――『年収350万円のサラリーマンから年収1億円になった小林さんのお金の増やし方』について。まず本書をお書きになった動機のところからうかがいたいです。
小林:
私は会社員をやりながら、まず不動産投資を始めたのですが、本業以外のビジネスをしたことで人生が変わりました。
もちろん、最初は会社を辞めるつもりはなくて、あくまで収入の柱を増やそうということだったのですが、結果的に収入は増えましたし、その時のやり方は再現性のありそうなものが多かった。それなら、本の形でたくさんの方に知ってもらいたいと考えたのがきっかけです。
――
ぶしつけな質問ですが、本当に「年収1億円」を稼げるようになったのでしょうか。
小林:
今は勤めていた会社をやめて、不動産投資の事業を法人化しているのですが、1億5000万円くらいは利益が出ています。法人化といっても、ほとんど一人でやっている会社なので、「年収1億円」といってしまってもウソではないかなと思います。
――副業をはじめた理由はどんなことだったのでしょうか。
小林:
26歳の時に転職をしたのですが、その時に人生を考え直したんです。転職して会社員を続けること自体に抵抗はなかったのですが、この先も同じように会社員をやっているのはまずいんじゃないかという漠然と不安を感じたんですね。
転職先の会社の上司は、だいたい年収が700万円くらいで、決して低いわけではないにしても、家族がいてローンがあって、ということで3万円くらいのお小遣いでやりくりしていました。
それを見て、自分もこのままだと10年後は同じようになると思ったんです。それはすごくまずいことのような気がしました。それで、月に5万でも10万でも、給料以外の収入を作れないか、ということで不動産を買ったんです。
――サラリーマンの副業は「まず不動産投資」というのが小林さんのお考えです。この理由はどんなところにありますか?
小林:
サラリーマンや公務員の方々は社会的信用があるので、始めやすいんですよ。まずローンが組みやすいですから。
不動産投資というと、マンションを一棟買うようなイメージがあって大金持ちしかできないように思う人もいますが、実際はそんなことはなくて、分譲マンションを一部屋買うところから始められます。自分の身の丈にあった規模で始められるのが魅力です。
それに、不動産を買って、入居者が入って毎月家賃が入ってくる仕組みさえ作ってしまえば、特にやることはないですから、サラリーマンの仕事に支障が出ることはないですしね。
――不動産ビジネスの経験がない人間からすると、物件を買ったはいいけど、入居者がなかなか決まらないという「空室リスク」が怖いです。
小林:
中古でもいいので、都心の区分マンションを買えば、実際はそこまで空室リスクはないと思います。
それと、最近は空室リスクを保証してくれる管理会社もありますしね。
――最初に都心の区分マンションを買って、毎月家賃収入が入るようになったとして、もっと手を広げていきたい時はどんな選択肢がありますか?
小林:
まず区分マンションを買って、家賃収入を得られるようになって、慣れてきたら2つの道があります。同じように都心にワンルームや1LDKの区分マンションをもう一つ買うか、一棟ものにシフトするかというところですね。
ただ、中には都心のワンルームだとかファミリー向けの区分マンションを都心に買うのはあまり魅力を感じないという人もいるんですよ。ローンの支払いや物件の維持管理費を払うと、手元に残るお金は案外少なくて、良くても毎月プラス2万円くらいにしかならないので。
その代わり、都心のマンションは資産価値が下がりにくいため、将来の年金代わりになるというメリットがあるので、私はこちらの方をすすめているのですが、どうしても最初から一棟もので始めたいという人は、地方都市の中心部に一棟買うというのも手です。
同じ部屋数、同じ間取りの不動産が、東京の半分くらいの値段だったりするので。東京で不動産投資をすると、家賃で回収できる利回りがだいたい6%から7%くらいなのですが、地方では12%くらいにはなりますから、キャッシュフローの面からは魅力がありますよね。
――地方は不動産価格が安い一方で、家賃も安いです。それを考慮しても地方の方が利回りがいいということですか。
小林:
そうです。都市によっては10室のマンションを4000万円くらいで買えたりするのですが、家賃を4万円に設定したとして、ひと月40万円で、年間480万円ですから、利回りは12%になります。
これはあくまで空室が出ない前提での計算ですが、地方というのは概してキャッシュフローはいいです。
――今も昔も、不動産は投資先の筆頭格のようなところがあります。それだけに関心を持つ人は多いですが、初心者が犯しがちな失敗例がありましたら教えていただけませんか?
小林:
たとえば、不動産投資を始めた頃の私のように、お給料以外の収入がほしい人が、ワンルームを新築で買ってしまうことです。
ご存知の通り、新築は値段が高いですよね。だからそれを購入して家賃収入を得たとしても、キャッシュフロー的にはマイナス1万円とか、マイナス1万5000円とか、要は赤字になりやすいんです。
ただ、これにはメリットもあって、赤字になって所得が下がるので節税になりますし、そこまで古くならない段階でローンの返済が終わるので、将来の年金代わりになったりします。
だから、失敗かというとそうとも言いきれないのですが、お給料以外の収入がほしいということは、つまり現金がほしいということですから、少なくとも投資を始める目的に対して相応しくないですよね。
――なるほど。
小林:
人によっては、マイナス収支の不動産を買うのはとても有効だったりもするんですよ。
年収が2500万円くらいあるお医者さんは、こういう不動産をガンガン買うわけです。そうすると数百万単位の節税になる。だけど、とりあえず現金が欲しい人には向かないやり方です。
――投資の目的に沿った物件を買うというのは基本ですが、とても重要なところですね。
小林:
逆に、そこさえまちがえなければ、空室リスクなどはそこまで心配することではないですよ。立地がよければ、地価も築年数も関係なく需要はありますから。
たとえば、四谷三丁目駅から徒歩3分のマンションであれば、築3年だろうが30年だろうが、住みたい人はたくさんいる。彼らはそこに永住するわけではないので、築年数を気にする理由はそこまでないんです。
もちろん新しい方がいいに越したことはないのは事実ですが、賃貸契約をする上で致命的なリスクにはならないと思っています。
――ただ、最近はマンション価格は値上がり傾向です。都心ともなると中古でもなかなか手が出ない値段ではないですか?
