獅子奮迅
次世代ビジネスのイノベーター
著者:角田 哲平
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税
著者:角田 哲平
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税
1年間にどのくらいの会社(法人)の数が設立されているか知っているだろうか。2019年の「全国新設法人動向」によればその数なんと13万1292社(*1)。単純に日割りすると1日約360社もの法人が誕生していることになる。
しかしその後、理想的な成長曲線を描いていける会社はほとんどない。10年後の会社生存率はわずか6.3%。100社立ち上がっても、10年後には6社しか残っていない計算だ。
その中で急成長を続け、さらにイノベーションを巻き起こす企業の経営者は一体どんなことを考えているのか。
2015年、オーラルケアビジネスをフィールドとする株式会社シャリオンを立ち上げ、瞬く間にメディアを中心に話題に。2019年にはアジアの注目企業100に選出されるなど、注目を集める経営者・角田哲平氏が執筆した『獅子奮迅 次世代ビジネスのイノベーター』(幻冬舎刊)には、その半生とともに、会社やビジネスに対する考え方、そしてイノベーションの起こし方についてつづられている。
ここでは角田流「経営哲学」の一部をご紹介していこう。
会社にとって利益は重要だ。利益を上げなければ、事業を継続することはできない。しかし、利益こそが会社にとって最も大事なのかと問われると、そうではないようだ。
角田氏は会社をヨット、経営者を船長に例えて、経営の本質を説明する。
そのヨットがどこに向かっているのか。その向かうべき方向を示すのが「理念」だろう。なぜ自分はビジネスをするのか、事業を通じて誰を幸せにしたいのかから生まれる「理念」は、迷ったときに立ち戻れる原点でもある。
一方、ヨットが向かうべき方向に進むためには風が必要だ。追い風がなければヨットは前に進まない。この追い風こそが会社にとっての「利益」である。
ならば会社を推進する利益こそが最も大事なのではないか?
確かにそれは重要だが、ヨットで航海する理由は、進むべき方向へ進み、目的地に辿り着くことであり、猛スピードで方向も分からず前に進むことではない。
それは経営も同じだ。利益を出すことが目的化すると、会社の未来の姿が分からなくなる。
利益は重要だ。しかし、社会に役立つために立ち上げたはずの会社が、利益を最優先するあまり、周囲を犠牲にしたり、社内の人間たちを疲弊させてしまい、社会の役に全く立てなくなるということが起こりえる。そうなると、協力してくれる人も取引先も離れ、持続的な成長は不可能になるだろう。
経営者はその会社の本質を見失わないことが大切なのだ。
経営者となって5年、角田氏は「経営者としてまだまだ未熟であり、学ぶべきことがたくさんあります」と自省する。特に角田氏は、創業経営者であり、自身の色が組織のあり方に強く濃く出てしまう。自分自身の振る舞いが、良くも悪くも組織に影響を及ぼすのだ。
「会社はトップの器以上のものにはならない」と角田氏は言う。
だからこそ、経営者として意思決定をするときに決してブレない軸を決める。角田氏の場合は「人として正しいかどうか」だという。いい話があっても、少しでも倫理的に問題があるなら、それは手を出さない。
誠実さを積み重ねていくことが、経営者としての器の大きさにつながる。角田氏はそう考えているという。そのために、日々、自分を磨き続けているのだ。
◇
福岡に生まれ、空手に青春を捧げ、伝統神事「山笠」のとりこになり、地元で就職。2011年に上場企業からスカウトされ上京し、瞬く間にトップセールスの座を獲得。しかし、2度目の転職で壁にぶち当たり、悩み続ける中で出会った「セルフホワイトニングマシン」と「オーラルケア」ビジネス。
そこから角田氏とシャリオンの怒涛の快進撃が始まっていく。
人生は何が起こるか分からない。シャリオンが辿ってきたこの5年という時間だけを見ても、その濃密さがうかがえる。新進気鋭の経営者として注目を集める角田氏の言葉は、これから起業を目指す人たちにとって、大きな勇気になるはずだ。
(新刊JP編集部)
■参考ウェブページ
*1…2019年「全国新設法人動向」調査
