新時代の軽やかなリーダー論
無重力リーダーシップ

無重力リーダーシップ

著者:礒谷 幸始
出版:クロスメディア・パブリッシング
価格:1,738円(税込)

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本書の解説

この部署を率いてほしい。
次のキャプテンをやってほしい。
生徒会長に立候補しない?

学校でも会社や組織でも、ある集団を率いる「リーダー」になってほしいと頼まれて、二つ返事で「やります」と言える人はきっと多くない。ほとんどの人は「自分には荷が重い」「大変そう」「資質がない」と考えて尻込みするだろう。

きっと脳裏には有名な経営者や起業家、スポーツ選手といった「理想のリーダー」がちらつき、「自分はとてもそこまでの人間ではない」となってしまう。でも、結論を待つのは少し待ってほしい。

本当にリーダーには人並外れた才能が必要なのだろうか?それに、「理想のリーダー」として頭に浮かぶ面々は、あなたのチームに入っても「優秀なリーダー」でいられるのだろうか?

「あるべきリーダー像」に当てはまる人間はほぼ存在しない

『無重力リーダーシップ』(礒谷幸始著、クロスメディア・パブリッシング刊)は、現代のリーダーのあり方についてこんな問いを投げかける。そもそも、上位下達式のリーダーシップが淘汰され、リーダー像が多様化している現代において「リーダーに欠かせない資質」などもはや存在しない。ましてAIがさまざまな質問に答えてくれる時代である。リーダーはもはや「ある一握りの人々」にしか務まらない役割ではなくなり、敷居がグッと低くなっているはずだ。だとしたら、リーダーというものをもっと自由に、もっとカジュアルに考えていいはずだ。そんな考えから、本書では「無重力リーダーシップ」を提唱している。

リーダーシップについての一般的なイメージはどのようなものだろう。
・グループや組織を導き、目標達成に向けて推進する力
・人を惹きつけて団結させるカリスマ性
・自分のビジョンや考えを明確に伝えるコミュニケーション能力
・チームの問題の本質を見抜き、対処する問題解決力
・新しいアイデアを生み出す革新性
その他にも人間関係構築力やミッションをクリアするための情熱、倫理性などもイメージできるかもしれない。

これらの力のいくつかを備えている人はいるかもしれない。しかし、すべてを高いレベルで備えている人は超人である。一人の人間がこれらすべて持っていることなど、およそ考えられない。頭の中で勝手に思っている「リーダーとはかくあるべき」というリーダー像に当てはまる人間は、実は存在しない。そう考えると、リーダーシップを気楽に考えられるのではないか。

誰もがすでに「リーダー」である

もう一つ、「自分にはリーダーなんてとても無理」と思っている人であっても、日常生活の中で必要に応じてリーダーシップをとる瞬間は必ずある。つまり、すでに誰もがリーダーを経験しているのである。

たとえば、「今週末、仕事終わりに飲もうよ」と同僚を誘って飲み会を設定するのだってリーダーシップだし、飲み会を始める時に「何飲む?ビールの人」と注文をまとめるのだって一種のリーダーシップだ。カップルにおけるプロポーズもどちらかが主導しているという意味でリーダーシップである。

何もスポーツ競技のキャプテンや経営者、管理職だけがリーダーシップを求められるのではない。リーダーシップとは生活の端々で、私たちがすでに発揮しているものなのである。

それは上司が部下に発揮することもあれば、部下が上司に発揮することもあり、子どもが親に発揮することもある。上から下の一方向ではなく、多方向に向けられる点で、リーダーシップとは「無重力」なのかもしれない。そして、上記のようにビジネスだけではなくプライベートのごく近しい人間関係のなかでもリーダーシップが必要とされ、実際に使われていることを考えると、リーダーシップは個人が幸せに生きるために必要とされる能力だともいえるだろう。



生活や仕事の場面に応じて、誰もがすでにリーダーの役割を果たして、リーダーシップを発揮している。チームを率いたり、部署をまとめることは、こうしたことの応用にすぎない。このようなリーダーシップの本質を理解すれば、仕事やスポーツでリーダーの役割を担うことへの抵抗や気負いは少なくなるはず。

では、この「無重力リーダーシップ」をビジネスの場面に応用していくためには、どんなことを知り、何をすべきなのか。本書を手に取って確かめてみてほしい。

インタビュー

■リーダーシップってアプリみたいなものかもしれない

『無重力リーダーシップ』は、堅苦しく考えがちな「リーダーシップ」が身近に感じられるようになる一冊です。礒谷さんは社会人までアメフトをされていて、学生時代から常にキャプテンをされていたとのことですが、当時のリーダーシップについての考え方はどのようなものでしたか?

