大村:「平成」って「平和に成る」的な?
ハチマル:漢文からとったらしいですね。
大村:にしては、穏やかでも平らかでもなかったですよね。
ハチマル:そうですね。いろんなことが起きましたからね。
大村:そういう背景を踏まえて、次の元号って何だと思います?
ハチマル:想像でいいんですか(笑)? じゃあ、逆に平らかじゃない、跳ねるような。「飛躍」とか。
大村:いいんじゃないですか「飛躍元年」。
ハチマル:「飛躍生まれ」ってなんか輝かしい感じがしますね。
大村:キラキラネームっぽい感じが(笑)。「キラキラ年号」みたいな(笑)
ハチマル:嬉しくはないかもしれない(笑)。でも、平成が終わるってなんだか衝撃です。上皇が生まれるっていうのも、歴史でしか聞いたことない単語だったし、ちょっとときめいちゃいました。
大村:ときめくんですね(笑)
ハチマル:教科書でしか見たことのないことが、実際に生まれるんだ、みたいな。
大村:たしかに、それはちょっとテンション上がりますね。
金井:これは今振り返らないといけない事件だと思うんですけど、個人的にはその後の報道で、アニメやロリコン趣味=「おたく」というイメージを決定づけた事件で、その呪縛が20年くらい続くということをちゃんと検証しないといけない。その後のおたく文化史は、しばらくこの事件の影響下で語られていたように思います。
大村:それから考えると、30年経って、「おたく」ってだいぶ許容されるようになった気はしますね。
金井:イメージは変わりましたよ。でも、やっぱり年上の人と、我々より下の20代前半が持つ「おたく」のイメージはかけ離れています。全然話が合わない。
大村:僕らより年配の方に「おたく」のイメージを聞くと、この事件で広まった「おたく」の中で話しますからね。
金井:そうそう。だから、その都度「『おたく』はもうそういう存在ではないですよ」と伝えないといけない。平成ってカルチャー面から言えば、アニメ文化の成熟みたいなものが一つの柱で、クールジャパンとかありましたけど、日本国のアニメ文化の扱い方も手のひら返し的なところがあった。
大村:急に持ち上げた感がありましたよね。
金井:そう、持ち上げたんですよね。国とかメディアってさ、本当にご都合主義ですよねって。
山田:僕が本であげた『東京エイティーズ』は、1980年代の早稲田大学の学生の大学生活とか恋愛模様を描いた漫画なんですね。そこにジュリアナが出てくるんですよ。当時のバブルのものとして。で、みんなでディスコに行って踊るみたいな描写があったりして、なんとなく雰囲気を知ったという。
ハチマル:私はもうジュリアナとか全然知らない世代なんですけど、若い人って自己顕示欲を満たすためにSNSをやっているというところがあるじゃないですか。でも、当時はSNSもないから、こういう感じでステージに立って踊っていた。自分を見てくれる場がジュリアナだったのかなって。
山田:ああ、それはそうでしょうね。あと、僕はジュリアナといったら青田典子さんしか知らないです(笑)。
ハチマル:そうなんですか!知らなかった。全然知らな過ぎて申し訳ないんですけど(笑)。
山田:あと、覚えているのがワンレングスっていう髪型が流行ったらしいということ。ワンレングスって、前髪から後ろ髪から同じ長さっていうことですよね。それ、どういう髪型になるんだっていう(笑)。だって前髪こんなに長いわけでしょ?
ハチマル:でも、分けちゃえばいいんじゃないですか? ファッションって一周まわって新しい感じになるから、今やったら逆にかっこいいってなるのかも。
山田:野茂の活躍はもちろん日本人も喜んだけど、一番熱狂したのはアメリカにいた日系人コミュニティらしいんですよね。
金井:ああ、なるほど。
山田:あの中での野茂の人気っていうのは凄まじかったっていう話を聞いたことがあって。野茂自身もどこかのインタビューで、日系人コミュニティに応援されたっていう話をしていた。
金井:それはロサンゼルスだからっていうのもあるんだろうね。日系コミュニティが強い地域だから。
山田:野茂が行くまでは何10年も行ってなかったわけですよね。それはねえ、熱狂するよね。
金井:印象深い日本人選手は誰ですか?
