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サプリメントの正体 本当に「効くもの」「危ないもの」

『サプリメントの正体』書影

サプリメントの正体 本当に「効くもの」「危ないもの」

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本書の解説

健康のため、あるいは不足しがちな栄養を補完するために、定期的にサプリメントを利用している人は多いはずだ。

今、日本のサプリメント市場は2兆円規模ともいわれ、様々な効能や目的に沿った商品が、華やかな広告文句と共に乱れ飛ぶ巨大産業となっているが、その一方で国内に乱立するサプリメント工場のうち、どれほどが信頼に足るサプリメントを製造しているのかという疑問も残る。

かえって体調が悪くなる?市販のサプリメントに潜むアレルギーリスク

サプリメントを巡る現状に鋭く切り込んで、信頼できるサプリメントや摂取するのをやめた方がいいサプリメントを見分ける手助けをしてくれるのが、『サプリメントの正体』(三笠書房刊)だ。

本書ではサプリメントにまつわるこんな調査結果を紹介している。
東京都が行った「平成30年度健康食品試買調査」によると、健康食品売り場などで購入した製品では44品目中29品目に、またインターネット通信販売で購入した製品では86品目中79品目に、不適正な表示・広告が見られたという。

また、国内にはサプリメントを製造する工場は4000~5000か所あるが、GMP(Good Manufacturing Practice)という医薬品レベルに準じた管理基準で製造を行っているのはわずか200か所程度。

こうした状態では、やはり素人がサプリメントを見分けるのは難しい。

栄養素が乏しく、胃の中で溶けないサプリに効果はあるか

実際に本書によると、現在市場に出回っているサプリメントの中には問題のあるものが多く含まれているという。

たとえば、サプリメントは粉末を固形にするための「賦形剤(ふけいざい)」として、乳糖が使われることが多い。ただ、日本人には乳糖不耐性の人が多いため、賦形剤として乳糖が使われているサプリメントを摂るとお腹の調子が悪くなってしまうことがあるのに加え、乳製品にアレルギーがある人にとってはアレルゲンになってしまう。サプリメントを摂ったことでかえって体調が悪くなってしまうケースがあるのだ。

また、ある大手企業がサプリメント事業に参入する際に、市販のサプリメントにパッケージに書かれている通りの栄養素が入っているかどうかをテストしたところ、記載通りに入っている方が珍しいという状態だったという。

さらには、サプリメントがきちんと体に吸収されるかどうかにも疑問符がつく。
2019年8月に国民生活センターが発表した「錠剤・カプセル状の健康食品の品質等に関する実態調査」では、サプリメントが胃の中できちんと溶けて崩れるかどうかをテストする「崩壊試験」で、サンプルとなった100銘柄のうち42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に溶けなかったことが報告されている。

これは栄養素を固める目的で添加物や賦形剤を過剰に入れたために固めすぎてしまった結果だと考えられる。医薬品であれば、胃の中で溶けるスピードの基準が定められているが、サプリメントは食品扱いのため、「崩壊試験」が十分にされていないのかもしれない。

いずれにせよ、パッケージに記載されている栄養素が入っておらず、さらには飲んでも胃で溶けないサプリメントが、市場に一定数出回っているのはまちがいない。当然、効能の方も広告のうたい文句通りに信じるわけにはいかないだろう。

では、私たちはサプリメントを選ぶためにどんなことを知り、どこを見ればいいのか。

本書は玉石混交のサプリメントの中から自分に合った「本物」を見分ける知恵を授けてくれる。今使っているサプリメントに疑問を感じている人や、これからサプリメントを飲み始める人は、参考になる部分が多いはずだ。

(新刊JP編集部)

インタビュー

まともな製品は半分もない? 業界内部から見たサプリメント業界の現状

――サプリメントの正体』についてお話をうかがえればと思います。まず田村さんがこの本を書いた動機について教えていただきたいです。

著者、田村忠司さんお写真

田村:二つあります。今回の本は2013年に東洋経済新報社から出た同名の本に加筆・アップデートした文庫版なのですが、当時東洋経済さんの方がサプリメントへの問題意識を持っていて、誰かにこのテーマで本を書いて欲しいと考えておられたようなんです。

私は医療機関専用のサプリメントメーカーを経営するかたわら、あちこちでサプリメントについて講演をしているのですが、その講演の内容をネットにアップしている方がいて、それを東洋経済さんがご覧になって私のところにお話がきたといういきさつがあります。

もう一つは会社のクライアントである医師の方々からの要望もあったんです。先生方は患者さんが変なサプリメントを買って困っていたんですね。

―― お医者さんはサプリメントについての指導はできないんですか?

