ページトップへ

アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本

このエントリーをはてなブックマークに追加
アマゾンへのリンク『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』

アドラー式働き方改革仕事も家庭も充実させたいパパのための本

  • 著者: 熊野英一
  • 出版: 小学館クリエイティブ
  • 価格: 1,300円+税

本書の解説

アドラー心理学に学ぶ「働き方改革」を「職場でも家庭でも幸せになる改革」に変える方法

2018年7月「働き方改革関連法」が公布された。しかし、働き方改革の過去の議論を振り返ると、「What(何を目的とした改革なのかと言う前提)」が曖昧なまま、「How(どうやって働き方を改革するかの方法)」に終始していたように思える。

しかし、本当に大切なのは、多くの働く人たちにとって「職場も家庭も幸せになるための改革」であることではないだろうか?

そんな働き方改革の本当の姿を問いかけ、そのために必要な「How」を教えてくれる一冊が『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本(熊野英一著、小学館クリエイティブ刊)』だ。

本書では、アドラー心理学にもとづく対人コミュニケーションによって、夫婦関係、子育てといった家庭と、上司・部下や顧客など職場の対人関係双方に良い変化を与える「幸せになるための働き方改革」が提言されている。そのポイントを本書から紹介していこう。

ムダな時間をなくして生産性を高める「勇気づけ」のコミュニケーション

職場と家庭において、ムダな時間を削減し、生産性の高い時間を増やす大きなポイントは、「勇気づけ」のコミュニケーションだという。ここで言う“勇気”とは、「困難を克服する活力」を指す。

例えば、上司に叱責されたとき、ミスをした不完全な自分を受け入れ(自己受容)、自分の「存在価値」を否定しないで行為を改善することは、自分に対する「勇気づけ」になる。逆に、「やっぱりダメだ」「自分なんて……」と考えることは行動の意欲を削ぐ「勇気くじき」になる。自分とのコミュニケーションの選び方によって、仕事の生産性に差が出てくるのだ。

家庭でも「勇気づけ」は効果を発揮する。
例えば、自分がやっている家事に対してパートナーから「そのやり方は違う」と言われたとする。
このとき、パートナーに「このやり方のほうがいい」と優劣をつけるような“競争”をしてしまうと「勇気(=困難を克服する活力)」をくじくことになる。場合によっては夫婦喧嘩が始まるだろう。
しかし、「共有したいから不満があったら教えて?」と“協調”すれば、夫婦というチームの生産性を高める話し合いができる。

二つの例は、「家庭でミスをしたとき」「職場での仕事のやり方で衝突しそうなとき」にそれぞれ置き換えることができる。

アドラー心理学の「勇気づけ」を、家庭で実践し、そこで得た気づきを職場で活かす。逆に職場で得た気づきを家庭で活かす。この好循環をつくることで、家庭と職場両方のコミュニケーションが改善されていく。これが本書で提言する「幸せになるための働き方改革」の大きなポイントだ。

子育ては「時間」ではなく「質」

仕事が忙しく、子どもと触れ合う時間が短いことを気にする親は多いだろう。しかし、著者によれば、子育ては「時間の長さより、質」が重要だという。どんなに長い時間、子どもと一緒にいても、子どもの勇気をくじくコミュニケーションになっていたらいけないということだ。

アドラー心理学では「ほめる」と「叱る」をもっともやめるべきこととして挙げている。なぜなら、「ほめる」も「叱る」も相手を操作しようとすることになるからだ。そうやって育てられた子どもは、自立心が育まれず、指示待ち人間になる恐れがある。
では、子育てに本当に必要なのは何か。

答えは「さりげない承認」だ。

子どもが「ほめ」「叱り」に値する行動をとったときだけ注目するのではなく、日常の中の当たり前のことに注目する。子どもが興味や関心を持っていることに、親も注目し、「いつも君のことを気にしているよ」と、態度で示すことが大切なのだという。

また、子育ての本質とは、子どもの自立を支援することだ。だから、常に「自分の言動がこの子の“自立”にとってプラスになっているか」という視点をもつことも重要だ。

家庭と職場の幸せに共通する「アドラー的価値観」

本書では、幸せになるための家庭と職場に共通する4つの「アドラー的価値観」が紹介されている。

  1. 1.相手の立場や年齢にかかわらず、対等な人間としてリスペクトする「相互尊敬」
  2. 2.無条件に相手を信じ、受け入れる「相互信頼」
  3. 3.自己犠牲ではなく、喜んで誰かのために役立つ気持ち「協調精神」
  4. 4.相手の関心に関心をもつ「共感」

