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アマゾンへのリンク『「歯みがき」するから歯は抜ける』

「歯みがき」するから歯は抜ける
  • 著者:
    大岡 洋
  • 出版:
    現代書林
  • 定価:
    1300円+税
  • ISBN-10:
    4774516651
  • ISBN-13:
    978-4774516653

――本書の解説――

毎日ブラッシングしていても…口臭の原因「歯周病の」怖い現実

「全世界で最も患者が多い病気は歯周病である。地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」

とギネスブックに認定されるほど、現代人にとって大敵となっている歯周病。口臭の原因となるばかりか、放置すると歯周組織が破壊されやがては歯を失う原因になるということ、だからこそ日々のケアが重要なことは、今や多くの人が知っているはずです。

毎日ブラッシングをしていても…歯周病の怖い現実

しかし、親知らずを含めて32本もの歯が生える口の中を、食べカスや汚れを残すことなく完璧にブラッシングするのは難しいことです。毎食後欠かさずやっている人でも、全ての歯をきちんとブラッシングできているとは限りません。

上記のことは『「歯みがき」するから歯は抜ける』(大岡洋著、現代書林刊)に書かれていることだが、この本によると、お風呂で体を洗う順序が人それぞれ決まっているように、ブラッシングについても「自分のスタイル」や「クセ」が定着しやすいそう。

つまり、「ある歯については毎日ブラッシングするけど、別のある歯は毎日やり残す」ということがありえるということ。毎日ブラッシングをしているのに虫歯があったり、歯周病になったという人は、自分のブラッシングのクセを見直すべきかもしれません。

正しいブラッシングとは?

ではやり残しを作らないコツとはどのようなものでしょうか。

本書では3つのポイントが明かされています。

  • 1.奥歯から始める

    「どの歯からブラッシングするか」はその人のクセがもっとも出やすいところ。オススメは奥歯から。前歯から始めてしまうと行ったり来たりが多くなり、動きに無駄が多くなってしまいます。

    基本は端の歯から始めて、反対側の端まで。
    上の歯の外側を奥歯から始めて反対の奥歯まで。次は上の歯の内側を、今度は戻ってくるように奥歯から逆の奥歯まで。さらに上の歯の下側(噛む面)を奥歯から奥歯まで。

    このように、歯ブラシの移動はできるだけシンプルにする方が、歳をとって手の筋肉が衰えた後のことを考えるとベターなようです。

  • 2.歯肉の境目をゆっくり「揺らす」

    また「ブラシを入れるべき場所」と「ブラッシングの圧」も重要です。

    ブラシの位置は「歯肉と歯の境目」が基本。ここは舌や頬による自浄作用が効かず、汚れがたまりやすい場所です。

    そして、この部分を弱い圧で繰り返し時間をかけてブラッシングするのが正解。
    これによって、歯周病だけでなくむし歯の予防にもつながります。

    歯には凹凸があるため、ブラシを横に勢いよく動かしても窪んだ場所の汚れは取れません。だから、ブラッシングしたい場所にブラシを位置づけたら、その場で1mm~2mm程の振幅で小刻みに揺らすようにブラシを動かす方が、奥まった場所の汚れが取れやすくなります。

    また、このブラッシング方法には、血管の集合体である歯肉をマッサージすることになり、歯肉を引き締める狙いもあります。

    本書によると、一か所につき20~25往復が目安で、数mmずつ移動して同じことを繰り返すのがポイント。時間がかかる方法ですが、全ての歯をしっかりブラッシングできます。

  • 3.鏡を見ながらブラッシングする

    全部の歯を確実にブラッシングするためには、鏡でブラシの当たり方を確認しながら行うことが不可欠。

    「ブラッシング」は手の筋肉運動であり、生活習慣による影響を受けやすいもの。鏡を見ずに感覚に頼ってしまうと、元々自分が持っているクセに戻ってしまいやすくなります。正しいブラッシングをキープするために、鏡によるチェックが大事なのです。

    日常的に鏡で口の中を見ることになるため、口腔の異常に気づきやすいというメリットも。

    長時間のブラッシングになりますから、洗面台の前に立ってブラッシングするのではなく、ソファーなどに腰かけてリラックスした姿勢で、鏡を持ってブラッシングを行うのがおすすめです。

