テレワーク環境でも成果を出す
チームコミュニケーションの教科書
著者:池田 朋弘
出版:マイナビ出版
価格:2,079円(税込)
著者:池田 朋弘
出版:マイナビ出版
価格:2,079円(税込)
今年2020年ほど、テレワークが注目された年はない。
いうまでもなく、新型コロナウイルスの影響である。この感染拡大によって、テレワークの導入が一気に進んだ感があるが、それまでに試験的に導入していたなどの「下地」がなかった企業の場合、テレワークによってこれまでになかった新たな問題が生じ、結局「出社」に戻ってしまうケースもある。
ただ、個々人に合わせた柔軟な働き方ができるテレワークは、基本的にはコロナウイルスの流行が収束した後も制度として残し、活用すべきものだろう。『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』(池田朋弘著、マイナビ出版刊)は組織や従業員にとって、メリットが最大化するテレワークの取り入れ方を解説していく。
では、テレワークで生じうる問題とはどのようなものがあるのだろうか。
経営者が懸念することの一つは、テレワークによって従業員が離れ離れになり、会社や社内のチームで一体感が失われることだ。たとえば、テレワークでは、これまでのように気軽に雑談をすることができない。雑談からは、様々なビジネスのアイデアが生まれることが多々ある。また、話しているうちに今手がけているプロジェクトのことで盛り上がって士気が上がることもあっただろう。テレワークでこれらがなくなるとすると、「一体感がなくなる」
という懸念もわからなくはない。
ただ、本書ではこれは解決可能な問題だとしている。雑談の場や時間がなかったり、あるいは一カ所に集まらなくなったことでチームのメンバーの人となりを知る機会が減ったり、といった「雑談ができなくなる要因」は、意図的にそのための場を作ったり、会議の時間を圧縮・削減することで解消できる。
メンバー同士が顔を合わせなくなると、雑談をしようにもネタがなくなってしまいやすいため「自己トリセツ(取扱説明書)」をつくり、互いの共通点や関心事を見える化しておくと、場を設けることさえできれば雑談は生まれていく。
また、自社のミッションやビジョンなど「未来」を語る時間(これまでは雑談や仕事後の「飲み会」がそこに充てられていた)は、テレワークではとりにくいし、米ヤフーや米IBMがテレワークを禁止した理由として挙げたように、アイデアを共有・発展させにくいという意見もある。これらについては「オンライン合宿」など非日常の場を設け、自分や会社の未来を熱く語る時間をつくることや、社内で使うチャットツール(SlackやChatwork)に自分のアイデアを好きな時につぶやけるチャンネルを作ることで、メンバーとそのアイデアを深める議論をできるようにすることで解決可能だ。
またリモートワークのマイナスポイントとしてしばしばあげられるのが「会議」である。
オンライン会議に参加すると、ある種の不便さを感じることは多い。同時に一人しか話せないため、どうしても会話が一方面的になりがちだ。対面での会議のように、相手の発言中にちょっと割って入ったり、数人で声を揃えたりといったこともしにくい。その意味で、オンライン会議は「議論」が難しい。
本書では、こうしたコミュニケーション上の制約があるオンライン会議での議論は、人数を絞って行うことをすすめている。議論ではなく業務説明を聞く「情報共有」だけが必要な人もいるのであれば、かならずしもリアルタイムで会議に参加する必要はなく「スクリーン録画」機能を使って後から会議の内容を追えば、会議や会議人数の削減になる。
「スクリーン録画」サンプル(リンク)
https://www.loom.com/share/50404749eaae4bf29348efcd941f1a99
どうしても大人数になってしまう場合は、少人数に分けて議論を行ったり、チャットや共同作業ツールを活用することで、オンライン会議でも効果的な議論ができるようになるという。
また、オンライン会議では、事前の準備が成否を分ける。事前に会議の目的と論点を明確にして、知っておくべき情報を頭に入れておいてもらうことで、進行は格段にスムーズになる
◇
本書では、このほかにもテレワークで起こりがちな問題として、「連絡・相談がしにくい」「メンバーの管理・サポートがしづらい」を挙げているが、ここで紹介した問題も含めて、テレワークで想定される問題はすべて「コミュニケーション」に帰結する。
これらはすべて解決可能な問題であり、解決法を知ることで、テレワークは単純な「出社の代替手段」ではなく、組織の生産性を高め、業績を上げる最適解となる。
テレワークには「向いている会社」「不向きな会社」はない。すべては取り入れ方とカスタマイズの問題である。本書を読めばテレワークをどのように取り入れて、どう運用していくべきかがわかるはずだ。
■『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』内容まとめ動画は こちら
(新刊JP編集部)
