リセット! 仕事服
〜 新しい生活様式にふさわしい男の服選び
著者:松 はじめ
出版:技術評論社
価格:1,650円(税込)
著者:松 はじめ
出版:技術評論社
価格:1,650円(税込)
コロナ禍以降、リモートワークの機会やオンラインの打ち合わせが増え、どんな服を着て仕事をすればいいのか悩んでいるという人は少なくないだろう。
働き方の多様化とともにビジネスコーデのトレンドも移り変わっている。これまでの「定番」がアップデートされており、クラシックなスタイルが「どこか古臭く見える」ようになってきているのだ。
そんな悩める男性ビジネスパーソンに読んでほしいのが『リセット!仕事服 新しい生活様式にふさわしい男の服選び』(技術評論社刊)だ。表参道のオーダーサロン「ボットーネ」のオーナーを務める著者・松はじめさんが、豊富なイラストや写真とともに、ビジネスコーデの新定番を解説する。
スーツだけでなく、ビジネスカジュアルや小物についてもたっぷりとページを割いており、幅広い職種・業種に対応可能だ。
では、最新のビジネスコーデは何が特徴的なのか。「これさえ守れば間違えることはない」と松さんが語る4つの新ルールについてご紹介しよう。
まず1つ目は「シンプル」。デザインの工夫や遊び、装飾といったプラスの要素は一切不要と心得てほしいと松さんは述べる。
スーツを例にあげると、本書では何の変哲もないプレーンなネイビースーツを買うべきとしている。そう聞いて、「ただのネイビースーツだとつまらないのでは?」「柄が入っていた方が遊び心があって良いのでは?」と思う人もいるだろう。
しかし、なんとなく入れた遊び心がノイズになる、と松さんは指摘する。ビジネススタイルの最適解は、仕事で対する相手に違和感や不快感を与えないことだ。相手に違和感を与えない「遊び」ができるのは、基本を知り尽くしたファッション上級者のみ。そういう人でない限りは、基本に忠実である方がいいだろう。
続いてのルールは「ジャストサイズ」。ビジネスコーデにおいては、自分の体型にきちんとあったサイズを厳守することが大切だ。
ゆったりとしたシルエットの服はどうしてもだらしなく見えるし、逆にタイトな服は好みが分かれ、イヤらしい印象を与える可能性がある。ここ数年の街中の流行はルーズファッションだったが、ビジネスシーンにおいては通用しない。あくまで「ジャストフィット」が正解だ。
コロナ禍以降、外を出歩かなくなり、体型が変わったという人も少なくない。これまで着ていた服が合わなければ、買い替える必要があるということだ。
3つ目のルールは「ビジネススタイルに必須の定番アイテムこそ、最新にアップデートを図る」ということだ。
定番なのに最新とはどういうことか? 例えば白いTシャツ1枚とっても、ブランドは毎年見直しを行い、マイナーチェンジを繰り返している。少し丈が長めとられていたり、腕の幅がゆるく作られていたりと、意外と変わっているものなのだ。
松さんは「3~5年ごとの見直しは行いたい」とし、「5年たったすべて新しいアイテムに入れ替えること」をルール化してしまってもいいとまで述べる。まだ着られそうでも、今の視点から見ると古く見えることもある。定番でもアップデートが必要なのだ。
最後のルールは「色数」だ。松さんはコーディネートに使う色数は最大で3色までとしている。それも、靴やバッグ、腕時計などの小物を含めての数だ。少ないようにも思われるが、色数は絞れば絞るほどシックで落ち着いた印象になるという。
また、メインで使う色も「ネイビー」「ブラウン」「ベージュ」プラス無彩色の黒・白(グレー)と決めてしまう。
色の合わせ方で、ビギナーにおすすめなのが「ワントーン」。ネイビースーツを主軸に考えると、合わせるのはサックスブルーのシャツにネイビーのソリッドタイ。これで完成だ。「つまらない」と思うかもしれないが、これこそが世界中で通用するフォーマルスタイル。また、ベルトや靴、腕時計といった小物の色は、黒か茶色系でまとめると統一感が出る。