    また、必ずしも毎回時間をかけてブラッシングをする必要はありません。一番重要なのは、口の中の唾液量が減って細菌が増えやすい就寝中に備えた寝る前のブラッシング。ここは時間をかけて念入りに行いつつ、慌ただしい朝や昼は簡単なブラッシングにとどめるというスタイルでもOKです。

正しいブラッシングのフォームや、重点的にブラッシングすべき場所、そしてやり残しをなくすための道具など、本書では口の中を健康に保つために必要な知識をイラスト入りでとてもわかりやすく解説しています。さらに、本の中で書かれている方法をすぐに実践できるよう、毛先に特徴のあるブラシが付録で入っています。

歯周病は本人が気づかないまま進み、自覚する頃には取り返しのつかない状態になっていることが少なくない病気。「自分は大丈夫」と慢心せずに正しい口内ケアを学んでみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)

――インタビュー――

正しいブラッシングとは?

著者写真

――「歯みがき」するから歯は抜ける』についてお話を伺えればと思います。まずこの本で大きく取り上げられている「歯周病」についてですが、成人の8割がこの病気にかかっているという恐るべき指摘がされています。

大岡:そうですね。これは日本に限ったことではなくて、全世界的にいえることです。

歯周病は数年前からアメリカでも「サイレント・エピデミック」(沈黙の疫病)として報告されているんですが、症状があまり自覚できず、蔓延しているから皆さん気づかないんです。

―― 歯周病は自覚症状が出づらいとのことですが、どのような症状から気づくことが多いのでしょうか?

大岡:一番多いのはブラッシングをしている時の出血ですね。

―― 血が出るくらいでは、放置してしまう人も多そうですね。

大岡:その通りです。それがまた問題で、だいたいの人は血が出たら怖くなってその部分にブラシを当てるのを避けるんですよ。これが余計に進行を早めてしまうことにつながります。

―― 歯周病はどのように進行するものなのでしょうか。

大岡:歯周病の進行は階段状です。たとえば、しばらく症状が落ち着いたかと思うと、大きな病気をしたり、体調を崩したりして、免疫力が落ちたタイミングでガタッと次の歯周病のステップに進む。徐々に進行するのならどこかで本人もわかるのでしょうが、症状の「踊り場」を経て、あるタイミングで急に悪化するから、対応が遅れやすいんです。

―― 早期に気づく方法はないのでしょうか。

大岡:定期的に歯科医院に行って検診を受けるしかないと思います。ただ、歯周病にしてもむし歯にしても、自覚症状がなかったり軽かったりする時間がすごく長いんですよ。むし歯であれば症状がひどくなって、進行の最終局面になるまでに3年くらいはかかりますし、歯周病はもっと長い時間がかかる。

なので、患者さんが自治体の検診で来られて、口の中を診ると5、6本むし歯が見つかったりする。だけど、本人は自覚症状がないから、それを伝えると「そんなわけがない」といって怒ってしまうケースがあるんです。歯周病についても同じことがいえます。

これとよく似ているのが癌(ガン)なんです。癌はいかに早期発見できるかがその後の治療の鍵になる病気なのですが、やはりはっきりした症状が最後の局面になるまであらわれないことが多い。それで顔色が急に悪くなったりだとか、突然痩せたりということがあって、びっくりして病院に行くと末期だったということが起こりうるわけです。

ただ、癌の場合は要因になることがたくさんあるため予防の手立てが難しいのですが、むし歯や歯周病というのは口の中の汚れをコントロールできさえすれば予防できます。そこが癌との大きな違いで、この本では効果的にそれを行なうための方法を紹介しています。

―― おっしゃるように、今回の本では口の中の汚れをコントロールするための、効果的なブラッシングの方法が取り上げられています。ブラッシングについて、よく目にするのが「歯周ポケット」の中の汚れを掻き出すことができるという歯ブラシの広告です。個人的にはあれは本当に可能なのかという疑問があります。

大岡:結論からいえば難しいでしょうね。毛先が細くなっているタイプの歯ブラシが今流行っていますが、あれは結果的に歯肉を引っかいて傷つけるだけになってしまうことが多いんです。これだとかえって歯肉が下がってしまうことになりやすい。

