パパだからデキる子育て術
著者:鬼木 一直
出版:幻冬舎
価格:880円(税込)
著者:鬼木 一直
出版:幻冬舎
価格:880円(税込)
夫婦共働き家庭が多くなり、育児・家事を分担して行うのが当たり前になってきている。
そんな中で「仕事だけしていればいい」と考える男性は減ってきており、むしろ「育児・家事に積極的に関わりたい」と本心では思っている人も多いのではないか。
ただ、こと育児になるとパパは「関わりたいけど、どう関わっていいかわからない」となりがちだ。ママがやっていることをそのまま自分もやるべきなのか、それともパパならではの育児への関わり方があるのか。奥さんの負担を軽くするには、そしていい子に育てるためには何をすればいいのか。考えることはたくさんある。
東京富士大学教授の鬼木一直さんの著書『パパだからデキる子育て術』(幻冬舎刊)は、子育てに関する男性の迷いや不安を解消するヒントとなる一冊。
父親として、育児にどう関わればいいかがわからずに悩む男性は少なくない。もちろん、子どもをお風呂に入れたり、ごはんを食べさせたり、ひと通りのことはできるに越したことはないのだが、日常的に育児・家事をやってこなかった男性が急に張り切ると、かえって奥さんの仕事を増やしてしまうことになりやすい。ごはんを作ったはいいが食材を余らせてしまったり、台所にあるものを引っ掻き回して置いていた位置を変えてしまったり、お風呂に入れた後の片づけができていなかったり、といった具合である。
本書では、それならば子どもを外に連れ出して、思う存分遊んであげたり、焦げついたお鍋をピカピカにしたり、壊れかけたおもちゃを子どもと一緒に直すなど、奥さんがなかなかできないことをやってあげた方がいい、としている。必ずしも奥さんと同じことをする必要はなく、奥さんができないところを補うという子育ての参加の仕方もある。父親として、男性としての特性を踏まえてどんなことができるかを考える方が、子どもにも奥さんにも喜ばれるはずだ。
では夫婦で互いに補い合う育児で、男性は何を担えばいいのか。鬼木教授は「パパが子育てをすると子どもの好奇心や価値観の幅が広がる」としている。
ママは日常的に育児に関わっているため、細かいことが気になってしまうケースがあるようです。そこで、パパは将来の夢の話を聞いてあげたり、やりたい遊びを思い切りやってあげるなど、子どもと密に楽しみ、子どもとの距離を縮めることが必要です。(P 31より)
ママが毎日の細々としたことに意識が向かいがちなら、パパは子育ての大きな舵取り役を担えばバランスがいい。ただ、子どものいる日常生活で生じるちょっとした雑事を主体的に行うことも必要。子育てを「手伝ってあげている」という意識は捨てるべきなのは言うまでもない。
本書では、子育てで男性が持ちやすい悩みや、奥さんが旦那さんに対して感じる不満、子育ての中で父親がやるべきことと活躍できる場面、奥さんに言ってはいけないNGワードなど、子育てに関わるアドバイスが満載。
子育てに参加したい気持ちは山々だが何をしていいかわからないまま中途半端に手伝っては奥さんに小言を浴びている男性は、本書を読めば自分が今日から何をすればいいかがわかってくる。そして子育てが俄然楽しくなってくるはずだ。
(新刊JP編集部)
■「イクメン」という言葉が使われなくなる世の中に
鬼木: 前作は、セブンネットショッピング子育て新刊部門で売り上げ1位を獲得するなど、お陰様で大変ご好評をいただきました。文庫版は、手に取りやすく、また単行本の見開きで完結する形式を踏襲しましたので、とても読みやすいというご意見を多数いただきました。
鬼木: パパ視点の育児書が少ないというのは私も感じています。最近はパパが育児を頑張っているケースが増えてきているというものの、まだまだ多くご家庭でママが育児・家事を主に行っているのが現状です。
パパの中には育児・家事に参加したくても「何をすればいいのかわからない」「むしろ足手まといになってしまう」という不安があるようです。そんな不安を解消することができればと考えて、この度、パパ目線の本を執筆することにいたしました。
鬼木: 理由は大きく分けて2つあると感じています。1つは、ジェンダー平等が当たり前と言われている状況の中、そもそもママとパパという男女を意識した視点で本を書くことがとても難しいということです。女性が、男性がという書き方は誤解を招きかねず、非常に気を遣うテーマです。
