INTERVIEWインタビュー
会議・ミーティングがうまくいかない3つの理由
――『みんなが自分で考えはじめる 「15分ミーティング」のすごい効果』について。まずはタイトルにある「15分」という時間の意味について教えていただきたいです。
矢本:
この本で私が提唱しているミーティングは、会社で上の方にいる人たちが集まってするものというより、現場で働く人が中心になってするものを想定しています。
売上を作ったり、お客さんと直接接しているのは現場の人なので、どんなに会社の上の方で会議をやって意思決定しても、現場の人が主体的に仕事に取り組まないと、業績はなかなか上がりません。じゃあそのためにどうすればいいのかと考えた時に、現場のミーティングを活性化するというのが一つある。
でも、シフトで動いている職場もあるでしょうし、仕事前にいろいろな雑務があってなかなか全員が揃わない会社もあるはずです。もちろん日常業務も忙しいですから、全員集まって何時間も会議をするというのは現実的ではないでしょう。世の中的にも時短の流れですしね。
そうした状況で、職場の問題点への解決策を取りまとめて合意形成できる話し合いに使える時間、気軽に始められる時間として15分が一つの目安だと思ったんです。ただ、きちんとしたパターンで15分話ができれば、数分の日常会話でもできますし、それが1時間になってもできるはずです。逆にそれができていなければ1時間やっても2時間やっても実のあるミーティングにはなりません。
この本は15分という限りある時間のなかで、全員にとって実のあるミーティングをするための、コミュニケーションのパターンについて書いています。
――ということは、対象としては現場を預かるリーダーの方に向けて書かれたわけですか。
矢本:
そうです。もともと起業前の僕がそうでした。企業の中間管理職の方もそうですし、飲食店の店長もそうですし、現場で働く人をまとめて意見を集めたり、発言したりといった立場の人の応援をしたくてこの本を書きました。
――これまで多くの企業でミーティングのコンサルティングをされてきたかと思いますが、会議やミーティングに関する悩みというのは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
矢本:
ミーティングや会議がうまくいかない原因は大きく分けて三つあります。
一つは「アイデアが出ない」で、誰からも意見が出なかったり、出てきても一つか二つ変わりばえのしないものが出てくるだけという。
二つ目は、「アイデアは出るけどうまくまとまらない」。たくさん意見が出た中でどれを選ぶかというところで、皆の合意形成が上手にできない。
三つ目は、「合意形成まではいくけども、決めたことが実行されない」で、これは決まったことが行動に移されなかったり、なかなか続かなかったり。
ミーティングや会議がパフォーマンスにつながらない理由は基本的にこの三つです。これらの解決法をこの本の中で書いているので、心当たりのある方は参考にしてみていただきたいですね。
――いち労働者としてミーティングで感じる疑問や違和感への解決策が網羅されていました。たとえば、「提案した本人がやるという法則をやめる」です。いい意見を持っていても、提案して採用されたら自分の仕事が増えるだけです。これでは、意見があっても提案しにくくなってしまいます。
矢本:
提案した本人が一番イメージや危機感を持っている可能性が高いので、本人が実行するのはまちがったことではないのですが、それだとどうしても特定の優秀な人だけが仕事をたくさん抱えることになります。
その結果、その人がボトルネックになって仕事が回らなくなったら元も子もないわけで、そうならないためにも担当者を本人の他にもう一人つけるとか、場合によっては本人ではなく違う人を担当にするのは大事なポイントだと思います。
「経験則」がリーダーの視野を狭くする!
