インタビュー
お金に困る人、困らない人の差は、家庭での教育にある
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菅井さんの本はマネー・リテラシーについて非常にわかりやすい言葉で伝えることが特徴的です。最新刊の『あなたと子どものお金が増える大金持ちの知恵袋30』で「子どもへのお金教育」をテーマにされたのにはどんな理由があったのでしょうか。
菅井:
2014年に『お金が貯まるのは、どっち!?』という本を出したのですが、それが40万部くらい売れて、たくさんの方に読んでいただくことができました。その後、あちこちの講演でお話をさせていただくなかで、「この本を自分の子どもに読ませたい」という声をいただいたんです。
子どもにお金についてどう教えたものか悩んでいる方がすごく多いことに気がついたことが今回の本を書いたきっかけになりました。『お金が貯まるのは、どっち!?』の内容を子どもに対してどう教育していくかについて深堀りしつつ、私が銀行員時代に垣間見た、いわゆる資産家たちがお子さんにどのようなお金教育をしているのかについても書いています。
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メガバンクで支店長も経験された元銀行員ということで、富裕層の方々と接する機会は多かったかと思います。彼らの家では子育ての過程でお金のリテラシーを授けているそうですね。
菅井:
代々続いている富裕層の方をはじめとして、子どもがきちんと自立している家庭の多くは、家の方針としてお金の教育に並々ならぬ情熱を傾けています。お金はいくら稼いでも使えばなくなるものなので、「資産を守る」「増やす」といったことを教えておかないと、子どもが将来、お金で苦労する人生を送ることになるかもしれないからです。
今の日本では「お金の話は外に出すべきではない」という風潮ですし、特に資産家の方ほどそんなことはよそで話しません。けれど、私は銀行員でしたからそういった方々とのお付き合いのなかで彼らが受け継いでいる教育に触れる機会が多々ありました。これは資産家のみならず、どんな家庭でも取り入れるべきものだと思ったので、健全に豊かになる方法としてシェアしようと思ったんです。
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翻ってお金に苦労している家の親はそういうお金のノウハウをあまり知らないのかもしれません。
菅井:
そう思います。お金は天から降ってくるものではなくて、能動的に動かないと稼げないものです。しかし、日本では終身雇用制度の影響か、いまだにお金は会社に所属すればもらえて、年を重ねれば自然に増えていくものだという感覚を持っている人が多いように思います。そのせいかお金を稼ぐことに対して能動的ではありませんし、働いてお金をもらうとはどういうことか、お金とは何かの本質も知らないまま。それでは子どもにも教えられないですよね。
一方でアジアの新興国では、誰も彼もがどうにか稼いでやろうというハングリー精神に富んでいるわけです。この意識の違いが10年後20年後にどんな結果を生むのかと思うと恐ろしい気がします。
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まして今はAIやブロックチェーンといった新しい技術が金融と強く結びつき、より高いマネー・リテラシーが求められている時代です。
菅井:
そうですね。中国での仮想通貨やキャッシュレス社会の爆発的な広がり方を見てもわかると思いますが、それだけに今の日本の子どもたちがお金についての教育を受けずに大人になったらどうなってしまうんだろうという危機感があります。
まずはお金とは何か。働いてお金を稼ぐとはどういうことか。手にしたお金を管理するとはどういうことかというところを、子どものうちから教え込んでいくことが大切です。ジムに通って体重管理をするように、お金を稼ぎ、貯め、増やして管理するというお金に関する“筋肉”を小さいうちからつけておかないと、大人になってから周囲に太刀打ちできなくなってしまう。そこは親子で一緒に勉強していくべきです。
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「お金の教育」は何歳くらいから始めればいいのでしょうか。
菅井:
お金の教育で一番大事なことは「お金というものは誰かの困り事を発見して解決したご褒美としてもらえるものなんだ」という、お金の意味づけです。
