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BOOK REVIEWこの本の書評

amazonへのリンク『睡眠改善インストラクターが教える「眠りの魔法」』

「早寝早起きは、人を健康、富裕、賢明にする」。これはアメリカ合衆国建国の父といわれるベンジャミン・フランクリンの言葉だ。仕事、勉強、家事に勤しむための資本である体をしっかりと休ませることは、日々の生活における活動のクオリティに大きく関わる。

そこで大事になるのが「睡眠」だ。

睡眠改善インストラクターとしてテレビ、新聞、雑誌など各種メディアから注目を集めている竹田浩一氏が上梓した『睡眠改善インストラクターが教える「眠りの魔法」』(坪田聡監修、ぱる出版刊)は、寝つきが悪い、起きても疲れがとれないなどの眠りについての悩みを抱える人ならチェックしたい一冊。

著者が提唱する快眠の秘訣は「光で起きる」という点にあるという。
なぜ「光」が快眠をもたらすのだろうか。その理由と快眠のポイントを本書から紹介していこう。

★ 人間の体にマッチした「光」の目覚め

一般的に目覚まし時計といえば、「音」で眠りから覚まそうとする。しかし、光目覚まし時計は、体内時計をリセットするために必要な明るい光を出すように設計されている。

そこでポイントになるのは「体内時計」だ。
朝に目覚め、日中に活発に活動し、夜になると眠くなる。このように毎日同じようなリズムで活動できるのも、体内時計によって体内の様々なものがコントロールされているからだ。

よく言われるが、体内時計の周期は24時間ぴったりではない。24時間よりも少し長いと言われ、そのまま時間を追いかけると、生活のリズムは後ろ倒しになっていく。
体内時計のリセットボタンは、脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所にあり、光が視神経を通じてこの部分を刺激すると、体のリズムがリスタートされるのだという。

つまり、朝目覚めて、太陽の光を浴びることで体内のリズムが調整されていくのだ。そして、体内時計に大きく関わってくるのが「セロトニン」と「メラトニン」という脳内物質だ。

★ 睡眠に作用する脳内物質「セロトニン」

「セロトニン」は脳内物質の一つで、意識の覚醒を促し、自律神経に働きかけて体温の調整をしたり血圧をコントロールしたりと、爽やかに目覚めの手助けをしてくれているという。
一方、「メラトニン」は、睡眠ホルモンとも呼ばれ、人の眠気を促す作用がある。

人間の体は、朝、太陽の光で目覚めると「セロトニン」の分泌が始まり、目覚めから14~16時間ほどで眠気をうながす「メラトニン」の分泌が始まるようプログラムされている。
つまり、セトロニンとメラトニンは正反対の作用を及ぼしているのだ。

興味深いのは、セトロニンが多く分泌されるとメラトニンの量も増えるという点だ。
実は、日中に分泌されたセロトニンは、翌日には持ち越せず、夜になるとメラトニンに合成されてしまうという。したがって、毎日きちんとセトロニンを分泌させることが、より良い睡眠を手に入れる近道なのだ。

セロトニンの分泌をうながすには、「朝に5分以上明るい光を浴びる」「リズミカルな運動を生活に取り入れる」「家族や恋人、仲間とのスキンシップを取る」といったことを習慣づけるとよいという。

★ 寝る前の「風呂」「音楽」はNG? 眠りを阻害する習慣

「こうすれば眠れる」という方法は世の中に多く出回っているが、解釈ややり方を間違えてしまうと、かえって眠れなく方法も多くあるという。

たとえば、「お気に入りの歌をかけてリラックスする」「本を読む」「ベッドで電話する」などは、脳を覚醒させてしまうため、就寝前には行わない方がよいという。

また「寝る前にお風呂に入る」ときは、適切な温度と時間で入らないと逆効果だ。
お湯の温度は38℃くらいが目安。入浴時間は15分くらいがよい。ぬるめのお湯にゆっくり浸かり、深部体温を上げるのがポイントだという。

著者は自分の気持ちを「寝る準備」に切り替えていくための「おやすみスイッチ」を見つけることも勧めている。たとえば、パジャマを着替える、軽いストレッチをする、快眠のツボを押すなど、自分に合った「これをしたらもう寝るぞ」という儀式のようなものを行うのだ。

夏休みに入ったら寝溜めをしようと考えている人もいるかもしれないが、せっかくなら、その休みを使って、規則正しいリズムの睡眠習慣をつくってみてはいかがだろうか?

