■「速読力」が仕事に果たす決定的な役割
― 『行動する時間を生み、最速で結果を出す 速読思考』についてお話を伺いたいです。これまで速読のトレーニングについての本を出されてきた角田さんですが、今回の本は「速読の能力を仕事でどう使うか」という点がテーマになっています。オフィスワークの場合、速読の能力によって日々の仕事はどう変わってきますか?
角田:
情報化社会ということで、誰もが毎日膨大な量の情報に触れています。その処理速度が上がれば、その分時間が空いてやれることが増える、というところは想像がつくと思います。
でも、実はそれだけではありません。同じ時間内にこれまでより多くの情報に触れられるようになると、ボキャブラリーや表現力にもいい影響があるはずです。
アウトプットする資料をわかりやすく作れるようになったり、適切な表現ができるようになったり、一つひとつのアウトプットの質が上がります。その意味で、速読を身につけると、仕事の量も質も高めることができるんです。
― 反対に、仕事ができる人というのはそもそもある程度の速読能力を持っているということも言えるのでしょうか。
角田:
それはあると思いますね。仕事ができる人は例外なく情報収集力に長けていますから、短時間で大量の情報に触れる能力は持っていると思います。
― 角田さんご自身は、素早く大量にインプットできるという能力をどんな場面で活用していますか?
角田:
今はこうして本を書いたりしているので、いかに誰が読んでもわかりやすい表現で書くか、という意味でインプットの量をすごく大切にしています。本一冊分のアウトプットをするなら、その何倍もインプットしておかないと、いい表現が思い浮かばないので。
あとは、投資をする時ですよね。トレードの場合、「アウトプット」は注文のボタンと決済のボタンをクリックする瞬間だけですから、ほとんどがインプットの世界です。
この時間をできるだけ短くして、時間当たりの収益を高めるために活用しています。
― インプットについては「右脳と左脳の使い分け」の重要性も指摘されていました。どのように使い分けるのかについて詳しくお聞きしたいです。
角田:
あふれかえる情報の中から、自分が必要とする情報を探し出すという時は、視野を広くとって、全体をイメージとして捉えながら読んでいきます。この時に使われるのは右脳です。
ただ、普通に読んでも理解できないような文章などは、この読み方だとわからないことがでてきます。そういう時は単語の意味を一つずつ変換しながら読まざるをえません。そういう時は左脳が使われます。
読むのが遅いという人は、後者の読み方しかできない状態なんです。最初に全体を見て、自分が求めている情報を選定してから、より詳しく読んでいくということができるようになれば、最小限の時間でほしい情報をインプットできるようになっていくはずです。
これが右脳と左脳の使い分け、ということですね。
― 今少しお話に出ましたが、角田さんが提唱している速読法は、「文字を一文字ずつなぞって読むのではなく、視野を広くとって数文字ずつ塊として捉える」というものです。たとえば、スマートフォンでニュースなどを読む時、文字をなぞる読み方をしている人はむしろ少数派で、多くの人は記事を一行単位で視野に入れてざっと読んでいきますから、角田さんの速読法を自然に実践している人は案外多いのかもしれません。
角田:
まさしくそうで、スマホでニュースを読むのと同じやり方で、本も新聞も読めばいいんですよ。でも、スマホだと一行の文字数がそのまま視野に入れる文字数になるのですが、紙媒体だと一度に視野に入れる文字数を自分で決めないといけません。
だから、スマホでは「速読」ができても、本のように長い文章を読もうとすると、「なぞり読み」になってしまう人がほとんどなんです。慣れれば難しいことではないんですけどね。
― 情報収集の効率をいかに高めるか、というのは多くの人にとっての課題です。新書のように、あるテーマについて概要を説明するような本を読む際、どんな読み方をすればいいでしょうか。
角田:
内容が頭に入っていない感覚があってもいいので、まずは高速を意識しながら文章全体を見て(読んで)いきます。すると、繰り替えし出てくるワードがあるはずで、それがカギに今度は少しゆっくり読んでいくのがいいのではないかと思います。
じっくり1回読むよりも、素早く2回3回読む方が、読みながら考えることがなくなり、結果的に情報収集の効率は上がるはずです。
■「意思決定が遅い人」がまず改善すべきポイントとは
― 速読が身につくにつれて、考える速度や意思決定の速度も上がる、というのはわかる気がします。これは自然に速くなっていくものなのでしょうか。
角田:
そうですね。高速で読んで、高速で情報処理することに脳が慣れてくると、それにつれて判断や思考のスピードも自然に上がっていきます。
これは特別なことではなくて、考えたり判断するための材料を速く大量に揃えることができるので、判断も思考も速くできるということです。
― 素早く読めて、素早く考えられても、決断を下すとなると迷ってしまうこともありそうです。
角田:
反射的に「こうかな?」と思ったことは頭の片隅に置いておきます。それでもう少し話を聞いたり、調べたりして間違いないなと思ったら、その決断の方向に進むという感じですね。
― 最初の決断が調べていくうちに覆ることもありますか?
角田:
考えるための材料が間違っていたり、話の前提が崩れない限りは、最初に反射的に出た結論が覆ることはまずないですね。
反射的に、といっても普段から必要な情報はインプットしているわけで、勘で判断しているわけではないので。
ただ、その決断を伝えるタイミングは相手次第、というのは覚えておいてほしいと思います。判断のスピードが速すぎると「ちゃんと考えてないんじゃないか」と思う人もいるので、そこは相手に合わせた方が波風立たないと思います(笑)。
― 考える力やアウトプットする能力はあっても、スピードが遅いと職場での評価は低くなりがちです。こういった方々に向けてアドバイスをいただければと思います。
角田:
「自分は仕事が遅い」と感じている人は、自分が下す決断に自信が持てないから、考えるのに時間をかけすぎてなかなか行動に移せないという面があるのではないかと思います。
ただ、それも結局はインプット量が足りないというところにつながってくるんです。判断材料が少ないからこそ決断に時間がかかったり、決断に自信が持てなかったりするわけで。
アウトプットに時間をかけることが必ずしも悪いことではありません。ただ、インプット量を増やしていけば、結果的にアウトプットまでの時間は必ず短くなるんです。そうなれば、まずは一度アウトプットしたものをブラッシュアップしていくことが可能になる。
結果的にはその方がまちがいなく質のいいものができるはずなので、まずは短時間に大量のインプットができるように、速読の力を身につけるところから始めてみていただきたいですね。