余計な色を足さない。これがどこでも通用するビジネスコーデの考え方だ。
◇
本書はこの4つのルールを下敷きにして、「スーツ」「ビジネスカジュアル」「小物」の具体的なコーデについて解説していく。どんなコーデにおいても、この考え方をしっかりインプットしておけば、自分なりにイメージがつくはずだ。
人に会う機会が少なくなったとはいえ、まだまだ直接打ち合わせをする機会もあるし、画面越しにコミュニケーションを取ることもあるだろう。どんなときでも、相手に不快感や違和感を与えないファッションを心掛けておきたいものだ。
■ニューノーマルの新定番は「セットアップスーツ」
松 : 簡単に言ってしまえば「カジュアル化」というキーワードになると思います。これまでの「コレを着ていればOK」という文化から、バリエーションも幅広くなったというのが、昨今のスタイルです。
特に男性はスーツ、もしくはジャケットという暗黙の決まりのようなものがありましたが、急に働き方が変わり、リモートワークが導入されたり、多様な場所で働くことが認められるようになったりしたので、どこまでがビジネスウェアとして許容されるのかがまだ決まっていないというのが現状なんです。
今はそれをひと言で「カジュアル化」と表現しましたが、この「カジュアル」もすごく難しい。というのも、「カジュアル」のさらにその奥に「ラフ」というものがあるんです。
松 : はい。この「ラフ」の語源はゴルフの「ラフ(Rough)」で、フェアウェイの外の部分を指すので、「ラフな服装」というと「ビジネスウェアの枠外」ということになるんですね。ですから、ビジネスシーンで着る服として「ラフ」であってはならないと思うんです。
一方で、「カジュアル」はどうかというと、ビジネスの枠内の中で、社長が自社らしさであったり、社員が自分らしさを表現するということになります。以前はみんなで同じものを着るということが当たり前でしたが、それが変化して一人ひとりが服装でキャラクターを作っていったほうがいいという時代に変わってきたんですね。
松 : まずは色ですね。ファッション上級者の方々の共通点は、ファッションが足し算ではなくて引き算で成り立っているということです。ココ・シャネルも「ファッションとは、上級者になるほど引き算である」という言葉を残していますよね。特に色については、使う数を極力抑えるべきです。
ただ、それは極端に一色だけしか使わないというわけではありません。例えば同じ系統の色でトーンを作ってあげる。本書ではワントーンコーデのおすすめとしてブルー系、グレー系、ベージュ系を紹介しています。
少しずつ色を変えながらも、全体的にトーンを合わせてシンプルさを保つ。これが基本的なルールとなります。
他にも例えば茶色と紺色の組み合わせなんかはシンプルに見える世界共通の言語のようなものです。カラーリングのルールは長い年月をかけて出来上がったものですから、まずはその基本を抑えていくところからはじめると、万人からスマートに見られるスタイルになると思います。
松 : そうです。特にビジネスシーンにおいては社会性を求められますし、ビジネスでの目的を達成するために、そこから逆算をしてコーデを決めていったほうが、メリットは大きいと思います。
「カジュアル」といってもいわば戦うための服ですから、ルールが多様化しているからこそ、基本に忠実になれば、目的は達成しやすいのではないかと。
松 : 例えばスティーブ・ジョブズはタートルネックとデニムで通していましたが、あれだけこだわりの詰まったiPhoneを生み出した人間が、服装にこだわりがなかったわけでは絶対ないはずなんです。むしろ、あの服装もこだわり抜いて行き着いている。
おそらく彼は私生活での選択肢を減らしてビジネスに集中しようという発想であの服装に行き着いたのだと思いますが、ビジネスパーソンも少ない着数でどれを合わせてもシンプルできれいに合うというクローゼットを作っていくほうが、朝の貴重な5分間を捻出することができるはずです。