新型コロナウイルスの流行で、テレワークを導入する企業が増えた2020年。その便利さや働きやすさを享受する人がいる一方で、これまでは感じなかった不便さに気づく人もいるはずだ。
その一つが「コミュニケーション」だ。これまで当たり前にできていた雑談ができなくなったり、慣れないリモート会議のテンポに戸惑ったりと、コミュニケーションの問題を乗り越えられるかが、個人にとっても企業にとっても、テレワークを実りあるものにするカギかもしれない。
『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』(池田朋弘著、マイナビ出版刊)はこの点に注目。テレワークのコミュニケーションにまつわるトラブルやその対処法、テレワークならではのコミュニケーションの方法などを、事例を交えて解説していく。
今回は著者の池田朋弘さんと、コミュニケーションや仕事術に関する多くの著作を持つ作家の中谷彰宏さんによる対談が実現。テレワーク時代のコミュニケーション、信頼関係、働き方など広く語っていただいた。
編: 『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』は、テレワーク導入のバイブル的な一冊ですが、現行のテレワークへの問題提起もなされています。まず池田さんが今回の本をお書きになったきっかけについてお話をうかがえればと思います。
池田: 2015年くらいのことなのですが、経営している会社の都合でテレワークを導入しまして、その中で、もちろんテレワークの良さもわかった反面、従業員数十人に加えて、数千人の在宅ワーカーとオンライン前提のコミュニケーションをする難しさもよくわかりました。
テレワーク自体は今回のコロナの前から、オリンピックを境に増えると言われていました。その時にIT環境や社内制度などのハード面は整備できても、コミュニケーションという「ソフト面」で苦労する会社が出てくることはわかっていましたから、そこで自分がやってきたコミュニケーション面での試行錯誤を伝えられたらいいなと思っていたのですが、思いがけずこういう事態になってしまった、という感じです。
編: コロナ禍もあって、今年はテレワークが一気に普及した一年でした。中谷さんは講演やセミナーなどをされていますが、テレワーク化した部分はありますか?
中谷: 講演はテレワークになりましたね。パンデミックが落ち着いた後も、すべてリアルには戻らなくて、状況によってテレワークとリアルを使い分ける「ハイブリッド」になります。
今回のコロナ禍で、これまでなんとなく誤魔化してきた問題点があぶり出された感じです。池田さんはコロナのずっと前からテレワークを導入していたと言っていましたが、いくら「働き方改革」を叫んでも、結局は出社主義・机主義・残業主義から抜け出せなかったのです。
海外ではもうとっくにテレワークは普及していたわけで、日本はコロナという「外圧」に後押ししてもらって少し変わることができた。ペリーが来た頃から、日本は外圧にうまく乗るのが上手です。今回のコロナという外圧をうまく使えた会社は生き残っていきます。
池田: テレワークにするなかで、違和感を持ったところはありますか?
中谷: 最近打ち合わせで「ミュート」する人が増えました。多くの会社で発言者以外はマイクをオフにしているのが気になっています。それだとどうしても活発なコミュニケーションにならなくて、トランシーバーで話しているみたいになってしまう。もっとすごいところはマイクオフだけではなくて、映像もオフになっています。
池田: それだと完全にコミュニケーションが一方向になってしまいますよね。主要な参加者以外は動画の記録を見てもらう形でもよさそうです。
中谷: 単なる「報告」ならば、わざわざ会議を開く必要はなくて、書面を回してみんなに読んでもらった方が効率的です。それでもリモート会議をしているケースもあります。しかも、クリエイティブを売りにしている会社で結構見かける。でもそれって、テレワークになる前からその会社の会議はそうだったということなんです。テレワークが何かを変えたわけではないので。
池田: 対面だった時は会議を黙ったままやりすごせていたかもしれませんが、リモート会議だと黙っている人が目立ってしまいます。でもそれってテレワークの問題ではなくて、もともと発言しないのに会議に参加していたことに問題があるわけですものね。
中谷: リモート会議で活気が出ないのではなくて、もともとその会社の会議は活気がなかったんです。
リモート会議はリアルよりも瞬発力が必要です。瞬間瞬間でパッと発言できないと、結局発言できないまま終わってしまいやすい。「ここで何も言えなかったら次から呼んでもらえない」っていうひな壇芸人の覚悟でやるべきです。
池田: リモート会議って10人参加しても、発言できるのは1人だけですから、自分が話せる時間はすごく限られてしまいますよね。ただ、メインは会話でも、サイドでチャットを使ってやり取りして、内容を補足したり、発言するタイミングを掴めなかった人が自分の意見を書き込むことで、それまで出ていなかった意見が出たりすることもある。工夫次第でいくらでも有益なものにできるのがリモート会議なんです。
