だれかに話したくなる本の話

闇雲にやっただけでは成果は出ない。野村克也が語った「上達のコツ」とは?

ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を歴任した野村克也氏は、ヤクルト時代に「ID野球」で低迷していたチームを4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた。

チームを強くするために、野村氏がミーティングに重きを置いていたことは有名だ。そこで話されていたのは、野球の戦術だけではなく、人間性、社会性を高めるための人生論や社会哲学。なぜなら、「人としてどう生きるか」が、野球の上達にもつながるからだ。

27年間の現役生活で、三冠王など数々の輝かしい記録を残した野村氏だが、南海ホークスへの入団は入団テストを受けてテスト生としてスタートした。1軍入りを目指すも、プロ入り1、2年目はただ闇雲に練習するだけで成果が出なかった。
そこで、己の限界を知ることで、「頭」を使って野球をすることの重要性に気づいた野村氏は、時間をいかに使い効率よく課題に向かっていくか、どのような努力をすればいいかを考え、「上達のコツ」を見つける。そして、選手として、監督として、後の成功を自らの手でつかんだのだ。

『上達の技法』(野村克也著、日本実業出版社刊)は、そんな野村流「上達のコツ」を紹介する一冊である。

背も低く、体力もなく、技術もセンスもない、と自分自身を分析する野村氏は、「弱点を補う」ことにまずは力を入れたという。体力不足を補うために、走り込みと筋トレで身体を強くした。一つの弱点を補えば、また新たな弱点が現れる。現役時代は常に弱点を克服するための方法を考え続けた。「弱点を補う」ことの繰り返しが、上達のカギとなるのだ。

自分の弱点や短所は、見て見ぬふりをしてごまかしたくなるだろう。しかし、それでは上達できない。嫌な部分を正面から見つめ、克服していくことで、野村氏も1軍に上がり、活躍できるようになったという。

今シーズンから東京ヤクルトスワローズの1軍監督に就任した高津臣吾氏をはじめ、野村氏の教え子の多くは現役引退後も、監督、コーチ、解説者など、野球界で活躍している。それも、野村氏の考え方、指導法などが受け継がれているからだろう。
野村氏の大切にしている「人としてどう生きるか」は、野球選手だけでなく、どの分野の人にも通ずるところがある。人として成長し続けるためにも、野村氏の「上達の技法」を実践してみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

上達の技法

上達の技法

「知将・野村」が最後に伝えたかったこと。

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T・N

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