対人関係のストレスを軽減するためにやるべきたった一つのこと
一日の大半を占める仕事。それだけに職場での人間関係は生活の充実度を大いに左右する。
人間関係が苦痛な職場なら出勤するのも苦痛になるし、周囲とうまくやれているのなら、たとえ成果の方はイマイチでもそこまでストレスを感じることはないのではないか。そして、この人間関係は自分次第で良くも悪くもなる。
『「職場のやっかいな人間関係」に負けない法:「あの人」の言葉のクセに解決の糸口がある』(三笠書房刊)は、人それぞれが持っている「認識スタイル(物事の受け取り方のクセ)」に注目することで、人間関係の改善を目指す一冊。
今回は、前回に引き続き、企業の人材育成や人事制度改革に携わるコンサルタントの飯塚健二さんに、それぞれの個々人で違う認識スタイルをどう捉え、どう役立てていけばいいのかについて教えていただいた。
■対人関係のストレスを軽減する方法とは
――同じものを見ていても、その人の「認識スタイル」によって受け取り方が違う、というのはよくわかるお話でした。ただ、場面や時間の経過によって認識スタイルは変化することがあるとも書かれています。このように揺れ動く他者の認識スタイルをどのように把握していけばいいのでしょうか。
飯塚:この本で言いたかったのは、個々人の認識スタイルを固定的に捉えないでいただきたいということです。自分を例にするなら、クライアントを相手にコンサルティングをしている時の認識スタイルと、部下と接している時の認識スタイルを意図的に変えています。
これはどんな人もそうで、家族と一緒にいる時の認識スタイルは、仕事の時の認識スタイルとは違うかもしれません。そして年月を経ることでも変化します。
「この人はこういう認識スタイルの人」と思うことで、人間関係に対するストレスを減らすことができます。しかし、それを固定的なものとしてとらえてしまうと、「この人はこうだから、言っても仕方がない、変わるはずがない」というレッテルになり、かえって、部下や自分の成長を阻害してしまう危険性もあります。人は変わっていくものという前提の上で、認識スタイルについて知っていただきたかったんです。
――人間には相性があると言われますが、本書の内容を踏まえてコミュニケーションをとれば、これまで「相性が悪い」と思っていた相手ともストレスなく付き合うことができるのでしょうか。
飯塚:誰かと相性が悪いという場合、二つのパターンが考えられます。「生理的にダメ」という場合と、コミュニケーションをあまりとっていない状態で相性が悪いと思い込んでいる場合です。
前者の場合はともかく、後者の場合は話してみたらそうでもなかったということが経験則的によくあります。もし、直接コミュニケーションをとっていないうちに相性が悪いと思い込んでいるなら、この本で書いた認識スタイルの考え方で対応できると思います。相手がどんな認識スタイルで物事を受け取って、どんな考え方をするかを把握することで、その人に合ったコミュニケーションの方法がわかるようになっているので、試してみていただきたいですね。
――今のお話にもありましたが、第二部では職場にいる様々なタイプの人の分類と、その対処法が示されています。個人的には、指示出しが雑な上司、丸投げする上司が苦手なのですが、こういう人への対処法を教えていただきたいです。
飯塚:感情面の対処の仕方と行動面の対処の仕方がありますよね。
指示出しが大雑把な人というのは、iWAMの考え方では「全体型」の認識スタイルの傾向が強いといえます。対人関係の感情面のストレスは、相手の行動が理解できないからこそ生まれるものです。つまり「どうしてこういう雑な指示出しをするんだろう」と、相手を理解できていないうちはどんどん怒りの感情がたまってしまう。
でも、認識スタイルの傾向を理解して「全体型の人は物事の細部について意識がいきにくい」と知ることで、少なくとも相手の行動のメカニズムについて納得できるわけで、そうすると自分の中で「あの人はこういう人なんだ」ということで気持ちの折り合いはつけられるはずです。
さらに、行動面も相手の認識スタイルを把握したうえで対処していけばいいと思います。細かいところがどうしても疎かになってしまうのが「全体型」の傾向としてあるので、そこは自分がフォローしてあげたり、大雑把な指示には細部について質問したり、相手を補完するように立ち回れればなおいいと思います。
私が人間関係でそこまで悩んだりすることがなくなったのは「あの人はこう考えるんだな」と客観視できるようになったことが大きかったんです。客観視することで相対化できるので。
――また、職場での人間関係についてよく耳にするのが「世代差」の問題です。若い世代が理解できないという管理職の声がよくメディアなどを通して聞かれますが、こうした問題も「認識スタイル」で解決することはできるのでしょうか。
飯塚:世代間ギャップにも色々な要因がありそうですよね。バブルを経験した世代とそうでない世代では考え方も物事の捉え方も違うでしょうし。正直わかりあおうとすると難しいと思います。
ただ、かならずしもわかりあう必要はなくて、「あの世代はこう考えるんだな」と分類して理解することはできます。自分だけの価値観で考えてしまうと理解できなくてストレスがたまるところですが、世代によっても人によっても考え方に特徴があるんだと理解することは、この本の考え方と矛盾しないはずです。
――本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
飯塚:まず、タイトルそのままに「人間関係に悩む人」に読んでいただきたいです。あとはマネジメントと親和性が高いので管理職の方々ですね。最近パワハラが問題になることが増えていますが、これはまさに自分の中の価値基準でしか物事を考えていない人が増えているということですから、世の中にはいろんな人がいて、物事の捉え方も様々だとわかっていただくことは役立つのではないでしょうか。
また、人事担当の方々にとっても役立つ内容になったのではないかと思っています。この本で書いているのは、それぞれの違いを認めて一人ひとりの個性をどう生かすかということなので、ダイバーシティや人材マネジメントの話でもあるんです。
――最後に、読者の方々にメッセージをお願いいたします。
飯塚:iWAMを前面に出してはいますが、心理学や脳科学、西洋哲学や東洋思想の話を盛り込んだり、マイケル・ジョーダンからドラッガー、宮本武蔵など古今東西問わず様々な人の話も差し挟みつつ人間関係についてできるだけわかりやすく解説したつもりです。
この本を通じて、お互いに個性を認め合える職場が増えていけば、多くの人がもっと仕事を楽しく感じられるようになったり、社会が明るくなっていくんじゃないかという青臭い気持ちを込めて書きました。読んでいただけたらうれしいです。
(新刊JP編集部)