『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』
ビジネス本に必要な情報は「悩みを解決出来るソース」
鬼頭: 早速ですが、松尾さんの普段のお仕事について伺っていきたいと思います。
普段は主に、本を出したいビジネスマン向けに出版のプロデュース業をしております。
鬼頭: 出版プロデュース業……という業種は初めて聞いたんですけど、松尾さんが新たに開拓されたものなんでしょうか?
僕がこの仕事を始めたのは、10年程前になるんですが、その前にも何人かはいましたね。今もこの肩書きを名乗っている方は、おそらく10人くらいはいるんじゃないかと思います。
鬼頭: 私からすると、「本を出版する」というのは、何か特別な力のある人にしかできない事のように思えてしまうのですが……。
僕自身も、12年前に1冊目の本を書くまでは、本を書くことが出来るのはやはり特別な人だと思っていました。ですが、有難い事に最初に書いた本が売れてから、色々と内情が分かってくると、やがて「あれ、そんなに大したことじゃないな」と思うようになりまして。例えば、小説や、漫画、ポエムであれば、どうしても才能に左右されるところがあるじゃないですか。それに対してビジネス書は、多くの人が「悩みの解決」を求めて手に取るものなので、悩みを解決出来るソースさえ持っていれば、誰でも1500円払う価値のある本が書けてしまうんです。
ほとんどのサラリーマンが「人の役に立つノウハウ」を所持している
「悩みの解決」といっても、高いハードルを設定する必要はありません。例えば、自分が年収500万円「しか」稼げていない、と悩んでいたとしても、年収200万円の人からすれば、自分はその人の2倍以上も稼げているわけですよね。そうすると、「年収500万円稼ぐ方法」というのは、年収200万円の人からしてみれば、欲しい情報になるわけです。
鬼頭: 確かに……。そこには気が付きませんでした。「年収1億円稼ぐ方法!」みたいな大きな目標が掲げられた本の方が売れるのかと思いきや、そうでもないんですね。
逆に、年収200万円の人が、年収1億円稼ぐ方法を学ぼうとしても、いまいちピンとこないと思います。
鬼頭: 確かに、数字が大きすぎてしっくりこないかもしれませんね。
メンタル的にも厳しいし、真似する事も難しいと思います。でも、年収200万円の人が年収500万円を目指す本であれば、残り300万円を埋める方法を、例えば40項目に分けて書いたりすれば、それは現実味のある本だと思います。
鬼頭: 松尾さんは過去に「コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ法」という本も出されていますが、1000万円の大台に乗せず、敢えて「650万円」という数字にしているのも……?
その数字も狙ってつけました。年収が650万円という事は、月収にして50万円ですよね。なおかつ、フリーランスとしてもステータスがあり、クライアントからは先生と呼ばれ、困った人を助けられる……そのようなポジションにあこがれる層が一定数いるという想定をもとにその本を書きました。
「出来ない人間」だったからこそ、「ネイティブ成功者」には分からないことが分かる
鬼頭: 出版に携わる前というのは、どのような事をされていたんですか?著者さんとしては珍しい発想をお持ちだと思うのですが……。
もともと自分は本を書けるような人間だとは思っていなくて、コンプレックスの塊でしたし、成功体験もほとんどありませんでした。その分、出来ない人、困っている人、やる気のない人の気持ちがリアルに分かるので、ネイティブ成功者には分からないことが分かる……みたいな強みが、僕にはあるのかなと思っています。
鬼頭: 松尾さんが、その「出来ない人」から成功の道へ進むことになったきっかけというのは?
僕は大学を卒業してから人材派遣会社に勤めていたのですが、営業成績があまりに悪く、居場所がなくなって辞めてしまったんです。その後半年くらい、当時付き合っていた彼女にご飯を食べさせてもらいながら、平日は開店から閉店までパチンコ屋へ、土日は中央競馬へ出向くという生活をしていました。さすがにやばいなと思った頃合いに、父親がビジネスをやっていた実家へ戻り、35歳までそこでお世話になっていたのですが、結局は、車で営業に出かけるふりをして土手で寝てるとか、相変わらずパチンコやっているとか、そんな状態でしたね。その後、そろそろ子供に物心がつくかなという時期に、バカ親だと思われたくないという事と、このまま父親のところにいると、ずっと甘えてしまうなと思ったので、いっちょ起業でもしてみようということで、書店でビジネス書を手に取りました。
鬼頭: では、その本を読んだ事が最初のきっかけだったんですね。
そうですね。それから色々なビジネス書を読んでいくうちに、セミナーの存在を知りまして、初めてある方のセミナーに参加してみたんです。多くの参加者は、そこでノウハウを学んだりすると思うのですが、僕はそのセミナー講師がかっこいいなと思ったんですよ。その後、講師の方に直接「どうしたらあなたみたいになれますか?」という相談をするようになりまして、色々聞いて教えの通りに動いていたら、いつの間にか本を出してたという……かなり割愛はしましたが、こんな流れでしたね。