『モヤモヤが一気に解決! 親が知っておきたい教育の疑問31』
社会が抱いている教育への疑問
鬼頭: 石井さんは様々な経歴をお持ちでいらっしゃいますけど、現在はどのような活動をされているんですか?
現在は主に、自分の力で社会を良くしていこうとしている人たちを応援する活動をしています。例えば「子ども食堂を開設したい」という方に、「まず場所が要りますね」とか「こういう集客をしなければいけませんね」といったような助言を出す事です。
鬼頭: そこから、「モヤモヤが一気に解決! 親が知っておきたい教育の疑問31」の執筆に至ったのですか?
初めは本を書くつもりはなかったんですけど、活動していく中で、色々な教育に関する相談を受けるようになりまして……。中でも驚いた相談は、「学校の先生に子供を塾に行かせない理由を問われた」というものでしたね。それほど社会全体が教育に対して疑問を持っているんだと感じました。そこで、自分の考えだけではなく、客観的なデータをきちんと示して説明しようと思ったのが、今回の執筆のきっかけです。
鬼頭: なるほど。私も今子育中なのですが、そう言われてみると最近の学習指導要領について、きちんと把握していないような気がします……。
「学習指導要領」の変化について
石井: 学習指導要領については、私の世代が子供の時と比べると、大きく変化してきている点があります。昔は大量生産をするにあたり、言われたことを言われた通りにこなして、規格通りのものを作る人材を育てることが、教育の目的の1つとされていました。ですが、今やそういう作業は機械がほとんどやってくれます。ですので、これからは機械にはない臨機応変さや、イレギュラーな事態への対応、またそれらに対して自分自身の考え方を発信できる人間を育てようという方針に変わってきているんです。
そのような人間を育てるために、具体的にはどのような指導が取り入れられていくんでしょうか?
石井: 1つは、2020年から大学入試センター試験がから新たな形に変わる事ですね。今までの問題形式に、例えば「著者の考えが表れている部分を10字以内で抜き出せ」といったような問題がありましたが、今後は、「50字以内で要点をまとめるとともに、自分ならどうするかを記述しなさい」という形式の問題が考えられます。客観的にどうやって採点するのかについては大きな議論となっていますが、着実に発展的な方向へ向かっているように思います。
鬼頭: 逆にその方向性の問題に対しては苦手意識をもってしまう子供も出てくると思うんですけど、自分自身の考えを発信出来るようになるには、どのような教育が求められるのでしょうか?
そうですね。子供に自分の考えを持つ力を養わせるためには、とにかくあらゆることに興味を持ってもらうことが一番効果的だと思います。
鬼頭: なるほど。子供が自分から積極的に伸びていけそうな方法ですね。
ですので、「言われたことをやりなさい」と教育するのではなく、子供の引き出しを増やしてあげて、やる気を高めてあげることが大切だと思いますね。
「ラーニングピラミッド」に基づく教育方針
鬼頭: 親になるとつい「子供に与えなければ」と思ってしまいがちなのですが、「引き出してあげる」という観点で考えると、教育というのは親が与えるばかりでもないんですね。
そうですね。他にも、アメリカのある機関が紹介している「ラーニングピラミッド」という研究結果が、新しい学習指導要領の核の1つになっています。どのような内容かというと、例えば1つの物事を学ぶ際に、本などを読んで知識を入れるだけだと、その学びは5%しか習得出来ておらず、その学びを実際にデモンストレーションすると、その習得率は一気に60%まで跳ね上がるというデータです。さらに言うと、それを人にレクチャーする事で、習得率は90%にまで到達します。これが何を意味するかというと、学校の先生の教えをただ聞いているだけでは、学びの定着率は極めて低いという事です。これからのAI時代に向けて、こういった様々な研究機関の示唆を受けながら、学びを定着させようという流れが徐々に出来上がってきています。
鬼頭: 今の時代の子供たちは受け身になってしまいがちな環境にあるのかなと思っていたのですが、「自分から発表していく」姿勢になれる教育が広まっていけば、人としてもかなりの成長が期待できそうですね。
確かに最近は、子供たちにとって生きくい客観情勢も存在しているんですよね。例えば、インターネットの普及で便利な世の中にはなったけれど、視力が落ちたり、おかしな情報に触れてしまったり、脳に悪影響が生じてしまう可能性等々、負の側面もあるわけです。しかし、だからといってインターネットやスマホを禁止にしたところで根本的な解決は出来ません。今回の本は、そういった環境とどう向き合いながら生きていくべきかを考えるきっかけや、現状を1つ1つ理解するためのヒントになればいいなと思っています。