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― 本書の解説 ―

これからの時代のビジネスで成功するために求められるものはなんでしょうか。
組織をマネジメントする力、未来を見通す視点、ニーズを的確につかむ目。

確かにそれらも重要です。でも、もう一つあげるとするならば、それは自分が育った日本の文化や歴史、宗教についての知識なのかもしれません。

例えば、今後ますます増えるだろう海外の企業やビジネスマンとのコミュニケーション。その中で「君たちの国はどんな文化や歴史があるんだ?」と聞かれたときに、すぐに答えられるでしょうか。

その人の教養の豊かさの表す一つの指標にもなりえる、自国の文化や歴史。
その中でも特に押さえておくべきなのが「神仏」です。

そう指摘するのは『ビジネスエキスパートがこっそり力を借りている日本の神様』(サンマーク出版刊)の著者である神道家の道幸龍現さん。

ブランドコンサルタントでもある道幸さんは、ビジネスパーソンが「神道」について知っておくべき理由を次のように述べます。

ブランドとは何かを一言でいうなら「歴史」です。人は皆、ブランドの歴史に価値を見出すからこそ信頼し、高額でも手に入れたいと思います。
他の追随を許さない長い歴史をもち、いまでも人々に敬われ、守られているブランド。
それは、伊勢神宮です。
三重県にある伊勢神宮は2000年の歴史を誇ります。(本書p.9より引用)

長い歴史を誇る「神道」。それこそが日本人が誇るべきブランド。そして、その日本が誇るこのブランドを身に付けることが、海外と対等に渡り合ううえで大切な要素となると述べます。
そしてもう一つ、重要な点を指摘します。

神道こそ、日本人の精神の根本にある「意識のOS(オペレーティングシステム)」であり、日本人のためにある成功法則なのです。(本書p.10より引用)

なぜ社長室や役員室に「神棚」が多いのか?

「神道こそ日本人のための成功法則」とは一体どういうことでしょうか?
もう少し本書を読み進めていきましょう。

コンサルタントをしている著者は、さまざまな企業のオフィスを訪問しますが、社長室や役員室に行くと、「神棚」が飾られていることが多いと言います。彼らはなぜ神仏を頼りにするのか。そこには下記の3つの理由があるそう。

  1. (1)自分自身の行動哲学、成功哲学を確立できる
  2. (2)神仏に守られているという安心感が生まれ、精神的に安定する
  3. (3)実際に神仏のサポートが得られる

1つ目と2つ目はメンタル面への大きな影響があげられます。
会社は組織のトップに近づくほど責任を増していくものですが、その分、圧し掛かってくるプレッシャーもどんどん大きくなっていきます。そんなとき、「神様や仏様が見守っていてくれる」という応援されている感覚が、慌てることなく冷静に問題に立ち向かえる精神をもたらすというのです。

また、3つ目の「実際に神仏のサポートが得られる」は、道幸さんいわく「もっとも重要な要素」。
「神仏のサポート」とは、成功した経営者がよく引き合いに出す「運」と言ってもいいでしょう。どんなに努力を積み重ねても、成功するかどうかは「運」が大きなカギを握ります。人事を尽くして天命を待つ。そんなとき、神仏が「最後の一押し」をしてくれることを成功者は知っていると道幸さんは言います。

神道、仏教、そして古神道の力を組み合わせることでハイパフォーマンスに

「神仏」とあるように、本書は「神道」だけでなく「仏教」、さらには古代日本にあった原始宗教「古神道」の知恵までカバーしているのが大きな特徴。
道幸さんによれば、「古神道」の伝統はいくつかの流派に分かれながら現代までに受け継がれているそうで、本書ではその一つである「物部神道」の知恵や行法が紹介されています。

仏教の伝来以降、日本は神道と仏教が融合した「神仏習合」の歴史を辿ってきました。この「神仏」に加え、修験道や龍神信仰など民間に深く根差したさまざまな信仰が違和感なく共存する「重層信仰」は、まさに日本人の精神性を形成する根本といえます。

この日本人の重層信仰の作法や知識を頭に入れ、実践をすることは、自分の心の中に大きな軸を作ることにつながります。それがハイパフォーマンスを発揮するための土台になるのではないでしょうか。

経営者はいつでも孤独を感じていると言います。責任を負っている以上、どんな人にも頼ることができない。自分自身がしっかり判断しなくてはいけない。そんなプレッシャーに耐えるために、神仏の力を借りるのでしょう。
自分を守るものは自分たちが受け継いできた歴史であり、文化です。困難に向き合うことになったとき、なんとか壁を乗り越えたいとき、かなえたい夢があるとき、もちろん努力は続けながらも、その力を頼ってみるのも一つの手かもしれません。

(新刊JP編集部)

― インタビュー ―

成功者はどのようにして神仏のパワーを借りているのか?

