だれかに話したくなる本の話

上場企業勤務ゴリゴリの営業マンが独立起業。そこでぶち当たった「壁」とは?

自分の人生、どうやってこれから生きていこうか悩んでいる人は少なくないだろう。

このまま会社で働いていても大きくお金を稼ぐことはできない。
人生100年時代、老後を生きていく上でも今のままでは必要な費用をまかなえない。
何よりも、本当に今の仕事をずっと続けていけるのかが不安だ。

『働きながら小さく始めて大きく稼ぐ0円起業』(クロスメディア・パブリッシング刊)の著者である有薗隼人さんは、2011年に上場企業から独立起業し、メディアの運営や婚活関連ビジネスなどインターネットを中心にしたビジネスを手掛ける株式会社GEARを経営している。

有薗さんは自身の経験から、ビジネスチャンスはどこにでも転がっていて、ちょっとしたチャレンジで自分の人生を変えることができると主張する。失敗もあるが喜びもある。独立まで行かなくても、副業でいい。行動することがその後につながると強く訴えるのだ。

今回はそんな有薗さんにお話を伺い、前編では自身の半生を、後編では成功のために必要なことを教えてもらった。

(新刊JP編集部)

■一から稼いで売り上げを立てた経験を伝えたい

――本書は一貫して「どんどん動いて、独立・副業に限らず自分のビジネスを成功させよう」というメッセージを伝えていますが、そこに込めたメッセージを教えてください。

有薗:いろいろなところで言われていますが、人工知能(AI)の進化によって10年後、20年後の社会は大きく変化しているはずです。それは私たちの仕事にも影響を及ぼすわけで、考えなくてもできる作業はなくなり、自動化できる点はどんどん自動化が進んでいくでしょう。

となると、人間がAIに勝てる部分はどこかという話になるわけですが、私は創造性や思考だと思うんですね。それがない人間は淘汰されるであろう、と。

そんな時代を生き抜くためには、自分の力で稼ぐ力、どんどん動いて新しいものを生み出す力が必要です。その意味でも、自分でビジネスを立ち上げて、トライ・アンド・エラーを繰り返していってほしいというメッセージを込めました。

――特に読んでほしいのは若い方になるのですか?

有薗:私くらいの年齢ですね。25歳から35歳くらいの方にはぜひ読んでほしいです。

――20年後となると読者が50歳前後の頃ですよね。その時に仕事がなくなってしまわないように。

有薗:そうですね。会社に勤めている友人たちの話を聞くと、「会社をいつクビにされるか分からない」と後ろ向きな考えを持っていたりします。そうした状況を打破するためにも、自分が会社を食ってやるという前向きな考えを持つことが大切だと思っています。

――本書を執筆した経緯もそれを伝えたくて?

有薗:そうです。私自身、もともと個人で副業のような形でビジネスを始めて、それから8年ほど経ちます。アフィリエイトをはじめとしたネットビジネスが中心ですが、一から稼いで売り上げを立てるという経験をしてきたので、それを整理し、体系化して幅広い人にお伝えすることで、前向きな考えを持つ一助になれるのではないかと思っていました。

――独立起業だけではなく「会社員として働きながら」という部分は本書の大きな特徴です。

有薗:そうですね。副業OKの会社は増えていますし、以前に比べたら自分自身のビジネスをする上で、そこまで大きなリスクを取らなくてもよくなっています。固定収入を保ちつつ、新たな収入の口を増やすことがすごくやりやすくなっている背景があるわけです。

やりすぎると本業の会社から怒られるかもしれないですが(笑)、自分が持っているものを使ってどんどんビジネスできる環境にはなりつつあると思いますね。

■一度も顧客と面会することなく売り上げを立てる営業マン

――有薗さんご自身についてお話をうかがいたいのですが、2011年に株式会社GEARを設立され、独立して8年経ちます。それまではどのような経歴を辿ってこられたのですか?

