倦怠感や疲労感、体の痛みや体力の衰え・・・。
絶不調ではないけれども、元気いっぱいでもない。多くの人は、たぶんそんな状態の中で、その日によって体調のアップダウンを感じつつ、毎日の仕事やすべきことをこなしているのではないか。
でも、「100%ではない状態」でやる仕事やスポーツ、勉強のパフォーマンスは、自分にとって満足いくものではないだろう。ならば、できるだけ自分の状態を100%に近づける方法を探ってみることも対処法の一つである。
『バイオハック 肉体・精神・頭脳のパフォーマンスを最適化する技術45』(井口晃著、S B
クリエイティブ刊)では10年以上世界中を飛び回り、精力的に講演活動や著述活動を続ける著者が、今シリコンバレーやビバリーヒルズ、ニューヨーク、ロンドンなど欧米都市で注目されるライフスタイル「バイオハック」を解説する。
バイオハックとは、「体調が悪くなったら病院にかかる」という、言ってみれば受動的な健康づくりではなく、そもそも医者にかかるような状態にならないように、主体的に健康づくりをしていくライフスタイルだ。
食習慣に睡眠習慣、運動習慣、リラックス習慣。もし今、どことなく体調が悪いと感じているのなら、これらの習慣を見直し、アップグレードする時期に来ているのかもしれない。
本書で紹介されているバイオハックの中でも、著者の井口晃さんが「もっとも始めるのが簡単」としているのがファスティング(断食)だ。胃腸や肝臓など、内臓を休ませる時間を設けられるため、消化機能や解毒機能を高められるなど、健康面でのメリットが大きいとされているファスティングだが、毎日3食欠かさず食べている人からしたら「ツラそう」「途中で挫折しそう」という気持ちが先に立つ。
ただ、本書によるとファスティングは必ずしも丸1日、あるいは数日にわたって食べずに過ごさなくてもいい。たとえば「12時から19時の間にすべての食事を済ます」というように、食べる時間を制限する「断続的ファスティング」もあり。こうすれば19時に食べたとしても、次の日の12時までの17時間のファスティングになるわけだ。これでも、ファスティングとしても成立するし、内臓を休ませる時間も作れるのだ。
たとえば食習慣を見ても、普段何気なく食べているものが、必ずしも健康に寄与するとは限らない。
よく知られているのが「トランス脂肪酸」だ。これは食料品に記されている成分表示で「ショートニング」や「ファットスプレッド」と記載されるものだが、これらの有害性はかねてから指摘されていて、欧米では禁止されている国が多い一方、日本では無規制で、マヨネーズやマーガリン、市販のスナック菓子やケーキなど、身近な食料品の多くに含まれているため、意識せずに摂取してしまいやすい。
バイオハックを意識するなら、マヨネーズは自分で作るか、酢や卵、塩、ハチミツなどひと目で正体がわかる原材料だけで作られているものを、マーガリンはバターかギー(牛や水牛、ヤギの乳を煮詰めて濾過した調理油)に置き換える。これだけでも、食生活は改善するはずだ。トランス脂肪酸に限らず、「体にとって決していいものではないが、多くの人が食べているもの」は決して少なくない。
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本書では、多くの人が知らず知らずのうちにやっている悪い習慣を指摘し、なんとなく続けている「体に良さそうな習慣」の、より科学的知見に基づいた、きめ細かいやり方を授けていく。
未来の自分の体調やパフォーマンスを決めるのは、今の生活習慣。
子どもの頃のように元気いっぱいな自分を取り戻すために、本書は一役買ってくれるはず。体調管理やパフォーマンス向上のために参考にしてみてはどうだろう。
(新刊J P編集部)
■欧米で注目の「バイオハック」始めやすい健康習慣は?
井口: きっかけというと高校生の頃までさかのぼります。当時部活で卓球をやっていたのですが、スポーツって小さい頃からやっていた人の方が上手じゃないですか。僕の場合は始めたのが中学からだったので、5歳くらいからやっていた人と比べると実力に差があったんです。
この差をどうやって埋めるかと考えた時に、健康面や体調面を整えることでパフォーマンスを上げることで、スキルの差をカバーできるんじゃないかと考えたのがきっかけでした。
井口: そうですね。ただ、健康についての大切さに本当の意味で気づいたのは5年前に父が癌でなくなった時でした。
闘病している時に、僕もサプリメントや健康法について学んで、父に教えたりしていて、そのおかげかはわかりませんが、余命3ヶ月といわれていたのが1年ほど生きることができたんですね。ただ、生き延びることはできなかったというのがあって、こういう人をなくしたいという気持ちになったんです。やはり、病気になってからでは遅いので。
井口: そうですね。自分自身がある意味「実験台」になっています。この20年間で2000万円以上使って、バイオハックを試してきました。
井口: サプリメントを試したり、「ブルーゾーン」っていうんですけど、100歳以上の方が多い地域に行ってみて、どんな生活をしているのかを調べたりもしました。
あとは、今バイオハックや健康についてのカンファレンスに参加して、予防医学の医師から最新の情報を仕入れたりもしています。今回の本で紹介しているのは、そうした経験を通して知ったことの中で、現時点でのベストの方法を紹介したものです。
井口: ありますよ。たぶん500種類くらいあります(笑)。機会があったら第2弾も書きたいですね。
井口: あります。昔から朝が苦手で、起きた時にだるかったり、夕方になるとものすごく疲れたりしたのですが、そういうことがなくなりました。
私は会社を経営していますし、セミナーをやったりもしていて忙しいものですから、疲れやすさは悩みだったんです。それが解消されたことは自分にとってはすごく大きなことでした。
井口: 男性も女性も35歳くらいが体力の分かれ目と言われていますが、自分の場合はそれを感じることは今のところなくて、年々元気になっている感じがあります。
