だれかに話したくなる本の話

『半自伝的エッセイ 廃人』北大路翼著【「本が好き!」レビュー】

提供: 本が好き!

著者は、山頭火を知り小学5年生から句作を始めたとカバーの著者紹介の部分に書かれている。この経歴からは、山頭火のような自由律俳句を詠むのかと想像していた。しかし収められているのは五・七・五の定型俳句ばかりだ。

著者はこのように書いている。

「ルールは厳しければ厳しいほど面白い。有季定型というルールがあるから面白いんだ。こんな大きな世の中のできごとをたった十七文字で描こうというんだからむちゃくちゃじゃないか。最高にクレージーでクールだ。 季語があるから、季語のない句を作りたくなるし、五・七・五があるから十七文字を飛び出したくなる。縛りつけるからそこに反発力が生まれるのだ。」(p53)

これは山頭火のように、自由律俳句をつくりたいという意味だと思ったのだが。

しかし、山頭火の著作を読んでいると、自分はどうあがいてもだめな人間であるという哀しみを感じるのに対して、本書を読むと、そういったものは感じられない。ただオラオラと自分の言いたいことを言っているようにしか感じられないのだ。

こういうことも書かれている。

「歯を磨くぐらいなら最初から食べなければいいんだよ。僕は食事をするから歯を磨きません。虫歯になったら抜けばいい。」(p67)

「この頃からアウトロ―をウリにした俳句の出演が増えた気がする。前歯がないまま人前に出ることにも慣れてきた。だってアウトローだもん。」(p74)

いや歯が抜けているのがアウトローではないからね。歯を磨いた方がいいと思うよ。

ともあれ、著者は、自分とは違う世界に生きる人だということが分かった。

(レビュー:風竜胆

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半自伝的エッセイ 廃人

半自伝的エッセイ 廃人

“新宿歌舞伎町”を詠むアウトロー俳人、初のエッセイ集!人生すべてが俳句の種―。

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