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200529_02.html
■「起業というチャンスがあるのなら、それをつかんでほしい」
角田: 三つ動機がありまして、一つめは日本人の歯に対する意識の低さに対して啓蒙したかったということです。実は定期的に歯科医院に受診に行く人って6%ほどしかいなくて、日本人の成人の7割から8割が歯周病に罹っていると言われています。その歯に対する意識を高めてもらいたいということがありました。
二つめは、私は30歳で起業をしたのですが、その経験が自分にとってすごく良かったんです。ただ、やはり日本人って起業に対してハードルが高いというか、意識があまり高くないですよね。やりたいことがある若者にはどんどんチャレンジをしてもらって、一緒に世の中を変えていこうというメッセージを伝えたかったんです。
角田: そうなんです。そして、三つめが、僕の人生においてキーポイントになった方々、お世話になった方々に対して、自分のやっていることを伝えたい。恩返しとまでいかないですが、「自分は今、頑張っているよ」ということを伝えたいという想いがあり、この本を書かせていただきました。
角田: そうですね。会社の名前が「シャリオン」なのですが、そのモチーフにもなっています。
角田: 高校時代、極真空手をやっていたのですが、その道場の会長から教えてもらった言葉です。そのときから私はずっとこの「獅子奮迅」という言葉を使っていて、メールアドレスもこの言葉を使ったアドレスを使っていました。
角田: 会社の経営はまさに「獅子奮迅」です。いろんな問題が起きては、それに向かって乗り越えていく。例えばこのコロナ禍もそうなんですけど、やはり影響はあるわけで、そこを乗り越えるために「獅子奮迅」のごとく動いていくと。
角田: まだまだです。新たにやりたいこともどんどん見つかっていますし、もっとやれることもあるので。5年間は本当に一瞬でした。でも、経営者として納得のいかない時間だったと思います。
角田: シャリオンはオーラルケアのメイン事業に据えています。だから、そこから外れることなく、より活動を強化していく感じですね。11月8日が「いい歯の日」だったことあって、例えばレアル・マドリードという世界的サッカークラブがやっている日本のフットボールスクールとコラボして、子どもたちのための歯みがき教室をしたり、港区に住んでいるひとり親家庭に歯ブラシと歯磨き粉を配ったり、児童養護施設に歯ブラシと歯磨き粉を寄贈したりしました。
こうした活動を通して、歯に対する意識を高めて、健康な体をつくりましょうということを言っていきたいと思います。
角田: もともとサラリーマンをしていたのですが、その時から社長という存在にすごく憧れがあったんです。前職の会社の社長もすごく格好よくて憧れでしたが、自分もトップに立って会社を動かしていきたいという野望があったんですね。
角田: 強く、ブレない、芯がしっかりした人ですね。
角田: そうですね…。幻冬舎の見城徹さんはすごく憧れるリーダーです。言葉がすごく強いし、人を惹きつけますよね。
角田: とにかくやってみないと分からないので、まずは挑戦してみてほしいです。私はプラス思考なので、何か起きても乗り越えられると思っています。むしろ、乗り越えるために神様が与えてくれた試練なんだと考えるので、それすらも成長のきっかけにしようと思うんですね。
起業というチャンスがあるのなら、それをつかんでほしいです。そして自分にできることを探していくことが大事だと思っています。
角田: 全然違います。経理のこと、財務のこと、人材のこと、全部見なきゃいけないので、すべてが学びのようになっています。サラリーマン時代は数字なら売上だけ見ていればよかったのですが、経営者はそうではないのだなと。
それと大切なのが、危機管理能力ですね。何か違和感があったら、そのまま突っ走らないで一度止めるという選択も必要なのだなと。
角田: 人材育成でしょうか。思いを伝えて、この事業を一緒にやっていくメンバーを集めて、成長させていく。それはすごく大変なことなんだなと思いました。
角田: 常にアンテナを張って、時代の先読みをすることですね。5年後、10年後を読んで、ビジネスをしていこうと思っています。
■起業をするときに大事なものは「信念」
