「無駄な時間が9割」。でも、その時間が開高健ノンフィクション賞受賞作を生んだ
動物との性愛という禁忌。その先に何があるのか。
第17回開高健ノンフィクション賞を受賞した『聖なるズー』(集英社刊)は、とてもセンセーショナルな一冊である。
著者はノンフィクションライターで、京都大学大学院に在籍する濱野ちひろさん。専門は文化人類学だ。
濱野さんは4ヶ月にわたり単身ドイツに赴き、現地の動物性愛者団体「ZETA(ゼータ)」のメンバーたちにアクセスし、リサーチを行った。その方法は単純な聞き取り調査ではなく、彼らと生活をともにする「参与観察」という手法である。
「ゼータ」のメンバーたちは自分たち動物性愛者のことを「ズー」と呼ぶ。そんなズーたちについてはインタビュー前編を読んでいただくとして、この後編については、「研究者」としての濱野さんにフォーカスしてお話をうかがった。
対象者の生活に深くコミットする参与観察は、人間関係の構築も含めて、実は一筋縄ではいかないものがある。さらに、文化人類学という学問の特性も相俟って…?
(聞き手・構成:金井元貴)