田村:いえ、できるのですが、患者さんの側が「医師にサプリメントの相談をしても『そんなものはやめなさい』と言われるに決まっている」と思い込んでいて、医師に言わずに自分で見つけてきたサプリメントを飲んでいるという実態があります。

体に合ったサプリメントを選んで飲んでいるのならまだいいのですが、必ずしもそうじゃないんです。健康のためにと思って選んでいるのでしょうが、うまくいっていないケースがすごく多い。医師としてもそれは問題だという意識があって、「患者が妙なサプリを飲まないようにするための本がほしい」と考えておいででした。そういう本があれば、病院の待合室に置いておくことで患者さんが読みますし「この病院の医師はサプリメントについて理解がある」というメッセージにもなるわけです。

すると、診察の際にサプリメントについての相談が出るようになりますから、それらを踏まえることで治療の精度も上がります。そういう事情があって、医療機関サイドからもサプリメントの本を書いてくれないかと言われていたんです。

―― 医師の方は、お話にあったようにサプリメントを頭から否定してしまうものなのでしょうか。

田村:そちらの方が多数派かもしれません。少なくとも、治療に関係があると考えている医師の方はまだ少数派だと思います。

―― サプリメントのアドバイスを専門的に行う方はいないのか?という疑問があります。

田村:サプリメントのアドバイザーの資格がありますから、そういう方もいるにはいるのですが、その資格を現場で使いこなせている人は多くないと思いますね。

なぜかというと、その資格で職を得るとなると、サプリメントを販売しているお店の従業員になる可能性が高いですね。そうするとお店に並んでいるサプリメントをいかに売るかということを求められますから、場合によっては本当に知られるべき情報を出せないということにもなる。実質的に販売員になってしまうわけです。

―― 本書で書かれているように、サプリメントは堂々と効果をうたうような広告とともに実に様々なものが販売されています。田村さんの感覚として、パッケージに記載されている通りの栄養素が入っていて、きちんと体に吸収されて、という「まっとう」なものは何割くらいある印象ですか?

田村:私の感覚では半分もないだろうという感じです。

―― なぜ、こんなことになっているのでしょうか。

田村:薬であれば実際にどれだけ栄養素が入っているかをきちんと検証して、胃の中で溶けるかという溶解試験をして、ということをしますが、サプリメントは食品扱いになるのでそういったルールではないというのが一つ。

もちろん、サプリメントにもルールはあるのですが、ちゃんと運用されていないといいますか、野放し状態になってしまっています。

なぜ野放しになっているかは、どういう風にサプリメントが作られるのかを考えるとわかります。これまでサプリメントを作ったことがない会社の人が、「サプリメント市場が伸びているからうちも参入しよう」ということで、外注を受けてくれる工場に相談します。

その時によくあるのが「こういう成分を入れて、いくらくらいになるように作ってほしい」と「丸投げ」して、商品ができあがってきたらそのままそれを販売してしまうというケース。つまり、販売する企業の中に商品のクオリティをコントロールする人がいないことが多いんです。これではサプリメントメーカーというよりは、単なるサプリメントの「企画会社」です。

こういう会社はマーケティングには長けていますが、サプリメントの性能を担保することについてはほとんどノウハウがありません。これが今のサプリメントを取り巻く問題の原因の一つだと考えています。

―― マーケティング戦略の一環なのでしょうが、テレビのCMやインターネットの広告などでサプリメントに関するものを目にしない日はありません。派手に効果効能をうたっているものも多いですが、なんとなく胡散臭い気もしてしまいます。

田村:その感覚は大事だと思います。市販のサプリメントを選ぶのならば、実物のパッケージを見るべきです。強く申し上げたいのは、テレビCMや広告だけを見てサプリメントを買わない方がいいということ。騙されてしまう可能性が高いです。

インターネットで調べるのでも店舗に行くのでもいいのですが、パッケージに書かれている情報が全て見られる状況で買うということは徹底していただきたいですね。

―― となると、多少は栄養の知識が必要になってきますね。

田村:そうですね。ただあまり細かい栄養素の名前を覚えても意味がありません。よく聞いたことがない新素材をCMで打ち出しているのを見かけますが、ああいうのはひとまず忘れて大丈夫です。今まで摂取したことがない新素材ということは、一生摂取しなくても問題ないんですよ。今のところ生きられているわけですから。

