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日本で一番売れたCDアルバムの印税は?―【書評】『あの映画は何人見れば儲かるのか?』

1999年にリリースされ、大ヒットした宇多田ヒカルのファーストアルバム「First Love」。売れに売れたこのCDアルバムは、700万枚以上のセールスを記録し、日本レコード界史に金字塔を打ち立てた。さて、そこで気になるのが「宇多田ヒカルは印税でいくらの収入を手にしたのか」ということだ。宇多田ヒカルは自身で作詞作曲もしており、700万枚というからさぞかしものすごい額なのだろう。

 本書は書名である映画業界から音楽業界、そして出版業界のお金のカラクリを「会計」という視点で斬っていく「会計本」だ。華やかな業界をテーマとしているせいか、会計の仕組みがとても分かりやすく頭に入ってくる。

 印税の話を続けると、CDアルバムの売り上げはそっくりそのまま著作者へ手渡されるわけではない。印税は歌い手に払われる「歌唱印税」のほかに、日本音楽著作権協会(JASRAC)を通して作詞家や作曲家、音楽出版社に払われる印税がある。もし、歌唱印税がアルバム1枚売り上げるごとに1%、JASRACからの作詞者及び作曲者として受け取る印税が1枚につき各57円と仮定して試算した場合、700万枚売れた『First Love』で受け取れる印税は約10億円となる。
 10億円を少ないと考えるか多いと考えるかは自由だが、ミリオンセラーが少なくなっているここ最近の状況を見ると「夢の印税生活」は夢のまた夢に思えてこないだろうか。

 この他にも本書には、スタジオ・ジブリの映画やガンダムのグッズ商品展開、ベストセラーを出した出版社が倒産する理由など、ポジティブな話題からネガティブな話題まで、幅広く押さえている。会計の入門として読みたい一冊だ。
(新刊JPニュース編集部)

◆『あの映画は何人みれば儲かるのか?』
著者:松尾里央
出版社:TAC
定価(税込み):1365円
発売中