暮らしが豊かに進化する「スマートホーム」の全貌
鍵のいらない生活 スマートホームの教科書

鍵のいらない生活 スマートホームの教科書

著者:小白 悟
出版:クロスメディア・パブリッシング
価格:1,628円(税込)

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本書の解説

IoTの活用によって私たちの生活は大きく変わりつつある。とりわけ、分かりやすいのが生きる上でのベースとなる住空間の変化だ。

「スマートハウス」という言葉を聞いたことがあるだろう。電気の見える化、効率利用によって、節電や環境負荷の低減を目指す住宅のことだ。しかし、今や住まいのスマート化はそれだけにとどまらない。これからの時代のスタンダードは「スマートホーム」だ。

『鍵のいらない生活 スマートホームの教科書』(小白悟著、クロスメディア・パブリッシング刊)は、そのタイトルの通り「スマートホーム」とは一体何かを分かりやすく解説した一冊。そして、スマートホーム化によってどのように生活が変わるのか、どんな未来が私たちを待っているのかが書きつづられている。

では、スマートホーム化によって私たちの生活はどう便利になるのか。本書をのぞいてみよう。

そもそも「スマートホーム」とは一体何なのか?

本書で定義されている「スマートホーム」は次のようになる。

IoTやAIなどのテクノロジーを駆使して、便利で快適、そして安心・安全な暮らしを実現する住宅。もう少し砕いて言うと、さまざまな家電、設備をインターネットでつなぎ、人工知能などの先進技術で私たちの暮らしをサポートしてくれる住宅(p.18-19より引用)

つまり、「IoT×ネットワーク×住宅」の掛け合わせが「スマートホーム」だと言える。
「スマートハウス」が省エネ対策に特化した住宅と考えれば、この「スマートホーム」はより生活に根差したレベルでIoTやAIを活用し、暮らしを便利にする住宅となる。

では、具体的に住まいをスマートホーム化することによってどんなことが起こるのか。

●玄関をスマートロックにすることで、鍵の紛失リスクから解放
外出するときに、外から帰ってきたときに「鍵がない!」と焦った経験がある人は少なくないだろう。最先端の「スマートロック」ならそういったことも起こらなくなる。スマートフォンのアプリやテンキーによる暗証番号、指紋認証、顔認証などで施錠・解錠ができるようになり、鍵にまつわるトラブルがなくなるのだ。
また、インターネットと接続することで、ちゃんと施錠されているかが遠くにいても把握できるようになる。これによって、心配になって一旦帰宅するということもなくなり、心理的負担の軽減につながる。ほかにも宅配の受け取りや訪問者の確認なども遠隔で行うことが可能となる。

●自動で開閉するカーテンで睡眠の質を改善
スマートホーム化のメリットの一つが、より効率の良い健康管理が可能になるということだ。
例えばエアコンの赤外線リモコンをスマートリモコンに登録することで、スマートフォンのアプリからエアコンを操作できるようになる。離れた場所から健康管理ができるということもあり、高齢の両親を持つ人に興味を持たれるという。
また、セットした時間に自動で開閉するスマートカーテンを使って睡眠をコントロールするということもできる。朝、決まった時間にカーテンが開くように設定することで、朝日を浴びながら気持ちよく目覚められ、生体リズムの調整にも役立つという。

●時短・節約もスマートホーム化で手にできる
テレビやエアコン、照明やお風呂など一つ一つにリモコンやスイッチがあり、それを探して押していくだけでもそれなりに時間がかかる。それが今までは当たり前のことだったが、スマートホーム化はそうしたコストを削減してくれる。
また、ロボット掃除機は出かけている間に掃除を終わらせてくれる。さらに、冷蔵庫をインターネットと接続し、アプリと連携することで常時、中に入っているものを確認することができ、買い忘れや買い過ぎを防ぐことができる。時短や節約にもスマートホームは一役買うのだ。

 ◇

この他にも防犯・セキュリティ面での効果や、離れて暮らす家族とのコミュニケーション、リモートワークなどにも効果を発揮するのがスマートホームだ。

本書には実際に導入するにはどうすればいいのか、自分でスマートホーム環境を導入するときに気を付けるべきポイントなども書かれており、住まいをより便利にしたいと考えているスマートホーム初心者にとって参考になるはず。
スマートホームの例を読みながら、自分の住まいのこれからについて考えてみるのもいいかもしれない。

(新刊JP編集部)

