脱・高収入貧乏
著者:永田 智睦
出版:幻冬舎
価格:1,650円(税込)
著者:永田 智睦
出版:幻冬舎
価格:1,650円(税込)
高収入の一つの目安となるのが「年収1000万円」。
ビジネスパーソンにとって、誰もが頭の片隅にある数字である。
しかし、年収1000万円を得るようになると、果たして生活は豊かなのだろうか。もちろん、それは人による。そしてそのほとんどが「マネーリテラシー」にもよるのである。
今の日本の課税制度は、収入の高い人に対してあまりにも厳しくなっています。
高所得者を狙い撃ちにするような税制改正が続き、年収1000万円の人でも税金や社会保険料を引いた手取りは700万円台前半となっています。
『脱・高収入貧乏』(永田智睦著、幻冬舎刊)は高所得者をめぐるこんな実態を指摘。高い収入を得るためには努力が必要な一方で、思い描いたような生活を送れていない、としている。
実際、日本の年収1000万円の人は驚くほど資産を築けていない。「老後2000万問題」が取り沙汰されているにもかかわらず、令和3年に行われた金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」〔二人以上世帯調査〕によると、年収1000万円~1200万円の二人以上世帯の金融資産額は資産2000万円未満が約59.2%、1000万円未満が35.4%となっている。年収からすると、もっと多くの資産を築いていてもおかしくないはずだ。
その理由はさまざまだ。外食や旅行、子どもの教育費などで出費がかさむケースもあれば、仕事が多忙で、必要最低限のマネーリテラシーを身につけておらず、怪しい儲け話に乗って損をしてしまったケースもある。もちろん、収入の多さから家計意識を持たずに使いたいだけお金を使ってしまっているケースもある。
しかし、いかに高所得者でもお金ついてのリテラシーは必要。資産を残したかったら、高所得者こそお金との向き合い方を考えるべきだろう。
たとえば、会社勤めの高所得者であれば、ボーナスは高額になる。このボーナスによって金銭感覚が狂ってしまう人は案外多いのである。ボーナスが近いからということでゆるんだ財布のヒモは、翌月になっても急に締まるものではない。なんだかんだでボーナス支給されたあとも浪費を続けてしまいやすい。ボーナスは「臨時収入」ではなく、あくまで「給与の一部」という意識を持つべきだ。
現金を遊ばせておかずに投資して運用しようという考えは、特に高所得者には一般的だ。ただ、マネーリテラシーがないことにより、証券会社の担当者に勧められた金融商品を調べもせずに買ってしまうケースは多い。
例えば最近ではつみたてNISAのように「長期・分散・積立」という安定的な資産形成に役立つ特徴を備えた金融商品に手軽に投資できるようになっているが、本書によるとこうした金融商品を証券会社は勧めようとしないという。
これはつみたてNISAは手数料が安く、証券会社の収益になりにくいからだ。証券会社が勧めてくる金融商品は「顧客にとっていいもの」ではなく「手数料を多くとれるもの」だと心得ておくのが正解だ(ただ、つみたてNISAもなんとなくやっているだけでは意味がない)。
悪質なのは、投資会社の社員自身も複雑すぎて理解できない商品を、あたかも有利な商品に見せかけて勧めてくることがある点だ。「仕組債」のように、デリバリティブという特殊な金融手法が使われ、金融のプロである証券会社の社員でも理解するのが難しい商品を「特別な商品」といううたい文句で販売する金融機関もある。もちろん、必ずしも悪いわけではないが仕組債の手数料は実質5~7%、ものによっては20%を超えるものもあり、高いのが基本である。
投資に関心を持つのはいいが、証券会社を含め保険会社や銀行、不動産会社のいいなりにならず、自分で調べて、選択する姿勢が大切だ。
◇
本書では高所得者向けにお金との向き合い方や、節税、家計のやりくり、そして投資についての考え方などが、フィナンシャルプランナーの視点から解説されている。
