『人事評価制度だけで利益が3割上がる!』
大企業グループの守られた環境の中で感じた「不安」
鬼頭: この本の著者の方は管理職をずっと経験されている年配の方なのかなと思っていたら、高橋さんはまだお若いんですね。
そうですね。20代の頃からそれなりに規模の大きい会社の副社長をやっていたので、多少老けこんでるかもしれないです(笑)。
鬼頭: いえいえ(笑)。でもその会社からは転職されたんですよね。成功されていた会社を辞められて、その後全くの異業種に携わるようになったのはどうしてですか?
その理由がまさにこの本のテーマにも繋がってくるんですけど、以前の会社は日本の大企業グループという事もあり、年ごとに年収が80万円くらいずつ上がっていくという、いわゆる年功序列式で、かなり守られた環境の中にいたんです。言ってしまえば自分の実力が上がらなくても勝手に給料が上がってしまうという……。この環境が私には「不安」に思えたんですよね。ラッキーではなく。
鬼頭: なるほど。私はたぶんラッキーだと思ってしまいますね(笑)。
そうですよね。そのあたりの感覚が他の方と少し違うのかもしれません。自分はこの会社でしかやっていけないんじゃないかと考えたときに危機感を覚えたんですよ。そこで転職活動を始めたんですが、業界云々よりも、社歴が浅く、あらゆる面で確立されていなくて、いつ倒産するかも分からないような会社をあえて選びました。「自分の実力で人生を背負っていけるような強い人間にならないとダメだ」という本能から生まれた意思決定だったと思います。
人事評価制度に欠かせない「目標の共有」
鬼頭: 本のタイトルにあります「人事評価制度」とはどのような制度なんですか?評価される側にしかなったことがないので全体像がイメージしにくいのですが……
シンプルに言うと、ある目標を雇う側と雇われる側が互いに合意をして、その目標に対する到達度によってきちんと報酬が支払われる、たったこれだけのことなんですけど、実は多くの会社がこれを成し得ていません。
鬼頭: そうなんですか!?目標とかはどこの会社にでもありそうなものですけど。
ありそうで、実はないんです。
鬼頭: 目標が大き過ぎるとか、そういう事なんでしょうか?
それもありますけど、多くの場合は目標が抽象的過ぎる事ですね。目標というものをこと細かく設定していないがゆえに、人によって解釈が違ったりする事もあれば、毎年更新されていく目標をきちんと共有していないがために、個々の間の認識にずれが生じてしまっている会社がたくさんあります。
人事評価制度の誤認識が労働生産性を下げる?
鬼頭: 高橋さんが推奨されている人事評価制度では、具体的にどのような形で評価を行うんでしょうか?
まず「目標」という観点で言うと、数値に基づく結果だけを目標にするのではなくて、そこに行き着くための過程も軸に入れます。ですから目標に行きつくまでのプロセスと最終的な成果、この2つの軸で目標設定をするという事が1つ目の特徴ですね。「評価」という観点で言うと、多くの会社が「相対評価」を採用している中で、私たちが推奨しているのは「絶対評価」です。
鬼頭: 周りの成績は関係なく、自分の成果次第で給与が変動するということですね。 確かにその方がやる気が出るかも……。
おっしゃる通りです。中高生たちもどちらかと言われれば「絶対評価」の方が頑張れると言うんです。また、逆説的に言うと、今の日本って先進国の中では労働生産性が低いと言われているんですけど、その理由の一つが、「人事評価制度の過ち」だと私は考えています。この本のタイトルにはそういった意味も込められているんです。
鬼頭: なるほど!「人事評価制度だけで利益が3割上がる!」とありますが、この「3割」という数字には何か意味があるんですか?
この数字は、私たちの評価制度を導入されている約1000社の企業様の実例です。2倍~3倍となっていく会社さんもあるんですが、平均すると3割くらいは利益が上がっていますね。なので「3」というのは、なんとなくキャッチフレーズとして用いたわけではなく、実績になります。