さえておく必要があります。
鬼頭: 自由な発想が出来る人間になるためも、やはり基本形は不可欠だという事ですね。
そうですね。型を身に付けた上で、自分で考え、行動し、答えを見つけていく、という経験をさせる事が本当の意味での学びになります。
鬼頭: でも逆に、教師の方々はこのような教育環境の変化についていけるのでしょうか?
これまでの教育方式で自身のスタイルを確立されている先生方にとっては、大変な時代にもなってきます。とはいえ、何かを改革をする時には必ず負の部分も見えてくるもので、しばらくの間は紆余曲折がありつつ、ある所に収束していく事になると思います。この点は、学ぶ側だけではなく教える側にも言えることですね。