――ビジネスエキスパートがこっそり力を借りている日本の神様』についてお話をうかがっていきます。本書は神道、仏教、そして古神道に至るまで日本人の信仰の力について書かれていますが、道幸さんが「神道家」として神道を意識されたきっかけから教えてください。

『ビジネスエキスパートがこっそり力を借りている日本の神様』著者、道幸龍現さんお写真

道幸:27、28歳のときに当時まだ結婚前だった妻に熱田神宮に連れて行ってもらったんです。それまでは神社も神道も全く興味はなかったのですが、熱田神宮は草薙剣をご神体とされていて、すごく感じが良くてリラックスできたんですね。その翌年には伊勢神宮に行き、神社にどっぷり浸かっていきました。

―― それが道幸さんと神社のつながりの始まりですか。

道幸:はい。その後、妻と結婚しまして世田谷区に住むのですが、そこには吉田松陰を祀る松陰神社があります。子どもの七五三などはそこに行っていたのですが、幕末期の人物でも神様として祀られるということに強い興味が惹かれまして、神社や神道について勉強を始めました。

―― 本書には「成功者は神仏のパワーを使っている」というところで事例もあげられています。

道幸:私は経営コンサルタント業をしているので、経営者とお話することが多いのですが、実際に神社や寺院を大事にされている方が多いですね。また、クライアントの方から「突き抜けた経営者は神社や神様を大事にしている」という話をうかがって調べてみると、松下幸之助は伊勢神宮の崇敬会会長でしたし、出光佐三は宗像大社を崇敬していました。確かにそうだと。

―― 「神頼み」という言葉だと、非科学的なイメージを持ちます。道幸さんは「超現実主義」から神道家への道に入るわけですが、ビジネスという合理的な考え方が要求されるフィールドにいる人が神仏に頼るのはどうしてなのでしょうか。

道幸:自分自身は経営コンサルで数字が最も大事だと思ってやっきましたけど、20年仕事をしてきて気づいたことは、マーケティングは7割、そして3割は目に見えない力が大事ということなんです。それが信仰であり、日本人でいえば神仏なのかなと。

この割合は人によって異なるのでしょうが、成功している人は神仏の力を無視していません。箱根神社(九頭龍神社)の玉垣には長嶋茂雄さんや秋元康さんの名前があります。箱根神社は龍神で有名ですが、彼らは龍神と縁があるということです。

―― 松下幸之助は「運」を大事にされたそうですが、その「運」というのは神仏のパワーと考えても良いのでしょうか。

道幸:私自身はそう捉えています。松下幸之助は先ほど言ったように伊勢神宮を崇敬していましたし、浅草の浅草寺にも奉納しています。また辯天宗への信仰も有名ですよね。そういう意味では彼は神仏オタクだったのだと思います。その結果、「経営の神様」と彼自身が呼ばれるようになった。

―― 成功者はどのようにして神仏のパワーを借りるのですか?

道幸:そういった方々はお金と時間を割いていますよね。松下幸之助や出光佐三以外にも西武グループの創始者である堤康次郎は箱根神社を崇敬していました。

神社にお参りに行く時間は無駄だと考える人もいるかもしれないけど、そうではないんです。時間とお金を割くことで、「自分は守られている」という感覚を身に付けられます。もしくは「応援されている」と言ってもいいかもしれない。

実際、松下幸之助は「経営の神様」と呼ばれていますが、それは神様に一番好かれたから。そして、神様が松下幸之助を通して国民の生活を豊かにしている。それが「三種の神器」と呼ばれるテレビ・冷蔵庫・洗濯機だと私は考えています。

日本人は「受け入れる力」があるからこそ強い

―― 本書は神道だけでなく仏教や龍神などについても触れています。こうした様々な信仰を網羅的に取り上げているのはなぜですか?

