だれかに話したくなる本の話

コロナは歴史の岐路か ウイルスに勝った国と負けた国の明暗

コロナは歴史の岐路か ウイルスに勝った国と負けた国の明暗

新型コロナウイルスの感染者が日本でも急増の一途をたどるなか、4月7日、政府は緊急事態宣言を発令した。科学が発達した現代で、ウイルスが人間の生命と生活にこれほど打撃を与えることなど、だれが想像したであろうか。

ただ、どれほど医療や製薬技術の発達したところで、未知のウイルスに対して人間は常にもろい存在なのだ。古くは中世ヨーロッパで猛威を振るったペスト、天然痘、結核……。近年ではSARSやMERS、そして2009年にアメリカで発生した新型インフルエンザの悲劇は、記憶に新しいだろう。

人類の歩みはウイルスとの闘いの歴史でもあり、感染症の流行によって、文明は常に大きな転換を迫られてきた。ウィリアム・H. マクニールの名著『疫病と世界史』(中央公論新社刊)は、私たちにそんな教訓を伝えてくれる。

疫病と世界史 上

疫病と世界史 上

アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著。