松 : まずは上下で別々に使えます。ジャケットだけ着まわすこともできるし、パンツだけでもOK。それに、スーツほどカタくないけれど、ビジネス感は出せるというところで、オフィスではないところで働くときに、仕事をしている感を出すにはちょうどいいです。
ビジネスのカッチリ感を出したいのであれば、ネイビーのセットアップはすごく良いですし、もっと柔らかめのイメージならばベージュのセットアップですね。この本の中でもスーツのページではネイビーを、ビジネスカジュアルのページではベージュのセットアップを紹介しています。
松 : そうですね。例えば保険のセールスをしている方で、最近はオンラインでの商談が多くなったと。でも、家にいるのに、商談のためにわざわざスーツを着てネクタイをするのも気が乗らないし、とはいえカジュアルも失礼にあたるかもしれないというところで、ビジネスコーデではあるけれど微妙にゆるさも出ているセットアップが使えます。
それに選ぶのが基本的に楽なんですよね。お子さんのいる男性であれば、幼稚園のお遊戯会を見に行くときなんかにも、セットアップにTシャツやポロシャツを合わせて、白いスニーカーを履けば完成です。上下バラしても使えるし、合わせても使える。それがセットアップの最強さなんですよね。
松 : そうですね。ビジネスであったり、フォーマルな場での服装のポイントって、一番は「襟」にあると思うんです。西洋ではひと昔前までは襟付きの服を着ていないと入れないレストランがあったくらいですし、襟があるだけでちゃんとしている感じなってしまう。本当に襟は最強の武器ですね。
松 : 少し触れましたが紺色と茶色の組み合わせは最強です。イタリア語で「アズーロ エ マローネ」というのですが、簡単に言えば紺色・青色系と茶色や赤色系はすごく合うということなんです。
イタリアのネイビーのスーツをパリッと着こなした紳士が茶靴でコツコツと歩いている姿が格好よく見えるのは、紺色と茶色という無敵の組み合わせが入っているからなんです。この2色が入っているだけでこなれた感じが出ますからね。
また、この2色を組み合わせるときは、紺色を多め、茶色を少なめにすることがポイントです。補色といって、その色と正反対の色を組み合わせると互いの色を引き立てる効果があるとされていて、紺色だったらその反対にあるのが茶色や赤、オレンジにあたります。だから、紺色の中に茶色を入れることで、お互いの色が引き立て合うわけですね。
ファッションの道に入ったことがある人であれば定番の組み合わせですが、その定番にはしっかりとした理由があるわけで、それを真似ていけば単純にビジネスでも、カジュアルでも、ファッショナブルに見えるようになるというわけですね。
■いい仕事がまわってくる最初の一歩は「ビジネスコーデ」を変えることから
松 : 「定番」というと昔から使っているものでもいいと勘違いされてしまうのですが、実は毎年、微妙にマイナーチェンジがあったりするんです。だから、同じ定番アイテムでも、10年前と今年のものを比較すると結構違ったりするんですよ。
松 : そうです。実は同じブランドの白いTシャツも、10年前のものと今年のものを比べると違いが分かると思います。そういう意味では、今持っているものをもう一度見直して、最新のもので揃えてみるということは大事だと思います。
また、選ぶときのポイントですが、カバンやシューズって組み合わせを考えずに買ってしまいがちですよね。でも、そういう買い方をしてしまうと全体がきれいに合わなくなってしまうことが多いんですよ。
だから、カバンやシューズを買いに行くときは、合わせたい服を着ていって組み合わせるかたちで買ったほうがいいんです。そうしないと服とカバン、シューズのミスマッチが起きてしまう。
あくまでビジネスコーデは全体の統一感が大事ですから、選ぶときは単品の格好良さよりも、自分の持っている服に合うかどうかという視点が必要です。そこをチェックすると間違えないと思いますね。