この4つの価値観を実践すると、家庭では「こんなにやってあげているのに」という義務感が減り、喜んで家事や育児に参加したいという貢献感に変わる。つまり、円満な家庭を築け、そのことが仕事のモチベーションにもなる。
また、職場では、お互いに信頼感が生まれ生産性も向上。帰宅時間も早まるので、仕事だけでなく家庭も充実していくのだ。

「働き方改革」をただの制度やルールの変化と思うのはもったいない。それぞれの個人にとって、働き方改革が「自分と周りの人たちにとっての幸せ」をつくる契機になることが望ましいはずだ。本書は、その一助になる考え方を示してくれるだろう。

(ライター:大村 佑介)

インタビュー

“頭がいい人”ほど要注意! 職場と家庭のコミュニケーションを改善するシンプルな原則

著者 熊野英一氏お写真

働き方改革の取り組みが進み、さまざまな企業で働き方を見直す機運が高まっています。
しかし、実際に私たちの生活は変わりつつあるのでしょうか?

働き方改革に関連する法案成立の過程では「How(どのように)」ばかりがクローズアップされ、「What(なんのために)」――つまり、「働く個々人の幸せ」についての話は、どこか置き去りにされていたようにも思えます。

そんな働き方改革を取り巻く現状に対して、「幸せになるための働き方改革」を提言しているのが、株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一さんです。
熊野さんは『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館クリエイティブ刊)を上梓し、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーション術によって職場と家庭の対人関係を改善し、仕事と家事・育児の生産性を上げる方法を解説しています。
そんな熊野さんに、職場と家庭を充実させ、幸せな生活を送るためのアドラー心理学のポイントをうかがいました。

(取材・文:大村佑介)

働くパパの「幸せになるための働き方改革」とは?

―― 本書のタイトルにもある「アドラー式働き方改革」ですが、改めてどのような働き方を目指すものなのかをお教えください。

熊野英一さん(以下、熊野) まずお伝えしたいことは、働き方を矮小化してとらえないで欲しいということです。自身の生き方や在り方と、視野を広げて働き方改革をとらえてみよう、というのがこの本の一番のメッセージです。

私たちは、仕事の場でも家庭でもハッピーでありたいと思っているはず。仕事だけハッピーならいい、家庭だけハッピーならいいということはないと思うんですね。だから生き方全体でハッピーを目指すという視点で働き方改革をとらえましょう、というのが本書のポイントです。

―― 現在、企業などでも働き方改革に関する動きは高まっていますが、世間一般の認識や風潮に関して、感じることはありますか?

熊野: 働くパパの視点で見ると、働き方改革というより「働かせ方改革」のような話になってしまっていると感じます。国や企業がどうやって短い時間で働かせるか、みたいな話に聞こえてしまっているんですね。

だから、働くパパにとっては我が事のようにとらえられないし、自分の幸せと働き方改革の議論が乖離してしまっている。「なんか国が言っている」「会社が何か言っている」となって、やらされ感だけがある。だから、全然ワクワクしないし、働き方改革を良いものだととらえられていない人は多いと思います。

―― むしろ、ネガティブな印象の方が強いのかもしれませんね。

熊野: そうかもしれませんね。でも、それはすごくもったいないことだと思っています。
本来、働き方改革は素晴らしいことだと思うんです。国や企業は豊かになったけれども、人としての心の豊かさや時間を有効に使うといったことは、どうしても後回しになってきた。そのことを見直して、ちゃんとワークもライフも充実させようという趣旨自体は全然間違っていないですよね。

本当だったら、みんなが「それは良いことだ」「仕事を効率的に終わらせて、早く家に帰って、夫婦円満だし、子どもも可愛い」となっていたら幸せですよね。これが本来目指すべきワークライフバランスでしょう。だから、働き方改革という言葉が生まれて、その動きが現実のものになっている今こそ、本質的な趣旨を見直して、本来の充実したワークとライフを実現する絶好のチャンスなんです。

―― そんな幸せな働き方を実現するために、著書ではアドラー心理学の考え方が取り入れているわけですが、そもそも熊野さんがアドラー心理学を学び始めたきっかけは何だったのでしょうか?