もっと基本のところで、「必須栄養素」と言われる、食べないと死んでしまう栄養素が足りていない人がたくさんいる。そういう栄養素を中心に構成されているものの方がおすすめです。

―― 「新素材」と言われると気になりますが、買う必要はないと。

田村:とりあえずは買う対象から外していいと思いますよ。サプリメントの広告についてもう少し言えば、誇大広告も目立ちます。

薬ではないものについて、パッケージや広告に効果効能を書いてはダメだと薬機法で定められています。景品表示法でも、実際よりも著しく優れている様な表記が禁じられています。
ということは、サプリメントのパッケージに「これでみるみる脂肪が燃焼して…」などと書いた時点でアウトなんです。そういうサプリメントがあったとしたら、それは法律を守る意思がないと言っているのと同じであって、そんな業者が消費者のためにいい商品を作るはずがない。

最近も「ブロリコ」というブロッコリーの成分を使ったサプリメントが景品表示法に抵触して消費者庁から措置命令を受けていましたが、こういうケースが今頻発しています。

―― お話をうかがってサプリメント業界の今後を心配していましたが、消費者庁が目を光らせているとなると、広告や品質についての問題は改善されていく方向にあるのでしょうか。

田村:政府の取り組みという意味ではいい方向に向かっているとは思います。消費者庁のホームページに書かれているように、明らかに制度に違反している製品は売上の3%を課徴金として徴収されます。売上の3%といったら大打撃ですから、メーカー側の姿勢は今後正されていくのではないかと思います。

サプリメントにお金を使うならビタミン剤を買うべき

―― 田村さんご自身はサプリメントをどのように利用していますか?

著者、田村忠司さんお写真

田村:栄養補助が目的で、マルチビタミンとミネラル。それに加えてビタミンCを増し飲みしています。秋から冬にかけてはビタミンDも加えます。

本当は、栄養は食事で補うのが一番なのですが、出張が多くて食事が不規則になるものですから、あらかじめ底上げしておこうという目的です。ストレスがかかるとビタミンCをすごく消耗するので、ビタミンCも追加しています。そういう時にワンポイントリリーフ的にサプリメントで補うのはありだと思います。ビタミンDは紫外線が低下する時期に、インフルエンザを予防するのが目的です。

―― 田村さんの会社では医師、歯科医師専用にサプリメントを提供しているとのことですが、医療機関はどのような目的でサプリメントを使うのでしょうか?

田村:人間には不足すると最終的には死んでしまう栄養素が5グループあります。炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルがそれで、「必須栄養素」と言います。今の先進国の社会ではこれらに属する成分の多くが不足している人が多いんです。なぜかというと皆さん忙しくて、お金も時間も削ろうと思うと、まず食事のところを削りますから。

必然的にコンビニ弁当や加工食品、手ごろな値段の外食が中心になりがちなのですが、そうなると栄養的にはすごく貧しくなるんですね。一日どのくらい栄養を摂らないといけないかは個人差がありますが、こういう生活が続くと体質的に多めのビタミンやミネラルを摂らないといけない人から具合が悪くなっていきます。

本来なら食生活を改善することが一番なのですが、忙しかったり、体調が悪かったりで買い物も料理もできないという人もいるわけで、そういう方々が効率よく栄養状態を改善できるようにという目的のサプリメントですね。

具合の悪い患者を診て「栄養不足かもしれない」という視点をお持ちのお医者さんは決して多くはないのですが、中にはわかっている方もいます。そういうところで使っていただいています。

―― 医療機関向けのサプリメントは、市販のサプリメントとどのように違いますか?

