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BOOK REVIEWこの本の書評

「夢」を持つことの尊さ、「目標」を掲げることの大切さがことあるごとに説かれるようになったのはいつのことだろうか。

もちろんそのことの意義は否定できない。しかし、明確な夢や、具体的な目標を描ける人間はどれくらいいるのだろうか。もし夢をもてないなら、その人の人生の価値は夢を追う人に劣るということだろうか。

もちろん、そんなことはない。夢を追う人、目標にむかって努力する人だけを尊ぶ価値観は、人間を思考停止状態にし、今いる場所から身動きを取れなくする有害なもの。こうした価値観を、本書では「バカシステム」と呼ぶ。

あなたはどうだろう?
「バカシステム」に捉われて、「夢」と呼ぶには心もとない、自分だけのワクワクを我慢してしまっていないだろうか。

「この会社はこういう会社」ということで、不満な環境に目をつむっていないだろうか。

もし心当たりがあるなら、本書はまさしく必読の書である。

INTERVIEWインタビュー

自分のやりたいことを思う存分できたとしたら人生は幸福なはず。

それがわかっていても、毎日に充実感を持てなかったり、漠然とした不安を抱えている人は少なくありません。もしあなたもそうなら、自分を捉えて窮屈にしている「常識」や「価値観」を疑ってみるといいかも。

『脱 バカシステム!~想像以上の結果を出し続けるメソッド』(サイゾー刊)は、世にはびこる真偽不明な「○○でなければいけない」を、「人の思考と行動を縛るバカシステム」と喝破する一冊。

今回は、この本の著者でビジネスプロデューサーの鈴木領一さんに、この「バカシステム」について、そして「人生の成功」について、お話をうかがいました。

人を思考停止に陥らせる「バカシステム」から抜け出そう

――タイトルにある「バカシステム」とはどのようなものなのでしょうか?

鈴木領一さんの写真

鈴木:
「バカシステム」というのは私が作った造語で、人を思考停止に陥らせて物事を考えられなくしてしまう仕組みのことです。

たとえば、コーヒーを飲む時、カップが皿の上に置かれるでしょう。あの皿は何のためのものか考えたことはありますか?

――ないですね。

鈴木:
それが「バカシステム」の一例なんです。この皿はなぜあるのかといろんな人に聞くと、スプーンを置くからとか、何となくおしゃれだからとか、色々な答えが返ってきますが、皿がついていない喫茶店もありますし、おしゃれかというとそうでもないですよね。

あの皿は、実は中世ヨーロッパが起源なんです。当時お茶や紅茶を飲めるのは上流階級だけだったのですが、当時のカップには取っ手がなかったので、熱くてそのまま手で持って飲むことはできなかった。だから一度平たい皿に少し入れて、冷まして飲んでいたわけです。

そのうちに取っ手がつくようになって、カップを持ってそのまま飲めるようになりました。となると皿は不要ですが、今でも習慣として残っているんです。こういう話を聞くと、あの皿は実は特に必要のないものだとわかりますが、ほとんどの人はそこに疑問を持つことはありません。これこそが「バカシステム」なんです。

――そういう例は他にもたくさんありそうです。

鈴木:
世の中には溢れていますよ。週刊誌の報道をそのまま信じてしまったり、他人から口コミで広がってきた情報を検討することなく受け入れてしまったり、人は案外思考することなく物事を鵜呑みにしてしまう。

ビジネスでもそういうことはあって、会社員は会社に出社して、顔を合わせてコミュニケーションを取りながら仕事をするのがいいんだという価値観は、最近は薄れつつあるものの、未だに強固にあります。

問題なのはそういった常識や価値観で意図的に人を縛ろうとする人もいることです。
「ここをやめたら絶対仕事なんてないよ」といって社員を辞められないように縛り付けておいて、過酷な仕事を要求するというのは、ブラック企業のやり口としてよくありますよね。

何の根拠のない言説を、それが誰の利益になるのかを考えさせないように信じ込ませることを意図的に仕掛けてくる人がいて、注意しないといつの間にか信じさせられてしまう。思考停止に落ちる人間と、思考停止に陥らせようとする人間もひっくるめて「バカシステム」なんです。

――鈴木さんはバカシステムにどのように気づきましたか?