2つ目は、日本では子育てを主体的にしながら、教育関連業務を専門としている男性が少ないことにあると思います。小学校、中学校などの教育論を研究している男性は非常に多いのですが、幼児教育となると女性が多く、子育てのノウハウ本は多く出版されているものの、パパ目線の育児書は少ないように思います。
鬼木: 「イクメン」という言葉が流行ったことで、男性の子育てに注目が集まったことは素晴らしいことですが、そもそもイクメンというのは、女性が育児をすることを前提とした言葉です。
男性が当たり前のように育児をするようになれば、「イクメン」という言葉は使われなくなるだろうと考えています。ママの手伝いをパパがするのではなく、パパが主体的に子育てを行うことがとても大切だと思います。
鬼木: 先ほどのお話にもあった「女性と男性の違い」の表現と、人それぞれ、家庭それぞれに個性がある中で子育てに関する記述にはとても気を遣いました。データ上ではママが主に育児をしているご家庭が多いのですが、パパの方が主体的に行っている家もありますし、中にはシングルマザーで頑張っていらっしゃる方もいます。
また、少なからず男女には違いがあるのも事実です。あまり断定的に記載しすぎてもよくありませんが、現状を鑑み、今の日本の男女の違いを踏まえた上でのパパ育児の在り方というのを本書では主張したかったところです。
鬼木: パパはつい、ママの手伝い、代わりをしようとしがちです。それももちろんいいことではありますが、同じことはなかなかできず苦労しているご家庭が多いようです。
人にはそれぞれ個性があります。まして、女性と男性ではその違いがより大きくなります。子どもはいろいろな考えに触れることで視野が広がっていきます。ママのやり方を肯定したうえで、パパだからできることを考え、主体的に育児をしてほしいと思っています。「The Father Effect」という言葉があり、父親とよく交流した子どもほど、学力・人間力・チャレンジ精神が高いというデータがあります。是非、気軽に楽しく子育てをしてみてほしいと思います。
鬼木: そうですね。「いい子に育てたい」という気持ちはママもパパも一緒でしょう。これまでママが育児・家事を主にやってきたのだとしたら、パパがそこに入ることで子どもにいい影響があるという価値を知ってもらえればと思っています。
鬼木: まずは、子育ての優先順位を高くすることです。日本では、仕事が子育てよりも高い優先順位に設定されがちです。子どもも親の仕事が大変なことはわかっています。だからこそ、子どもと関わる大切さをより感じてもらえるのです。
必ずしもまとまった時間が必要なわけではありません。朝起きたらハグをしてあげ、ご飯の時にちょっとした雑談をするなどの積み重ねが大切なのです。そして、時間のあるときには外に連れて行ってあげ、子どもが遊ぶのを見るのではなく、自分も子どもになったように思い切り遊んであげる姿勢が重要です。格好をつけるのではなく、一緒にふざけ、大声で笑う関係が子どもとの信頼関係を構築していきます。
鬼木: ただ、家で仕事をしているといっても、それはあくまで仕事の時間ですからね。家にいるからたくさん子どもと関われるかというと、必ずしもそうではないと思います。結局、テレワークといっても働く場所が変わるだけなので、「たとえ短い時間であっても子どもと関わる」という強い意志がないと何も変わらないと思います。
鬼木: うまくいかないことはよくあります。双子の男の子に、「早くご飯を食べないとおばけが出るぞー」と言ったらすぐに食べたので、双子の女の子に試してみたら大泣きされて大変だったり、「男の子なんだから、そのくらいでメソメソしない!」と怒ったら、その後、辛いことがあっても涙をこらえていたことがわかり、「ごめんね、辛い時は泣いてもいいよ」と訂正したり、試行錯誤の連続でした。
ただ、悩んだことはほとんどありません。本の中にも書いていますが、子育てに失敗はないのです。しっかり愛情を注いでいれば細かな失敗は後の笑い話にしてしまえばいいのです。子どももひとりの人間ですので、どんなことでも、話を聞いてあげ、一緒に成長する姿勢があれば難しい局面も乗り越えられると思っています。
■「子どもは純粋だから嘘をつかない」という考えは捨てるべき
鬼木: もちろん変わってきているところはあると思いますが、ママが専業主婦でも共働きでも、パパの育児は不可欠だということです。共働きだからパパの育児が必要なのではなく、パパの育児力によって、ママに仕事をするかどうかの選択肢を付加してあげることが大切だと考えています。