田村:市販のサプリメントは、普通に暮らしている方々が健康状態を維持するためのものなので、栄養素としては「一日これだけの栄養を摂っていれば、健康に暮らせますよ」という量が含まれています。

一方で医療機関向けのサプリメントはすでに体の具合が悪くなっている人向けですから、それだとパワーが足りないんですね。だから、入っている栄養素の顔ぶれ自体は特別なものではないのですが、量が違います。

―― サプリメントとの付き合い方についてもお話をうかがいたいです。私はこれまでサプリメントを摂ったことがないのですが、周りには日常的に何らかのサプリメントを使っている人が多くいます。自分も何か使った方がいいのでしょうか。

田村:健康上の悩みがないなら、無理にサプリメントを使う必要はありません。それならいいレストランに行っておいしいものを食べたり、食材を買ったりするのにお金を使う方が健全です。

今は「健康寿命」の重要性が叫ばれている時代ですから、元気なうちから何か対策をしておこうということでサプリメントに目を向ける方は多いのですが、生活スタイルを改善せずに楽をして問題を解決しようとすると、結果として変なサプリメントに手を出してしまうことになりやすい。健康寿命というのなら栄養豊富な食事を摂って運動すればいい。必要なのはそれだけなんですよ。

―― そうとわかっていても、なかなかできないんですよね。

田村:体調に問題はないけど、ちょっと疲れているし栄養状態に自信がないから、何か栄養補助的に摂ろうかなという時は、サプリメントではなくビタミン剤を買う方がいいと思います。

―― ビタミン剤はサプリメントとは違うんですか?

田村:見た目はよく似ていますが別物です。両方ともドラッグストアに売っていますが、ビタミン剤は医薬品なので、薬剤師や登録販売者がいないと買えません。

そういう人に声をかけて「最近ちょっと疲れているので、いいビタミン剤はありませんか?」と相談して買うのが安心だと思います。

―― 「ダイエットサプリのみで痩せるのは難しい」と書かれていましたが、痩せたい人はサプリメントをどう利用していけばいいのでしょうか。運動と組み合わせて使う分には効果あるのでしょうか?

田村:まず、飲むだけで痩せる成分というのはサプリメントにはありません。じゃあダイエットサプリとは何なのかという話なのですが、たくさん売るために「飲めば痩せる」というような広告文句を使うわけです。

ダイエットでサプリメントを使うのなら、目的は「栄養不足の回避」になります。体重をコントロールしたいとなった時に、食べる量を減らすというのはついてまわるので、そこで栄養不足にならないように、ビタミンやミネラルの補給をするというのが正しい。そして、その際も市販のサプリメントではなく、栄養療法に造詣の深い医師に相談して選んでもらうか、薬剤師に相談してビタミン剤を使った方がいいと思います。

―― 最後になりますが、サプリメントに関心がある方や、今使っているサプリメントに満足していないという方にメッセージをお願いいたします。

田村:まずは元気な方はサプリメントを無理に選ばないでいただきたいということです。もし栄養状態に自信がないのなら薬剤師に相談してビタミン剤から選ぶ。サプリメントのCMで言っている「新素材」や「特殊な成分」に走るのはお金がもったいないのでやめた方がいいです。

具合が悪くなっている人がサプリメントを使う場合は、自分で選ばずに、栄養摂取で解決するという視点を持っている医師を探して相談したうえで選ぶのが大切です。素人判断で高価なサプリメントに手を出すのは危険だということは繰り返し申し上げたいですね。

もう一つ、サプリメントはあくまで緊急避難措置と考えて欲しいです。元気になったら旬の新鮮な食材や調味料を手に入れて、食事で栄養補給するのがお勧めです。手抜きでも美味しい料理ができるレシピを工夫するのも楽しいと思います。

(新刊JP編集部)

書籍情報

目次

  1. 序章 N子さんのサプリメント事情
  2. 第1章 あなたの知らない「サプリメントの正体」
  3. 第2章 損しない「賢い選び方・付き合い方」
  4. 第3章 「このサプリメントは本当に効くのか?」徹底検証
  5. 第4章 何を飲めばいいのか?
  6. 第5章 お悩み・症状別「栄養素」の摂り方
  7. 第6章 サプリメントに頼らない生活

プロフィール

田村 忠司

1965年生まれ。富山県出身。
1988年東京大学工学部産業機械工学科卒業。同年、株式会社リクルートに入社。通信事業を中心に経営戦略、新規事業立案、マーケティング戦略立案、営業活動に従事。
1998年「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長として活動。
2006年「医療従事者が自信を持って使えるサプリメントを提供してほしい」という医師、薬剤師からの要請に応え、医療機関専用サプリメントの専門メーカー、株式会社ヘルシーパスを設立。栄養療法に取り組む医師・歯科医師へのサポート・情報提供のため、日本全国を飛び回り、楽しく仕事に取り組んでいる。日本抗加齢医学会会員。