そのこととつながってくるのですが、気持ちの面でも若くいられているのかなというのもありますね。40歳前後になると、「守りに入る」みたいなのがあるじゃないですか。
井口: そうです。体力的に余裕があるからなのか、新しいことにチャレンジしたり、大きなことを手掛けることにためらいがないのも、バイオハックのおかげなのかなと。
井口: 地道なところなのですが、すぐ始められるとしたら食生活を変えることでしょうね。具体的には「生きた食べ物」を食べることで、オーガニックの野菜や果物、牧草で育てられた肉、天然の魚を食べるということです。私たちの祖先が食べていたようなものに立ち返る、というのが一番始めやすいのではないかと思います。
ファストフードやスーパーのお惣菜ではなくて、自然に近いものを食べるという意識を持っていただきたいですね。
■単なる「健康法」ではない バイオハックの本質
井口: 少しでも家の中で体を動かすということでしょうね。座ったままでいるのは「新しい喫煙」と言われるくらい依存性があって、健康に良くないという話もあるくらいなので、一時間に一回は立ち上がってストレッチをするとかちょっと歩いたりするということは意識した方がいいと思います。
あとは、人とつながることです。一日中一人で家にいるとどうしても鬱々としてくるものなので、友達や両親に電話をするなど、誰かとつながりを持つことを大切にしていただきたいと思います。
井口: 自分の健康を考えるうえでのガイドとして使っていただければ嬉しいです。先ほど食生活の改善のお話をしましたが、ファスティング(断食)なども始めやすいと思います。断食といっても、丸一日とか何日も食べずに過ごさなければいけないわけではなくて、この本では「断続的断食」と言っているのですが、いつも3食とっていたものを、朝ごはんを抜いて2食にしてみるとか、あるいは朝はお茶やコーヒーだけにするのでも内臓を休める時間を作ることができて、体のデトックスになります。
食生活を見直すうえでは、その日に食べたものを写真に撮って記録しておくというのもいいと思います。振り返ってみて野菜が足りないと思ったら多めに摂るなどですね。そうやって、できそうなところから始めてみて、慣れてきて興味を持てるようになってきたら、生体検査や遅延型アレルギー検査など、他のこともやってみていただくのがいいと思います。
井口: 私の場合は、同じようにバイオハックに興味がある友達がいるので、そういう人に聞いたり、彼らがやっているブログやYouTubeやPodcastから情報を得ることが多いですし、自分で論文サイトを調べたりもしています。
あとは、最近思うのはやはり本の情報が確実なのかなと。インターネットの情報って、誰でも発信できるものなので、医師なり研究者なり、健康に詳しい人が書いた本を参考にする方が確かだと思っています。
井口: 程度によりますがそうだとは思います。たとえば緑茶に含まれるカフェインは体に良くないんじゃないかという人がいますが、それ以上に健康への好影響もあるものだと言われていますよね。カフェインの利尿作用で水分が出やすくなってしまうかもしれないけれど、それ以上にメリットがあると思うので私は飲んでいます。
「迷ったらやらない」「とりあえずやってみる」など、人それぞれ方針はあると思いますが、いずれにしても、デメリットとメリットを両方見て、秤にかけて選択していくべきです。ただ、今回の本で取り上げているバイオハックの中で、明確にデメリットがあるものはないので、まずは一週間でも十日間でも試験的に実践してみていただきたいですね。
井口: 健康は一生のことです。そのための習慣づくりという意味では、バイオハックは一生ものです。単純なダイエットや健康法ではなくて、ライフスタイルを健康なものに変えていくということなので。
だから、まずは一つか二つ、やれそうなものを試してみて、よければもっとたくさん実践してみたり、合わないと思ったらやめて別のものを試したり、そういう風にこの本を使っていただきたいです。一ヶ月に一つ良い習慣をつけていけば、一年で十二個いい習慣ができるわけで、それは後々の人生にきっといい影響を与えてくれるはずです。
健康に過ごせれば病院にかかることが減って、そうなれば医療費も減ります。私はバイオハックはものすごく費用対効果のいい投資だと思っています。
井口: 今回の本では、これまで私自身が20年以上かけて、2000万円以上のお金を注ぎ込んで試してみて、効果があると感じられたバイオハックだけを紹介しています。健康について何かしないと、と考えている人や悩んでいる人、人生を充実させたい人はぜひ実践してみていただきたいです。
(新刊JP編集部)
井口 晃(いぐち・あきら)
東京都世田谷区生まれ。アメリカ・ニューヨークに留学し、自己啓発・心理学・ハイパフォーマンスについて学んだ後、世界的スピーカー・作家になるビジョンを得て帰国し、起業。
「好きなことを仕事にする」「ハイパフォーマンス」「バイオハック」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催する。
近年は、日本だけでなく、世界各地で数千人規模のセミナーに登壇するなど「グローバルスピーカー」として大きな注目を集めている。
また、栄養学、生物学、予防医学についての造詣も深く、世界最先端の健康ライフスタイル情報を収集し、自らの体を実験台として実践しながら心身の健康をはかる日本有数の「バイオハッカー」としても知られる。
ビジネス、自己啓発、健康に関する最先端の情報を発信するYoutubeチャンネル「ハイパフォーマーとして自由に働こう! 」は60万回再生を記録するなど好評を博している。
主な著書として、『人生の9割は逃げていい。』(すばる舎)、『やらない決意』(サンマーク出版)、『パワートーク』(SBクリエイティブ)、『Lifestyle Millionaire』(Morgan James)がある。
著者:井口 晃
出版:SBクリエイティブ
価格:1,500円+税