インタビュー
顧客と営業マンはWin-Winになりえるか?
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『即決営業』について、「顧客に先延ばしを許さずその場で契約させる」という積極性には驚きました。堀口さんがこのスタイルになったきっかけがありましたら教えていただきたいです。
堀口:僕は22歳から営業を仕事にしているのですが、最初の頃は「お客様とは分かり合える」と思って営業していました。つまり、自分の気持ちやスタンスをお客様は理解してくださると思っていたんです。
でも、元々お客様は営業マンのことなんてどうでもいいんです。むしろ自分の思いや希望を聞いてほしい。
お客様と営業マンの間に「譲り合いの精神」は当てはまらないというわけです。
いくらこちらが、お客様に譲歩したとしても、お客様は一切、譲歩してくれません。
「お客様が我々の気持ちを分かってくれるかも知れない」という甘い考えは捨てるべきなのです。
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うまい解決策を提案できれば商品は売れる、ということでしょうか。
堀口:ところが、そう簡単にはいきません。改善策を提案しても、お客様はいつまでも迷って態度をはっきりさせないことも多い。ほとんどのお客様は常に「買いたい気持ち」と「買いたくない気持ち」の間で揺れていて「あいまい」なんです。
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なるほど。
堀口:この「あいまいさ」に付き合っていたらキリがないということに、あるところで気がついたんです。お客様のペースに合わせていると、いつまでも買うか買わないかという「答え」を出してくれない。それなら、営業マンはお客様に「即決」を迫ることで、背中を押すべきなんじゃないか、ということですね。
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今のお話にもありましたが、「営業先といい関係を築くことができても、売れない」というのは多くの営業マンが悩むところだと思います。「売ること」が営業の目的であると考えると、そもそも「いい関係を築く」こと自体がまちがっているのでしょうか。
堀口:まちがっています。売り手と買い手というのは、「売れてよかった・買ってよかった」という意味ではWin-Winの関係になる可能性がある一方で、「できるだけ高く売りたい・できるだけ安く買いたい」という意味ではWin-Winはありえません。割引したらその分だけ売り手は損をするわけで、つまり、お客様と営業マンは本来的には相反する関係であり、時には敵対する関係なんです。
このことを踏まえて、営業の種類のお話をしましょう。
営業には「友好営業」と「敵対営業」の二種類あります。
「友好営業」というのは、極端にいえば「ペコペコしていれば買ってもらえる営業」です。飲食店ですとか、コンビニ、100円ショップなど、安価な商品を扱うビジネスであれば、このスタイルでも問題ないのですが、30万円を超えるような商品だとそうはいかないんです。
どんなにお客様と営業マンが親しくなって、いい関係を築いても、大金を払うとなったらお客さんは迷うんですよ。決断を先延ばしして、こちらの「契約してほしい」という要求に抵抗するわけです。これが「敵対営業」です。
こういうタイプの営業では、営業マンの側がお客様の抵抗を抑え込むということが時として必要になります。「即決営業」はそのための営業スタイルなんです。
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お客様側の「抵抗」の代表的なものが、契約するかどうかを保留する「考えさせてください」というわけですね。
堀口:そうですね。体よく断ったり、先延ばししたりする時に「考えさせてください」がよく使われます。営業マンはこの言葉を何とかしないと契約を取れません。
スポーツで例えるならば、営業は「社交ダンス」ではなく「格闘技」なんです。「格闘技」では、相手の「抵抗」を前提とした心構えが必要です。こちらの攻撃に対して、相手は抵抗してきますし、逆に攻撃してきます。こちらの攻撃を受け入れてくれる相手などいないのです。
営業も同じく、こちらの「即決してください」を受け入れてくれるお客様は10人中1人いるかいないかです。高額商品を売る場合、お客様は、こちらの「即決してください」に対して「考えます」と言って「抵抗」してくるものなのです。
ですので、「話せばわかってくれる」とか「相手に好かれよう」というスタンスではなく、
「相手の主張を抑えこむ」というスタンスが重要なんです。つまり、お客様の「考えます」を抑えこむスタンスであるべきなんです。
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堀口さんが提唱している「即決営業」に向いている商品の例をいくつか教えていただけますか?
堀口:訪問販売系は向いていますね。具体的には生命保険ですとか、不動産、学習教材などの営業にも有効です。
「即決営業」のスタイルを学んでいくことで、お客様に対して変に下手に出ずに、きちんと交渉できるようになるんですよ。つまり、お客様の要求を聞きつつ、自分の要求も主張できるようになる。
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「必ずその場で契約を取る」と決めてしまうと、商談の中での駆け引きの幅を狭めてしまうような気もしますが、そのあたりはいかがですか?