収入はそこそこいいはずなのに、なぜか手元にお金が残らない、資産も少ないという人は、本書をきっかけにお金との付き合い方を変えてみてはいかがだろうか。また、年収1000万を目指す人にとっても、本書を通じてこの収入帯の現実を知ることができるはずだ。
(新刊JP編集部)
■そんなに贅沢はできない?「年収1000万」の現実
永田: だいたい1000万円前後の方を想定して、この収入帯の方々に必要なマネーリテラシーについて書いています。
永田: 年収1000万円前後だと、資産額でいうと数百万という方が多いのではないでしょうか。3000万円から5000万円くらいのまとまった資産となると年収は1500万円以上が多いと思います。年収2000万円を超えるとやはりまとまった資産を持っている方が多いですね。
永田: もちろん、年齢にもよると思います。40歳前後の方で、資産運用や貯金に熱心な方であれば年収1000万円で資産額は3000万円という方もいるにはいます。当然、若いほど資産額は少ない傾向がありますね。
永田: 夫婦合わせて1000万円だと正直そんなに「いい暮らし」はできないはずです。「パワーカップル」という言葉が最近使われていますが、夫婦ともに年収が700万円~800万円ほどあって、世帯年収で1500万円を超えてくると、タワーマンションを買ったりする方が増えてくる印象です。ただ、これは子どもがいるかどうかにもよるでしょうね。
参考までにお話しすると、年収1000万円ちょっとだとタワマンのローン支払いは結構重たいはずです。いくらのマンションを買うかにも当然よりますが、単独で年収1000万円だと、手取りは700万円ほどで、月収は60万円くらい。それで仮にタワマンの1億円の物件を買ったとすると月々のローンの支払いは30万円くらいなので、半分くらいローンの支払いで消えてしまうことになります。
永田: 「これです」という一つの明確な答えがあるわけではないと思います。ただ、現状理解とプランニングがうまくできていないということはいえるのではないでしょうか。
永田: お金って入れるよりも出し方、使い方のほうが難しいんです。そして人それぞれのお金の使い方が何で決まるかというと、結局現状理解と未来をどう考えているかによって決まります。
自分の現状がわかっていなければ何にお金を使っているかわかりませんし、未来のプランがなければ、せっかく稼いでも浪費してしまうことが多いんです。
永田: 収入はありますから、ものすごくお金に困っている感じではなくて、適度にいい生活もしている。ただなかなかお金が貯まっていかないし、資産もできない。本人もそれはわかっているのですが、どこにお金を使いすぎているのかがわかっていないというパターンが多い気がします。
永田: そうですね。浪費のパターンについては人それぞれです。旦那さんの飲み会が多くて、という家庭もありますし、奥さんの買い物の出費がかさんで、毎月のカードの支払いが50万円を超えているという家庭もあります。
ただ、浪費が悪というわけでもないんです。子どもを2人育てていて働きたいのに働けないという方が、買い物でストレスを解消することもあるわけで、それを浪費だからという理由でいきなりスパッとやめたとしても後で反動がくる。
お金を使いすぎているという自覚があるのであれば「どんな未来を望むか」という視点からお金の使い方を考えていく必要があると思います。
■日本人のマネーリテラシーが低いと言われる理由
永田: 大きく二つあると思っています。一つは日本という国が高度成長期を通じて「国や行政や会社が個人を守る」という価値観でやってきたことです。だから個人でお金の勉強をしなくても、深刻に困ることはなかったんです。
今だって源泉徴収票や給与明細の見方がわからなくて、振込額だけを見ている人はたくさんいます。「会社が何とかしてくれる」というところに甘えてしまっているところはあるのではないでしょうか。
また、その後のバブル崩壊の際に、株や不動産をやっていた人が大損をしたのをメディアが大々的に取り上げたんですよ。これのインパクトは大きくて「やっぱり投資はしちゃだめなんだ」というイメージがついてしまった。これが二つ目の原因だと考えています。