礒谷: 学生時代はそれこそ「俺についてこい」ですよね。スポーツの世界ってプレイヤーとしての実力があると威張るじゃないですか。「すごい人ならどうしようもないけど、たいしたことない人が偉そうにすんなや」みたいに。若い時はそんな感じでしたね。

それが小中高、そして大学社会人とアメフトを続けて、その後ビジネスの世界で戦う過程で変わっていかれた。

礒谷: やっぱり今言ったやり方で全部うまくいくわけじゃないので、PDCAを回すじゃないですか。バージョンアップを繰り返して今に至る、という感じです。

そもそもリーダーシップってメンバーによっても違うじゃないですか。以前に「AKB48 CAFE」の立ち上げに携わったことがあるのですが、相手は「カフェっ娘」と呼ばれる女の子たちです。そういう女の子たちにどう教育研修をしていくかっていうと、やっぱり体育会と同じようにやったらダメです。だから、基本的にほめて、「その爪かわいいじゃん、どうしたの?」とか、ギャル男のようなコミュニケーションをとっていました。

遅刻した子がいたとしても、昭和の体育会なら「坊主にせえ」ですが、こちらは「明日からがんばろうね」です。メンバーによってリーダーシップはこれだけ違うんです。

まさに、本書にあったような「リーダーシップはOSではなく、アプリを入れるようなものかもしれない」というお話ですね。ただ、みんなが礒谷さんのように器用にできるものなのかという疑問もあります。

礒谷: これはまず他の人がやっているリーダーシップを観察して取り入れて見るのがいいと思います。自分には出来ないでなく、まずは真似してみることですね。相手のタイプによってリーダーシップって変えられるといいですよね。例えば、相手のタイプによってデートの誘い方一つでも違いますよね。

リーダーシップも同じことで、若い女性が相手のリーダーシップと、全員60代以上のメンバーが相手のリーダーシップは違いますし、性格によっても違います。ケースバイケースで正解はありません。でも、デートの話であったように、それってみんな多かれ少なかれやっているんですよ。

デート以外にも飲み会の幹事など、どんな人でも日常生活の中でリーダーシップをとる場面があるというお話は本の中でもされていましたが、こうした日常生活の中のリーダーシップを、たとえば「仕事で大きなプロジェクトを任された時にどうするか」など、ビジネスシーンに導入していくためのアドバイスをいただければと思います。

礒谷: まずはメンバーをよく観察すべきでしょう。どういうメンバーがいて、その人と自分の関係性はどうなっていて、チームの存在意義とゴールがある。そういったことを整理する。自分ならまずそうします。

あとは相互理解です。これは自分が自分自身を理解することも含まれます。マネジャーが受ける研修の基礎として「自己理解」がありますが、これが一番難しいと言われています。今の時代なら、外部にその道のプロであるメンターがいることが重要かなと思います。

■リーダーシップに正解はない だからこそ楽しめばいい

「リーダーシップはOSというよりアプリのようなものかもしれない」と指摘されていました。これは「リーダーはあるべき資質ばかり重視するのではなく、その場に応じたコミュニケーションを」という理解でいいのでしょうか。

礒谷: そうではありません。OSのバージョンアップって大変ですよね。人間でいうOSは考え方や在り方の話だと思いますが、それを変えようとするには大変な思いや今までの成功を手放す勇気がいります。

リーダーシップはOSとなる基本的な考え方や在り方を変えるような大きなことではなく、アプリケーションをインストールしてみるようなことだと思います。アプリケーションってインストールして一旦使ってみないと良し悪しがわからないですよね。それだけ気軽で楽しいものだということを伝えたかったんです。

礒谷さんご自身、リーダーシップで失敗したり、壁にぶつかったエピソードがありましたら教えていただきたいです。

礒谷: 私が初めて仕事でリーダー職になったのは27歳の時だったのですが、当時の部下に42歳の人がいたんですよ。向こうからしたらいきなり15歳下の若造の下についたわけです。それはうまくいかないですよね。

性格も水と油で、私はパッショナブルにチームを率いるタイプだったのですが、相手は冷静なタイプというか、こっちが盛り上げても「そういう暑苦しいのはやめてもらっていいですか」みたいな感じでした。結局その人とはうまく信頼関係を築けなかったのですが、リーダーシップについて考えるきっかけにはなりましたね。当時は「こいつが悪い」と思っていたのですが、そういう考えだとリーダーシップを発揮できる人の数が限られてしまうじゃないですか。

それに、スポーツのチームと会社ではメンバーのモチベーションも違います。私は日本一になったチームにいましたから、基本的にはメンバーの勝利へのモチベーションは高いわけです。でも、会社だと休日を楽しみに嫌々働いている人もいますよね。そうすると、やっぱりマッチするリーダーシップも変わってくる。

確かにそうですね。

礒谷: でも、そうやって考えると、リーダーシップって奥深いと思いませんか?