――会議やミーティングで起きがちな問題ということですと、採用されるアイデアそのものの良し悪しよりも発表したメンバーの日頃の影響力によって決まってしまうというものがあって、これだと他のメンバーが不満を溜めてしまうことにもつながります。これを避けるためにミーティングをファシリテートするリーダーはどのようなことをすべきでしょうか。
矢本:
確かに、意思決定の段階でリーダー本人の意見であったり、部下の中で一番パフォーマンスの高い人の意見が通りやすいというのはよくあります。
ただ、そういう風に偏ってしまうのでは、他のメンバーを集めた意味がありませんよね。リーダーとその部下と二人で話せばいいだけなので。それに、経験上の話ですが、切り捨てた意見が十個あったとして、第三者(僕から)から見ると一つか二つはいい意見が入っているものです。そして、こういう意見はおうおうにして、リーダーの思い込みや偏見によって切り捨てられている。
だから、私はメンバー全員から意見が出たら、まずはその中から三つくらい選んでくださいと本の中で書いています。自分の意見を選ぶのもいいですし、信頼している部下の意見を選ぶのもいい。でも最後の一つは他のメンバーの意見も、本心ではあまりいいと思わなくてもあえてチャレンジしてほしいんです。
――なぜですか?
矢本:
経験則があることでかえってリーダーの視野が狭くなっていることが多いんです。自分がいいと思う意見や信頼する部下の意見以外のものを一つ選ぶというのは、メンバー間の公平性を保つことだけではなく、リーダーの視野を広げる意味もあります。
実際に行動するのは部下です。確率論でいえば、経験と実績のあるリーダーが判断するのが正解かもしれませんが、プレーヤーとして実績を残していてもリーダーとしてうまくいっていないなら、その意思決定の仕方を少し疑った方がいい。そこに気づかないと何度ミーティングをしても状況は変わりません。
――「15分ミーティング」を取り入れることで社風が変わると書かれていました。この理由はどんなところにあるのでしょうか。
矢本:
ミーティングがうまくいかないのは、端的にいえばコミュニケーションのパターンに問題があるんです。
よくあるのが、何か問題があったり、うまくいかないことがあると「なんでそうなるの?」という形で、過去の出来事を詰問するような問いかけをしてしまうケースです。責任追及のパターンですね。
これがうまくいかなくなる分岐点で、コミュニケーションの悪いパターンです。この問いかけをすると、問われた方も自己防衛の気持ちがはたらきますから、つい言い訳めいたことが口に出てしまいます。これでは無意味ですよね。
ミーティングにしても会議にしても、実施する目的は「より良い今後(未来)を想像するため」にあるのです。だったら問いかけも「今後どうすればいいか」と未来を向いた形にすべきなんです。何かあった時に詰問されるか、今後どうするかという前向きな話をされるかによって、同じ人でもその時の思考回路と答えは変わります。それを繰り返せばその人の数年後の成長力はまったく違います。
こうした前向きなコミュニケーションが常にできればいいのですが、「明日から全ての会話を変えてくれ」といっても急には難しい。でも、ミーティングの15分間だけならできるはずです。ミーティングによって未来視点のコミュニケーションが習慣化できれば、いずれ普段のコミュニケーションにもそれは広がっていき、そうすればミーティングのメンバーではない人にも影響を与えられるでしょう。その結果として会社全体のコミュニケーションパターンが未来視点になる。これが「社風が変わる」の真意です。
――最後になりますが、ミーティングや会議がうまくいかないことに悩んでいる人にアドバイスやメッセージをお願いします。
矢本:
ミーティングも会議も普段の職場の会話も大切な基本は同じです。まず自分達はどこがうまくいっていないのかを見極めることです。
質問の投げかけがまちがっていて、アイデアや提案が出にくくなっている、または提案を言える空気が作れていないことが問題なのか。
それとも、意見は出るけども実は影で文句が出る、つまり合意の方法が間違っているのか。
あるいは決めたことを実行するところがうまくいっていないのか。
うまくいかない原因は基本この三つに集約されます。そしてこの本にはその解決法が詰まっています。職場と照らし合わせて参考にしてみていただくとわかりやすいはずです。
考え方としては、繰り返しになりますが「なぜ?」と過去を見るのではなく「今後はどうする?」と未来を向いた議論をしていただきたいと思います。
そして「他の人がもっとこうしてくれたら」と周りのせいにするのではなく、ミーティングの中でまず「自分(達)ができることは?」を考え、行動すること。
「未来視点」で「自分(達)ができること」を考える習慣が定着すれば、その組織に起きている問題は必ず解決されます。未来は自分と仲間との考動で必ず良くなると信じて話し合って(ミーティングして)もらいたいですね。
(新刊JP編集部)