歯周病の予防のアプローチとしては、血管の集合体である歯肉をマッサージして引き締めることによって歯周ポケットの中の汚れを出やすくするというのが正解です。

―― その他歯周病について広まっている間違った情報がありましたら教えていただきたいです。

大岡:たくさんあるのですが、一番大きいのは「歯周病は加齢変化だから、年を取ったら歯を失うのは仕方がない」というものです。これは間違いですね。

―― そうなんですか? 私も仕方がないと思っていました。

大岡:この誤解の根本にあるのは「歯周病は歯肉の病気である」という考え方です。テレビのCMでも歯肉がぐしゃっと潰れて歯が抜け落ちるアニメーションが流れていますからそう思い込む方は多いのですが、これは正確ではありません。

正確には、歯周病は「骨の病気」なんです。というのも、歯を支えているものは歯肉ではなく、その内部にある骨です。歯肉はというと、その骨の周りに乗っているカバーのようなもので歯を支えているわけではありません。

骨というのは細菌やウイルスにすごく感染しやすい特徴があって、外界に露出すると問題です。だから、通常、骨は皮膚や筋肉に守られて外界には出ないようになっていますが、口の中は別で、歯を介して骨と外界が間接的につながっています。

―― ということは、歯が植わっている顎の骨は細菌などに感染しやすいということですか?

大岡:そうです。じゃあ何が感染を防いでいるかというと、歯肉の接点部分が防いでいるんです。ここでバリアして、細菌が骨にいかないようにしている。

だから、きれいにして歯肉の状態を安定させておけば、歯周病の症状は悪化しません。そして、歯肉の代謝能力というのは、実は20歳でも80歳でもさして差はありませんから、歳をとっても歯肉をいい状態に保つことは可能なんです。

食事のたびに歯は溶けている?食後すぐの歯ブラシは是か非か

著者写真

―― 歯ブラシに関しては「食後すぐにやるべきだ」「いや、すぐやるのは良くない」と、相反する両方の説を聞きます。どちらが正しいのでしょうか?

大岡:「食後すぐ歯ブラシをしなさい」とする説の根拠になっているのは、口の中のpH(酸とアルカリのバランス)です。

通常口の中はpHが「7」くらいで、だいたい中性なのですが、食後すぐはこの数値が下がって酸性になり、時間が経つと唾液の作用でまた中性に戻ります。食事をするごとにこれが繰り返されるわけですが、食べた直後数分間は酸性になるんです。pHが「5.5」を下回ると、酸によって歯が溶かされてしまう。だから、食べたらすぐにブラシをして、酸性になっている時間を減らした方がいいですよ、というのが「食後すぐ歯ブラシをしなさい」とする説の理屈です。

ただ、この説には問題があって、食事は一瞬では済ませられませんよね。つまり、食べている間はずっと口の中は酸性になってしまう。だから、食後すぐに歯ブラシするのは、理論上酸性になっている時間を減らすことにはなるのですが、実際はある一定の時間は口の中が酸性の状態になってしまうんです。

―― なるほど。

大岡:一方で、唾液には歯をコーティングする成分が含まれていて、そのコーティングには20~30分かかる。食後すぐに歯ブラシするのはそのコーティングを剥がしてしまうことになるから良くないという説も近年出てきています。

この二つは相反するものですが、どちらが正しくてどちらが間違っているという話ではないと個人的には思っています。どちらも起こりうることなんです。

だから、ブラッシングのタイミングについて正解はないと思いますが、物を食べれば口の中に汚れがつくというのは事実ですし、これを放置すれば唾液が減る睡眠中に細菌が繁殖しやすくなってしまうというのも事実ですから、タイミングはどうあれ少なくとも夜寝る前には口の中をきれいにしましょうね、というのが今回の本で伝えたかったことです。

―― 印象的だったのが、手のクセによってブラッシング時に「得意な場所」と「苦手な場所」ができてしまうという点です。

大岡:食後の「歯みがき」は誰もが物心ついたころからやっていることです。それをどうやって覚えるかというと、親や兄弟、テレビCMなどがやっているのを見て「ああ、こうやるんだ」ということで、何となく身につけていく。

見よう見まねで会得した習慣を手の筋肉が記憶しますから、得意な場所はきれいに歯ブラシを当てられるけど、苦手な場所はいつもやり残したまま何年も経過するということになりやすいんです。これも歯周病やむし歯が悪化する原因の一つです。

―― この他にブラッシングについての注意点はありますか?