道幸:それは日本が神仏習合の国だからですね。お正月は神社に行きますが、葬式は寺院であげます。エネルギーの違いはあるけれど、日本ではそれらが混在しているのが特徴ですよね。さらに神道と仏教と道教が結びついて山岳信仰となり、修験道として信仰された。こうして信仰がブレンドされていくのが神仏習合です。

―― なるほど。

道幸:ただ少しネガティブな点もあって、それは日本人の無宗教感を生み出す土台になっているのではないかということです。信仰は一つに定めるべきだという意識が強いと、神仏習合をにわかには理解できません。海外で仕事をしていると宗教観を聞かれることがありますが、神仏習合や重層信仰を伝えるのは難しいでしょう。その意味でも本書を読んでほしいと思って書きました。

―― すべてに神様がいるという感覚は日本人ならば生活意識の中に溶け込んでいますからね。さらにクリスマスも祝うなど、いろんな宗教の風習を取り込んでいる。

道幸:重層信仰は特殊ですよね。ただ、それって日本人特有のアイデンティティなんですよ。どんなものでも受け入れて自分たちなりにアレンジできる強さを持っている。フィリピンはキリスト教国ですが、それ以前には土着の神を信仰していました。日本でも実は戦後、国家神道が解体され、信教の自由が保障された際に聖書が1000万冊配布されたと言われていますが、それでも神道も仏教も残ったわけです。

日本人は無宗教ではなく、どんなものも受け入れる「重層信仰」だと私は考えています。それが実は様々な技術を受け入れて改良を重ねていくという日本の強さを生み出す土台になっているように思うんですね。

―― その強さというのが、日本のアイデンティティ。

道幸:そうですね。重層信仰を知ることは、すなわち日本人にとって必須の教養であり、アイデンティティなんです。この2つは本書のキーワードだと思います。

―― アイデンティティを持つことは成功するためにも必要と。

道幸:それを持つだけでセルフイメージが上がりますからね。プルデンシャルという生命保険会社は、営業に「ライフプランナー」という名称をつけました。こうすることでセルフイメージが上がって、「自分がお客様の人生設計をサポートする」という使命が生まれますよね。これがアイデンティティになる。そうすることで業績を伸ばしたわけです。

―― アイデンティティがあれば、それに従って積極的に行動できます。

道幸:そうですね。自信がつきますし、少しスピリチュアルなことを言うと、神様がヒントをくださるんです。判断するときに「あっ、こっちだな」と直感が走って欲を超えた正しい判断ができるようになるわけですね。

「ブランディングの視点では、大切なのは歴史なんですよ」

―― 本書では神仏の他に古神道についても触れています。神道と古神道の違いについて教えてください。

道幸:これは神道という枠組みの中に古神道があると理解しています。神道には長い歴史がありますが、私たちが信仰しているのは戦後の神社神道です。戦前は国家神道ですね。それ以前の信仰を「古神道」と分かりやすく区分けしているだけなんです。

例えば自然を大切にしたり、日々感謝をするということは、ベースは古神道にあると思います。私自身はこの古神道が最も重要だと考えていますね。

―― さらに修験道は古神道をベースにして、仏教や山岳信仰などが習合して確立したとされています。そうなると、一つずつ「これはこんな教え」と分けて考える必要がないような気もしてきました。

道幸:重層信仰とは何かということを考えたときに一つずつ理解することは大事ですが、重要なことは、すべてつながっているということです。龍神や不動明王もそうです。そこはぜひ知っておいてほしいです。

―― そういえば近年、スピリチュアル系書籍では「龍神」がブームです。

道幸:ここ3年は龍神に関する本が注目を浴びていますよね。きっかけは大杉日香理さんという方の『「龍使い」になれる本』だったと思いますが、それがベストセラーになったのは必然だった気がします。実は世の中が龍を求めていた。人々が龍についての情報をほしがっていた。龍は架空の動物ではありますが、干支の中の一つにも入っている身近な存在ですから。

―― 私たちが神仏に頼るときに気を付けるべき点を教えてください。

道幸:「頼る」という表現でいえば、神仏に頼ったからといって必ず願いが叶うことはないという話を私はしています。どういうことかというと、神様や私たちの先祖は20%くらい後押しをしてくれるもので、大事なことは自分自身がどれだけ努力をしたかによるということです。

例えば、普通の人なら全く勉強をせず神仏を拝んだだけで東京大学には合格できないですよね。でも社会を変えたいと一生懸命頑張って必死に勉強して、偏差値を上げて、それでもギリギリの合格ラインのときに自分が勉強したポイントがそのまま出たりする。

もちろん逆もあるわけです。「お前はまだまだだ」と落して気づかせることもある。そういうことを「運が良い」「運が悪い」と言う人もいると思いますが、私は神仏の力なのだと思います。