松 : そうですね。例えばジャケットが好きでたくさん持っているという人は、しばらくパンツに投資をしてみると、今まで持っていたものを活かせることができるはずです。それにそちらの方が経済的ですしね。
松 : 夏になると、暑いからと薄着になることもあると思います。でも、そうなると、どうしても体型が誤魔化せなくなってしまうんですよね。だから、体型に自信がない人はジャケットなどを着て武装していければ、相手に不快感を与えることも少ないと思います。
松 : そういう時こそTシャツよりも襟付きのポロシャツを着たりすると、また違った印象を与えられるんですよね。
それに、サイズ感についても敏感になってください。半袖のシャツで袖口が太いと、すごくおじさんっぽく見えるんです。逆に袖口が細いだけでスマートな印象を与えられます。薄着になるからこそ、サイズの意識はより強く持つべきですね。
また、脱げば脱ぐほど自分の弱点を露呈することになりますから、何かを足して補う必要がでてきます。そこでポイントになるのが小物です。例えばベルト。クールビズでポイントになるのが実はベルトで、茶靴に茶色のメッシュベルトで合わせると完成度がアップします。さらに腕時計のベルトも茶色にしてみてもいいでしょう。
松 : 服を脱いでしまっているからこそ、ポイントとして必要になるんです。ただ、小物の持つ力に気付いていない人も多いので、取り入れるとかなりオシャレに見られると思いますよ。
松 : そうですね。いつも清潔感があってオシャレな人はそれだけで印象が上がりますし、いい仕事が回ってくる可能性も上がります。そして、より少ない時間でいい仕事をこなしていけば高収入も実現できると思います。
松 : すごく違いますね。これはリモートでセミナー講師をされている女性のエピソードなんですが、柔らかい雰囲気を持っていて知識も豊富な専門家で、すごくできる方なのに、どうしても男性経営者からなめられてしまうという悩みを抱えていたんですね。
そこでメイクや服装を変えて、眼鏡などの小物を取り入れて武装をしたところ、トークの内容は一切変えていないのに成約率が倍になったんです。そのくらい見た目の印象は大事ですし、仕事にもつながっていくのだと思います。
松 : これまで服のことに気を使ってこなかったビジネスパーソンの方。特に本当は仕事ができるのにくすぶっている方にぜひ読んで、変身してほしいです。一気に見られ方が変わって業績もアップします。また、これからご自身でビジネスをやっていこうと思っているフリーランスの方々、企業の顔となる経営者の方々、社会に出てまだ間もない新社会人の方々にも、手に取っていただけたら嬉しいです。
松 : ビジネスコーデは自分の好きなものを着ればいいというわけではなくて、あくまでも仕事着です。だから、どんなところでも仕事ができるようになり、服装の基準もゆるくなった企業が増えたとはいえ、基本は抑えておくべきだと思います。
また、逆に周囲がゆるくなっているからこそ、本書のようなノウハウを使えば、自分を引き立たせることが可能です。先ほどお話ししたように、いい仕事が回ってきて、収入アップにもつながる可能性もあります。
服は自分のキャラクターを表現する最高のツールです。ただ、もちろんビジネスですからルールはあります。守破離ではないですけど、まずは基本を抑えて決まったパターンを作っていただいてから、自分らしさにこだわっていく。そうすることで、唯一無二のあなたになっていくはずです。服にはそういう可能性があることをぜひ知っていただきたいですね。
(了)
松 はじめ(まつ・はじめ)
東京・表参道のオーダーサロン「ボットーネ」オーナー。
20代で起業し、政治家、経営者、芸能人、プロスポーツ選手など3千件以上の仕立服を手掛ける。映像制作、企画を行う株式会社メディコ代表。YouTubeチャンネル「メンズファッションTV」をはじめ、オンラインスクール運営やブログなどで積極的に情報発信を行う。
著者:松 はじめ
出版:技術評論社
価格:1,650円(税込)