角田: 日本人の歯に対する意識の低さは以前から感じるところがあって、笑っても歯を隠すようにみんな笑うんですよね。私は歯をきれいに保つようにしているので、笑う時には気にしません。だから、もっと日本人が自信を持てるように、というところがありました。
角田: そうですね…。市場が大きくなっているので、新規参入してもチャンスはあると思っています。
ヘルスケアの事業はとても可能性がありますよね。高齢化であったり、新型コロナ禍も健康に対する意識を高めるきっかけになっていると思います。その意味では、市場はこれからも伸びていくのではないかと。
角田: お客様に喜んでいただいたときですね。「歯がきれいになった」「歯への意識が高くなった」という声をいただいたときはすごく嬉しく感じますし、自信を持って笑顔の時に歯を見せてくれるんですよ。すごく素敵な笑顔で、やっていて良かったと思います。
角田: 私たちの仕事は、白くて美しい歯、健康な歯を通して人々のとびきりの笑顔を作っていくことです。毎日の暮らしの中でもっと気軽に歯のケアができるようにしていき、どんどん笑顔を増やしていきたいと思っています。そして、世界でいちばんの「笑顔のメーカー」としてこれまでにない商品やサービスにチャレンジしていきたいという思いを込めて、こうした理念を立てました。
角田: これからもオーラルケア業界を中心に進めていきますが、アジアには目を向けています。オーラルケアって、アメリカやヨーロッパと比べてアジアはまだまだ意識が低いんですよね。
角田: そうなんです。それにアメリカでは歯周病予防のキャンペーンに「Floss or Die」というキャッチコピーが使われたりしていて、デンタルフロスを使ってケアをするという流れがあります。でも、日本ではあんまり使われていないですよね。
角田: おそらく多くの方がそうなのではないでしょうか。でも、定期的に検査は行ったほうがいいですよ。歯周病は全身の病気にも影響を及ぼすといわれています。本書でも歯周病の怖さには触れていますが、一人でも多く歯に対する意識を高めたいと思っています。
角田: 信念を持って起業をしてほしいと思っています。私たちがこれまで良い展開ができているのは、良いサービスをつくれたからだと思うんです。良いサービスだからテレビをはじめとしたメディアにも取材をしていただきましたし、仲間も増えていく。
あとはやはり人を裏切らないことです。自分は裏切られても、相手を裏切らない。それが一番大事なことだと思いますね。仁義ではないですが、結局はそういう部分なのかなと。
角田: この世の中には、自分さえ良ければいいと考える人っているんですよね。実際に私も信じたばかりに裏切られたことがあります。そのときは危機管理能力が必要だという大きな学びを得ました。
角田: 私の考えとしては新たなビジネス、新たなサービスを世の中に打ち出していく人がイノベーターだと思っています。そして、私自身もそういうことをやっていこうと意識しています。
角田: 私も夢もなく、途方に暮れた時期もありましたが、やっぱり人生って1回きりなんですよ。だから、かつての自分と同じように、何か悩んでいる人であったり、仕事が楽しくないと思っていたり、自分にはチャンスがないと思っている人にぜひ読んでほしいです。
私はたまたまオーラルケアのビジネスに出会って、起業し、サービスを展開しています。誰でもそういうチャンスはあると思っているので、ぜひ前を向いて踏み出してみてください。
(了)
角田 哲平(つのだ・てっぺい)
1984年生まれ、福岡県出身。2007年に九州産業大学経営学部を卒業後、福岡の老舗名門商社に入社。建設資材などを扱う営業職として活躍。2011年、情報通信サービスを扱う上場企業にスカウトされて入社したのを機に上京。瞬く間にトップセールスの座を獲得。営業として活躍する傍らでオーラルケアビジネスの可能性に気づき、2015 年に株式会社シャリオンを設立、代表取締役に就任。オーラルケア商品の製造・開発・販売を行うだけでなく、日本人の歯に対する意識を高める啓もう活動を行い、テレビ等のメディアからも注目を集めている。また、代表を務めるシャリオンがアジアの注目企業100に選出されるなど、グローバルに活躍している。
著者:角田 哲平
出版:幻冬舎
価格:1,400円+税