「令和のヒットメーカー」の原点と哲学
なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?

なぜ、倒産寸前の水道屋が
タピオカブームを仕掛け、
アパレルでも売れたのか?

著者:関谷 有三
出版:フォレスト出版
価格:1,650円(税込)

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本書の解説

どんなブームにも「火つけ人」や「仕掛け人」がいる。
2018年から2019年にかけての空前のタピオカブームは記憶に新しいが、そのきっかけとなったのが、タピオカティー発祥である台湾の国民的人気カフェブランド「春水堂人文茶館」(以下、春水堂)の日本進出である。
 
また、「服が売れない時代」と言われ、苦境が続くアパレル業界で際立ったヒットとなったのが「スーツに見える作業着」だ。「スーツ」と「作業着」というまったく別の装いの間の境界を取り払った斬新さは大きな話題を呼んでいる。
 
「タピオカ」と「アパレル」。
この全く異なる分野での2つのヒットを仕掛けたのは、実は同一人物だということはあまり知られていない。
 
『なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?』(フォレスト出版刊)の著者でオアシスライフスタイルグループ代表取締役CEOの関谷有三氏は『令和のヒットメーカー』と呼ばれる。

当初海外進出する気がまったくなかった春水堂を口説き落とし、アパレル業界でも新機軸を打ち出した。特筆すべきは、関谷氏は飲食業もアパレル業も未経験の“素人”だったことだ。その関谷氏の成功への道のり、そして成功術を余すことなく氏の熱い言葉で綴った本書。新たなことをはじめたい、一歩を踏み出したい人にぜひオススメしたい。

「悩む」と「考える」は天と地ほど違う

熱意と戦略、そして圧倒的な行動力。
本書からは、これらの離れ業をやってのけた氏のビジネス観と哲学、そしてそのルーツが見えてくる。
 
たとえば何かに悩んだ時、人は足が止まってしまう。行こうか戻ろうか、悩んだら前に出ろ、それどころか”ぶっこむ”というのが関谷氏のポリシーだ。
 
なぜなら、「悩む」というのは、答えの出ないことにたいして悶々とするだけの行為。うじうじしているくらいなら、失敗しても行動してみたほうがいい。「悩む」と「考える」は天と地ほど違うのだ。生産的なことをするために考えるのはOK。しかし、いたずらに悩んで時間を費やすのはNGだ。
 
■「うさぎと亀」本当はどっちが勝つのか?
童話「うさぎと亀」では、足の早いうさぎは亀をバカにして、途中油断をして昼寝をしてしまう。そしてコツコツ歩き続ける亀に最後負けてしまう。うさぎは図に乗り油断してしまった訳だ。地道に続けることの大切さを説いた話だ。しかしだ、世の中の仕事ができる人は大体が“怠けないうさぎ”。そして、世の中の多くの人は“怠ける亀”。

“怠けないうさぎ”には、どんなに頑張っても亀は絶対に勝つことはできない。にも関わらず実際の社会では亀のほうが怠け、愚痴を言い、仕事に真剣に向き合っていないケースがほとんどだ。“怠ける亀”にチャンスや幸運は一生巡ってこない。まずは、仕事に集中できる環境づくりや、仕事を面白いと前向きに解釈することが大切。どのような状況、業務においても、視点や捉え方を変えることでどんな事でも面白いと思えるものだ。

「素直な人は伸びる」って結局はどんな人?

ビジネスとして、そして人として、成長していくための必須要素として語られるのが「素直さ」だ。素直さと聞いて、どんなことが思い浮かぶだろうか。人の言うことを素直に聞いたり、わからないことはためらわず質問ができたり、人格的にクセがなかったり…。
 
それも確かに素直さだ。しかし関谷氏のいう「ビジネスで成功する素直さ」は、アドバイスを受けたらまずはやってみて、その結果をアドバイスしてくれた人に必ずフィードバックできる人のこと。
 