熊野: 私は仕事大好き人間で、仕事で成果を出すということが楽しかったんです。
家庭でも成果を出そうと、良かれと思って仕事のロジックを家に持ち込んだり、一生懸命やったりしていたのですが、それが逆に妻のストレスになってしまう。また、会社でも頑張れば頑張るほど、下の人がついてこなくなってしまう。

そういった職場と家庭でのコミュニケーション上の苦労をたくさんしてきたのですが、そんなとき、知り合いに勧められてアドラー心理学を知ったんです。

アドラー心理学が広く世間に知られるきっかけになった『嫌われる勇気』が出版されたのは2013年の終わりですが、私がアドラー心理学に出会ったのは、その2年ほど前でした。「自分が今まで良かれと思ってやっていたことが、実はズレているかも」ということに気づいて、本格的に勉強をしたことが転換点になったんです。
アドラーに背中を押され、まさに「勇気づけ」をしてくれて、そこから本当に変わったなと思います。

著者 熊野英一氏お写真

「共感ファースト」で職場と家庭のコミュニケーションが変わる

―― 「勇気づけ」というアドラー心理学において重要なキーワードが出てきましたが、家庭と仕事の課題を解決していくうえで特に重要になるアドラー心理学の教えには、どんなものがありますか?

熊野: 私は、アドラー心理学はとてもシンプルだと思っています。そこで、ぜひ覚えてほしい言葉が今回の本でもお伝えしている「共感ファースト」というキーワードです。

これは自分の正義や自分のロジック、自分の正しさを押し付けないということです。相手は自分とは全然違う正義や思いがあるかもしれない。その違いを許容する。それだけなんですよ。

たとえば、お客様、上司や部下、パートナーや子ども。相手が誰であっても「相手は自分と違う思いを持っているかも」という前提で話を聞いてみる。その時に、一回自分の気持ちは横に置いて、「相手はどういう気持ちでいるのかな」と相手の気持ちになって、共感しながら話を聞く練習をするんです。

―― その練習で、熊野さんご自身が気をつけてきたことはありますか?

熊野: 「頭を回転させすぎない」ということです。

だいたい私たちは相手の話に対して「ああ、その話か。じゃあ次はこう言おう。こう返そう」と、いつも、次に自分が何を言うか、ばかりを考えてしまうんですよね。
それはもちろん、会話の上で必要なことなのですが、あまりやりすぎると相手の話を何も聞かなくなってしまいます。

仕事ができる人、頭の回転が早い人、意識が高い人、ロジックの勉強をしてきた人ほど、その危険性を理解していないと相手と心が通じない。

―― よく、パートナーから「私の話、聞いてるの?」と言われてしまうようなパターンですね。

熊野: あるでしょ、そういうの(笑)

―― あります(笑)。

熊野: で、実際聞いてないことが多いんですよね(笑)それは相手にバレてしまうよ、ということなんです。

だから、まずは本当に聞こうとする「丁寧な態度」が大事。たとえば、仕事で初めて会う人やお客さんという関係なら、礼儀の意味でもちゃんと聞こうとするじゃないですか。「親しき仲にも礼儀あり」で、家族でも職場の人が相手でも、お客様に接するときのように丁寧に接すればいいんです。

本来、働くパパ、ママは、お客様に対してそれができているはず。それをすべての人に適応するんです。

―― そういう接し方って、つい「面倒くさい」と思ってしまいがちですけれど、実はその方が相手も自分も幸せになれるんですね。

熊野: そうなんです。なぜなら、そうやってお話を聞いてもらったら気持ちいいじゃないですか。
そうしたら、次は「あなたの話を聞いてみようかな」となるんですよ。

だから、まず先に自分がパートナーの話を聞く。そのあとで、こっちの話も聞いてもらう。
子どもとのコミュニケーションでも、まず先に子どもの話を聞く。十分に聞いた後で「オモチャを片づけてほしいんだけど、自分でできる?」とこっちから依頼をする。そうせずに「オモチャを片づけなさい!」と命令してもやらないですよね。

共感ファーストの「ファースト」は、共感を優先順位のトップとする「ファースト」でもあるし、まず自分から働きかけるという意味での「ファースト」でもあるんです。

オリラジ中田の「良い夫やめた」宣言 対人コミュニケーションの専門家の見解は?

