書評

とかく効率化が求められる今、自分の仕事をもっとスピードアップさせたり、もっと効率的にこなせるようになりたい、という人は多いでしょうし、会社からそれを要求されている人もいるはずです。プライベートの時間を確保するためにも、仕事は早く切り上げたいという人もいるかもしれません。

■仕事の中で圧倒的に時間を食っているのは…

仕事を効率化するために、自分の普段の時間の使い方を振り返ってみると、あることに気がつくはずです。

「情報収集にこんなに時間がかかっていたの?」

意思決定をしたり、成果物を作るための情報収集は、仕事の中で大きなウェイトを占めています。この時間を仮に半分にできたとしたら、効率化は大きく進むはずです。

■インプットの時間を削れば仕事は効率化する!

本書の著者で投資家の角田和将さんも、会社員時代は時間に追われ、やりたいことになかなか手がつけられないという状態が続いていたといいます。

そして、やはり情報収集やインプットに費やす時間の多さに気づいた角田さんが、この問題を解決するためにとり入れたのが「速読」です。本や文章を読む速度はトレーニング次第で2倍以上になるそう。この「速読」によって、短時間で大量の情報をインプットできるようになった角田さんは、投資の部門で頭角を現しました。

■「熟考」が必ずしも正しいわけではない

今では一日5分程度の時間投資で月に100万円ほど稼いでいるという角田さんですが、そこには速読がもたらした「副産物」もかかわっています。

それは「考える速度」と「直観力」
文章を読む速度が上がるにつれて物事を考える速度も上がり、重要な意思決定も素早く下せるようになったという角田さん。「じっくり考えて出した答えがいい答えとは限らない」という観点から、著書の中で「素早くインプットし、素早く考えて最適な答えを見つけ出す」ための速読力の鍛え方と活用方法を解説しています。

そのトレーニング法はどれも職場や自宅で簡単にできるもの。
日々の仕事を効率化したいという人は、試してみると、「効率」以上に、仕事力自体が大きくアップするかもしれません。

プロフィール

角田和将

1978年生まれ。Exイントレ協会代表理事。
高校時代、国語の偏差値は40台。本を読むことが嫌いだったが、借金を返済するため投資の勉強をはじめる。そこで300ページ以上ある課題図書40冊を読まざるを得ない状況になり、速読を学び始める。開始から6ヶ月後に日本速脳速読協会主催の読書速度認定試験で、1分間約1万文字の認定を受ける。8ヶ月目には同協会主催の速読甲子園で準優勝、翌月に開催された特別優秀者決定戦で速読甲子園優勝者を降し、日本一となる。その後独立し、速読を通じて時間の量と質を変えることの大切さを教える「イントレ」を立ち上げる。これまでに指導した生徒は1000 名超。「1日で16 冊読めるようになった」「半年間で500 冊もの本を読んだ」など、ワンランク上の速読を目指しつつ、挫折しない、再現性の高い指導を行っている。
投資においても約1000名の受講生に対して、「1日5分の時間投資で月収100万円以上」をモットーに、速読思考に基づく指導を行い、月収数十万円~数百万円の利益を上げるトレーダーを多数輩出している。
著書に、『1日が27時間になる! 速読ドリル』『頭の回転が3倍速くなる! 速読トレーニング』(ともに総合法令出版 あわせて15万部突破)、『速読日本一が教える 1日10分速読トレーニング』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