永田: ただ、その後のグローバル化で「もっとお金のことを知る必要があるんだ」「世界の人はもっとお金のリテラシーがある」ということも広まってきました。今はむしろ投資がブームのようになっていますよね。ここから今の過熱状態は少し落ち着いてくるとは思います。特に今年は日銀総裁が交代しますし、利上げの可能性も指摘されています。
利上げするにしても大幅な利上げはないと思うので、これまで投資に熱心だった人が一気に預金に流れるということは考えにくいのですが、もしそうなった時に今の投資熱が続くのかどうかには興味を持っています。
永田: 必要なリテラシーについては、ベースはどちらの層も変わらないと思います。ただ、やはり高所得者の方が選択肢は広いですよね。求める知識にも差があって、高所得者ほど金融知識にしても「今儲けるための情報」よりも、普遍的な「土台」となる情報を求める傾向があります。
永田: 投資にも様々なものがあるなかで、最後は「好きなこと」を基準に選ぶと楽しんでできるのではないでしょうか。
もう一つは、最初は「儲ける」よりも「損をしない」ことに重点を置くことですね。「損をせずに儲ける」という概念は投資の世界にはないので、「損をする可能性もある」という考えを持ちながら、少しずつ慣れていくのが大切です。
その意味ではつみたてNISAのように毎月積み立てることで、時間差で資金を分散して損をしにくい投資法をやってみるのはいい方法だと思いますし、公開されている財務諸表を見ながら企業のことを調べつつ、少額から株式投資をやってみるのもいいと思います。
永田: 手元にキャッシュがない人は不動産投資も一つの手段だとは思います。というのも、今はワンルームマンションへの投資はフルローンが組めるので、キャッシュはそこまで必要ないんですよね。もちろん、きちんと勉強して、理解してからやらないといけない投資だとは思います。
永田: 私は「流動性資産(換金性の高いもの:現預金など)」「安定性資産(元本割れのリスクは低いが収益性に劣るもの:債券など)」「収益性資産(元本割れのリスクはあるがリターンも期待できるもの:株など)」を等分に持つことを進めています。慎重な人であれば「流動性資産」を少し多めにして4:3:3くらいの比率で持つのもいいと思います。
永田: これから年収1000万を目指そうと思っている方は、この収入帯の「現実」を知っておくことが大切ですし、今、年収1000万円前後ある方々は、資産が残らないことを嘆くのではなく「これからどうするか」「今何ができるか」を考えることが大切です。
今はもう国や企業が何とかしてくれる時代ではなくて、自分の人生は自分で組み立てる時代で、お金はそこに深く関わってきますから、お金の観点から「人生の事業計画」を作ってみるといいかもしれません。
ただ、恐れる必要はなくて、楽しみながらやっていただきたいと思っています。今回の本がそのための助けになればうれしいです。
(新刊JP編集部)
永田 智睦(ながた・ともちか)
愛知大学法学部法学科卒業。FP1級技能士、日本FP協会CFP認定者。新卒で信用金庫に入社し、約6年個人法人の営業として勤務。退社後、28歳で上京。独立系FP事務所を開業。個人で2年間事業を行い、周囲の勧めもあり法人化を決意。DragonBlood株式会社を設立。個人向けの資産コンサルティング、オンラインサロン、金融知識のトレーニング事業を中心に、中小企業においての財務コンサルティングも多く行っている。フィリピン不動産を取り扱うAPI Gateway株式会社代表取締役。未来の起業家を育てる教育プログラム「CEOキッズアカデミー」の講師も務める。先進的なFPとしてのコンサルティングを行うべく、国内外の情報を多く取り入れ、国や会社が信頼できない時代に頼られる、「顧客と共に未来へ歩んでゆける会社」を目指したいと考える。
著者:永田 智睦
出版:幻冬舎
価格:1,650円(税込)