奥深いです。それにリーダーシップというものがすごく難しいように思えてきます。

礒谷: それは、おそらく失敗が頭にあるからでしょうね。でも、正解なんてないですし、失敗してもいいじゃないですか。「もっと気軽にチャレンジして、気軽に失敗しようぜ」っていうメッセージもこの本にはあります。

リーダーになるのを尻込みする理由として「自分には資質がない」と考えて自信を持てないことだけでなく「リーダーになるメリットがわからない」というのもあると思います。礒谷さんが考えるリーダーのメリットや醍醐味のようなものはどのようなものですか?

礒谷: リーダーの醍醐味やメリットは、正直会社によるところが大きいので、ここでお話しできることはありません。

ただリーダーシップは、これまでのお話にもあったように、恋愛や遊び、飲み会など日常生活のさまざま場面で誰もが発揮している能力ですから、この能力を高めることは誰かを喜ばせたり、自分の人生を楽しくすることにつながります。リーダーシップは自分を幸せにするためのものなんです。

最後に、読者の方々にメッセージをお願いいたします。

礒谷: リーダーシップは正解がないものです。だからこそ、肩肘張って考えずに、もっと気軽にチャレンジしてほしいですね。正解がないのだから常にバージョンアップすればいいですし、それ自体を楽しめばいい。

そして、今の話にあったように、自分が幸せに生きるためにリーダーシップは少なからずあって損はないものです。だから、この本で一番に伝えたいことは「幸せになろうよ」なんです。

(了)

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. リーダーシップという「宇宙」へようこそ
  3. 第1章
    「無重力リーダーシップ」とはなにか?
  4. 「リーダーシップ」からどんな言葉が想像できるだろうか?
    なぜ、「リーダー像」は2000年間同じなのか?
    「リーダーシップがある人」とは、どんな人なのだろうか?
    なぜ、「リーダーシップ」に資格がないのか?
    「リーダーシップ国家資格」があるなら、検定試験にどんな問題が出るだろうか?
    「自分と違うタイプの人」に対してリーダーシップを発揮するには、どうするか?
  5. 第2章
    「無重力リーダーシップ」を実装する―ブラストとモメンタム
  6. リーダーが変われば、なにがどう変わるのだろうか?
    「世界に一人のいまのあなた」を形づくった大きな出来事はなにか?
    「あなたらしさ」を形成した人は?
    あなたにとって、「いい流れ」を生み出したブラストはなにか?
    ブラストを起こすにはどうすればいいか?
    「力んでいる人」の力みを抜く方法とは?
    「いいモメンタム」の要因はなにか?
  7. 第3章
    「無重力リーダーシップ」が社会を変える
  8. なぜ、あなたは働くのか?
    「自分が成長できる会社」とはどんな会社なのだろうか?
    ビジネスの「勝ち」とはなにか?
    あなたの人生における KGIとKPIはなにか?
    リーダーはメンバーに対して、「チーム優先で」と言うのか、「自分優先で」と言うのか?
    なぜ、学校で 「リーダーシップの授業」が行われないのか?
  9. おわりに
  10. 無重力リーダーシップのアプリをダウンロードすれば、人生はもっと楽しくなる

プロフィール

竹内 亢一
竹内 亢一

礒谷 幸始

株式会社リード・イノベーション代表取締役
1981年、千葉県生まれ。私立江戸川学園取手高校から立命館大学経営学部へ進学。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、主将としてチームを大学史上初の日本一に導く。卒業後は日本アイ・ビー・エム株式会社に入社し、営業活動をしながら社会人アメフトXリーグ1部所属IBM BigBlueのキャプテンとして常勝チームへと成長させる。営業マネージャー、アメフトチーム創りの経験から、人や組織を成長させることに興味を持ち、その後は人事としてエンターテイメント企業、東証1部飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを務め、飲食チェーン企業では2年間でエントリー数を5倍以上にするなど、採用難易度の高い業界で次々と採用を成功させる。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任。150社以上のクライアント企業の幹部メンバー達と対峙した実績をもとに、クライアントと向き合いながら自社の史上最高のチーム創りも研究。同時にベンチャーキャピタリストとして、成長ベンチャー企業の支援を行っている。著書に『1万人を面接してわかった上位5%で辞めない人財を採る方法77』(プレジデント社)がある。

無重力リーダーシップ

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著者:礒谷 幸始
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