中谷: 会話の活気というと、リモート会議こそ表情やリアクションが大事です。講演をしていると、生徒は2通りに分かれるんです。こちらの話を前のめりになって聞く人と、そのままの姿勢の人。でも、それがリモートになると3通りになって、「一歩引く人」が出てきたんです。これは「テレビを見ている感覚」になってしまっているんでしょう。自分も相手から見られているという感覚が希薄になっている。
池田: 本にも書いたのですが、リモート会議こそ意識してうなずきを入れたり、表情で相手の話に興味があることを示す必要がありますよね。
中谷: 聞き手側の反応と自分の話が連動しないと話しにくいです。講演をリモートですると、自分の方のモニターに受講者が一斉に映りますが、聞いてくれている人とそうでない人はすぐわかります。テンションが下がるから聞いてくれている人だけ見て話しています。
池田: わかります。リモート会議をしていると、不自然に表情が硬い人がいるんですよね。これはたぶん、会議に参加しながらメールを返信したり「内職」しているんだと思いますが、こっちはおもしろい話をしているつもりなのにまったく反応がないから悲しくなったりすることがあります(笑)。
編: テレワークに肯定的になれないマネジメント側は「サボっていてもわからないのではないか」という懸念があるのだと考えられます。この懸念について経営側にいるお二方からご意見をいただきたいです。
中谷: 早稲田の文学部は当時出席が厳しくて、僕はそれをずっとおかしいと言っていたんです。文学を学ぶ一環として授業ではなく映画館に通い詰めていたので、「映画館の半券を出席代わりにしろ」と。
池田: 中谷さんは映画を大量に観ていたそうですね。
中谷: でもね、法学部は出席がゆるかったんです。全然出席をとらない。だから、下宿を借りてない学生が結構いて、試験の時だけ地方から出てきて、試験だけ受けて、またどこかに戻っていく。しかも、そういう学生の方が優秀だった。
学ぶことの本質は「学校に行くこと」ではない。同様に、働くことの本質は「会社に行くこと」ではないということなんです。
「テレワークだとサボっていてもわからない」と考える管理職がいるとしたら、その人は部下に1日8時間机の前で過ごしてほしいと考えているということです。仕事をちゃんとやっているかどうかは成果を見ればすぐわかります。2時間で成果を出して6時間休んでいるのを「サボっている」と捉えるのはおかしい。少なくとも「社員がちゃんと勤務時間内に仕事をしているのかをチェックするようにしよう」と考えるのはまちがっています。
1980年代にポケベルが出回っていた当時、シンガポールに行ったら、土木工事をしている労働者たちがポケベルを使って労働者同士で連絡を取り合いながら、実に楽しそうに仕事をしていました。一方日本では、ポケベルは会社が従業員を管理する道具だったんです。「今何してるんだ?」「得意先と打ち合わせしてます」って言って。実際は公園でサボっていたりした。
池田: 同じツールでもコミュニケーションを円滑にするために使うのか、監視装置のように使うのかで従業員の働きがいも会社の文化もまったく違ってきます。リモートワークにしても、勤務時間中にパソコンにログインしているか調べたりするのは意味がない(笑)。
ただ、テレワークは働いている姿が見えないので、上司が不安になりやすい環境ではあるんですよ。だから、快適に働くためにも、「上司を不安にさせない工夫」はある程度は必要です。これって難しいことではなくて、はじめのうちはこまめに連絡をして、仕事の過程を見せておけばいい。そのうち「あいつは、任せておけば大丈夫だ」となってくるので。
中谷さんは「テレワーク時代の信頼」についてはいかがですか?
中谷: eスポーツのゲーマーになりたいっていう子に「まず親を安心させること」とアドバイスをしたことがあります。「ゲームは1時間までだぞ」と言われているうちは、まだ親からの信頼がないわけです。勉強や普段の生活をしっかりやってそこをクリアしてしまえば、たとえ親がeスポーツにあまり理解がなかったとしても、好きなことができる。
自分が働きやすくするために周囲の信頼を得る方法もこれに似ています。上司を安心させられれば勝ち。加えて言うなら「自分のやりがいのためなら、“手柄”はどんどん他人にあげろ」です。
僕は会社員時代、どうでもいい会議の時に「これは〇〇さんが言っていたことなんですけど」と、上司の名前を出して発言を引用した。「これはこういうことですよね、○○さん」と、周囲の人にボールをパスしたりしていました。こうやって周囲の人に手柄を譲っていたんです。僕にとっては小さな手柄よりもやりがいの方がずっと大事だったからです。これでずいぶん働きやすくなりました。これが手柄もやりがいも両方求めてしまうと、自己肯定感が下がるし、あまりうまくいきません。
編: テレワークは単純にはたらく場所の問題ではなくて、導入する企業の中には人事評価などの制度設計を見直す必要が出てくるところもあると思います。テレワークに適した社内制度作りについてはどのようにお考えですか?