山田:伊良部秀輝が強烈だったかな。デビュー戦がすごかった。
金井:ヤンキースですよね。
山田:うん、ヤンキースで。揉めに揉めて、三角トレードでいったんですよね。でも、全盛期で行ったからさ。どのくらい成績残すのか期待していたけれど、デビュー戦はすごかったなあ。
大村:「ノーパンしゃぶしゃぶ」って調べたんですよ。
山田:そしたら、ロケットニュース24の記事の画像が出てきて、おっさん二人がノーパンでしゃぶしゃぶ食べてる写真で、「それじゃない」と思って(笑)。
大村:これ、1998年だからわりと覚えていて、「ノーパンしゃぶしゃぶ」っていう単語が印象的で。
山田:キャッチーだよね。
大村:キャッチーだけど、何がいいんだっていう話で(笑)
山田:風俗じゃないんですよね。
大村:飲食店の扱いなんだよね。
山田:経費で落ちるから使うという。
大村:ここで国の運営に携わっているお偉いさんが、接待を受けているっていう。これは「情けない」でいいんですかね?
山田:でも、このスキャンダルで体質が変わるかと思ったら、全然変わっていなくて。この間も「おっぱい触らせてよ」って言った官僚がいましたよね。全然変わってないっていう(笑)。
大村:だから、結局、平成30年まるまる使っても体質って全然変わってない(笑)。
山田:だから、これはエポックメイキングな出来事じゃないんですよ。変わってないから特に重要じゃない出来事なんじゃないかっていう気がしました(笑)
金井:ここから21世紀なんですよ。21世紀はテロから始まる。
山田:この件で何かしら時代に変化があったか考えたら、今みたいに陰謀論が盛んになったのって、これが境なんじゃないかなと。さまざまな陰謀論が出て、いまだにこの事件も「ユダヤの陰謀だ」とかって言っている人いるじゃないですか。
金井:そうね。
山田:案の定、ベンジャミン・フルフォードが9・11についての陰謀論の本を出してるし。やっぱり!って思って(笑)、陰謀論の本を入れた。でも、これは何でも陰謀論として語られるようになった先駆けですよ。ちょうどインターネットが発達してきた頃で、インターネットと陰謀論の組み合わせは最強です。ネット以前の陰謀論って、こんな世界規模で広がらなかったでしょ。
金井:ノストラダムスは陰謀論じゃないか。あれはアンゴルモアがやってくるだけだから(笑)。まあでも、この時期から急激に「あいつらのせいだ」みたいな主張を目にするようになった。
山田:安易な責任論がつくられやすくなった事件だったと思います。
大村:自己責任論って世界的にみて日本がそこに過敏すぎるっていう話がありますよね。欧米は個人主義が根底にあるけど、日本って連帯責任の国じゃないですか。ムラ社会でできている国で、小学校の道徳の時間で「他人様に迷惑をかけてはいけません」って教わりましたよね。
ハチマル:ありました。だから、自分が関係なくても迷惑をかけている人に「なんてことしてくれたんだ」ってなりやすい。
大村:そうそう。だから、「自己責任で行ってるんだから、行った奴が悪いんだよ」っていう感情になりやすいお国柄なんだろうなあ、と。でも、どこまでが自己責任なんでしょうね。
ハチマル:実際、救助のために多額のお金が動いているわけで、それが税金から持っていかれちゃうって考えると間接的には影響を受けているんじゃないかとも思います。ただ、例えば戦場カメラマンが素晴らしい写真を撮ってきたら、それは褒め称えられるけれど、その人が捕まった場合、一気にバッシングがいく可能性があるっていうのは、ちょっと不思議な気がします。
大村:自己責任論については、もう少し広い心で受け止めてほしいなあと思うのが僕の意見ですね。難しいところではあるんですけど。
金井:これは何個か切り口があるんですけど、ここでは2つ。まず、日本の音楽ビジネスって、AKBがいようがいまいが多分変わっていたと思うんですよね。つまり、「ヒット曲をみんな知っている」っていう時代ではなくなるのは必然の流れなんですよ。なんでかというと、チャンネルが増えすぎたから。
ハチマル:確かにすごく分散しちゃっています。
金井:テレビを見ていればヒット曲が分かるという時代ではなくなったし、そもそもテレビを見ない。YouTubeで自分の好きなものしか見ないという時代がきたのは一つ。そこに上手く乗っかりつつブレイクしたのがAKB48。ヒットしてるけれど、AKB48ファン以外が曲をまったく知らないという現象が、新たな時代のエンタメ界の王様の形を物語っているように思います。
あともう一つすごいなと思ったのは、CDの価値を変えた。CDを買う意味を変えたという点。
ハチマル:AKBはとにかくCDが売れない中でミリオン出していますね。
金井:そう。でも、CDの意味を変えたのはAKBだと思う。つまりは握手券ですよね、売っているのは。会えるためのチケットとしてのCD。音楽はもちろん大事だけど、音楽だけ売らなくてもいいということを、知らしめてしまった。
ハチマル:ただチケットを売るよりも、CDってなると音楽業界的な意味での立ち位置も上がりますよね。ランキング上位に来ればやっぱり目につく機会が増えるし、考えたらすごいです。
金井:そう売れれば何でもありというか。でもビジネスってそういうもんですからね。
大村:今、ガラケーに戻れって言われたら、戻れる?