アドバイスを求めるものの、実行に移さない人は案外多い。実行してもフィードバックしない人はもっと多い。教わったことをやってみて、やった結果を教わった人に伝えてみよう。きっと、それを受けてまた新たなアドバイスをくれるはず。仕事で伸びる人は、みんな習慣として実践している。
 

 
「人生は旅のようなもの」と言われるが、水道業者からスタートして飲食業でブームを創り出し、アパレルでも成功した関谷氏の人生はまさに「旅」そのものだ。
 
その旅の過程で得た知見や逆境への対処法、マインド、リーダーシップ、身につけるべきスキルなどが明かされた本書からは、自分の仕事に役立つ学びを得られるはず。マネジメント層にも、これからビジネスについて学んでいく若手にもまちがいなく有用な一冊だ。

 
(新刊JP編集部)

インタビュー

■社会人経験Oで家業の再建に飛び込んだ経験から得たもの

『なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?』は、ビジネスの世界で突出するために必要なことがよくわかる内容でした。たとえば本書で書かれている「やり抜くこと」や「逆境への対処」は、関谷さんご自身は意識的に身につける努力をされていたのでしょうか?

関谷: 一番大きかったのは、実家の水道屋を苦しみながらもなんとか再建できたことでした。それは自分がやりたいことではありませんでしたし、どうにかして実家の苦境を脱しないといけないからやっていたのですが、なんとか達成できたという体験が自信につながったのだと思います。

関谷さんの場合、社会人としてのスタートがそこだったんですよね。社会人経験がない状態で一つの会社の再建をしなければならなくなったという。

関谷: そうですね。元々の気質としては「おもしろおかしく生きたい」というタイプで、それこそ実家に戻るまではやりたいことしかやっていなかったので、本当につらい時期だったのですが、今となっては大きな体験だったと思っています。

台湾の国民的カフェブランド「春水堂」を日本に誘致したエピソードにしても「スーツに見える作業服」を作り上げたエピソードにしても、事業への熱量の大きさが人とは比較にならないと感じました。本の中では「ゼロからイチを作る際の熱量」のお話をされていましたが、この熱量の源泉は何なのでしょうか?

関谷: 「つまらない人生を送りたくない」という気持ちが強いのかもしれません。20代の頃は「成功したい」と思っていましたし、30代の頃は自分で何かを成し遂げたかった。40代となった今は世の中を良くしたいと思っているのですが、そうやって自分の気持ちが変わるなかで一貫しているのが、「平凡な人生で終わりたくない」という思いなんだと思います。

「世の中を変えたい」というのは、具体的にはどういう気持ちですか?

関谷: 世の中にある矛盾を解決したいとも思いますし、「こういう商品があればいいのに」ということも考えます。もちろん、僕らがもっと社会に対して影響力を持ちたいとも思いますね。

そういう思いは「オアシスライフスタイルグループ」のスタッフの方々にも共有されているのでしょうか。

関谷: そうですね。単純な給料の額であったり「儲かればいい」という考えには皆あまり興味がなくて、今アパレル事業の方で掲げている「アパレル界のアップルになる」というビジョンであったり「世界一を目指す」という目標に面白さを感じてくれているように思います。

「海賊王に俺はなる」じゃないですけど、それぞれが面白いと思える共通のキーワードのもとに集まってきてくれているのではないでしょうか。

採用も独特で、関谷さんが友達になりたいと思えた人を採用する、と。

関谷: そうですね。まさに今お話ししたビジョンに共感してくれる人であるのはもちろんですし、僕らが世界で一番やりたいことを一緒に追求してくれる人を採用しています。上下関係のないフラットな関係のなかで、本当の意味で遊びよりも仕事の方が面白いと感じられるような環境を作るのが目標です。

ちなみに応募者が100人いたとして、例年関谷さんが友達になりたい人は何人くらいいるんですか?