鈴木:
僕は九州の田舎の出身なのですが、多くの日本の田舎の例に漏れず、人は学校を出たら就職してその会社に勤め上げて、老後はのんびり暮らすという人生設計のモデルが常識としてまかり通っていました。

それだけではなくて、家業があれば長男がそれを継いで、おまけに一族の墓も見ろと。僕は長男だったので、冗談じゃないと(笑)。墓を見るために地元に留まれって恐ろしい話でしょう。

それが嫌で大学に入るときに地元を出たんです。ところが大学も嫌になってしまって中退してしまった。もう完全に地元の価値観でいえば「ドロップアウト」です。

完全にレールから外れたダメ人間なんですけど、辞めた後に一人であれこれ仕事を始めてなんとかやってみると、案外やれるんです。学歴には傷がついてしまいましたが、フリーでやっていると学歴なんて誰も聞かない。聞かれるのは「何をやってきたか」と「何ができるか」だけです。「あれ?おかしいな」と思いましたよね。いい大学を出ていい会社に行かないといい人生を送れないんじゃないのかと。

でも、そうじゃありませんでした。自分が教わってきた常識って実は嘘なんじゃないかと疑い始めたのはその時です。

――この本では、自己啓発書などによくある「夢や目標をもたないといい人生は送れない」というのを「バカシステム」だと喝破しているのが印象的でした。

鈴木:
そうです。「なりたい夢を具体的にイメージすれば実現できる」という言説は本当に色々なところで語られているでしょう。このおかげで、夢や目標がないことに焦りを覚えたり、自分はダメな奴だと思ってしまう人がいるのですが、決してそんなことはありません。

だいたい、夢や目標に向かって一心不乱に努力できる人なんてごく一部の人だけですよ。
夢も目標も持てないのに「何でもいいから夢を持たないと」と無理をして苦しむ人をたくさん見てきました。早くこのバカシステムに気づいて、自分を解放して身軽になっていただきたいです。

「夢」も「目標」もなくても成功者になれる

――「バカシステム」から抜け出した後、人生を成功させるために必要とされる「Xメソッド」についてもお聞きしたいです。

鈴木:
Xメソッドは、実は多くの人がもうやっていることです。たとえば、ビジネスでは解決しないといけないけど、すぐに解決法がわからない問題に出くわすことがありますが、こういう時明確な解決法がわからなくても、解決する努力はやめませんよね。

今はどうしていいかわからないけど、とりあえず前に進もうと。そうすればどこかで解決法が見つかるだろうという前提で、解決法は「X」としたまま、探しながら前に進んでしまう。そうするとどこかのタイミングで解決法が必ず出てくる。これが「Xメソッド」の考え方です。

人生も一緒で、自分が何をしていいかわからなかったら、それは「X」にして、わからないままとりあえず興味の赴く方に進んでみればいい。その時に「もしXがわかったら自分の人生はこんな風に変わるな」というイメージをしてみてください。「生活がもっと楽になる」でもいいですし「こんな出会いがあるだろう」でもいいです。

そうやって「X」の周りを固めていくと「X」はぼんやりと見えてくる。でも、これって誰もが無意識にやっていることなんですよ。

Xメソッドは、成功している人に共通の思考法です。先日、主婦からココナッツオイル販売事業で年商7億円の会社を作った荻野みどり(株式会社ブラウンシュガーファースト代表取締役社長)さんと対談したんですが、「脱バカシステム!」を読んでいただき、「この本、私がやってきたことが全部書いてある!」と驚かれていました。

年商100億円を超える会社の創業者からも、同様の反応をいただいています。
私は理論ありきではなく、成功している人の行動からフィードバックして理論を構成していますので、このような反応は当然だと思っています。

どんなに凄い人でも、最初は、先のことは分からずに進んでいるんです。その最初のきっかけが、ちょとした「ひらめき」だったりするんです。

――まずは自分のひらめいた方向に進んでみる。

鈴木:
いいなと思ったらやるべきです。やってみたその先のイメージができないという理由でやらなかったり、やめてしまったりする人も多いですが、未来のことなんて誰もわからないですよ。「犬も歩けば棒に当たる」ではないですが、動き続けていれば必ず、思わぬ何かに当たります。そこは人間が想像できる範囲ではないんです。

ビジネスで成功した人に取材をしてみると、始めた当初に今ほどの成功を収められると思っていた人なんて一人もいません。成功者にとっても今の自分はかつての自分の想像を超えているんです。

だから、自己啓発書に書いてあることなんてウソですよ。夢なんてなくても、未来の自分のイメージが持てなくても、少しでも興味がある方向に行動してみればいい。行き当たりばったりでいいんです。

――「行動する」というのは、たとえば「今、仮想通貨で皆儲けているから、俺もやってみよう」というような、他人の行動に流される形でもいいんですか?