山田:戻れるかなー。わからないです。そういえば昔、着メロ自分で作るのあったよね。
大村:あった。
山田:あれ、なんだったんだろう。むしろ今、着メロを作りたい(笑)。
大村:昔、着メロを上手に作れるのはステータスだった気がしますよ。
山田:でも、スマホってコミュニケーションアプリがたくさんでてるじゃないですか。たぶん母国を離れて生活している人は大喜びですよ。国際電話とかも基本的に要らないじゃないですか。とにかく高い国際電話の通話料を払う必要はないんですよ。
大村:国際電話っていう言葉がもう懐かしいもんね。
山田:ないですよね、たぶん。スカイプを使えば、基本的に地球上どこでも話せるわけだし。
大村:「世界が身近になった」ってよく言うけど、その実感はないけど、そうなってるっていうのがすごい。
山田:携帯キャリアに参入してなかったら、NTTって今頃死んでるぞって思う。ヤバイぞNTTって(笑)
大村:そんな気はする(笑)
金井:作家の方にお話をうかがうと、あの震災に対してやっぱりすごく意識していることが見えるんですよね。自分の仕事である文学の力っていうのは、自然の前では無力である。その上で、自分は何ができるかっていうことが問い直されているっていう。
それはね、メディアもそうです。「事実を伝える」っていうのは大きいけれど、それは報道じゃないですか。我々のようなネットメディアは何のためにあるんだという気になりましたよね。それは同じように無力さを覚えた。
大村:編集長っぽいですね(笑)。
金井:仕事ですから。例えば戦争って人間の力で止められるから何か出来なかったって考えやすいけれど、自然災害に関してはもうどうしようもない。減災を呼びかけるしかない。ネットメディアをやっている身としては無力感ばかりでした。
大村:でも、僕は好きなラジオはあのとき最初に「こういうことが起きましたけれど、僕はいつもの通り馬鹿話をした放送をします」ってパーソナリティが言っていて、それに救われる人もいるんだろうなと思うんです。でも、その後も災害って起きているし、これからも起きるだろうし、そのたびに問い直されている気はしますね。
金井:まあ、被災者支援はもちろんすべきだと思うけど、東日本で災害が起きた時、西日本も「消費を控えます」みたいなことはしてほしくないですよね。普段通りの生活を続けながら、お金を送る、と。普段の生活の中で助け合いはすべきだろうかなと。
ハチマル:あんなにテレビで活躍していたグループが、いきなり解散って驚きました。
山田:実はどんないきさつで解散したのか知らない(笑)。あ、そうか。マネジメント層のいざこざみたいなのがありましたよね。それで事務所に残るか、元のマネージャーについて行くかで分裂したんだ。
ハチマル:私すごいと思うのは、事務所にいれば安泰なはずなのに、お世話になった人への義理を通してついていくっていうことですよね。
山田:それはそうだよね。一般企業でもそういうこと起こり得るけれど、大きな会社から離れるというのは。
ハチマル:芸能人なら、大きな事務所を抜けた後ってなかなか仕事もらえなかったりするじゃないですか。でも、3人は結構テレビでも見かけるし、ネットでも活動をしていて、応援したいという気持ちになりますよ。
山田:香取慎吾はファミリーマートでよく見かける(笑)
ハチマル:これからも活躍してほしいですね。