(ライター/大村佑介)

INTERVIEW インタビュー

★ スッキリ起きたいなら、目覚ましは「音」よりも「光」。その理由とは?

著者写真

なんだか寝つきが悪く、朝スッキリ起きられない。日中仕事や勉強をしていても、眠気が取れずにパフォーマンスがいまいち上がらない。そんな生活を送ってはいないだろうか?

そこで多くの人は「寝るため」の方法を調べるが、実は睡眠にとって大事なのは、「目覚める」と「寝る」をワンセットで考えること。そして、特に大切なのは「目覚め方」だ。

不眠症に悩む多くの人の相談に乗り、TV、新聞、雑誌などのメディアでも注目されている睡眠改善インストラクターであり、『睡眠改善インストラクターが教える「眠りの魔法」』(坪田聡監修、ぱる出版刊)を上梓した竹田浩一氏は、自身も20年以上不眠症に悩んできた人物だ。

竹田氏の不眠が改善されたきっかけは、目覚め方を改めたこと。それも「光」で目覚める習慣に変えたことだという。
この経験から独自に睡眠の研究を行い、光目覚まし時計を開発してきた竹田氏に「光」で目覚めることが不眠改善につながるメカニズムについてお話を伺った。

(取材・文:大村佑介)

★ なぜ「音」よりも「光」で目覚める方がいいのか?

――本書で「眠れない辛さをいやというほど経験してきた」と語っていますが、どのようなことが辛かったのですか?

竹田浩一氏(以下、竹田):
私は物心のついた小学校2年生の頃からずっと不眠で悩まされてきたのですが、一番辛かったのは毎日夜がやってくることでした。
当時、私は母親と弟と一緒に寝ていたのですが、二人は寝られて自分だけが寝られないという状態が毎日やってくるんです。そばに家族はいましたが、眠れない時間を一人で過ごすのは怖いし、辛いことでした。

不眠だったとはいえ小刻みには寝ているので、朝になれば学校に行くのですが、体が回復していない感覚がずっとありました。部活をしていても疲れやすいし、皆と一緒に走れないこともあって。なので、寝るときも、昼間起きているときも辛い思いをすることがたくさんありました。

――誰かに相談したりはしていたのですか?

竹田:
家族には相談をしていたので、小学生ながらに快眠グッズをいろいろと買ってもらっていました。枕を買ったり、ハーブティを飲んだりとか。28歳で不眠が解消されるまで、合計で100万円くらいは快眠グッズに使ってきたと思います。

ただ、毎回「どうせ効かないだろう」という気持ちもあって、諦めながらも試していくという感じでした。結果、不眠が解消されたのは「光で起きる」という方法だったのですが、最初に知人から「光で目覚めるのがいい」と聞いた時も「どうせダメだろうな」と思いながら試す感じでしたね。

著者写真

――本書ではアラームのような音による目覚めよりも、光を浴びて起きる方が良いというお話がありましたが、改めてその理由をお教えください。

竹田:
人間の体には、危機管理の役割を担うノルアドレナリンという脳内物質があって、寝ている間でも物音などの危険を察知すると活発に分泌され、自律神経を活性化させます。

音によって目覚めるということは、驚かされて無理やり起こされている感覚に近いんです。すると、脳の覚醒が抑えられてしまい、日中も眠気がとれない状態になってしまいます。

一方、光を浴びて起きることは人間の体のシステムとマッチしています。人間には体内時計が備わっていて、そのおかげで私たちは、朝に目が覚めて、日中に活発に活動して、夜になると眠くなるというサイクルが自然に行われるようになっています。
ただ、体内時計は24時間よりも少し長い周期になっていて、その体内時計の周期をリセットするのに必要なのが、太陽の光を浴びることなんです。

光を浴びると体内時計がリセットされる上に、「セロトニン」という脳内物質が分泌されます。
セロトニンは「幸せ物質」と呼ばれる脳内物質で、意識の覚醒をうながして爽やかに目覚めるための手助けもしてくれます。驚かされて無理やり起こされるのではなく、自然に意識を覚醒させるので、スッキリ目覚めることができるわけですね。
さらにセロトニンは、目覚めだけではなく、夜に寝るときにも必要なものです。

★ 「セロトニン」と「メラトニン」の分泌が快眠のカギ

――セロトニンは睡眠とどのように関係しているのでしょうか?