目次

  1. PART1
    速読思考で人生は変わる
    • 「じっくり考えます」がダメな理由
    • 速さを重視すると直感は磨かれる
    • 見る速度が上がると考える速度も上がる
    • なぜ、あなたは一冊読み切れないのか
    • 「記憶」や「暗記」は役に立たない
    • 考えながら読むのは効率が悪い
    • ゆっくり1回よりも速く3回読む
    • 速読思考で月100万円稼ぐ私のやり方
    • 結果に影響しない努力に時間をかけない
  2. PART2
    速読思考の原理原則
    • 1文字でも多く読めれば速読である
    • 「読む」から「見る」に切り替える
    • 眼筋トレーニング
    • シフトダウンで脳をだます速読読書術
    • 読む左脳と見る右脳を使い分ける
  3. PART3
    速考思考インプットトレーニング
    • 「幅広く見る」文字校正トレーニング
    • 乱数を使った速読トレーニング
    • フラッシュトレーニングとフォントのサイズチェンジ
    • 新聞やネット記事をブロック読みする
    • 録画したテレビ番組を1・5倍速で見る
    • 英語力と速読力を同時に鍛える
  1. PART4
    速考思考アウトプットトレーニング
    • 高速で考えるコツは「考えすぎない」
    • 「見て理解」しやすい資料を作る
    • あえて2つ以上の作業を同時にする
    • 入ってきた情報はなるべく早く使ってみる
    • 「3つ」にまとめてアウトプットする
    • キーワード連想トレーニング
  2. PART5
    情報収集力を最大化する
    • レビューやランキングに振り回されない
    • 書店でできる速読情報収集術
    • 読む順番にルールはない
    • 言葉が持っている本当の意味
    • 本当の理解を得る方法
    • 結果は後からついてくるものと心得る
    • 一度取り組み始めたならば、とにかく止めない

インタビュー

■「速読力」が仕事に果たす決定的な役割

― 『行動する時間を生み、最速で結果を出す 速読思考』についてお話を伺いたいです。これまで速読のトレーニングについての本を出されてきた角田さんですが、今回の本は「速読の能力を仕事でどう使うか」という点がテーマになっています。オフィスワークの場合、速読の能力によって日々の仕事はどう変わってきますか?

角田:
情報化社会ということで、誰もが毎日膨大な量の情報に触れています。その処理速度が上がれば、その分時間が空いてやれることが増える、というところは想像がつくと思います。

でも、実はそれだけではありません。同じ時間内にこれまでより多くの情報に触れられるようになると、ボキャブラリーや表現力にもいい影響があるはずです。

アウトプットする資料をわかりやすく作れるようになったり、適切な表現ができるようになったり、一つひとつのアウトプットの質が上がります。その意味で、速読を身につけると、仕事の量も質も高めることができるんです。

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― 反対に、仕事ができる人というのはそもそもある程度の速読能力を持っているということも言えるのでしょうか。

角田:
それはあると思いますね。仕事ができる人は例外なく情報収集力に長けていますから、短時間で大量の情報に触れる能力は持っていると思います。

― 角田さんご自身は、素早く大量にインプットできるという能力をどんな場面で活用していますか?

角田:
今はこうして本を書いたりしているので、いかに誰が読んでもわかりやすい表現で書くか、という意味でインプットの量をすごく大切にしています。本一冊分のアウトプットをするなら、その何倍もインプットしておかないと、いい表現が思い浮かばないので。

あとは、投資をする時ですよね。トレードの場合、「アウトプット」は注文のボタンと決済のボタンをクリックする瞬間だけですから、ほとんどがインプットの世界です。

この時間をできるだけ短くして、時間当たりの収益を高めるために活用しています。

― インプットについては「右脳と左脳の使い分け」の重要性も指摘されていました。どのように使い分けるのかについて詳しくお聞きしたいです。

角田:
あふれかえる情報の中から、自分が必要とする情報を探し出すという時は、視野を広くとって、全体をイメージとして捉えながら読んでいきます。この時に使われるのは右脳です。

ただ、普通に読んでも理解できないような文章などは、この読み方だとわからないことがでてきます。そういう時は単語の意味を一つずつ変換しながら読まざるをえません。そういう時は左脳が使われます。

読むのが遅いという人は、後者の読み方しかできない状態なんです。最初に全体を見て、自分が求めている情報を選定してから、より詳しく読んでいくということができるようになれば、最小限の時間でほしい情報をインプットできるようになっていくはずです。