池田: 中谷さんのお話にありましたが、もう「〇時間稼働しました」という時代ではなくて、アウトプットや任された仕事を評価するという制度に変えていく必要があります。
ただ、これはすぐに変えられるものでもないんですよね。日本はいわゆる「メンバーシップ型(新卒一括採用のような形で採用した人材を社内で育成していくスタイル)」の企業が多くて、欧米のように「ジョブ型(ある仕事に対してその仕事のスキルを持った人材をつけるスタイル)」は少ない。テレワークと相性がいいのは断然仕事の守備範囲がはっきりしているためにアウトプットの評価がしやすいジョブ型なのですが、いきなりは変えられませんから、徐々にジョブ型にシフトしていきながら、仕事のアウトプットだけでなく過程も見えるような形のテレワークをやっていくことも必要かなと思っています。
中谷: 日本の企業がだんだんジョブ型にシフトした結果として、他者から評価されるということを期待しなくなればいいです。
「こんなにがんばっているのに、会社は評価してくれない」と思っているうちは上司の奴隷、会社の奴隷です。ジョブ型になって「時間」や「がんばり」ではなく「アウトプット」で評価されるようになれば、状況は変わるのでしょうが、それだけではまだ会社からの評価がついて回る。「別に評価なんてどうでもいい。自分さえやりがいを感じられればそれでいい。その代わり、いつでも辞めるよ」という風に考えられるようになると、会社や上司と同等になれる。ジョブ型へのシフトをきっかけに、そういう人が増えてくれればいい。
編: 今のところテレワークは「出社の代替手段」として導入されているケースが多いと思いますが、今後それだけに終わらず、独自の価値を生み出すことはあるのでしょうか。またそれにはどんなことが必要になるのでしょうか?
中谷: 独自の価値を生み出せるかどうかはその会社次第です。はじめのうちは「代替」でもいいと思いますが、そこからスタートして、「結果オーライかもしれないけど、この部分はオフィスにいた頃よりいいよね」というのを、テレワークをしながら発見していける会社は強い。
そして今はチャンスです。平時に組織を変えるのは非常に難しい。今はコロナ禍で特殊な環境です。日本人のおもしろいところで「こういうご時世なので・・・」と言えば何かを大きく変えても文句が出ないんです。「こういうご時世なので」と言っておけばあらゆる改革ができます。コロナとうまく利用して組織を改革していくと生き残ることができます。
池田: テレワークの独自の価値というところで、オフィスワークでは活躍しにくい人が活躍できることが大きいと思います。たとえば「白血病を治療しながら在宅で働く」ということはテレワークでないと難しいですし、介護と仕事の両立もそうです。「誰一人取り残さない」というSDGsの方向性にテレワークは合致すると思っています。
また、企業にとってもテレワークは「採用・離職防止」の大きな一手になります。あるアンケートでは就職における学生の最重視項目が「テレワークができるかどうか」でしたし、「テレワークを導入しないので転職を検討」という声もあります。「社員が会社に合わせる」という考え方ではなくて、「社員も会社もともに相手に合わせる」が今後長期的に発展する会社のスタンダードな考え方になるのではないでしょうか。
今回の本ではテレワークの導入について、起こりうる問題やその対処法についてまとめています。中谷さんの言葉をお借りしますが「こういうご時世なので」ぜひ読んでいただきたいです。
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(新刊JP編集部)
池田 朋弘(いけだ・ともひろ)
起業家 / 株式会社メンバーズ執行役員
早稲田大学在学中にもっとネクスト株式会社の創業にCTOとして参画。
2008年、UXコンサルティング事業を行う株式会社ビービットにUXコンサルタントとして入社。
2013年、UXリサーチ事業を行う株式会社ポップインサイトを創業、同代表取締役に就任。
2016年から全面的にリモートワークを導入し、2018年には総務省のテレワーク先駆者百選に選定。
2017年4月にM&Aにより株式会社メンバーズのグループ会社となり、2020年3月に代表取締役を退任。
2015年、クラウドソーシング事業を行う株式会社MIKATA(現、株式会社イングクラウド)を創業、同代表取締役に就任。
2016年10月にM&Aによりインググループのグループ会社となり、代表取締役を退任。
2020年4月、DX支援事業を行う株式会社メンバーズ執行役員に就任。複数の新規事業の立ち上げやエンジェル投資なども行う。
著者:池田 朋弘
出版:マイナビ出版
価格:2,079円(税込)