竹田:
朝、光を浴びて分泌されたセロトニンは、夜になると「メラトニン」という睡眠をうながすホルモンにそのまま変化します。
朝、光を浴びれば浴びるほどセロトニンが分泌されて、夜になるとたくさんのメラトニンになり、それが睡眠を促して、質の高い睡眠にもつながるわけです。逆に言えば、セロトニンがきちんと分泌されていないとメラトニンの分泌も不十分になり、体が上手に睡眠モードに入れなくなってしまうんです。
なので、朝に光を浴びることは目覚めと睡眠の両方に効果があるといえます。

――どうすればセロトニンは分泌されやすくなるのでしょうか?

竹田:
セロトニンを分泌させるためには、トリプトファンというセロトニンの元となる物質を食事などで摂っていきます。トリプトファンはビタミンB6を合わせて摂ると効率よく摂取できます。
そうして、トリプトファンを蓄えたら、セロトニンを分泌させるために朝、光を浴びるようにします。
ほかにも、軽い運動をしたり、他人とのコミュニケーションやスキンシップをとったりすることでセロトニンは分泌されます。

――軽い運動やスキンシップというのは具体的にどういうものでしょうか?

竹田:
激しすぎる運動はかえってよくないので、朝日を浴びながら散歩するといった程度で大丈夫です。
あとは、貧乏ゆすりとかもセロトニンの分泌にはいいんです。貧乏ゆすりってイライラしているときにするイメージがありますよね。あれは、無意識にイライラを解消させるためにセロトニンを出そうとしているんです。なので、意識的に貧乏ゆすりをすることもセロトニンの分泌にはいいと思います。

近しい人と楽しい時間を過ごすことでセロトニンは分泌されますが、よく効果があると言われるスキンシップが「ハグ」です。
ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、お子さんやパートナーならハグもしやすいかもしれません。幸せを感じられる相手ならいいので、ペットでもOKですし、大好きなヌイグルミでもいいと思います。

でも、やっぱり一番は日光を浴びるということですね。

――屋内で仕事をしている方ですと、日中から夕方も日光を浴びにくいと思います。この時間にもできるだけ日光は浴びたほうがよいものですか?

竹田:
そうですね。可能であれば、仕事の合間に日光が浴びることができる場所に出るとか、昼休みに近くの公園を散歩するとか。都心のオフィス街などは、日中、窓から日光も差し込まないことも多いですしブラインドを下ろしていることもあると思うので、意識的に日光を浴びる時間をつくるのが理想的です。

★ 不眠改善のポイントは「正しい睡眠の知識」

――不眠や寝起きの悪さで悩んでいる人の習慣で最も悪いものはなんだと思いますか?

竹田:
悪習慣というよりも、睡眠の正しい知識が足りないということが一番だと思います。私が小さい頃もそうでしたが、睡眠の知識があれば、自分の生活習慣が悪いものだということがわかるので。

睡眠の講座をしていると「コーヒーを飲まないと眠れない」というお話をよく聞きます。寝る前にホッと一息ついて眠るとか、飲まないと寝られないという人がけっこういるんです。
でも、カフェインを摂っているので睡眠の質は落ちているはずなんです。本人はそれで眠れていると感じているのですが、本当はよりよく眠れて、睡眠の質を高めることもできるわけですね。知識があればそういうこともわかるので。

なので、睡眠にとって悪いことだと知らずにやっているというところが大きいのかなと思います。

――そうなると、不眠ではない人でも、もっと睡眠の質を高められるのにもったいないことをしているケースもありそうですね。

竹田:
そういう方は多いと思いますね。

――竹田さんは、小さい頃から快眠グッズを使ってきたということですが、やはり寝具には気を使ったほうがいいのでしょうか?

竹田:
実は、寝具は日本人がお金をかけないところで、年間で平均2000円だという話もあります。アメリカが年間平均1万円とも言われているので、比べるとかなり低いですよね。2000円というと枕や布団のカバーくらいのお値段ですから。

たとえば、マットレスや枕を何年も替えないという方は非常に多いです。
寝具の専門店でも、枕などは2、3年で買い替えることが勧められますが、もったいないと思ってくたびれた枕を使い続けていたりしますよね。本当に睡眠を改善するのであれば、やはり専門店のスタッフさんのアドバイスには従ったほうがいいと思います。

また、快眠グッズを選ぶときは、機能面をしっかり見ることは大事です。
たとえば、「光目覚まし時計」というものがあります。これはその時間になると朝日と同じくらいの強さの光で目覚めをサポートしてくれる時計です。

光の照度の単位はルクスといいますが、太陽の光は晴天なら10万ルクス、曇りの日でも5万ルクスで、セロトニンの分泌に必要な照度は2500ルクス以上だと言われています。一般的な室内照明は、だいたい500~1000ルクス程度で、比較的照度が高いコンビニでも1500~2000ルクスくらいです。