鬼木: 幻冬舎の方からいただいたお話なのですが、文庫版の方が安価ですし、コンパクトなので、より多くの方に手に取っていただけると考えました。パパ目線の子育て本が少ないからこそ、コロナ禍で家での仕事が多くなったパパにはとても参考になる本だと思います。
特別な子育てを求めているわけではありませんが、ソニーで働いた社会人経験、これまで110ヵ国もの国を訪れた国際経験も盛り込んだ非常に中身の濃い本に仕上がったと自負しております。
鬼木: ほとんどが私の実体験に基づいていると言ってもいいと思います。自分の子育てにおける経験だけでなく、保護者会やPTA活動、ママ友、パパ友とのやりとり、そして、大学での学生との会話、ソニー時代の後輩との談義、学会での意見交換など日常のちょっとした対話から多くのヒントを得ています。悩み相談も数多く受けますが、そのような話も大いに参考にさせていただきました。
鬼木: まず、「子どもは純粋だから嘘はつかない」と思っているならば、その考えを捨てることです。よく思われたい、怒られたくないという気持ちが嘘をつかせることはよくある話ですし、こうあってほしいという気持ちが妄想となり嘘になってしまうこともあります。信じるのではなく、共感することが大切で「何を話したか」より「なぜそう考えたのか」「どこに興味があるのか」を聞いてあげることが重要です。
また、子どもの行動にイライラするのであれば、それは親が子どもを思った通りにしようとしているからなのかもしれません。ロボットではないので、子どもは親の思った通りになるはずがありません。むしろ、思った通りにいかないから子育ては面白いと感じてもらえれば対応は大きく変わると思います。
鬼木: 夫婦でも性格や考え方が同じではないので、子育てに対する意見が違うのは当たり前です。また、どのように育てるのが正解かどうかも簡単に結論が出るものではありません。大切なのは、夫婦間でなぜそうしたいのか、その思いの強さを知ることです。話してみると、大事なポイントは別のところにあり、あっさりと落としどころが見つかることもありますし、思い入れの強さがわかり、納得したうえで意見を取り入れられることもあります。お互いの立場や背景を少しでも理解する姿勢が重要だと思います。
鬼木: 本書でも何度となく述べていますが、子どもは皆天才です。発想力は教えるものではなくもともと備わっているものだと思っています。それを大人の都合で閉じ込めてしまうのはとてももったいない話です。
象を赤で書いても、空を黄色で塗ってもそれは個性です。アリをじっと観察するのもとても大切な時間です。できるだけ見守ってあげる姿勢が重要だと考えています。
鬼木: 「なぜか」を考えさせることですね。たとえばバドミントンで上手にスマッシュが打てなかったとしたら、まず「どうしてだと思う?」と聞いて子どもに考えさせる。これはコーチングという手法ですが、すぐに教えるのではなく、そこで答えが出なかったとしても、考えさせてから「もう一回やってみて」と言ってやらせると、「肘が上がっていないな」と自分で気づくことがあります。そういう子ども自身の気づきを増やしてあげたいというところは共通していると思います。
鬼木: 愛情を子どもに伝えることだと思います。言葉では伝わりにくいので、たくさんハグをしてあげるといいと思います。
日本人はあまりハグの習慣がなく、特に男性は苦手な人が多いと思います。朝起きたらハグ、頑張ったらハグという形でスキンシップを取ってあげると子どもは安心しますし、信頼関係が高まっていきます。信頼関係が構築されていないのに怒るから嫌がられるわけで、頑張ったときにはしっかり褒めたうえで、悪いことをした時に怒るというのが大切だと思います。
(新刊JP編集部)
鬼木 一直(おにき・かずなお)
東京富士大学経営学部教授、入試広報部入試部長兼IR推進室長、公益社団法人私立大学情報教育協会サイバーFD研究員、ICTプロフィシエンシー検定協会公認試験官。教育論、幼児教育研究者。3児の父。東京工業大学理学部応用物理学科卒業後、同大学修士課程理工学研究科修了。ソニー株式会社に入社し、ハードディスク垂直記録方式薄膜磁気ヘッド、大型液晶ディスプレイ、レーザーティスプレイ、薄型ヒートパイプ、超高周波ミリ波伝送による大容量データ伝送デバイスなど数多くの開発に携わる。その間出願した特許件数は43件。 2014年から、東京富士大学経営学部准教授、2017年に同教授。大学広報室長、メディアセンター部長、図書館長などを歴任し、現在に至る。
著者:鬼木 一直
出版:幻冬舎
価格:880円(税込)