堀口:「必ずその場で契約を取る」といっても、「勝負のタイミング」は職種や相手によって変わってきます。
たとえば、僕は十年前から学習教材を売る営業をやっているのですが、どうやってアプローチするかというと、まず電話をかけます。ただ、そこでは売り込みはせずに、「案内状を送らせてほしい」とだけ伝えるんです。そして、了承してくれた人に案内状を送る。
送ってから三日後くらいしたら、「案内状は見ていただけましたか」ともう一度電話します。そこで、「一度、無料説明を受けてみてください」と伝えます。それで会うことになった人にプレゼンテーションをするのですが、そこではじめて勝負です。
飛び込み訪問の場合は最初の接触で勝負しないといけないでしょうし、職種によって勝負のタイミングはさまざまです。「即決営業」というのは、その勝負のタイミングでお客様に決断させる、ということですね。
ペコペコしない、下手に出ない「強い営業マン」になる方法
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本書では、勝負のタイミングで顧客に決断を先延ばしさせないためのスキルが多く取り上げられていますが、実践すれば売れるだろうと思う一方で、実践するには相当にタフなメンタリティが必要だろうと感じました。顧客に対して下手に出ずに、しっかりと要求を主張できるメンタルはどのようにすれば手に入るのでしょうか。
堀口:営業マン自身が「話の前提」を理解することです。
まず、営業マンの基本的な仕事は、「無料説明」です。「無料説明」とは、お客様に自社の商品を説明しに行くことです。ただ、お客様側から見れば、この「無料説明」は「無料」なのですが、我々営業側から見れば「無料」ではありません。人件費や交通費、販促資料にもお金がかかっているわけです。お金と時間をかけて、相手の悩み事の解決策を話しに行く。これが我々営業側から見た場合の「無料説明」です。
そして、この「無料説明」の「前提」が、「話を聞いて、もし気に入ったら契約してね」というものです。大げさに言えば「あなたの悩みを解決するための話を無料でしてあげます。ただし、気に入った場合は契約してね」というのが、「無料説明」の「前提」なんです。
ですので、この「前提」からすれば、「お客様は話を聞いたからには、答えを出さなきゃダメ」ということになります。
もちろん、話を聞いてみて、商品やサービス内容が気に入らない場合は断ってもらっても構いません。欲しくないものを買う必要はありませんから。ただ、「考えます」は答えじゃないという認識を、営業マンの皆さんに持っていただきたいのです。
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確かに、顧客側は営業マンの目的が「売ること」だというのを忘れがちです。
堀口:今お話したことを理解して、「大義名分」として持っていられるようになると、営業マンは強くなりますし、契約を取れる営業マンのオーラが出てきます。
そうなると、お客様に「考えます」と言われた時に「何言ってるの?」という雰囲気を出せるようになるんですよ。「納得できない」という雰囲気です。これが大事なんです。「無料説明の前提」が理解できていない営業マンは、「考えます」と言われると、困った顔をする。こうなるともうお客様より下になってしまいます。
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「考えさせて」といって契約を先延ばしにするというのは、商談の場ではよく起こりうることだと思います。この先延ばしはいかなる場合でも拒否するべきなのでしょうか。「即決」というスタイルをどこまで貫くべきか、という点をお聞きしたいです。
堀口:いかなる場合でも拒否すべきだとお伝えしたいですね。
短期的な視点で見れば「売り上げを立てるためにも、あの時は保留にしておくべきだった」ということもあるかもしれません。ただ、一番大事なのは営業マン自身が強く正しくいることができるか、ということです。
一度「保留」を許すと、だんだんそれが癖になっていきます。「即決営業」を自分のスタイルとして取り入れたのであれば、そのスタイルを貫いて「保留を許さない営業」というスタイルをまっとうすべきです。実際、長い目で見ると、その方が成約率がいいんですよ。
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最後になりますが、売り上げ不振に悩むセールスマンの方々にアドバイスやメッセージがありましたらお願いいたします。
堀口:お客様の「考えます」という一言をいかに攻略するか。そこに尽きると思いますね。
人は悩むからこそ成長できるものです。日本人の特徴として、成長しようとするとセミナーに行ったり、学校に通ったりと、とにかく「教育」を受けたがる人が多いのですが、人を成長させるのは教育ではなく、競争と逆境です。
営業という仕事はまさに競争と逆境の世界で、自分を成長させることができる仕事です。ぜひトップセールスを目指して「即決営業」のスタイルを身につけていただきたいですね。