小林:
それはおっしゃる通りで、5年前や7年前に比べれば値段は上がっています。ただ、プラス収支になる物件がないかというとまったくそんなことはなくて、十分に見つけられます。
――本書では、不動産投資に限らず、様々な副業を紹介されていますね。これらは一通りご自身で経験されたのでしょうか。
小林:
ほとんどは自分でやってみました。ただ、コインランドリー・コインパーキング・トランクルームの運営だけはまだできていないんですよ。セミナーや塾に行ってノウハウは持っているんですけど、狙っている立地を他の人に買われてしまったりして。
――個人的には、コインランドリーはどうにも儲かりそうにない気がするのですが……
小林:
それがそうでもないみたいですよ。洗濯機が一家に一台ある時代に、コインランドリーに需要なんてあるわけないと思いがちですが、昔ながらの汚くてさびれたコインランドリーではない、きれいで快適なコインランドリーは主婦層に受けていて、年間で3%以上市場規模が増えているんです。
というのも、家庭用の洗濯機では洗えないものって結構ありますよね。寝具もそうですし、子どもがスポーツをやっていて洗濯物が大量に出ることもある。雨で洗濯物が乾かない時に、乾燥機だけ使いたい場合もあります。
そういうことも考えると、コインランドリーは結構おもしろいビジネスなんですよ。トランクルームもおもしろくて、毎月の賃料が少額なのでみんなあまり気にせずに荷物をずっと置きっぱなしにしてくれる。
退去後のクリーニングも必要ないですし、不動産を買うわけではないので固定資産税もかかりません。最初の集客が大変ですけど、そこを乗り切れば安定して収入が入るストックビジネスになりえます。
――その他、最近人気の副業などがありましたら教えていただきたいです。
小林:
基本的には自己資金がすくなくても始められるものは流行っていますよね。ローンが組めるという意味では不動産もそうですし、あとはAmazonを使った物販とか。
ただ、物販は睡眠時間を削ってやる覚悟がないと難しいですよ。発送作業や梱包でどうしたって時間は取られますから。
株やFXは稼げる額が大きいので非常に人気はありますし私もやっておりますが、自己資金がない人がやるときついです。経済力がない人がやると、一瞬含み損が出ると我慢できずに売ってしまって、結果負けてしまうんです。やることが悪いとは言いませんけど、やるとしたら潤沢な資金があるか、毎月安定したキャッシュフローを構築した状態であることが前提です。そうでない方が最初に始める副業としては向いていないと思います。
――副業が軌道に乗ってきたら、ほとんどの人は会社を辞めることを考えると思います。このタイミングについて、アドバイスをいただきたいです。
小林:
私は基本的に会社を辞めるというのはおすすめしていなくて、できるかぎり安定収入を維持したまま、あくまでも副業として不動産投資や他のビジネスをやっていただきたいと思っています。会社を辞めて自分で始めたビジネス一本でやっていくよりも、精神衛生的には絶対いいので。
それでしばらくやってみて、本業の収入よりも圧倒的に稼げるようになったら、会社を辞めることを考えてもいいのかなと思います。目安としては、不動産ビジネスであれば家賃収入の手残りキャッシュフローで月100万円くらいですね。
ただ、家賃収入の手残りが月100万円くらいの規模だと、実際のところそこまで時間を取られないんですよ。それなら会社を辞める必要あるのかな、という気はします。
――小林さんは投資についてのセミナーもやっていますが、そういうところにやってくる人は会社を辞めたがるでしょう?
小林:
そうですね。その部分の現実と理想のかい離がある方が多いので、その度に「辞められるレベルにはなれるけど、そうなったからといってすぐに辞めるのは得策ではない」ということを説明しています。
1人でビジネスを運営するとなると、それはもう経営ですからね。そんなに甘いものではありません。
――最後になりますが、これから副業をはじめようと考えている人や、収入を増やしたいと思っていながらも何をしていいかわからない、という人にアドバイスをいただきたいです。
小林:
今、会社員をされている方にとっては、副業で稼ぐというのは自分のコンフォートゾーンから抜け出すことなので、心理的な抵抗は必ずあります。
それは、今よりお金を稼ぎたいという思いをどんなに強く持っている人でもそうで、この心理的抵抗を乗り越えないと人生は変わっていきません。勇気をもって、0を1にするアクションを起こしていただきたいですね。
人間は誰でも臆病ですし、新しいことを始めるのは誰でも怖いんです。でも、今のままでいても、状況が良くなることはありません。
サラリーマンが稼げる収入はせいぜい年収1000万円で、それも全体の3.9%ほど。ほとんどの人がそこまで届かずに、年収数百万円にとどまります。大事な人を守ったり、自分の人生を自分で選んでいくためには、他の収入を作っていかなければいけないのは明らかです。
副業はそれを低リスクで行う最適な方法だということはお伝えしたいですね。
(新刊JP編集部)