インタビュー

■認知度は高いスマートホームだが、課題は「通信環境」

近年注目を集めつつある「スマートホーム」についてお話をうかがっていきます。まずは「スマートホーム」と「スマートハウス」の違いからお聞かせください。

小白: まずは「スマートハウス」ですが、これはエネルギーに有効活用を主眼に置いた住宅のことです。省エネや畜エネといった機能を備えた、いわゆる「エコ住宅」ですね。一方の「スマートホーム」は、IoTを取り入れた住宅のことです。家の中にテクノロジーを導入して、私たちの暮らしを便利に、快適にしていくというもので、大きな違いがあるんです。

アメリカでは「スマートホーム」の普及が進んでいるとされています。日本での普及は現在どの程度進んでいるのでしょうか。

小白: スマートホーム(IoT)家電情報サイト「BENRI LIFE」が先日発表した「スマートホーム家電の認知率・利用動向」の調査では、スマートホーム家電の認知率は73.6%に達していながらも、実際の利用経験がある方は10.9%に留まるという結果が出ていました。(*1)
海外では、特に欧米や韓国では住宅の半数がスマートホーム化されているとされていますが、日本ではまだそこまで普及していないというのが実情です。

ただ、確実に広がりは見えていて、東京オリンピックをきっかけに一段階変わった感じはあります。まだネットワーク環境の脆弱性など課題は多いのですが、これからそういった課題をクリアしていって広がっていくのではないかと考えています。

ネットワーク環境で言うと、コロナ禍以後のリモートワークの普及なども環境整備の後押しになったのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

小白: そうですね。打ち合わせもZoomやGoogle MeetといったWeb会議ツールなどを使って自宅から参加するという機会が増えました。こうした社会の変化がスマートホーム化への後押しになっていることは事実だと思います。

また、コロナ禍以後というところで言うと、離れた場所に住む家族や友人とのコミュニケーションに対する通信環境整備の需要も高まりました。特に家から出られないご年配の方が、お孫さんの顔を見るためにスマートフォンやタブレット、パソコンを使うことが多くなったと思います。

その一方で住宅の中の通信環境が悪く、インターネットにつながりにくいといった声もありました。それはスマートホーム化を進める上でも大きな課題となる点ですね。

小白さんが代表取締役を務めている三和テレムでは、スマートホーム導入の事業を手掛けていますが、どのような経緯でこの事業を始められたのでしょうか?

小白: これは二点あります。まず、三和テレムは主に情報通信工事を手掛けている会社なのですが、ここ10年ほどWi-Fi通信環境整備のニーズの高まりを強く感じていました。さらに新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、自宅の通信環境を整えなければいけない人が増えたこともあり、そこからビジネスモデルが確立していきました。

もう一点は、私自身が不動産のオーナーをしているのですが、不動産の新しい付加価値としてのスマートホームの可能性を考えたことです。少し前で言うと、ドアホンやオートロックが不動産の強い付加価値となっていた時代がありました。どちらも今では広く普及していますが、スマートホーム対応も新しい付加価値として期待できるものです。実際に結果も出てきていて、本の中でも書かせていただきました。

スマートホーム化のニーズの高まりを感じられていたわけですね。

小白: そうですね。それに自分の親を介護した経験や、自分の不動産に入居している高齢者が熱中症で亡くなったという経験からも、IoTで介護の負担が軽減や、見守りでの気づきの機会が増えるなど有効性が高いので住宅へのIoT導入の必要性を強く感じていました。スマートホーム化は難しいものではないので、そうであればこれはすぐに対応すべきだろうと。

高齢者向けの住宅のスマートホーム化のニーズは高いと思います。

小白: そうだと思います。温度管理や湿度管理が自動でできたり、ネットワークカメラや転倒検知センサー、動体センサーなどを利用して緊急時に迅速に対応できる環境を整えることが必要でしょう。また、遠隔でご両親の安否を確認できることも大切なことです。

ただ、高齢者の方の場合、通信環境が整っていないことが多く、その点はこれからクリアしていかなければいけませんし、スマートホームと言うとすごく難しく捉えられてしまうこともあります。ただ、細かいことは分からなくても、いかに生活が便利になるかを理解していただくことが大切ではないかと思います。

小白さんがお考えになるスマートホーム化のメリットを教えてください。

小白: 個人の生活としては便利になる。これが第一です。また、先ほど不動産について触れさせていただきましたが、不動産のオーナーにとっては物件の新たな付加価値になります。ただし、費用対効果が悪ければ導入はしないでしょう。その点についても、以前と比べると電子機器が安価になっていますし、通信環境も整ってきているので、今のタイミングが導入にちょうど良いように思います。これが10年前であれば見向きもされなかったでしょうね。

■テクノロジーの進化で私たちの生活はどう変わっていく?