著者 熊野英一氏お写真

対人コミュニケーション改善は「お稽古」だと思って意識する

―― 職場でやっている対人コミュニケーションが家庭ではできていない。その逆に、家庭でやっていることが職場でできていない。そういう状態ができてしまうのにはどのような理由があるのでしょうか?

熊野: それは「思い込み」にあるのかなと思っています。本当は職場と家庭は分ける必要がないし、対人関係という意味では、家族も仕事の上での関係も、全部一緒なんですね。

お互いがわかろうとし合う。お互いがリスペクトし合う。お互いに負担感がなく、言いたいことが言えるという関係であれば、それが仕事の話であれ家庭の話であれ、コミュニケーションは上手く前に進んでいきます。

でも、なぜか私たちは、子どもと接する時にはこういう態度、パートナーが相手だとこういう態度、お客さんのときはこう、上司のときは下から、部下のときは上から目線で……みたいに、相手によって視線や態度を変えるということを、なんとなく学んできてしまっているんです。

でも、本当はそうではないんだということにぜひ、気づいてもらいたいんですね。
相手が誰でも、いつでも、自分の対人コミュニケーションは一緒。誰に対しても丁寧に、リスペクトする。「あの人って、いつも誰に対しても丁寧だよね」という人になったほうが、使い分けもしなくていいから簡単なはずです。

仕事で成功していらっしゃる方は、誰に対しても腰が低かったり丁寧だったりしますよね。
それは別に遜ってうまいことやろうと考えているわけではなく、誰に対しても丁寧に接することの意味がわかっているからやっている。そういう方にお会いすると、そのことがよくわかります。

―― 見せかけではなく「できる」というのが大事ですね。

熊野: そうです。やはり下心を持っていたらダメなんですよ。
「丁寧にすれば自分の話を聞くんじゃないか」「商品を買ってくれるのではないか」といった下心があると必ずバレてしまうから、下心なく、本当に人として、人に対して丁寧にするんだっていう、まさに人としての在り方が問われる、ということですよね。

―― アドラー心理学の幸せの3条件に「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」がありますが、これらを身につけるために、日頃から家庭や職場でできることはありますか?

熊野: まず、コミュニケーションの改善は「お稽古」だと思ってほしいんです。

よく野球の素振りに喩えるんですが、イチロー選手はバットにボールを当てるのがものすごく上手いですよね。そのイチロー選手ですら、素振りという初心者がやる練習を今も毎日やっている。

コミュニケーションもやっぱり毎日の積み重ねの練習が重要です。いつも「お稽古」だと思って、自分の振舞いや態度を見直すことが一番大事だと思っています。
最初は朝と晩だけでもいいから「共感ファースト」を思い出して意識する。その頻度を少しずつ増やして、どんなときも「共感ファースト」がチラつくようにする。それだけでかなり変わってきます。

もうひとつ大事なことが、肩肘を張らないことです。僕は、冗談の意味も込めて「ジャマイカの教え」と言っているんですが。「じゃ、まぁいっか」という(笑)
時間や心に余裕がないときは、共感ファーストが実践できないこともあります。そのとき「自分は全然ダメだな」とへこたれても仕方ありません。だから、「疲れていたし、慌てていたし、心にゆとりがなかったな」と不完全な自分を受け止めて、OKを出す。そして、「次に共感ファーストができればいいよね」と思い直す。満点を目指すのはいいけど、満点を取れなくてもOKとする。これが大事ですね。

著者 熊野英一氏お写真

「良い夫やめた」宣言の背後にある問題の本質

―― 満点を取らないということで言えば、最近、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さんが「良い夫をやめます」宣言をされ、話題になりました。

熊野: 私もそのニュースを拝見して、彼に伝えたいポイントがあります。まず、「完璧を目指しすぎない」というところは良いことだと思っています。

中田さんのお話は「パートナーの求めに応じて完璧を目指そうとしていたら、相手がどんどんわがままになって、自分も苦しくなっていった」ということですよね。それはアドラーの幸せの3条件で振り返ってみると、「他者貢献」の部分が「“自己犠牲を伴う”他者貢献」になってしまっていたということだと思うんです。

彼の話も「自分はこんなにやってあげているのに!」という訴えに聞こえました。それに対してパートナーも「私もこんなにやっているじゃない」となっている。お互いに「自分はこんなに頑張っている」という「わかってほしい」のせめぎあいになっていることが問題の本質なんです。