これが右脳と左脳の使い分け、ということですね。

― 今少しお話に出ましたが、角田さんが提唱している速読法は、「文字を一文字ずつなぞって読むのではなく、視野を広くとって数文字ずつ塊として捉える」というものです。たとえば、スマートフォンでニュースなどを読む時、文字をなぞる読み方をしている人はむしろ少数派で、多くの人は記事を一行単位で視野に入れてざっと読んでいきますから、角田さんの速読法を自然に実践している人は案外多いのかもしれません。

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角田:
まさしくそうで、スマホでニュースを読むのと同じやり方で、本も新聞も読めばいいんですよ。でも、スマホだと一行の文字数がそのまま視野に入れる文字数になるのですが、紙媒体だと一度に視野に入れる文字数を自分で決めないといけません。

だから、スマホでは「速読」ができても、本のように長い文章を読もうとすると、「なぞり読み」になってしまう人がほとんどなんです。慣れれば難しいことではないんですけどね。

― 情報収集の効率をいかに高めるか、というのは多くの人にとっての課題です。新書のように、あるテーマについて概要を説明するような本を読む際、どんな読み方をすればいいでしょうか。

角田:
内容が頭に入っていない感覚があってもいいので、まずは高速を意識しながら文章全体を見て(読んで)いきます。すると、繰り替えし出てくるワードがあるはずで、それがカギに今度は少しゆっくり読んでいくのがいいのではないかと思います。

じっくり1回読むよりも、素早く2回3回読む方が、読みながら考えることがなくなり、結果的に情報収集の効率は上がるはずです。

■「意思決定が遅い人」がまず改善すべきポイントとは

― 速読が身につくにつれて、考える速度や意思決定の速度も上がる、というのはわかる気がします。これは自然に速くなっていくものなのでしょうか。

角田:
そうですね。高速で読んで、高速で情報処理することに脳が慣れてくると、それにつれて判断や思考のスピードも自然に上がっていきます。

これは特別なことではなくて、考えたり判断するための材料を速く大量に揃えることができるので、判断も思考も速くできるということです。

― 素早く読めて、素早く考えられても、決断を下すとなると迷ってしまうこともありそうです。

角田:
反射的に「こうかな?」と思ったことは頭の片隅に置いておきます。それでもう少し話を聞いたり、調べたりして間違いないなと思ったら、その決断の方向に進むという感じですね。

― 最初の決断が調べていくうちに覆ることもありますか?

角田:
考えるための材料が間違っていたり、話の前提が崩れない限りは、最初に反射的に出た結論が覆ることはまずないですね。

反射的に、といっても普段から必要な情報はインプットしているわけで、勘で判断しているわけではないので。

ただ、その決断を伝えるタイミングは相手次第、というのは覚えておいてほしいと思います。判断のスピードが速すぎると「ちゃんと考えてないんじゃないか」と思う人もいるので、そこは相手に合わせた方が波風立たないと思います(笑)。

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― 考える力やアウトプットする能力はあっても、スピードが遅いと職場での評価は低くなりがちです。こういった方々に向けてアドバイスをいただければと思います。

角田:
「自分は仕事が遅い」と感じている人は、自分が下す決断に自信が持てないから、考えるのに時間をかけすぎてなかなか行動に移せないという面があるのではないかと思います。

ただ、それも結局はインプット量が足りないというところにつながってくるんです。判断材料が少ないからこそ決断に時間がかかったり、決断に自信が持てなかったりするわけで。

アウトプットに時間をかけることが必ずしも悪いことではありません。ただ、インプット量を増やしていけば、結果的にアウトプットまでの時間は必ず短くなるんです。そうなれば、まずは一度アウトプットしたものをブラッシュアップしていくことが可能になる。

結果的にはその方がまちがいなく質のいいものができるはずなので、まずは短時間に大量のインプットができるように、速読の力を身につけるところから始めてみていただきたいですね。

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