関谷: 弊社の採用の倍率はだいたい40倍から50倍なので、100人いたら2、3人でしょうね。狭き門ですが、僕が今40代で、新卒採用だと20歳そこそこじゃないですか。20歳離れても友達になりたい人って、それはよほど面白い人ですよ(笑)。

「令和のヒットメーカー」と呼ばれている関谷さんですが、そのすごさは儲けの匂いを嗅ぎ取って成功しているわけではなくて、何もないところからブームやヒット商品を生み出しているところだと思います。タピオカティーの時がまさにそうですね。

関谷: タピオカの時もブームを起こそうとしてやっていたわけではないんです。単純に台湾で飲んだタピオカティーに感動したということもありましたし、何より日本のカフェにコーヒー以外の選択肢がなかったんですよ。

一部、和カフェで抹茶とか緑茶を出しているところはあるんですけど、それはちょっとカテゴリーが違いますよね。コーヒー以外を売り物にしつつ、スターバックスに並ぶようなブランドがあれば喜ぶ人は多いんじゃないかと思ったのがスタートでした。

ただ、関谷さんがラブコールを送っていた「春水堂」は日本進出にはかなり懐疑的だったと聞きます。

関谷: そうですね。オーナーに会わせてもらうまでに一年半かかって、そこから先方の経営陣を説得して、日本で一緒に事業をするというところにこぎつけるのにさらに一年かかりました。

途中で「もう、あきらめようかな」とはならなかったんですか?

関谷: 途中でやめようと思うなら、その程度の思いの強さだったということです。まして、僕には水道という「本業」があったわけで。

たしかにそうですね。

関谷: ただ、本業があったからこそ、タピオカへの熱量を自覚できたところはあります。「水道業が本業なのは自分でもわかっている。だけど、どうしてもやりたい」ということじゃないですか。そこまで思いが強いと、もはや自分では止められないんですよ。

もう理屈ではないんですね。

関谷: 理屈じゃないです。「スーツに見える作業服」もそうです。制作の前に「やらなきゃいけないこと」や「想定しうるハードル」について考え始めるときりがない。「できない理由」がいくらでも出てくる。

だけど、「スーツと作業着の垣根を壊す」ということが持つ大きな価値を考えると、やりたい衝動が抑えられませんでした。

■「自信」と「信頼」があれば、未知のものへの一歩を踏み出せる

私たちは、「やったことがないこと」「未経験なこと」に対してつい尻込みをしてしまいますが、関谷さんは飲食もアパレルも経験がないままトライして成功させています。未経験なことにチャレンジする際に感じる恐怖を克服する方法についてご意見をうかがいたいです。

関谷: 何かに一歩踏み出す時、背中を押してくれるものは「自信」と「信頼」の二つです。自己肯定と、周りの人から頼られている、周りの人が信じてくれるという実感です。これらが揃った時に一歩が踏み出せる。

だから、小さなことでもいいので自信と信頼を得られる経験を積み重ねていくことが大切だと思います。弊社でも「周りの人からの期待を1%でもいいから超え続けよう」という話をしています。

また、20代の時に決めていたという「まずは縁のある仕事や環境で、周りが驚くほどの結果が出るまでやり抜く」という決心もユニークでした。この決心はどのようになされたものなのでしょうか?

関谷: 自分自身の将来設計を考えた時に、20代は下積みの時期になるだろうと思っていたんですよね。だから、この時期はとことん自信と信頼を得る10年にしようと。そのためには、好きなこと、好きな仕事はひとまず置いておいて、自分に縁のある仕事や環境で結果を残すことが必要だと思ったんです。

その決心があったから、実家の水道屋の立て直しも逃げ出さずにできたんだと思います。5年くらいかかったのですが、5年間で一生涯の自分の支えになる自信と信頼を得られたのだから、今考えると貴重な時間でした。「そんなにやりたくなかったことでも結果を出せたんだから、自分が惚れ込んだものや心の底からやりたいと思うことをやったら絶対成功するはずだ」と思えたんです。

根性が入っていますね。

関谷: 自分でもメンタルは「昭和」だと思います。親の会社を辞めて別の会社に転職することもできたはずなのですが、自分に会社を任せてくれた親の期待もあるじゃないですか。この状況で転職して本当の自信を手に入れることができるのかと考えた時に、答えは「NO」だったんです。

