CMを見てサプリメントを買うな!正しいサプリ選びのポイントは?
何となく体調が悪かったり、体力の衰えを感じたり、風邪をひきやすくなったり。
こうしたちょっとした体調の変化を感じるとなんとなく不安になるもの。そんな折、インターネットやテレビを見ていると、健康増進を標ぼうするサプリメントの広告が目に飛び込んでくる。
思わず購入の手続きに入ってしまいそうなシチュエーションだが、ちょっと待ってほしい。その行動は本当に正しいのだろうか?
『サプリメントの正体』(三笠書房刊)は、有象無象のサプリメントが溢れかえる現状に警鐘を鳴らし、正しいサプリメントの知識を授ける一冊。今回は著者の田村忠司さんに、私たちが生活の中で抱くサプリメントについての疑問をぶつけてみた。
■まともな製品は半分もない? 業界内部から見たサプリメント業界の現状
――『サプリメントの正体』についてお話をうかがえればと思います。まず田村さんがこの本を書いた動機について教えていただきたいです。
田村:二つあります。今回の本は2013年に東洋経済新報社から出た同名の本に加筆・アップデートした文庫版なのですが、当時東洋経済さんの方がサプリメントへの問題意識を持っていて、誰かにこのテーマで本を書いて欲しいと考えておられたようなんです。
私は医療機関専用のサプリメントメーカーを経営するかたわら、あちこちでサプリメントについて講演をしているのですが、その講演の内容をネットにアップしている方がいて、それを東洋経済さんがご覧になって私のところにお話がきたといういきさつがあります。
もう一つは会社のクライアントである医師の方々からの要望もあったんです。先生方は患者さんが変なサプリメントを買って困っていたんですね。
――お医者さんはサプリメントについての指導はできないんですか?
田村:いえ、できるのですが、患者さんの側が「医師にサプリメントの相談をしても『そんなものはやめなさい』と言われるに決まっている」と思い込んでいて、医師に言わずに自分で見つけてきたサプリメントを飲んでいるという実態があります。
体に合ったサプリメントを選んで飲んでいるのならまだいいのですが、必ずしもそうじゃないんです。健康のためにと思って選んでいるのでしょうが、うまくいっていないケースがすごく多い。医師としてもそれは問題だという意識があって、「患者が妙なサプリを飲まないようにするための本がほしい」と考えておいででした。そういう本があれば、病院の待合室に置いておくことで患者さんが読みますし「この病院の医師はサプリメントについて理解がある」というメッセージにもなるわけです。
すると、診察の際にサプリメントについての相談が出るようになりますから、それらを踏まえることで治療の精度も上がります。そういう事情があって、医療機関サイドからもサプリメントの本を書いてくれないかと言われていたんです。
――医師の方は、お話にあったようにサプリメントを頭から否定してしまうものなのでしょうか。
田村:そちらの方が多数派かもしれません。少なくとも、治療に関係があると考えている医師の方はまだ少数派だと思います。
――サプリメントのアドバイスを専門的に行う方はいないのか?という疑問があります。
田村:サプリメントのアドバイザーの資格がありますから、そういう方もいるにはいるのですが、その資格を現場で使いこなせている人は多くないと思いますね。
なぜかというと、その資格で職を得るとなると、サプリメントを販売しているお店の従業員になる可能性が高いですね。そうするとお店に並んでいるサプリメントをいかに売るかということを求められますから、場合によっては本当に知られるべき情報を出せないということにもなる。実質的に販売員になってしまうわけです。
――本書で書かれているように、サプリメントは堂々と効果をうたうような広告とともに実に様々なものが販売されています。田村さんの感覚として、パッケージに記載されている通りの栄養素が入っていて、きちんと体に吸収されて、という「まっとう」なものは何割くらいある印象ですか?
田村:私の感覚では半分もないだろうという感じです。
――なぜ、こんなことになっているのでしょうか。
田村:薬であれば実際にどれだけ栄養素が入っているかをきちんと検証して、胃の中で溶けるかという溶解試験をして、ということをしますが、サプリメントは食品扱いになるのでそういったルールではないというのが一つ。
もちろん、サプリメントにもルールはあるのですが、ちゃんと運用されていないといいますか、野放し状態になってしまっています。
なぜ野放しになっているかは、どういう風にサプリメントが作られるのかを考えるとわかります。これまでサプリメントを作ったことがない会社の人が、「サプリメント市場が伸びているからうちも参入しよう」ということで、外注を受けてくれる工場に相談します。
その時によくあるのが「こういう成分を入れて、いくらくらいになるように作ってほしい」と「丸投げ」して、商品ができあがってきたらそのままそれを販売してしまうというケース。つまり、販売する企業の中に商品のクオリティをコントロールする人がいないことが多いんです。これではサプリメントメーカーというよりは、単なるサプリメントの「企画会社」です。
こういう会社はマーケティングには長けていますが、サプリメントの性能を担保することについてはほとんどノウハウがありません。これが今のサプリメントを取り巻く問題の原因の一つだと考えています。
――マーケティング戦略の一環なのでしょうが、テレビのCMやインターネットの広告などでサプリメントに関するものを目にしない日はありません。派手に効果効能をうたっているものも多いですが、なんとなく胡散臭い気もしてしまいます。
田村:その感覚は大事だと思います。市販のサプリメントを選ぶのならば、実物のパッケージを見るべきです。強く申し上げたいのは、テレビCMや広告だけを見てサプリメントを買わない方がいいということ。騙されてしまう可能性が高いです。
インターネットで調べるのでも店舗に行くのでもいいのですが、パッケージに書かれている情報が全て見られる状況で買うということは徹底していただきたいですね。
――となると、多少は栄養の知識が必要になってきますね。
田村:そうですね。ただあまり細かい栄養素の名前を覚えても意味がありません。よく聞いたことがない新素材をCMで打ち出しているのを見かけますが、ああいうのはひとまず忘れて大丈夫です。今まで摂取したことがない新素材ということは、一生摂取しなくても問題ないんですよ。今のところ生きられているわけですから。
もっと基本のところで、「必須栄養素」と言われる、食べないと死んでしまう栄養素が足りていない人がたくさんいる。そういう栄養素を中心に構成されているものの方がおすすめです。
――「新素材」と言われると気になりますが、買う必要はないと。
田村:とりあえずは買う対象から外していいと思いますよ。サプリメントの広告についてもう少し言えば、誇大広告も目立ちます。
薬ではないものについて、パッケージや広告に効果効能を書いてはダメだと薬機法で定められています。景品表示法でも、実際よりも著しく優れている様な表記が禁じられています。 ということは、サプリメントのパッケージに「これでみるみる脂肪が燃焼して…」などと書いた時点でアウトなんです。そういうサプリメントがあったとしたら、それは法律を守る意思がないと言っているのと同じであって、そんな業者が消費者のためにいい商品を作るはずがない。
最近も「ブロリコ」というブロッコリーの成分を使ったサプリメントが景品表示法に抵触して消費者庁から措置命令を受けていましたが、こういうケースが今頻発しています。
――お話をうかがってサプリメント業界の今後を心配していましたが、消費者庁が目を光らせているとなると、広告や品質についての問題は改善されていく方向にあるのでしょうか。
田村:政府の取り組みという意味ではいい方向に向かっているとは思います。消費者庁のホームページに書かれているように、明らかに制度に違反している製品は売上の3%を課徴金として徴収されます。売上の3%といったら大打撃ですから、メーカー側の姿勢は今後正されていくのではないかと思います。