お二人の間に何が欠けているかというと、やっぱり「共感」なんですよ。
だから、中田さんが気づいて欲しいのは、自分の大変さや犠牲感を一回横に置いて、パートナーの立場に立って「なんで、オレがこんなに頑張っているのに文句を言うの? 何がイヤなポイントなの?」ということを、彼女の目で見て、彼女の耳で聴いて、彼女の心で感じた先に、見えてくる世界があるよ、ということなんです。

中田さんは、典型的な頭のいい人、仕事ができる人の過ちのパターンに陥っているように感じます。彼はずっと彼の頭の中のロジックで、彼女をジャッジしているように思えます。だから「すごく理不尽だ」と思ってしまう。そこから脱皮しないと、夫婦関係も悪くなりますし、あのまま論破していこうと思ったら、結構大変なことになるかも。論破はできたけど、お互いの心は離れていった、ということにもなりかねません。

そこは、特に働くパパは要注意です。どこかで気づいてくれたら、と思いますね。

―― 近年では「イクメン」という言葉が流行しています。子育てにおいてパパがやってしまいがちな子育てに対しての誤解や間違いはありますか?

熊野: 子育てでイクメンパパがやってしまいがちなポイントは「上から目線」です。
これは先ほどの中田さんの話にも通じるところがあるんですけれど、「オレはイクメンだ」「子どもに上手にかかわってあげている」「オレは仕事もデキる」「お金も稼いでいる」――そんな「〇〇してあげている」という上から目線が諸悪の根源になり得ることに気をつけて欲しいですね。

―― そう考えると「イクメン」という言葉自体が、働くパパにステータスを与えて上から目線を助長させているかもしれませんね。

熊野: そうかもしれませんね。イクメンを、ある意味ファッションとして捉えて、「イクメンのオレってカッコいいだろう」というアピールすることは、奥さんからも不評でしょう。

子育てのガジェットにばかり興味がいきすぎて子どもの気持ちになっていないとか、パートナーの気持ちになっていない。そういう似非イクメンには要注意です。

―― 最後に、仕事も家庭も充実させたいパパにメッセージをお願いします。

熊野: 「とにかくシンプルに考えよう」ということが一番のメッセージです。
コミュニケーションを難しく考えない。家庭も職場も同じことをやればいい。相手が男でも女でも同じことをやればいい。相手が大人でも子どもでも、相手の立場や属性が違っても、やっぱり同じことをやればいい。

共感ファースト。リスペクトする。そして、お互いに分かり合おうとするというシンプルな原則で対人関係を構築するというのが最大のメッセージです。ぜひ、今回の本を読んでそのことを知ってほしいと思います。

著者 熊野英一氏お写真

書籍情報

目次情報

本書の中身を一部ご覧頂けます

  • 序章 パパにおすすめしたいアドラー式働き方改革

    PDFアイコン 立ち読みをする
  • 第1章 まずは自分と周りを「勇気づけ」しよう

    PDFアイコン 立ち読みをする
  • 第2章 アドラー式働き方改革講座

    1. 家庭編1 ほめない・叱らない子育てにチャレンジしよう
    2. 家庭編2 子どもを勇気づけるコミュニケーション PDFアイコン 立ち読みをする
    3. 仕事編1 人間関係を円滑にするアドラー的価値観
    4. 仕事編2 アドラー的価値観に通じる組織論 PDFアイコン 立ち読みをする
    5. フォローアップ座談会
    コラム 「勇気づけの組織」と「勇気くじきの組織」はなにが違うのか?
  • 第3章 個人でも始められるアドラー式働き方改革

    コラム 帝京大学ラグビー部の強さの秘密 PDFアイコン 立ち読みをする
  • 第4章 アドラー式働き方改革でなにが変わったか

    コラム 心の中の2匹のオオカミ PDFアイコン 立ち読みをする

著者プロフィール

熊野 英一

アドラー心理学にもとづく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。株式会社子育て支援代表取締役。
1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
メルセデス・ベンツ日本に勤務後、米インディアナ大学ケリー経営大学院に留学し、MBA取得。米製薬大手イーライリリー本社および日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに入社し、約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事する。
2007年、株式会社子育て支援を創業。日本アドラー心理学会正会員