現状から逃げても本当の自信は得られない、ということですね。

関谷: ゼロから田んぼを作って稲を育ててお米を作るのは、きっとものすごく大変だと思いますが、やり遂げることでものすごく自信がつくでしょう。でも、そこで出来合いのお米を買ってしまったら米作りにおいて自信も信頼も得られません。当時の自分にとって転職するという選択肢はそれに近かったですね。

タピオカブームを作り、「スーツに見える作業着」でアパレルにも進出した今、関谷さんが次に何を仕掛けるのかが気になります。今後の活動について、お話しできる範囲で構いませんのでお聞かせいただければと思います。

関谷: 「アパレルのアップル」を目指しているので、そちらの方でまだまだやらないといけないことがあって僕の仕事もアパレルの比重が高くなっているのですが、いずれは教育業界にも参入したいと思っています。

それはどのような問題意識からですか?

関谷: 現状「塾」というと、勉強を教えたり受験対策をする場所でしかなくて、もっと「考え方」や「生き方」を教える塾があったらいいのにと思っていたので、そういう塾を作りたいです。

また、教育プログラムにも問題があると思っています。象徴的なのが、大学受験などの、試験現場にスマホを持ち込んではいけないというルールです。

これっておかしいですよね。社会に出たらスマホを使って仕事をしてはいけないというルールはありません。使えるものは何でも使って仕事をしていくのに、そうではない状況で戦わせているっていうのに違和感があります。なんでそんなルールがあるかというと、スマホがなかった時代の人が教育プログラムを作っているからです。

昔みたいに暗算とか記憶力で仕事をしてきた時代ならそういうルールが必要だったかもしれませんが、今は記憶力の重要性は下がっていますよね。そういうところも含めて、国の教育を時代や状況に即したものに変えていきたいという気持ちを昔から持っています。

最後に、読者の方々にメッセージをお願いいたします。

関谷: 40代や50代の方々はマーケティングの本として読めますし、20代の方はビジネスパーソンとして成長していくための教科書として読める本になりました。

前者の方々には、今のこの混沌とした時代に何を仕掛けるかという発想や行動の仕方について書いていますし、後者の方々は将来成功したい、大きなことを成し遂げたいという時に今の年齢や立場で何をするべきかについての答えを書いています。

また、リーダーシップやマネジメントについても書いているので、管理職の方々にも参考にしていただけたらうれしいですね。

(新刊JP編集部)

書籍情報

目次

  1. はじめに
  2. はじまりは倒産寸前の水道屋
  3. 飲食・アパレル業界での無謀な挑戦
  4. やりたいことは全部やれ ー マインド編
  5. 今の時代に求められる人材 ー スキル編
  6. 巻き込み、惹きつけろ ー リーダーシップ編
  7. 逆境を乗り越えろ ー コロナすらチャンスに変える
  8. おわりに

プロフィール

関谷 有三(せきや・ゆうぞう)
関谷 有三(せきや・ゆうぞう)

関谷 有三(せきや・ゆうぞう)

オアシスライフスタイルグループ代表取締役CEO。1977年栃木県生まれ。成城大学経済学部卒業後、倒産寸前だった実家の水道工事会社を立て直したあと、大手マンション管理会社と提携し業界シェアNO.1企業へと飛躍。さらなる事業拡大のためのアジア視察中、台湾で人気の老舗カフェブランド「春水堂」に惚れこみ、当時、海外進出を拒んでいた「春水堂」を3年かけて説得、日本への上陸を実現。タピオカブーム、台湾ブームの仕掛け人となる。その後、スーツに見える作業着「WORK WEAR SUIT ワークウェアスーツ」を素材の開発から行い商品化。アパレル業界で異例の大ヒットとなり、コロナ禍にもかかわらず売上前年比400%を記録。水道、飲食、アパレルとまったくの他業種でヒットを収め、各メディアでは「令和のヒットメーカー」と呼ばれている。

なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?

なぜ、倒産寸前の水道屋が
タピオカブームを仕掛け、
アパレルでも売れたのか?

著者:関谷 有三
出版:フォレスト出版
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