鈴木:
やりたいならやってみればいいと思います。何も悪いことではありませんよ。もしそれで痛い目にあっても、そこから学ぶことは大きいでしょう。

僕も20代の頃に金の先物に手を出してひどい目にあったことがありますが、やはりその失敗から得たものは大きかったです。儲かった時や成功した時より、痛い目にあった時の方が学びがあります。だから、やってみたいと思ったことはやってみるべきだと思います。

――鈴木さんが考える「成功」の定義も気になるところです。

鈴木:
一般的な意味での成功と、今回の本においての成功は違います。
この本では成功の定義を「どんなときも、心からやりたいと思っていることをやっていて、自分の可能性を常に発見している状態」だとしています。

成功というと、経済的な成功をイメージする方が多いかもしれません。でもお金がある状態を成功だと考えてしまうととんでもないことになる。だって、お金が手に入ったらそこで人生の目的を果たしてしまったことになるわけでしょう。

やりたいことをやって、自分の可能性を感じられる状態にないと、たとえお金があっても幸福感が伴わないんですよ。

――「やりたいこと」ができていれば「夢」がなくても大丈夫、ということですね。

鈴木:
少しでも自分の可能性が見えている時に、人は活き活きします。夢があるかどうかは関係ありません。

毎日子どものお弁当を作るのが好きで、毎日少しずつ工夫を入れて変化をつけることに生きがいを感じているお母さんがいたとして、そのお弁当作りは夢とは別物でしょう。そういう風に生きがいを持っている人に「夢を持たなきゃ」というのは余計なお節介というものです。

夢があるならそれはそれでいいことで、もちろん目指すものに向かって進めばいいのですが、夢がない人の人生が貧しいものだというわけではないということは言いたいですね。

事実、具体的な夢を持っていたわけではないのに、「やりたいこと」をやっているうちに、大きな会社を作ってしまった、ということもあります。

エイベックスの創業者・松浦勝人氏もそうですね。松浦氏は、「私は一度も明確にレコード会社をやりたいと思ったことはない。目の前の面白いことをやっているうちに、いつの間にか、今の位置にいた」と語っています。

私の知人で上場企業の経営者も、「会社をやるつもりじゃなかったけど、成り行きで会社を作ったら、気がついたら上場までしていた」という人もいます。

私の経験では、大きな成果を上げた人でも、最初から明確な目標を持っていなかった人の方が多いですよ。事の大小に関わらず、「やりたいこと」をやることで、自分が想像もしなかった未来(ビヨンド)に辿り着く可能性があるんです。

――本書をどんな人に読んで欲しいとお考えですか?

鈴木:
夢や目標を見失っている人、夢や目標がないことに後ろめたさを感じている人ですね。

目標をもってやってきたのに成果に結びつかないという人にも読んでいただきたいです。
成果が出ないというのは、そもそもの目標設定が間違っている可能性もあります。自分の目標自体が「バカシステム」に基づいたものではないかと見直す意味でも、今回の本は役立ってくれると思っています。

――最後に、今挙げていただいたような方々にメッセージをお願いします。

鈴木領一さんの写真

鈴木:
今はこれまで有効だった様々なバカシステムが崩れてきている時代です。働き方もそうですし、メディアの情報もそう。常識だとされてきたことの中には案外根拠のないことやウソが紛れ込んでいるというのがだんだんわかってきた。

「こうでなければいけない」と信じ込んできた価値観や常識があるなら、それらを一度疑ってみて、不要なものだと思ったら捨ててしまえばいい。少しでもいいなと思ったら、周りの声など気にせずやってみる。自由な生き方をして欲しいと思います。

そうして一歩目を踏み出したら、見える景色はこれまでとは違うはずです。
(新刊JP編集部)

BOOK DATA 書籍情報

プロフィール

鈴木 領一 (すずき・りょういち)

思考力研究所所長、ビジネスプロデューサー。
アメリカのビジネス誌『サクセスマガジン』との共同プロジェクトで、3万人の成功者のデータをもとにした能力開発プログラム「PAC」を開発。
独自の思考法やメソッドを次々と発表。現在、国家プロジェクトへの参画、上場企業との事業、ベンチャー企業への企画支援など、ビジネスにおいて多方面で活躍する一方、メンタルコーチとして企業経営者、プロスポーツ監督、タレントなどへの心理的アドバイスも行っている。著書に『100の結果を引き寄せる1%アクション』。

目次

  1. 第1章 「夢がないと成功できない」は嘘

  2. 第2章 バカシステムから脱出して自由になる方法

  3. 第3章 「想像できない未来」を引き寄せるXメソッド

  4. 第4章 「ひらめき」をフックに行動する

  5. 第5章 行動は1%ずつで構わない

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