光時計は2500ルクス以上の光が出るというのがポイントなのですが、実は、その十倍の25000ルクスの照度がある光時計でも、光源30cm離れると2500ルクス程度になってしまうんです。
「朝の快適な目覚めに2500ルクスが必要」ということをご存知の方は多くいらっしゃるのですが、30cm離れただけ光が10分の1程度に弱まることまで知っている方は少ないかもしれません。先ほど、知識が大切という話をしましたが、こうした快眠グッズの機能についての正しい知識も知っておいてほしいところです。

★ 生活に取り入れやすい「3つの睡眠改善法」

――睡眠改善法として、生活習慣に取り入れやすいものを3つ挙げるとしたらどのような方法があるでしょうか?

竹田:
まず、「できるだけ光を浴びるようにする」ことですね。
朝、光で起きるようするのはもちろん、通勤通学中もできるだけ日の当たる道を歩くようにする。寝室に朝日が入ってくるのであれば、布団やベッドの配置を光が浴びられる場所に移すのもいいと思います。

二つ目は、「夕方以降を薄暗くする」ことです。
夕方以降に暗い環境に身を置かないと、睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されにくくなります。なので、日中は明るく夕方からは薄暗くというのが睡眠にとっては大事です。

夕方以降の明るさは、イメージとしてはホテルの暖色系の照明です。
ホテルってけっこう薄暗いですよね。ご家庭でも蛍光灯の白い光を暖色系の間接照明に変えるだけで環境は大きく改善されます。難しいようであれば、いくつかある蛍光灯のひとつを消すとか、照明の紐を引いて、照明を一段階下げるといった工夫をしてみるといいと思います。

三つめは、「眠れなくても許す」ことです。
私の小さい頃を振り返っても、眠れないことに対するこだわりが強すぎたせいで悪循環になっていた部分がありました。眠れないことを許すだとか、お酒の飲みすぎや夜ふかしなど、睡眠に悪いことをしても許して受け入れることは、心の問題として大事ですね。

生活習慣を変えようとすると、どうしても「間違ったことをしてはいけない」というイメージにとらわれすぎてしまいがちですが、いい意味でのゆるさは必要だと思います。考えすぎると眠れなくなってしまうこともあります。
睡眠は、身体的、精神的、環境的な要素で成り立っているので、どの要素が自分の睡眠に大きく作用しているはがわかりにくい部分もあると思います。なので、ひとつひとつできることを試していってほしいですね。

――最後に、不眠や寝つきの悪さなど、睡眠について悩みを抱えている方々にメッセージをお願いします。

竹田:
まずは正しい睡眠の知識を持ってもらいたいと思っています。
その上で、睡眠には「これだけを食べていたら眠れる」とか「この道具を使えば100%眠れる」といったウルトラCの技があるわけではないので、正しい知識の下、日常の生活の中で自分に合ったものを試していってほしいです。

あとは、なるべく日の光に当たるとか、寝る前にカフェインを摂らないといったことは、絶対にやれないことではないと思うんです。一発逆転の大技はないですけれど、ちょっとした小技の積み重ねをしていくことが大切だと考えています。

(了)

BOOK DATA 書籍情報

プロフィール

著者: 竹田 浩一 (たけだ・こういち)

1982年、熊本県熊本市生まれ。ムーンムーン株式会社 代表取締役。
睡眠改善インストラクターとして、不眠症に悩む多くの人の相談に乗っている。
著者が開発した光目覚まし時計は、楽天・アマゾンの部門ランキングで1位を独走するなど大きな反響を呼んでいる。また、日本テレビ「スッキリ」、TBS「Nスタ」、NHK「サキどり」でも取り上げられたほか、新聞や雑誌などの1000を超えるマスコミ媒体で特集され注目を集めている。

監修: 坪田 聡 (つぼた・さとる)

1963年生まれ。医師、医学博士。
雨晴クリニック副院長。日本睡眠学会、スポーツ精神医学会、日本医師会所属。 ヘルスケア・コーチング研究会代表世話人。

目次

  1. 第1章 「快眠」は朝の目覚めで決まる!

  2. 第2章 「快眠」と体内時計のメカニズム

  3. 第3章 体内時計のリズムをマネジメントする

  4. 第4章 自分の「おやすみスイッチ」を見つけよう

  5. 第5章 どうしても眠れないときの秘策

  6. 第6章 快眠でハッピースパイラル

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