これは小さいうちから教えておいた方がいいと思っています。たとえば3歳の孫がおじいさんの背中に乗って足踏みしたら、おじいさんにはちょうどいい重さでマッサージになった。気持ちよかったからと、そのご褒美で100円渡してあげる。あるいは親が忙しそうだからと、言われる前にお風呂を掃除したことでお駄賃が発生する。こんなふうに暮らしの中で「困り事を解決した対価としてお金がもらえる」ということを教えていけばいい。
こういうことを繰り返すことで、子どもはお金の意味を理解して、どうやったら稼げるのかを考えるようになるんです。
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今のお話は日本で良しとされている子育てとは対照的です。子育ての本を読むと「家の手伝いの対価としてお小遣いをあげることが習慣になると、お金が介在しないと何もしない子になってしまう」という意見をよく目にします。
菅井:
大切なのは、子どもが自発的に「家の中に困りごとがないか」と考え、実際に解決できたらその対価としてお小遣いをあげること。家族の一員として手伝いをするのは当たり前です。玄関掃除は必ずやるなどの自分の分担をこなすことに対価は発生しない、というのは私も賛成です。ただ、与えられた役割以上の仕事を自ら担ったり誰かの代わりにやったりした時に「報酬」が発生するのは問題ないはずです。
個人的には、日本では「お金を稼ぐことに意欲的なのは品のないことだ」「お金のことには鷹揚に、上品に」という意識が強すぎるのではないかと思っています。先ほどもお話ししましたが、世界には必死にお金を稼ごうとしてやっている人がたくさんいるわけですから、そういう子育てをしていたら彼らに勝てなくなってしまう。
もう日本の中だけで人生を完結できる時代ではありません。もっと子育ての中で「自立すること」=「稼ぐこと」を意識させるべきでしょう。親の役目は子どもを自立させることなのですから。
資産家になるための唯一絶対の条件は「お金を借りられること」
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本の中ではお金の稼ぎ方を身につけるうえで弊害になる親の言動についても書かれていました。「子どものお小遣いを定額制にするのはよくない」は定額制にすることで、決まった日になれば自動的にお金がもらえるという“受給者意識”を子どもが持ってしまい、お金の稼ぎ方を覚えないということですよね。「お手伝いはいいから、先に勉強やりなさい」がNGワードなのはなぜですか?
菅井:
子どもが自分のために勉強するのはあたりまえのことです。勉強さえしていれば家族の一員としての働きが免除され続けるというのでは、子どもから「お客さま意識」が抜けなくなってしまいます。
親はついつい子どもが勉強していれば安心という考えになりがちですが、「お手伝いはいいから、先に勉強をやりなさい」という親は、子どもの人生を大学を卒業する22歳までしか見ていないことになります。しかし、実際はそのあとの人生の方がずっと長い。
勉強をして立派な学歴を得れば子育て成功というわけではありません。現に学歴があって勉強ができた人がお金に困らない人生を送れているかというと、そんなことはないわけです。
お金で苦労しない人生を送れることやお金持ちになれる条件は「学歴」ではありません。誰かが困っていることを探し、能動的に動いてそれを解決できることです。これが、ビジネスの基本ですから。
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子どもが選ぼうとしている職業が、親から見るとどう考えてもお金で苦労しそうに思える時、子どもにアドバイスをするとしたらどのような言葉をかけるのがいいのでしょうか。
菅井:
それはやらせたほうがいいと思います。ただ、その職業でどのくらいのお金が稼げるのかは現実的なデータとして示してあげるべきでしょうね。
たとえば俳優なら、アルバイトなどをせずに俳優の仕事だけで生きている人はこれくらいいて、年収300万円稼げている人はこれくらい、1000万円稼ぐ人はこれくらいいる、というのを調べさせたらいいですよ。そこから先は自分の人生ですから自分で考えて自分で決めなさいと言えばいい。なりたい職業の現実を見せて、それでもなりたいかどうかは自分で考えさせるのがいいと思います。
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お金についての悩みとしてよくあるのが「老後の資金」です。金利が低い今、貯金だけで十分な資産を持つことは難しいということで、投資ばかりがクローズアップされて貯金の重要性がおざなりにされる風潮がありますが、この風潮についてはどんな感想を持たれていますか?