有薗:もともと父親が自営業だったのでおぼろげながら社長になりたいという意識は持っていました。学生の時は自分で考えて動いて人を動かすということが好きなタイプでしたね。

――文化祭なんかでも音頭を取るような。

有薗:はい。「これやろう!」って自分から積極的に動くタイプでしたね。インターネットを使ったビジネスは大学生の頃からやっていましたが、新卒時は起業せずにGMOインターネットに入社しました。そこでは2年半くらいいましたが、結構良い給料をもらっていました(笑)。

――GMOでは営業をされていたんですか?

有薗:そうです。ゴリゴリの営業です。電話での法人営業で、一度もお客様と面会をしたことがなかったのですが、2年間ほどで1億5000万円くらい売り上げました。最後の方は声色、間の取り方、テンションで成約するかどうか分かるようになっていましたね。

――それはコミュニケーション力が高まりますね。

有薗:電話のクローズ時には「今度一緒に飲みに行きましょう!」と仲良くなったりもしました(笑)。ただ、もちろん話術やコミュニケーションだけで営業していたわけではなくて、相手の会社のリサーチもすごくしていました。商品の魅せ方についても工夫しましたし、ストーリーを作ることも意識しました。

■晴れて独立。しかし、そこに聳え立っていた壁にぶち当たる

――営業として良い成績を上げている中で退職して、すぐに独立されたのですか?

有薗:いえ、その後に1社中途で転職しています。ただ1ヶ月くらいでやめてしまいました。今のビジネスはその時に副業として始めたのがきっかけです。自分のほしいお金に少し届かないので、もっと稼ごうと思って副業を始めたという感じですね。

――1ヶ月でやめたあと、他の会社に行かず、そのまま独立したのはどうしてですか?

有薗:先ほど言ったように社長になりたいということはずっと思っていて、タイミングもあったので父親に相談し独立してやってみるか、ということになりました。「社長」と呼ばれたいという思いはずっとあったので。

それに、いろんな方が言っていますがどれだけ失敗しても日本にいる限りはやり直せるというか、なんとかなると思っているんです。転んでもやり直せるという確信がありましたから、起業しちゃおう!と動いた感じですね。

――経営者として会社を経営する中で悩まれたこと、当たった壁はありますか?

有薗:立ち上げ当初は「株式会社GEAR」という会社なんて誰も知らないわけです。GMO時代はGMOという上場企業の看板がありましたけど、独立してそうではなくなった。だから、まずは認知を広げていかないといけないという壁にぶつかりました。

あとは、どうしても作業を自分でやってしまい、経営者としてやるべきことに割く時間が取られてしまったことも反省です。誰かに業務を投げるということを当時は知らなくて、スピードが鈍ってしまったというところがあります。

インターネットビジネスの業界では「レバレッジ」と言いますが、一人でできることは限られているので、その部分はもっと学びたかったですね。

―― 一方で経営に手ごたえを感じた瞬間は?

有薗:仲間が増えてきたあたりで手ごたえは強く感じるようになりました。結局、ビジネスは信用だと思うんです。社会とのつながりの中で信用を増やしていって、その信用が儲けにつながる。お客様、取引先とのコミュニケーションの中で怒られたり傷つけられたりすることもありますが、仲間と一緒に作り上げたものが褒められて信用されたりすると、それはとても嬉しいことです。

――経営者の方に話を聞くと、「起業」にはリスクがあるという話もあります。固定費がかかったり、一人でやるうちはいいけれど社員が入るとその人の人生も背負うことになる。その意味ではまだ起業に対する敷居の高さはあるように感じますが、実際はどうでしょうか?

有薗:以前の考え方だとそうなるかもしれません。今は工夫して固定費をかけずに起業できます。オフィスを借りなくてもいいし、スタッフも業務委託という手がある。「起業」という言葉に惑わされず、ビジネスをすることの本質的な部分を考えるべきでしょうね。

(後編に続く)

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