大岡:歯磨き粉を過信しすぎないことですね。おそらく90%以上の日本人は歯ブラシに歯磨き粉を使っていると思うんですけど、歯磨き粉に何らかの予防効果があるのなら、みんなこんなに歯のことで苦労していないですよ。

歯磨き粉でありがちなのが、口の中がさっぱりして「キレイにしたつもり」になってしまうことです。きちんとしたブラッシングができていないのに、ミントの効果でそれがわからなくなってしまう。また、本来は鏡でブラシが当たっている場所を確認しながらやるべきなのに、泡のせいで見えにくくなってしまう点も注意が必要です。

―― 歯磨き粉については、歯が白くなるという見た目の効果のために使っている人が多いような気がします。

大岡:広告で謳われているほどの効果があるかは疑問ですが、歯の表面をきれいにするという目的で歯磨き粉を使うのであれば、それはそれでいいと思います。
ただ、それはむし歯対策や歯周病対策とは別物と考えるべきです。

―― 大岡さんの推奨するブラッシング法は歯磨き粉を使わず、汚れの溜まりやすい歯と歯肉の際の部分にブラシをあてて、歯肉をマッサージするようにブラッシングするというものです。効果的に思える一方ですごく時間がかかりそうな方法ですが、だいたい何分くらいかける目安でやっていけばいいのでしょうか。

大岡:私は「何分くらいで」ということは患者さんには言っていません。作業の早い遅いには個人差がありますし、残っている歯の数も人によって違います。ただ、歯が全部残っている人に限っていえば、少なくとも20分以上はかかるのではないでしょうか。

この本で紹介しているブラッシング方法の唯一の欠点は時間がかかることです。歯や歯肉を傷つけずマッサージするように弱い力で回数をかけて行なうという方法ですから、これはもう仕方がない。
肩の筋肉をマッサージする場合を考えてみてください。仕事量が同じなら、弱い力で長い時間かけた方が気持ちよく感じると思います。歯肉も肩の筋肉と全く同じことを望んでいて、弱い力で回数、つまり時間をかけてほしいのです。
過剰なブラッシング圧は歯と歯肉を傷つけるだけでなく、マッサージ効果も見込めません。これは電動歯ブラシも同様でして、その性能に過信しすぎないことが重要です。
ただ、その代わりに「1日1回」でいいということもお伝えしたいです。夜寝る前のブラッシングだけは時間をかける。私は毎食後中途半端に「歯みがき」するよりも、細菌が繁殖する睡眠中に備えて、寝る前にしっかり「ブラッシング」をして汚れを取ってあげるというスタイルの方が、むし歯や歯周病の予防には効果的だと考えています。

―― 最後になりますが、歯周病やむし歯など口内のトラブルに悩む方々にメッセージをお願いいたします。

大岡:口の中の病気(むし歯、歯周病)になりやすい場所と、汚れがつきやすい場所は一致しています。ですからブラッシングではそこをターゲットにすべきで、この本ではそのための方法を紹介しています。

それと、歯肉は清潔に保っていれば老化によって衰えるどころか、年齢に関係なく健康な状態にできるのです。ですから、「歳を取ったら歯周病になるのは仕方がない」と諦めずに対策をしていただきたいというのが、一番伝えたいことですね。歯周病もむし歯同様、予防可能な病気なのだと。
(新刊JP編集部)

――書籍情報――

目次情報

  1. 【第1章】 むし歯ゼロの人ほど危ない歯周病
  2. 【第2章】 むし歯と歯周病の意外な共通点
  3. 【第3章】 一日一回のブラッシングでむし歯・歯周病を防ぐ
  4. 【第4章】 アメリカの歯科医療はこんなにシビア

プロフィール

大岡 洋

大岡歯科医院代表。
1991年、慶應義塾高等学校卒業。1997年、東京歯科大学卒業。
1997~2002年、ハーバード大学歯学部・公衆衛生学部大学院(予防歯科学専攻)修了。
日本人歯科医師として初めて予防歯科で理学修士(Master of Science)を取得。
2003年、東京都品川区の大岡歯科医院(目黒診療所・中延診療所)の3代目として代表に就任。
同年より東京歯科大学非常勤講師(歯科補綴学)として後進の指導に従事している。慶應義塾大学特選塾員。

【資格】

厚生労働省臨床研修指導医

【所属学会】

国際歯科学士会(I.C.D)会員
アメリカ歯周病学会(A.A.P.)会員
日本歯周病学会会員
慶應義塾大学歯科三田会会員

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