菅井:
投資を煽るようなことを言う人はたくさんいますが、そういうことを誰が言っているのかを考えないといけません。銀行か証券会社の人でしょう(笑)。彼らの目論見を知らずに、言われたままに株を買ったりして投資を始める。そんなの全く本質的なことではありません。
ばりばり働ける年齢であれば、手持ちの500万円のポートフォリオがどうとか言うよりも、自分に投資して10万円でも20万円でも今より稼げるスキルを身につける方がよほど賢いということは大人が子どもに教えるべきです。そして、稼いだお金は貯めておけと。
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貯金はやはり重要だということですね。
菅井:
重要です。ですが、まず貯金の意味を知っておかないといけません。
資産家と呼ばれる人に共通しているのは、銀行から借りたお金をうまく活用し、資産を増やしていることです。彼らは例外なく銀行との付き合い方がうまい。これは断言できます。
これは言い換えれば、人の力を借りられる人が成功するということなんです。銀行をただお金を預ける場所、投資信託を売っている場所としか認識していない人は豊かな人生は送れません。そこがお金に困らない人とそうでない人の決定的な差なんです。
じゃあどうしたら銀行といい関係を築いてお金を貸してもらえる人になれるかというのははっきりしていて、「お金の管理ができている人」=(イコール)「収支が黒字の人」です。お金の管理ができない人、つまり貸したお金を返してくれなそうな人には、銀行だってお金を貸したくないわけです。
そこで「貯金の意味」という最初の問いに戻りますが、なぜ貯金が大事なのかというと、お金の管理ができている証拠になるからなんです。借りるために貯めるんです。それができれば誰でも資産家になれる。こういうことは誰も言いませんが、資産家は誰でも知っています。
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ただ、やはり投資リテラシーを持つことの重要性は今後ますます高まっていくと思われます。子どもに投資感覚を持たせるためにはどのような教育が有効になりますか?
菅井:
投資知識や金融知識を自分で勉強することは大切です。さらに、自分だけでやっていくよりも信用できる専門家にアドバイスをもらいながらやる方がレベルは上がります。
これは投資だけに限ったことではありません。これから社会はより複雑化・専門化しますから、全部自分の力でカバーするのは厳しい。自分のやりたいことに専門家を巻き込んでいく力を身につけることが大切だと思っています。
その意味で重要なのが知識をつけるだけではなくて、自分自身が相手から信頼される人になること。「こいつに自分のノウハウを教えてやろう」と思ってもらえる人になった方が、いい結果が出ます。
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本質的なお話だと思います。
菅井:
富裕層の人ほどこういうことを実践しています。彼らの世界は信頼関係で成り立っているんです。
「君の紹介する人なら安心だから会ってみよう」と、“本物”同士を紹介しあって、アドバイスをもらい、仲間うちで一緒に豊かになっていくというのが彼らのやり方です。それだけに信用を何より重視するんです。
だからこそ子どもへの教育でもそこを重視します。人の助けを借りないとやっていけない、人の助けがあってさらに大きくなれることを知っているので、人に信頼されるような健全な人間に育てようとする。格好をつけない、ウソをつかない、謙虚で人に感謝する。こういうことを小さいうちから教えています。この教えは、実はどんな家庭でも大切なことだと思います。
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最後に我が子にお金で苦労してほしくないと考える親の方々にアドバイスやメッセージをお願いいたします。
菅井:
本の中でも書きましたが、「稼ぐ」「守る」「増やす」「もらう」というお金に関する4つの力を育てましょうということですね。この4つの力があれば、子どもは自立したお金に困らない人間になります。ぜひ読んでいただきたいですね。
(新刊JP編集部)