2カ月で30キロ減に成功した男が語るダイエットの「ウソ」と「ホント」
痩せたい。
体重を落としたい。
ダイエットの方法としてまず頭に浮かぶのは、カロリー制限や運動など。特に「摂取カロリーより消費カロリーが多ければ痩せる」という説は、なんとなく説得力があり、痩せるための「唯一絶対の真理」のように考えられている。しかし、これは本当なのだろうか?
『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』(扶桑社刊)は、巷にはびこるダイエットにまつわる言説のウソを明らかにし、国内外の数々の研究や論文から、より健康的で、より効果的なダイエット法を導き出す。
一読して目につくのは「断糖高脂質食」「旧石器時代」など、見慣れない単語の数々。これらのワードはどうダイエットと結びつくのか。今回は著者であり、自身も2カ月で30キロの減量に成功した金森重樹さんにお話をうかがった。
■2カ月で30キロ減に成功した男が語る「ダイエットのウソ」
――『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』についてお話をうかがえればと思います。2014年に『完全ガイド 100%得をする「ふるさと納税」生活』を出版された時にもインタビューさせていただいたのですが、当時と比べるとかなりお痩せになられましたね!
金森:はい。その時は一番太っていた時期です。今はその時と比べると30キロくらい痩せています。
――「ふるさと納税」の返礼品を食べているうちに太ってしまったとありました。当時の食生活はどのようなものだったんですか?
金森:返礼品の肉や果物、スイーツを食べていましたし、地ビールもケースで飲んでいましたね。
それ以外にも朝はお茶請けでお菓子を食べていましたし、お昼はラーメンを食べて、夕食後にまたラーメンを食べて……。
――それは太りますね…。そこで一念発起してダイエットを始めたんですか?
金森:いえ、そもそも痩せるつもりはなかったんです。私は歯科医院を3件経営していたのですが、その関係でスイスのベルン大学の教授が書いたある論文を読む機会があって、その論文というのが、簡単にいえば「歯ブラシやデンタルフロスがなかった旧石器時代の食事に現代人が切り替えると、口腔内環境はどうなるか」という臨床データをとることを目的とするものでした。具体的には「4週間歯を磨かない代わりに、肉や魚、ナッツ類を食べて、小麦などの穀物や乳製品、イモ類を食べない」というものです。
これを自分でもやってみたら、口腔内の出血がなくなったり、歯周ポケットが浅くなったりと、口内環境が確かに改善したのですが、それだけでなく1カ月で15キロも体重が減ったんです。これはどういうことなのかと、色々調べ始めたというのがいきさつです。
――旧石器時代の食事が肉食中心なのは想像がつきますが、穀物は摂っていなかったんですね。
金森:文明が存在する前の時代ですからね。肉食というよりも、骨髄を食べていたという方が正確です。まだ鉄器などの武器を持つ前の無力なヒトですから、野生動物の肉はライオンなどの肉食動物が食べて、その残りをハイエナなどが食べて、残った骨を人間が食べていたんです。
――食事を疑似的に旧石器時代に戻したことで、副産物として減量効果に気がついた。
金森:そうです。そこからあれこれ論文を読み漁るようになりました。
――本書では、ダイエットに効果的とされている行動や習慣にはまちがっているものが多い点を指摘されています。よくあるのが「摂取カロリーより消費カロリーが多ければ痩せて、逆なら太る」というものです。これもまちがっているんですか?
金森:そもそも「炭水化物とタンパク質の場合は1g4kcalで、脂質は1g9kcalとしてカロリーを計算するアトウォーター係数自体正しくないんです。
また、カロリー計算はボンブ熱量計の中で燃やした食物と排泄物の差を熱量と仮定していますが、大気中での燃焼と体温による代謝はまったく別ものじゃないですか。だから、摂取カロリーと消費カロリーの差で痩せたり太ったりするというのは、ウソです。
――ただ、この説を信じる人は多いですよね。
金森:正確には摂取カロリーが増えれば消費カロリーも増えるし、摂取カロリーが減れば消費カロリーも減ります。相互に独立変数ではないからです。摂取カロリーが消費カロリーより少なかったら痩せるというのが本当なら、氷河期のヒトはみんな餓死しているでしょう。そう考えると、カロリーにまつわる仮説はでたらめなんです。
――2カ月ほどで30キロもの減量に成功した金森さんですが、短期間での大幅な減量は体への負担も大きそうに思えます。体調面での不調はなかったんですか?
金森:何もないです。脂肪肝だったのが治りましたし、肌もきれいになりました。健康診断の数字も全部正常化しましたよ。
――体力が落ちたということもなく。
金森:私が実践した旧石器時代食は、「断糖高脂質食」と言い換えられます。体力が落ちたのではないかという疑問を持つのは、たぶん「断糖」のところだけ見ているからでしょう。
単なる断糖やスーパー糖質制限は、糖質の摂取を打ち切りますから、体内ではアミノ酸や脂肪酸を使って糖をつくり出す「糖新生」という作用が起きます。その過程で筋肉を溶かしてアミノ酸を作るので、筋肉量は減ります。結果、体力は落ちるし体にも悪い。
ただ、「断糖高脂質食」は糖を摂取しないぶん、脂質を摂取します。この方法だとダイレクトに脂肪酸をβ酸化でエネルギー源にできるので、筋肉量は減りません。体力的に落ちることはないんです。海外のアスリートも今はカーボローディングではなく高脂質食にシフトしています。
――糖分を摂らないと頭が回らなくなりそうな気がします。
金森:それは思い込みです。血液と、脳や脊髄を含む中枢神経系の組織液の間の物質交換を制限する血流脳関門という部分は、ケトン体も通過しますから、脂でも頭ははたらくんです。
(後編につづく)
金森重樹
東京大学法学部卒。企業グループオーナー。テレビで紹介されていたのをきっかけに、ふるさと納税の魅力に開眼。2014年度は200件以上、300万円以上をふるさと納税し、 食生活のすべてをまかなう「ふるさと納税の達人」。「徹底して理詰めで事に当たる」のがモットーで、長寿やダイエットに関心を持ち、わずか2か月で90kg→60kgの減量に成功。その理論の根幹を成す「断糖高脂質食」をはじめ、栄養学や文化人類学にまで領域を広め、「脂で痩せる」という独自メソッドのブラッシュアップに余念がない。