住宅のスマートホーム化のメリットについてお聞きしましたが、まだハードルが高い部分があるとしたら、どのような点になりますか?

小白: やはり通信環境ですね。通信環境が整っていない住宅のスマートホーム化はとても難しくて、かなりコストがかかってしまうんです。そこが一つのハードルになっているように思います。

また、スマートホームを導入するにあたって、誰にノウハウを聞いたらいいのか分からないという方もいらっしゃいますし、導入したあとの保守をどうすればいいのか悩んでいるという声も聞いています。

そういった声に対してはどのように対応されているのですか?

小白: 弊社では「IoTele」というスマートホーム化のトータルプロデュースの一環でスマートホーム統合アプリを開発しました。すべてのスマート家電をそのアプリ一つで管理、操作できるようにしています。また、IoTの導入支援も行っていて、インターネット回線の開通から保守までワンストップで対応しています。

実際に住居のスマートホーム化を進めるとなると、どの程度の費用を想定すればいいのでしょうか。

小白: これは弊社の事業での基準となりますが、一部屋あたりだいたい25万円程度になります。スマートキーやスマートセンサーを導入しながら、その額の中で対応できるスマートホームの内容を勧めさせていただいています。

また、部屋数が多くなるとその分プラスでかかりますが、新築の賃貸住宅であればWi-Fi環境が整備されていれば、そのくらいの費用できると思いますので、費用対効果にも良いと考えています。

また、例えばAmazon Alexaと連携させたり、ボタンを1個押すと全部電気が消えるようにしたいというようなニーズにも一通り対応できます。

IoTの活用には機器の故障リスクがありますが、その点についてはいかがでしょうか。

小白: おっしゃる通り、機械ですので故障リスクは避けられません。ただ、その点に関しては信頼できる会社に保守を依頼したり、契約の段階で確認することが大事だろうと思います。

また、スマートホーム化をDIYで取り組んでいる方もいらっしゃると思いますが、ECサイトで安価な機器を購入したりすると、保証がついていなかったり、サポートが十分でなかったりすることもあるので、注意が必要ですね。

特に電気用品の場合、PSEの取得を示すシールなどが貼ってあるはずです。PSEマークはACアダプターなどの「特定電気用品」を示すひし形と、それ以外の電気用品につけられる丸型の2つのマークがあり、取得は義務となっています。ただ、大手のECサイトであってもPSEマークがない製品が流通していることがあります。

PSEマークがない製品が流通していると、輸入・販売した事業者には罰金が課され、製品は全回収となります。つまり、購入された方も影響を受けることになります。

DIYスマートホームの注意点は本書でも書かれていますが、気を付けるべきポイントがあるわけですね。

小白: そうですね。だからDIYで取り組むならば、そういったリスクがあることを念頭に置くべきです。

本書ではスマートホームに限らず、テクノロジーの進化によって今後どのような変化が起こるかについてもつづられています。小白さんが考える、これからの私たちの暮らしの変化の可能性について教えてください。

小白: 今は日進月歩ではなく、「秒進分歩」といわれるような時代です。スマートフォンの普及はあっという間でしたし、今ではみな当たり前のように使いこなしていますよね。そしてどんどん進化している。そこから考えると、10年後、20年後にスマートフォンはもうなくなっている可能性も考えられると思います。

さらに、IoTからIoB(Internet of Bodies/Behavior)という流れが加速していき、スマートグラスをはじめとしたウェアラブル端末であったり、チップを身体に埋め込むというようなことも普及していくでしょう。より実利的で、身体の一部となってなじむようなデバイスが広がるというわけです。

また、もう一点挙げたいのが自動運転の技術ですね。自動運転のタクシーが家まで迎えに来て、そのまま目的地まで連れて行ってくれるという話になれば、まさに「移動するリビングルーム」のように利用されるでしょう。移動時間がより有意義なものになり、私たちの生活も一変すると思います。無人ですから、料金も今より廉価にできるかもしれないですし、より便利に使いやすくなるはずです。

では、スマートホームという点にしぼったときに、今後私たちの生活はどのように便利になっていくのでしょうか。

小白: 例えば「空飛ぶベッド」ですが、これはアメリカのバンブルビー社が提供している家具の一つで、天井に収納することができるんです。寝る時にだけベッドを降ろして、普段は天井に上げてスペースを有効活用する。そういった形で、収納の概念が変わったり、空間の効率的な利用がより進む可能性があります。