―― 「パワースポット」という呼称も珍しくなくなりましたが、参拝する神社や寺院の選び方についてアドバイスをいただきたく思います。

道幸:まずは住んでいる土地、生まれた土地の神社や寺院に行きましょう。その土地にあなたが選ばれているわけですから、地元の氏神に参拝をすることが運の地固めにつながります。サラリーマンならばもちろん会社の近くの神社でもいいのですが、大事にすべきはやはり家の近くの神社ですね。

―― そういえば最近都会では「氏神」や「氏子」という言葉をあまり聞かなくなりました。

道幸:そうですよね。氏神神社はその土地の守り神ですから大事です。分からなければ神社庁に問い合わせれば教えてもらえますよ。

また、もう一つお伝えしたいのが「産土神社」です。これは正確に言えば母親があなたを妊娠中にいた土地の神社のことです。これはその人にとって究極のパワーを持つ神社なのでぜひ参拝してほしいですね。私は北海道の千歳で生まれたのですが、産土神社は千歳神社です。千歳には3歳しかいなかったのですが、大人になり参拝するようになってから千歳に縁が生まれました。

―― それはシンプルに「地元を大切にする」ということですよね。

道幸:自分のルーツを大切にするということですね。神社にも得意のジャンルがあるので、それを調べることで自分の強みが分かってきます。

―― また、参拝したことを外に発信しても良いのでしょうか?

道幸:良いと思いますよ。信仰は隠すべきだという人もいますが、いやらしい表現にならないようにすれば。自己アピールに使うのはもちろんNGですが、心から参拝することを報告することは悪いことではありません。

―― 『ビジネスエキスパートがこっそり力を借りている日本の神様』をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

道幸:性別、年齢関わらず仕事をしている人ですね。「神仏こそが最高のソリューション」と表紙にありますが、まさしくそうだと思います。教養から入ってアイデンティティとなり、そして直感を感じられるようになる。この本を読むだけでも自分自身が変わってくることを実感できると思います。

―― 日本人としてのアイデンティティを知ることができる一冊ですね。

道幸:ブランディングの専門家の視点でいえば、大切なのは歴史なんですよ。その意味で、日本の歴史の長さはブランドそのものであり、日本人の重層信仰の強みはすごいものがあります。その歴史の深さは海外と仕事する際にも大いに役立つはずです。

―― 最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

道幸:神様にこっそりと力を借りることで、人生は面白く成功していくはずです。だから、本書を読んで信じないよりも信じたほうが得ですよと伝えたいですね(笑)
また、上手くいかないときに神様がどんなメッセージを自分に向けてくれているのか、どんな使命を与えているのか、参拝をしたり、知識を得ることでそれが分かるようになってきます。そうすると、成功がグッと近づいてくる。ぜひその体験をしていただきたいなと思います。

― 書籍情報 ―

目次

  1. ◎ グローバル時代の教養としての神仏
  2. ◎ 神社だけでは7割、さらなるパフォーマンスを上げる方法
  3. ◎ 「加速成功」から、周りも巻き込む「無限成功」へ
  4. ◎ レバレッジが効く! 「感謝貯金」
  5. ◎ 喝! ! 神様は応援してくれる存在、行動するのは自分自身だ!
  6. ◎ 「そば」と「うどん」どちらが好き? 答えで「伊勢派」か「出雲派」がわかる
  7. ◎ ネガティブを打破する不動明王
  8. ◎ 体に働きかけ、人間の潜在能力を開花させる修験道
  9. ◎ 日本は昇り龍と降り龍のエネルギーを併せもつ
  10. ◎ 関東のビジネス成功は「箱根神社」にあり!
  11. ◎ 知っておきたい神社神道と古神道の違いと関係
  12. ◎ これからの時代、世界で成功し、世界を平和にしていくために

プロフィール

道幸龍現

1972年北海道生まれ。ビジネスプロデューサー、神道家。スタープラチナ株式会社代表取締役。
20年以上経営コンサルタントとして、年商3000億の大手商社をはじめ300社以上の企業を指導し、3000人以上の人々を成功に導く。
また、神道をはじめ日本の宗教を研究。教派系神道教師の資格や、求菩提山修験道権大律師の僧位を授かる。この探求成果に基づき、神仏のエネルギーをビジネスに生かすことを提案している。
主催する「伊勢神宮ツアー」では、毎年約300人で特別参拝。2018年8月義経神社全国崇敬会初代会長に就任。 本名の「道幸武久」名義で作家としてベストセラー『加速成功』(サンマーク出版)や、『壁を崩して橋を架ける』(集英社)など多数ある。