また、5G、そして6Gに続く移動通信規格の進化は、住宅にもより大きな影響を及ぼしていくと考えられます。今はオンライン会議も二次元の画面で行っていますが、三次元での会議ができるようになることも考えられます。つまり、一人ひとりは離れた場所にいても一緒にいるような状況で会議ができるようになるわけですね。

三次元でのオンラインコミュニケーションができるようになると、居住スペースの使い方も変わってきます。これまでは仕事場と住居は分かれているのが当たり前でしたが、そうではなくなり、住宅兼仕事場としてのニーズが増えてくるでしょう。通勤も必要なくなり、生活スタイルにも大きな変革が起こるはずです。

『鍵のいらない生活 スマートホームの教科書』という本をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

小白: 私の願いとしては、皆さんにスマートホームを導入していただき、生活を豊かに便利にしてもらいたいというところがありますが、特に高齢者の方や、高齢の両親がいるお子さんたちに手に取ってもらい、スマートホームに興味を持っていただきたいです。

おそらく、生活の中で不便さを感じる部分があるはずですし、もっと便利にしたいと思っている方も多いと思います。そのソリューションとしてスマートホームの導入があるのですが、その導入の仕方が分からないという声も多数いただいています。本書ではその点も丁寧に書いたつもりですので、導入のきっかけにしてもらえると嬉しいですね。

どのように便利になるのか、どう生活が変わるのか、気づいていない部分にも気づける一冊となっています。

小白: そうですね。この本を読んで「今ってこんなことができるようになっているんだ」ということを感じ取ってもらえたらありがたいです。

まさに入門書となる本ですね。

小白: はい。また、もう一点、不動産のオーナーの方々にもぜひご一読いただけるとありがたいです。私自身が賃貸物件でスマートホームを導入して集客に成功しましたし、不動産の売却にも活用しました。そういった体験談もあるので、もし、興味がある方はぜひ本書を読んでいただき、個別にお話しする機会があれば、お話をさせていただきたいです。

(了)

【参考ウェブサイト】
*1…【スマートホーム家電の認知率・利用動向】10,488人アンケート調査|日本のスマートホーム市場の動向レポートを発行(BENRI LIFE)

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. 鍵のいらない生活 スマートホームで実現する豊かな生活
  3. シーン別。今日から始める快適なスマートホーム生活
  4. 住んでよし・管理してよし・売ってよし・持ってよしのスマートホーム
  5. スマートホームだけじゃない2030年の未来像
  6. あとがき
  7. 謝辞

プロフィール

小白 悟(こしろ・さとる)
小白 悟(こしろ・さとる)

小白 悟(こしろ・さとる)

株式会社三和テレム 代表取締役 電気通信工事業。
1966年生まれ。千葉県出身。東海大学工学部経営工学科を卒業後、大手通信機器メーカーへ入社。資材部・バイヤーとして勤務する。1992年に同社を退職し、父の経営する株式会社小白通信建設(現:三和テレム)へ入社。
通信工事技術で業界トップを目指すも、己の不器用さに挫折を経験。翌年、追い打ちをかけるかのように大事な仲間を不慮の事故で失い、痛烈な批判を受ける中、社員・協業の職人と地道な対話を続け、安全・安心を最重要視する会社へと改革を進める。2005年、代表取締役に就任。
2020年、義母が入所する介護施設で夏に誤って暖房が入り熱中症になりかけている姿を目の当たりにしたことをきっかけに、安心・安全に加え、誰もが快適な住空間を手にするにはどうしたらよいかを徹底的に考える。たどり着いたのは、自社で50年培ってきた「通信」「電気」「建物管理」の専門知識を掛け合わせた住まいのスマート化。以降、スマートホーム化推進事業に取り組み、2022年にフルスマートホーム化の賃貸マンション11棟の建築に携わり、スマートホーム普及に尽力。自身もマンションオーナー兼不動産投資家としてその内の2棟を建築し、1棟は満室、もう1棟は売却とスマート化による成果を着実にあげている。現在は、更なる棟数の建築に加え、一般家庭や福祉分野・商用施設への普及・協業を計画している。

鍵のいらない生活 スマートホームの教科書

鍵のいらない生活 スマートホームの教科書

著者:小白 悟
出版:クロスメディア・パブリッシング
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